幽鬼の支配者、ファントムロード。
妖精の尻尾と同じマグノリアという街に存在するギルドの名前である。2つのギルドはマグノリアの中にあるギルドの中でトップ2の実力や名声があるが、それが気に入らなく1番では気が済まないと、幽鬼の支配者のマスターであるジョゼは妖精の尻尾を憎んでいた。
そして、戦いのきっかけとなったのは、最近新人として仲間になった『ルーシィ・ハートフィリア』という女の子だった。
どうやら彼女はハートフィリア家の娘でお嬢様という立場だったらしく、彼女の父親が娘をとり返すように幽鬼の支配者に依頼したことで、今回ジョゼは表向きは依頼人の為で、本心は妖精の尻尾を潰す為に動いた。
手始めにギルドを破壊し、そしてメンバーを襲い、見せしめに磔にしたことでマスターを含めたギルド全員の怒りを買い、妖精の尻尾は幽鬼の支配者のギルドにカチコミをかけた。
戦争に勃発した2つのギルドであったが、マスターマカロフとS級魔導士のエルザ・スカーレット、そして滅龍魔導士であるナツ・ドラグニルが先陣を切ることで最初は妖精の尻尾が優勢だった。
だが、マスターであるマカロフが敵の策略により魔力を枯渇させられ、瀕死の状態に追い込まれたことで妖精の尻尾の面子は撤退を余儀なくされる。
今回は急なことで連絡はできなかったが、マスターがいないとなれば今は対抗するために少しでも戦力が欲しい。故にこうして連絡してきたというわけだ。
ギルドの為、仲間の為、力を貸して欲しいと看板娘であるミラ・ジェーンに懇願されたジン。
「分かった。すぐに向かう」
『ありがとう……ありがとう……ジン』
了承し、ギルドに戻ることにしたジン。ミラは最後まで泣いていた。それほどまでに危機的な状況なのが分かる。
「ミラ、泣いてたね。よっぽど切羽詰まってるって感じだったよ」
「あそこまで必死になっていたことで大方は予想できる。俺の時と同じように連絡をかけてみたミストガンとは連絡が取れず、ラクサス相手には頼みを聞いてくれずに見捨てられた……そんなところだろう。ならば……さっさと戻らなければな。……だが、この距離だと時間がかかる。それに戦う前から魔力を使いすぎても足手纏いになるだけだ」
ジンは考える。自分の魔力で空を飛ぶことが出来るジンは、その場合スピードに耐えきれないアイルを置いていくことになるが、超特急で向かうのならば自身の魔力で向かうのを最優先とするならばそれがいい。
「もう!何のために僕がいると思ってんの〜!ジンを運ぶくらい僕がやるよ!」
誰か忘れちゃいないかと言いたげにプンプンと怒っているアイル。もう一つの案はアイルがジンを運ぶというものだ。それならば、魔力の消費をせずに戦場へと辿り着ける。
確かにそれもジンは考えていたが、ここのところ仕事続きで休ませられなかったことを話したばかりだというのに、相棒をこれ以上酷使させるのは躊躇いがあったのだ。
「だが、お前はもう疲れているんだろう。あまり無理をするな」
「多少の無理なんか関係ないよ!仲間の為だもん!僕だって妖精の尻尾の魔導士だ!」
「アイル……」
アイルは自身の背中に刻まれた紋章を見せながら豪語する。普段のおっとりとしたアイルが見せないような真剣な表情にジンは押され気味になった。
「ジンは戦いの為に魔力を温存して、移動は僕に任せて!いいね!?」
「……分かった。だが、ゆっくりはしてられないぞ」
「うん!ジンには負けるけど……マックスフルパワースピードでいくよ!」
押しに負けたジンはアイルの案を受けた。アイルの魔法で空を翔け、彼等は戦場へと向かっていく。
▽
カチコミの後、マカロフがいないことを好機とし、変形するギルドごと攻めてきたマスタージョゼは『超魔導ジュピター』という砲撃魔法を妖精の尻尾に目掛けて放つ。
それを防いだのはエルザ。彼女の魔法は『
再びジュピターを放とうとするジョゼだが、チャージに時間がかかるため、それを阻止しようとギルドに乗り込んだのが
ナツ・ドラグニル
グレイ・フルバスター
エルフマン
その3人は中へと侵入する。
幽鬼の支配者にはS級魔導士に匹敵する実力をもつエレメント4が控えており、更にはナツとジンと同じように滅龍魔導士であるガジルという男もいる。
激闘の中、エレメント4は全て倒され、残るはガジルとマスタージョゼ。ガジルと戦っているのは同じ滅龍魔導士のナツである。
そして、そのジョゼと今戦っているのは、ジュピターを受けて重傷を負ったエルザだった。彼女は傷を負いながらも奮起し、エレメント4の1人であるアリアを倒した後、仲間のグレイとエルフマンと合流したが……。
「ハァ……ハァ……!くっ!」
「おやおや……
グレイとエルフマンはマスタージョゼの一撃で戦闘不能に陥り、残りはエルザとなってしまう。
彼女の纏うは黒羽の鎧。攻撃力に特化した鎧だが、全くジョゼには敵わなかった。ジョゼ自身も全く本気を出してないところをを見るに、全快の状態であっても同じ結果だろう。
「フッ!」
「グハッ……!!」
指を弾くだけで衝撃波の魔法を放つジョゼ。エルザは見えない攻撃に圧倒され、壁際までふっ飛ばされ、倒れ込んでしまった。
「うーん、いいですよその無様な姿。私がマカロフを生かした甲斐があるというものです」
「何ッ……!?」
「このままギルドを潰し、そのメンバーを子供と扱うマカロフに絶望を与えるのですよ。あなたたちの無惨な姿を見たマカロフは絶望し、苦しみながら死んでいく。最高の光景でしょうねぇ」
「下衆が……!!」
仲間達を痛めつけたこと、常人が考えない悪逆の思考、そしてマスターであるマカロフに対する仕打ち。何もかもがエルザの神経を逆撫でるものであった。
しかし、怒りに対して身体が追いつかないこの状況を打破できる手段がなかった。そんなエルザにトドメを刺そうとするが……。
「ん?何か近づいてくる……?」
その絶望的な状況の中、1人の救世主が参上した。
「な、なんだ!?」
キーン……と外から音が聞こえてきたとおもえば、ドガァァン!という轟音と共に何かが外壁を突破して侵入してきた。
「……1番大きな魔力を感じて来てみたが、当たりだったようだな」
「お前は……ジン!!」
その人物をエルザは知っていた。自分と同じミラの通信を受けて、ジンはようやく戦場へとたどり着いた。
エルザにとって仲間がきてくれたことは喜ばしいことだが、情勢が良くなったとも言い難いので苦い顔のままだ。それほどまでにジョゼの力は強いと身に染みて理解したばかりだから。
「エルザか。お前がそこまでボロボロになるのも珍しい。……そうか。アイツがマスタージョゼだな」
「ジン?ほーう……確か、聞いたことがありますよ。S級魔導士になれる素質があるのに、その地位になることを放棄している妖精のケツの一員がいるとね」
マスタージョゼはジンを見て見下すように言い放つ。それに対しては全く耳を貸すつもりもないジンは虚空から黒鉄の剣を取り出してそれを構える。
「……下がっていろエルザ」
「待て!やめろジン!」
「天彗龍の……」
エルザの警告を無視し、踏み込みと同時に動き出し、彼女の目に留まらない速さでジョゼへと接近した。
「鉤爪!」
そのまま紅いオーラを纏わせた剣を振り下ろしたが、ジョゼはそれに反応して手を翳すことで防御魔法陣を展開して攻撃を防いだ。
「なるほど、確かにそこに倒れている妖精女王とは違うようだ。だが!!」
攻防の拮抗状態の中、ジリジリとジョゼが押し返している。そして反撃としてもう片方の手を動かそうとしたが
「ッ!?消えた!?」
目の前にいたジンが視界から消え、いつの間にか背後に回られていたことに気づいたが、すでに遅く、ジンは横に払うように剣を振っていた。
「ガハッ!」
前に移動することで致命傷は避けたが、背中に傷を負うジョゼ。
(速い……この速さは聖十大魔導士レベルに匹敵するものだ……!まさか、私がこんな餓鬼に……!!)
「調子に乗るな小僧がァッ!!」
先程とは打って変わって口調が荒くなり、カウンターとして魔力弾をジンに向けて放つ。爆発を起こし、ジンは後方へ少し飛ばされながらも着地する。
「……フゥ……」
ジンは呼吸を整え、膝立ちになりながら無表情で睨む。ジョゼにとって、マカロフ以外はハエに等しい存在……だからこそ、自身の攻撃を受けても尚睨んでくるジンに怒りが湧いてきた。
「何だその目は?妖精のケツってのは、どいつもこいつも生意気な目をしやがる……雑魚のくせに目障りなんだよォッ!!」
「……そうか。ならばもっと来い。足りないぞ」
余裕があるようなその言葉にこめかみをピクピクと動かして血管を浮き出すほどに怒りが溜まっていくジョゼは手に魔力を込めていく。
「いいだろう……そんなに苦しみたいなら望み通り、ジワジワとなぶり殺しにしてやる!!」
バッ!と手を突き出すと今まで以上の威力の魔力弾が次々と放たれてジンに襲いかかる。
「ジン!避けろ!!」
これは受けてはいけないとエルザは再び警告をするが、ジンはそれをあえて受け続けた。爆風で姿は見えないが、ジョゼから見れば即死だと疑わなかった。
「クククッ……!どうだクソガキが……!!って、ナ、ナニィィッ!?」
ジョゼはフルパワーを出したわけではないが、今の攻撃はギルドマスターでない者であれば重傷を負うほどの威力があると自負している。
その攻撃を受け、ジンは傷が出て身体から血が流れているのにも関わらず、平気で立っているのだ。目の前に立っているジンは、少し口角を上げて笑いつつ、赤い瞳をギラギラと輝かせていた。
「……いいぞ。中々だ」
(何だ……?ジンが笑っている?初めて見たぞ)
ジンが笑うところなど、一度も見たことがないと思い出すエルザ。普通、傷をつけられれば痛みで顔を歪ませるものだ。それどころか、彼は傷ができたことに悦びを感じているように見えた。
「あーあ、ダメだよジョゼ。ジン相手にジワジワとだなんて悠長なことやってたら……もう手遅れになるよ」
「ッ!?アイル!」
ジンよりも後にきた相棒のアイルは、やれやれと首を振りながらそう言う。彼は倒れているエルザに向けて手を振る。
「やっほ〜エルザ。ここからは僕の相棒に任せていいよ」
「ダ、ダメだ!ジョゼはやはり強い……疲弊しているとはいえ、私は奴に敵わない……!!ジンだって、タダでは済まないぞ!」
「大丈夫大丈夫。あっ、そういえばエルザ達はジンが傷ついたところ見たことないからジンの魔法の特性を知らないよね」
「特性?奴の魔法は滅竜魔法じゃないのか?属性はナツの炎と少し似ているものだと……」
「いや、実は全然違うんだよ〜。ジンの属性は……そうだなぁ……言葉一つで表現するのは難しいけど、あえて言うなら……ジンの属性は『龍』そのものなんだよ」
「龍?それは……属性といえるのか?」
「ジンの魔法でよく爆発を起こすのは、その活性化した龍属性が爆発として巻き起こってるものなんだ。炎属性に見えるのは仕方ないかもね〜」
一方、ジンの方を見ると、彼が剣に纏わせていた紅い龍属性のオーラと、自身が傷を負って流していた血が混同していき、それが身体の周りをバチバチと赤黒いイカヅチとなって迸らせることで魔力が増幅していくのをエルザは感じ取った。
「アイル、ジンの身体から溢れている魔力がさらに赤黒くなってるぞ。アレは見たことがない」
「ジンの本領は強敵相手にこそ発揮されるんだよ。S級魔導士じゃないし、そんな難しい依頼を受けられないから普段は傷なんてつかないからね〜。自分の身体から溢れ出している血と龍の力を混ぜ合わせることで、滅竜魔法の魔力に変換させて力を更に底上げしていく。それがジンの滅龍魔法の一つ『
ジンは傷付けば傷付くほど強くなる」
溢れ出す龍属性のオーラが纏わりつき、普段物静かなジンの顔つきが獰猛なものへと変わっていき、ここからが本番だという意思表示として今度は剣を逆手に構えてジョゼを見据えるのであった。
ジンのモチーフは『崩壊スターレイル』の刃というキャラクターです。能力もモチーフとなっております。ここではオリジナル魔法として扱います。