ジンが到着した頃、ナツはガジルとの最後の決戦に挑んでいた。
最初は不利だったものの、囚われていたルーシィのアシストプレイにより体力を回復。形勢が逆転してきた頃にジンが到着したところでナツとガジルは持ち前の嗅覚でそれを感じ取った。
「何だ!?知らねぇ奴の匂いが現れやがった……!」
「この匂いは……ジンか!!」
ジンの登場にナツはニッと笑う。ナツとガジルの戦いを見ていたルーシィは知らない名前を聞き、隣にいるハッピーに問う。
「ハッピー。ジンって?」
「ナツと同じ滅竜魔導士だよ!これで戦力大幅アップだ!」
「えぇ〜!?滅竜魔導士ってまだいたの!?じゃあその人もナツみたいに強いんだ……」
「うん!ジンの攻撃は凄いカッコいいよ!ズババーン!って攻撃して綺麗な花火みたいなんだ〜……敵の血が」
「アンタ、エルザの強さを説明する時も同じような事言ったわよね……?」
聞き覚えのある説明にドン引きするルーシィ。
そして、その名前を聞いたガジルはギョッとして驚く。
「ジンだと!?まさか、『銀翼の凶星』……俺らと同じ滅竜魔導士か!チッ、始末するやつが1人増えたか」
「へっ……何勘違いしてやがる。ジンが来てくれても、結局お前は誰も倒せねぇよ。お前を倒すのは俺だからな」
挑発気味に手をクイクイと動かすナツ。それに対してガジルはカチンと来たのか腕を鉄のチェンソーの形に変えてナツに突進する。
「ハッ……舐めてんじゃねぇぞケツがァァッ!!」
「ウオオオォォォッ!!!」
ナツは拳に炎を纏い、ガジルと激突。
炎の滅竜魔導士、ナツ。鉄の滅竜魔導士、ガジル。2人の決着は近い。
▽
「
ジンは指にオーラを纏わせ、それを剣に伝わせるようになぞる。ギンッ!と力が凝縮されたような音が鳴ると、今度は自分の手のひらをジョゼに向けるようにして構える。
「フンッ!」
なんと、ジンはその剣で自分の手のひらを斬りつけたのだ。その手を勢い良く斬りつけると、剣についた血がそのまま斬撃となって飛ばされた。
「何っ!?」
その血は、元が液体とは思えないほど鋭利で重みのある斬撃に変化していた。
ジョゼもまさか血が飛ぶ斬撃となって襲いかかるとは思わず、咄嗟の反応で魔法陣を展開してガードをする。
「ぐおぉぉっ!!?お、押され……!!」
しかし、先程の鍔迫り合いとは違い、今度はジョゼが斬撃に押される形となる。
「ヌゥゥアッ!!」
「遅い。フッ!」
「グファアッ!?」
ジョゼはその斬撃を何とか上に弾き飛ばして被弾を防ぐ。だが、その動きをした直後には、自ら迫ってきたジンの蹴りが鳩尾に叩き込まれていた。
絶え間ない攻撃の連続に対応しきれず、ジョゼはその蹴りでふっとばされる。
「フッ!」
またまたジョゼの視界から消えるジンは、先程よりも速いスピードで駆ける。紅く光る瞳が動くたびにそれが残光となり、ジョゼを追従していく。
「ッアァッ!」
「グハァッ!!」
空中を舞うジョゼの上から拳を叩き込み、床に叩きつける。先程の戦闘とは形勢が変わり、今度はジンが圧倒していた。
「ぐっ……くらえっ!!」
しかし、これでもジョゼはマカロフと同じ聖十大魔導士。タフである。立ち上がり様にジンに向けて魔力弾を放ちまくる。
「な、なんだ!?攻撃が当たらない!?」
何度も撃ってもジンに当たらない。それどころか、彼はいつのまにか複数の分身を用意しており、当たるどころか弾が貫通してすり抜ける。これにはエルザも原理が分からなかった。
「ジンが分身?あの技は滅竜魔法に関係が……?」
「ないよ」
「えっ……?」
エルザの問いにアイルが否定した。
「単に速すぎるんだよ。残像を作り出すほどにね」
「なっ!?分身に見えるあれが残像……!?」
つまり、ジョゼが攻撃してすり抜けている現象はジンの身体を写した残像によるものだった。
やっていることは高速で同じ場所を行き来しているだけ。それにより、同じ場所に居続ける錯覚を起こす残像が出来上がったというわけだ。
正直、ジョゼはマカロフ以外相手にここまで苦戦するとは夢にも思ってなかった。この速さに対してどう対抗すればいいのかを必死に考える。
「目で追えない、捕まられない……そうか!分かったぞ……貴様の攻略法をな!」
ジョゼは動き回るジンに対して、今度は動かなかった。
だからどうしたとジンは構わず剣を構えて真正面からジョゼに突進する。
「かかったな!」
「ッ!?」
ジョゼの目の前に魔力で形成された槍が突如顕現する。それは急に止まらなかったジンの左肩を突き刺し、貫通してしまっていた。
「ク、クククッ……バカめ……その速さが仇となったな!!」
そう、ジョゼの狙いはカウンターだった。真正面から攻撃を喰らうことを予見し、魔力で形成された槍を突如出現させることで突っ込んでくるジンを自滅させようという魂胆。ジンはその策に見事にハマったというわけだ。
「ジン!!」
エルザが不安と心配が混ざった大きい声を上げる。
「……」
が、ジンは痛みに苦しむどころか、その槍を右手でガッチリ掴んで離さなかった。彼の目は先ほどと同じく死んでおらず、真っ直ぐジョゼを見据えており、妖しい笑みを浮かべていた。
「なっ!?何故、倒れない……!?」
「お前に教えてやろう。俺に傷をつけようが風穴を開けようが、それは俺自身の止まる要素とならん。天彗龍は止まることを許さない……故に彗星の如く突き進む。このようにな」
ジンは左肩を槍で貫かれながらも、引いて抜こうとせず更に進み、より深く槍を貫通させる。痛々しい光景だが、それでも彼は倒れることなく、ジョゼの目の前までやってきた。
「何をしているキサマ!?イカれているのか!?」
この男に対して一刻も早く離れないといけないと自身に警告を鳴らして引き下がろうとするが、時既に遅し。ジンは近づく際に龍属性エネルギーを口内に蓄積させ、今まさにそれを発射しようとしている。
「天彗龍の……咆哮ッ!」
「グァァァァァァッ!!?」
口から放たれたエネルギーの奔流に飲まれるジョゼ。それだけでは終わらず、ふっ飛ばされた先でジンが先回りをし続け、その度にジョゼを殴り飛ばし続ける。
「ガッ……!?は、速すぎるぅ……」
殴られすぎて意識が朦朧としてきたジョゼ。ジンはパワーだけでなく、速さも上がっており、先程の左肩の傷による強化でもはやジョゼでは反応できないほどに素早くなっていた。
変わらず自分を見るその視線はウサギを狩る狼のように鋭い。その目に睨まれ続け、ジョゼは次第に恐怖を抱くようになる。
(コ、コイツ……槍で肩を貫通され、傷だらけなのになぜこんなに速く動ける!?不死身なのか……バ、バケモノめ……!!)
「ヌァァァッ!!シネェェェェェッ!!」
ジョゼはここ1番の魔力を込め、球体としてジンに向けて放った。彼の渾身の一撃だろう。
だが、ジンは狼狽えず再び剣にオーラを纏わせる。バチバチと迸る赤黒いエネルギーを込め、逆手に持った剣を下から振り上げた。
「天彗龍の……
その一閃は、一筋の黒く輝く光となり、ジョゼの放った巨大な魔力弾を一刀両断した。
「どうした。それでも聖十大魔導士か?」
「ヒッ!?や、やめてくれ!!わ、わかった!もうお前達には手を出さない!だから命だけは……!!」
「戦意を喪失したか。……終わりだ」
ジンは踏み込むと同時にフルスピードでジョゼに接近。すれ違いざまに斬りつけ、通り過ぎた後に再び方向をジョゼに向き直し、突進。またすれ違いざまに斬撃を喰らわせる。何度も、何度も辻斬りのようにジョゼに接近しては斬るの繰り返しをし、何十もの斬撃を浴びせた。
「天彗龍の……
最後に高く飛び上がり、そのまま降下して剣を振り下ろす。すると彼の龍属性オーラが剣の振り下ろしに合わせて上から柱の形でジョゼの元に降り注ぎ、大爆発を起こす。
「ガッ…ハッ……ば、ばかな……私が……こんな…ガ……キ…に……」
プスプスと焼け焦げた音と共に、ついに力尽きたジョゼは白目を剥きながらうつ伏せになって倒れ込む。戦闘が終わったことでアイルは1番にバンザイをして喜んだ。
「やったぁ!さっすがジン!」
「こ、ここまで強かったのか……ジンは」
エルザは一度手合わせ程度にジンと戦ったことはある。しかし、その時はお互い手加減をしていたとはいえ、ここまでの実力があるとは思わなかったので驚いていた。
戦闘は終わった。だが、ジンの様子が少し変だ。彼は怪我による痛みで苦しんでいるというよりも、メラメラと燃え上がるように滾っている龍属性のオーラを引っ込めずに息を荒くしている。それに気づいたアイルは急いでジンの元へ駆け寄る。
「ジン!もう終わったよ!息を整えて!」
「ぐっ……アイル……。スゥ……ハァ……あぁ、もういい。心配かけたな」
「ふぅ……よかったぁ……」
気持ちが落ち着いてきたのか、紅いオーラは萎んでいくように消え、ジンもまた苦しみから解放されたかのような脱力感に浸る。
その後、倒れていたグレイとエルフマンが起き上がってきた。
「ぐっ!クソ……気絶してたのか……って、ジン!?来てくれたのか!!てか、ジョゼの奴倒れてるじゃねぇか!」
「うおおっ!?まさか、ジンが倒したのか!?流石は漢の中の漢だ!!」
いつのまにか戦いが終わっていたことに驚き、2人はフラフラになりながらも立ち上がる。
「あぁ、エルフマンの言う通りだ。本当に助かった。ありがとうジン……ジン?おい!しっかりしろジン!」
「……」
エルザは目を閉じ、立ったまま動かないジンを見て声を荒げる。それを見てグレイとエルフマンも駆け寄った。
「おい!どうしちまったんだ!?ジョゼに何かされちまったってのか!?それとも傷のせいか!?」
「ハッ!こ、これは!!」
「アイル!ジンに何か異常が!?」
グレイはハッとなったアイルに問いかけた。相棒であるアイルは神妙な顔つきで黙ったままジンを見る。そして
「寝てるだけだね」
「「「ズコーーッ!!」」」
エルザ達3人は勢いよくずっこけた。ただの疲労により訪れた眠りというだけだった。
「紛らわしいわッ!!」
「俺たちの心配を返せ!」
実はわかっていたのに意味深な感じの雰囲気にしたアイルをグレイとエルフマン叱るが、アイルはテヘッと舌を出して誤魔化す。
「……終わったようじゃな」
するとそこに、魔力を枯渇されて瀕死の状態に追い込まれていたマカロフが現れた。
「マスター!?ど、どうして!?」
「ある者のお陰でな。本当はワシが奥義で終わらせようと思っていた。じゃが、ナツがガジルを倒し、そしてジンがジョゼを倒してくれたおかげでギルドの方を襲っていた霊兵達は消えた。……ガキども、よくやってくれた。そして……感謝する」
労いの言葉と感謝の言葉を述べた。それを聞いて、エルザは大いに喜んだ。
「それでは……!!」
「うむ。此度の戦争は……妖精の尻尾の勝利じゃ!」
その声はギルドで戦っていた者たちにも聞こえた。勝利の勝ち鬨を上げるマカロフに続くように皆も喜びの咆哮を上げるのであった。
技紹介
天彗龍の咆哮
・原作通りのブレス。龍属性のオーラを口から放つ技。これのイメージはイビルジョーのブレス技に近いかもしれません。
天彗龍の黒閃
・龍属性のエネルギーを斬撃性に特化させた技。一点集中により当たればどの技よりも威力が高い。
天彗龍の紅雷
・龍属性のエネルギーを爆破に特化させた技。剣に纏うエネルギーを巨大化させて上から降り注がせ、爆破を起こす。