紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

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長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。仕事の後に趣味で書いているもので中々モチベの維持が難しいです。
モンハンとフェアリーテイルの設定も完璧に覚えているわけでないので間違ってる部分もあったり、独自解釈で変になってると思う箇所もあるかもしれませんが、ご了承ください。


ジンvsナツ

マスタージョゼ率いる幽鬼の支配者との抗争が終わり、壊されたギルドの復旧作業が進められる。

 

そんな中、ナツは同じ滅竜魔導士ジンに勝負を挑む。

 

「こういう戦いってかなり貴重だと思うけど、私達だけ見ていいのかな?」

 

「あまり大勢来ると奴らも気が散るからな。だからこそ、私達だけでいいんだ」

 

ナツがジンに戦いを挑み、その行く末を見届けるまでにグレイ、ルーシィ、エルザ、ハッピー、ミラジェーン、そしてジンの相棒のアイルが離れたところで観戦している。

 

ジンとナツは距離を取り、互いを見つめる。喧嘩の直前のようなピリピリとした雰囲気が二人の周りに漂っていた。

 

「……」

 

(……いつ見てもすげぇ迫力だ)

 

神経を尖らせ、自身を獲物と捕捉して見てくる鋭い眼差しのジンに対してナツはそう心の中で呟く。子供の頃から同じ滅竜魔導士として、ジンをライバル視していたナツは手合わせが叶ったことで、若干の緊張もあったが喜びの方が大きかった。

 

「待ってたぞジン……お前と戦える日をよ!」

 

「フン……来いッ」

 

ナツは拳を、ジンは剣を構えて戦闘態勢に入る。

 

「いくぞォォォッ!!」

 

最初に飛び出したのはナツ。速攻でジンに近づくと握った拳を広げ、炎を纏わせながら地面を抉るように掬い上げる。

 

「火竜の砕牙!」

 

しかし、それを躱される。ジンは瞬間移動したかのように一瞬でナツの背後に回り込む。

 

「くっ!相変わらず速え!」

 

ジンは踏み込むと同時に剣を振り下ろすが、ナツは己の反応速度を頼りに何とか後ろを振り向く。その際に炎を纏った腕で剣撃を受け止めた。

 

「やるな……」

 

ジンは前進しながら、力を込めて連続で剣を振るう。薙ぎ払い、振り下ろし、斬りあげる。それら全てをナツは後退しながら受け止めていく。

 

(ガードするのに精一杯だ……まずはあのスピードに慣れねぇと!)

 

「やはり頑丈だな」

 

いくら連続で斬ろうとしても、ガードに徹するナツの身体を斬ることは出来なかった。

 

戦う前にジンが先程言ったように、竜の鱗は簡単には砕けない。滅竜魔導士故の特殊な魔導士だからこそ、素手でも鉄のような頑丈さを持つのだ。

 

「ハッ、お互い様にな!火竜の……鉄拳!!」

 

隙を見てナツは全力の炎を纏わせた拳を放つ。ジンはそれを剣を盾にしてガードするが、衝撃を殺せず後退した。

 

「火竜の……!」

 

「天彗龍の……!」

 

「「咆哮ッ!」」

 

今度は口に溜めた互いの属性のブレスを放つ。激しく力がぶつかり合う中、最初は拮抗しているかのように見えた。

 

「互角?……いや、違う!ナツが押されているぞ!」

 

「龍属性は、あらゆる属性を遮断する力を持ってるんだ。たとえ力自体が互角でも、ナツの炎属性じゃ相性悪くて打ち破れないよ」

 

アイルは自分が褒められているかの如く、フフンと鼻を鳴らして解説する。

 

「くっ!?」

 

やがてナツの炎は押し切られ、龍属性の力が宿ったブレスを喰らうかと思われたが、ナツは寸前でそれを避ける。

 

龍属性の攻撃を受けると、暫く属性を持った攻撃が使用出来なくなる。炎を簡単に打ち破られたことから、ナツは本能的にそれを感じ取って避けたのだ。

 

「ハッ!?いねぇ!どこ行きやがった!?」

 

「ナツーーッ!!上ーーッ!!」

 

ハッピーの叫びに上空に目を向けるナツ。視界からいなくなったジンの代わりに、空では赤黒い物体が何やら飛んでいるのが見えた。遠近法により太陽と同じくらいの大きさに見える光る物体がナツを警戒させる。

 

「まさか……」

 

その赤い物体が物凄い速さで近づいてきたと同時に、キィィン!と甲高い音も共に聴こえてきた。

 

その瞬間、嫌な予感がしたナツは後ろに下がり、元いた場所に赤い物体が落下してきた。

 

「どわはぁぁぁぁっ!?」

 

壮大な爆発音と共に爆風が巻き起こり、ナツはふっ飛ばされる。空から落ちてきたのは滅竜魔法をオーラとして纏っていたジンだった。

 

あれほどの高さと速度で落下してきたジンには傷一つ存在せず、着地の後にゆっくりと立ち上がる。

 

「ジンの奴、あんな高さから落下してきて無傷なのかよ!」

 

「あの速度はもはや彗星だ。たしか、街でよく呼ばれる名は銀翼の凶星……か。よく言ったものだ。あの速度で奇襲でもされたらたまったものではないな」

 

「あれね。結構危険な速度だから、『飛ぶ時は何かにぶつかると危ないから、ちゃんと方向確認はするのよ』って言ってあるの!」

 

「ミラさんはジンのお母さんなの!?」

 

えへっと笑って解説するミラに対して、躾する親か!といった感じでツッコミを入れるルーシィ。だが、その教えに快く聞き入れてくれるジンの姿は容易に想像できた。

 

「今の所、ナツとジンの実力に大差はないと見える。だが、ジンはまだ火傷があるだけで血を流していない。しかも血による強化をしないであのスピードだ。今となっては、多くのギルドの中でも随一の速さだろうな」

 

「これより更に上があるって恐ろしいな……」

 

「しかも、奴はスピードがあるだけじゃない。見ろ」

 

エルザの言葉の後に視線を戦闘するナツ達に向き直す。

 

距離を取り、ナツに向けて直線で走り迫るジンはナツの目前で視界から消える。

 

「ッ!?」

 

ナツは目の前で消えたジンの残影を目で追い、左から来るジンが横払った剣をしゃがんで躱す。

 

(目の前で急に止まって方向転換しやがった!?なんつーキレだ!)

 

「フッ!」

 

「ぐぁっ!?」

 

考える暇さえず、ジンは剣を振るっていないもう片方の拳を放ち、しゃがんだナツの顎にアッパーカットを喰らわせる。

 

そして、若干身体が浮いたナツに剣の柄の先端を正面から叩き込む。

 

動きの一つ一つに無駄がなく、相手を翻弄するジンは、ノックバックされたナツ目掛けて、滅竜魔法を纏わせた腕を薙ぎ払うよう攻撃する。

 

「天彗龍の翼撃ッ!」

 

「くっ!火竜の咆哮ォォッ!!」

 

それに対抗してナツは体勢を崩しながらもジン目掛けてブレスを放つ。その勢いをジェット噴射のように利用して後退し、さらに距離を取る為に、足から炎を噴射させて空高くへと退く。

 

「炎による推進力で躱すか。だが、それはお前の専売特許じゃないぞ」

 

今度はジンが脚に魔力を溜めると、足元から軋むような風の音が聴こえてきた。すると、足から龍属性の滅竜魔法が噴射して一気に空へと急上昇する。

 

直前のナツが飛翔する速度とは比較にならない程の圧倒的なスピードを持ってナツへと追いつき、そのまま……

 

「フッ!」

 

「ガッ!?」

 

背後へと回り込んだ際に裏拳を叩き込み、ナツを地面へと墜落させる。

 

「速さとは、ただ最高速だけじゃない。0からMAXへの加速力、MAXから0への減速力。すなわち、敏捷性。ジンはそれが妖精の尻尾の中でもずば抜けている」

 

「でも、ナツだって戦いの中で強くなってきたんだ!頑張れナツーッ!!」

 

エルザはジンの魔法の詳細は知らなかったが、戦い方や持ち味のスピードのことは熟知している。故にそれを活かした怒涛の攻撃には舌を巻いていた。

 

(……確かに、ナツは戦いの中で強くなっていく。早めに決着をつけるか)

 

地面に降り立ったハッピーの応援を聞き、ジンはナツの成長速度に警戒する。重い一撃を叩き込む為、自傷して魔力増強を図ろうとするジンは刃を自身に向ける。

 

『自分の身体も大切にして』

 

「ッ…」

 

しかし、先程言われたミラジェーンの言葉が脳裏に焼き付くように離れず、寸前でその手を止めてしまう。

 

「ボーッとしてんじゃねぇジン!」

 

「ッグッ!?」

 

ジンがナツに視線を向き直した時には、既に頰を殴られ、怯んだところにナツに腕をガッチリ掴まれていた。

 

「へへっ……どうだ。こうすりゃ避けられねぇだろ」

 

「くっ……」

 

「紅蓮火竜拳!!」

 

掴むことでスピードを封じたナツは炎を纏わせた連続の拳を放ち、ジンを追い詰めていく。

 

「ぐおぉっ!?」

 

「ウオオオオォォッ!!」

 

ガジルを倒したナツの攻撃は確かにクリーンヒットで叩き込まれている。ダメージは免れないはず。

 

しかし、殴っていくたびに、その拳がジンの片方の手で少しずつ受け止められるか受け流されていくのが分かる。

 

「ナツの拳が完全に見切られたッ!?」

 

ジンは地獄変を発動していた。ダメージを受け、血を流すことで力に変換する魔法により、ナツの拳を滅竜魔法を纏った手で完全に受け止めた。

 

「かっ……クハハッ……いい、いいぞナツ……こうでなくては……!」

 

(ッ!?炎が出せなくなってやがる!!これがジンの滅竜魔法の力か!?)

 

ナツは力が出せずに焦ってどうにか振り解こうとしようとするが、その時既にジンは掴まれていた腕の方を解き、その拳を振りかぶってナツに狙いを定めていた。

 

「終わりだ」

 

「なっ……」

 

ナツは気がつけば、宙に浮いていた。ジンの拳の動きが全く捉えられず、頬に鋭い痛みを味わいながら、ふっとばされた遠くにある岩盤に叩きつけられた。

 

「すげぇな……アレ死んでんじゃねぇの?」

 

「まぁナツのことだ。どうせ生きてる」

 

「確かにな」

 

「グレイとエルザはあんまり心配してないのね……」

 

ルーシィは2人のアッサリ感に苦笑い。戦いが終わったのでジンの元に行く。

 

が、勝利したジンは頭を抱えて苦しみ始める。

 

「ぐっ……!!」

 

「ジン!大丈夫!?ほら、ポーリェシカさんから定期的に貰っている鎮静剤と魔力抑制の薬だよ」

 

アイルは自身が携帯しているポーチから薬と水を取り出すとそれをジンに飲ませる。すると次第に彼の様子は落ち着きを取り戻していった。

 

苦しむジンの光景をグレイとルーシィとハッピーは驚き、心配そうに見ていた。ただ、エルザはその光景を一度見ているので心配はしているが、驚きはしていない。

 

(まただ……ジョゼとの戦い同様、ジンは魔法を使った後、こうして苦しみ始める)

 

「ジン、勝ったのに何で苦しんでんだ?どこか具合が悪いのか?」

 

「これは主に地獄変の影響なんだよ」

 

「地獄変の?魔法が自身を苦しめる原因とは、一体どういうことだ?」

 

「ジンの地獄変(ヘル・フォース)は血を引き換えに絶大な強化を得られるんだけど、デメリットも大きいんだ。血の消費が多すぎたり、滅龍魔法の力を上げ過ぎると精神のバランスが崩れて制御が効かなくなる。ブレーキが壊れるって言った方が分かりやすいかな」

 

「なんだそりゃ。なんで力上がんのに、そこから精神に影響するんだよ」

 

「……地獄変を簡単に説明は難しいけど……そうだなぁ……じゃあ、カナがよく飲む酒で例えてみようかな。彼女はよく樽で酒を飲むよね。その樽がジンの身体だとして、中に入っている酒が血だとする。そして用意するのはその酒が半分くらい入りそうな器。その器がジンの精神。器の中に入った分の酒が地獄変による力の上昇って考えて。

 

地獄変を使う時は、この樽の中の酒を抜いて器へと入れていく。器に入った酒はどんどん溜まっていき、力を増す。

 

でも、器は無限じゃない。限界量がちゃんとあり、その量を超えるほどの酒を投入されると溢れてしまう。つまり、溢れる力を留めることが出来ないから、ジンの精神は力に溺れて抑えきれなくなる……ってわけ」

 

「なるほどな……ってか、それ結構危険な魔法じゃねぇか!?敵と戦う時はいつもああなるのか!?」

 

「普段だったらもっと長く持つと僕も思ってたんだ。でも思い返してみたら、今回までかなりの仕事続きで更にジョゼとも戦ったのに、まだ回復し切ってなかったから、思ったより早い段階で精神が強化に耐えきれなかったんだ」

 

「はぁ……となると、やはりジンには暫くの休息が必要だな。ミラ、ちょうど良い機会だからジンの家にお邪魔して世話してやったらどうだ?」

 

「ふぇぇっ!?わ、私が!?」

 

「アイルとミラの2人で見張っていれば、ジンも勝手はできない。観念して大人しくなるだろう?」

 

いきなりの展開に戸惑うミラ。これはまたとないチャンスだと考えるが、それとは別にジンと一緒にいられて常に冷静でいられるかと問われれば無理だとも思っているので、感情の板挟みから悩み続けてその場で頭を抱える。

 

その時、アイルの身体に電流が走った。

 

「わ、わぁ〜……僕、家の中にお友達来てくれるの楽しみ〜。ジンのお世話してくれるの助かる〜」

 

「アイル……あなた楽しんでるでしょ?」

 

面白いものが見られそうだと内心ワクワクがいっぱいのアイル。

 

「ち、ちくしょうっ!!次は負けねぇからなァァァッ!!」

 

一方、飛ばされた先の岩に身体が減り込んでいたナツの声は誰にも届かなかった。




次回から、少し過去話を。楽園編は殆ど関わりがない予定なので、そこをスキップしてバトル・オブ・フェアリーテイル編になります。
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