紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

8 / 17
バトル・オブ・フェアリーテイル編
銀翼、出逢う


ジンはアイルと共に休暇から戻り、ギルドへと向かっていく。ギルドも建て直したと聞いて若干楽しみにしていた二人は驚くべき光景を目にする。

 

「ギルドが直ったぁ!でも変わってる〜!」

 

アイルは翼で飛びながら目をキラキラと輝かせている。明らかに以前のギルドとは変わっていたからだ。

 

外ではギルドメンバーが何やらグッズ販売をしており、建物は一段と高く、綺麗になった。

 

妖精の尻尾は内装は古い酒場のようなイメージがあるものだったが、中へ入るとプールがあったりカフェがあったりと娯楽の場所が増えていた。

 

「何だあのウェイトレスの服装は。マスターの意向か?」

 

食事を運ぶウェイトレスの服装がメイド服のようなものへと変わっていってるのをジンが発見する。本当に色々と変わったようだ。

 

次に2階。元々ギルドには2階があるのだが、そこは以前S級魔導士のみ入れる仕様となっていた。改装に伴いルールが変わったようで今は誰でも2階に行けるらしい。

 

そして、S級クエストは「S級魔導士が同伴すれば受注可能」になり、ルール的にはS級魔導士とチームを組めば誰でも受けられることとなった。

 

「ジン、久しぶりの仕事だけどどう?行ける?」

 

「あぁ……すこぶる調子が良い。これであと半年程は休めずに仕事が出来そうだ」

 

「お願いだからもっと小まめな頻度で定期的に休んで……」

 

「わ……分かった…」

 

ついいつもの癖が出てしまってアイルが涙目になってしまう。流石のジンも言うことを聞き、これからは体調管理に気をつけて過ごすと決めた。

 

中に入り、顔馴染みの者と再会。辺りを見回すといつも騒がしいナツ達がいなかったので、ちょうど近くにいたカナに話しかけた。

 

「カナ。ナツ達は仕事か?」

 

「ん?おっ!ジンじゃない!やっと復帰したのね。で、ミラとはどうだったの?一緒に寝泊まりもしたの?ねぇ?」

 

「いや、泊まりはせずに飯を作ってくれた。掃除もしてくれたから、お陰で色々と助かった」

 

「まぁそうよね。はぁ、つまんな」

 

「……?」

 

ケッ、とつまらなそうな顔をするカナ。なんのことだとジンは首を傾げた。

 

「あっ、そうそうナツ達ね。いつもの最強メンバーでバカンスに行ってるよ。でも、もうすぐ帰ってくるはず」

 

「そうか。……ん?」

 

よく見ると見慣れない者が1人いた。青い髪をした女性。年は自分とそう変わらなかった。

 

「カナ……アイツは?新しくギルドに入った者か?」

 

「あぁ、そうなんだよ。実はちょっと複雑でね……」

 

見ていたのに気づいたのか、その人物はマスターマカロフと共にジンの元へ歩いて近づいてきた。

 

「おおジン!よく休めたようじゃな!ほれ、新しく入ったジュビアじゃ!可愛いじゃろ〜?」

 

「初めまして!ジュビアです!」

 

ジュビア。彼女は元幽鬼の支配者のメンバーで、その時はグレイと戦っていたようだ。居場所がなかったところ、縁があって妖精の尻尾へ加入することになったらしい。

 

「ジンだ。よろしく頼む」

 

「はい!よろしくお願いします!ジンさん……貴方がナツさんやガジル君と同じ滅竜魔導士ですね!凄くお強いって聞いています!」

 

「ナツを知っているのか?」

 

「えぇ……先日、とある出来事で…ぐ、偶然出会いまして……はは」

 

偶然と言うが歯切れの悪い感じを出すジュビア。彼女は抗争の時、グレイに惚れてしまったらしい。まさか、グレイをストーカーしてたら偶々とある事件に巻き込まれてしまったなどと本人の口から言えるわけもなかった。

 

「ジン、実はもう1人いるのよ」

 

カナの指差す方向には、1人ポツンと座っている者がいた。黒い髪に目つきの悪い人物。ジンは匂いと見た目、そして本能でその人物が自分と同じ滅竜魔導士だとすぐに分かった。

 

「黒鉄のガジル……か。しかし、何故?奴はギルドを壊した張本人だ」

 

ジンにとって、ガジルはギルドを壊した張本人で、最も仲間を傷つけた人物として聞いており、大層な極悪人と思っていた。敵だったギルドに入るなど微塵も思ってなかったので疑問に感じる。

 

「さぁ?でも、マスターがアイツを誘ったって聞いたから、なんか考えがあるとは思うんだけどね。アイツから何か仕掛けてくることはないんだけど、相手はギルドを壊した張本人だからさ、当然みんなの反応は良くないわけ。警戒心剥き出しよ」

 

「すみません……ガジルくんは私がマスターに紹介したんです。彼、本当は極悪人じゃないって知って欲しくて……」

 

「ふむ……なんにせよ、マスターが受け入れたのであれば、それでいいだろう。そうだろう?マスター」

 

「うむ。ガジルだって、ジョゼに命令して仕方なくやったんじゃ。じゃが、無理に許せとは言わん。皆思うことはあるのも分かっておる。それでも、なんとか仲良くやってほしい」

 

ジンはこれ以上、追及することはなく、とりあえず受け入れることにした。

 

(アイツがガジル……か)

 

自分のイメージとは随分と違うと改めて確認する。そして、ガジルが独り寂しそうに座って暗い表情をしている。ジンは暫くその様子を見ていたのであった

 

「相変わらず竜の目撃情報はないね」

 

「そうだな。……とりあえず、安くても良い。討伐系の仕事にでも行こう。リハビリには丁度いい」

 

アイルと共にジンが仕事を選ぼうとクエストボードを見ている。しかし、竜の目撃情報がないので少し残念がっているようだ。

 

「よう、ジンじゃねぇか。久しぶりだな」

 

ジンの後ろから誰かが話しかけてきた。その声の正体をジンは知っている。話しかけるのも少し嫌だったのかため息を吐いた。

 

「……ラクサスか。何の用だ」

 

ラクサス。エルザやミラジェーンと同じくS級魔導士の一人。ヘッドホンを着け、大きなコートを羽織っているその大柄な男に対して、ジンは素っ気なく対応する。

 

「おいおい、随分とつれねぇじゃねぇか。俺達は仲間だろ?なぁ」

 

「幽鬼の支配者との抗争に手を貸さずに見捨てたやつの言うセリフではないな」

 

「あんな雑魚どもを俺抜きで倒せねぇようじゃ、妖精の尻尾は終わりだろ。他の奴はともかく、俺はテメェを高く評価してんだぜ?なにせ、エルザやミストガン以外の連中の中じゃ、1番俺たちに実力が近いだろうからな。まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。それよりもテメェ…未だにS級試験を受ける気がないらしいな」

 

「だったらどうした」

 

「……はっ、いつまで死んだ奴のこと引きずってんだ。女々しい奴め」

 

「ちょっとラクサス!!あなたいい加減に……」

 

二人のやり取りを見ていたミラが我慢ならなかったのか、ラクサスに詰め寄ろうとするが、ジンは何もするなと言わんばかりに腕をミラの前に伸ばして制止させた。

 

「ジン……」

 

「……何とでも言え。その通りだからな」

 

「チッ、相変わらず張り合いのねぇやつだ。テメェにはS級になる度胸も力もねぇってのが今はっきり分かったぜ。精々、よえーやつ同士で傷の舐め合いでも頑張るんだな。はっはっはっ!!」

 

ラクサスは見下し、高笑いしながらその場を去る。

 

「ラクサス……!あの人ったら……!!」

 

「気にするなミラ。ラクサスの言うことを一々気にしていたらキリがない。だが……一つだけ言い返しても良かったことがある」

 

「えっ?」

 

「ミラ……俺は次にマスターからS級昇格試験の話を持ち出されたら、それを受けようと思ってる」

 

「ほ、本当!?」

 

「あぁ。それでも、俺の中で未だに迷いがあるのは変わっていない。俺がS級魔導士になってもいいのかどうか。その答えは受けることで何か分かるかもしれない。止まっていては何も変わらないんだ。それに、リサーナが背中を押してくれている気がするんだ」

 

夢の中に出てくるリサーナではなく、自分が共に歩んできたリサーナを信じる。ジンは少しずつ未来に向けて進んでいくことを決めたのだ。

 

「俺にとってのS級魔導士とは、俺自身が過去と迷いを乗り越えた先にあるものだ」

 

「ジン……私も一緒に乗り越えるわ。今でも天から見守ってくれるリサーナに誇れるように……頑張りましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ナツ達はアカネビーチというところから帰ってきた。ジンが戻ってきた時と同じように、マスターがジュビアとガジルを紹介する。ジュビアが入ることは知っていたようで、本当に加入したことを喜んでいた。

 

しかし、ガジルとなるとやはり警戒してしまうようで、マスターやジュビアの説得で何とか受け入れることにした。

 

「なんだかジンに会うのも久しぶりだよなぁ。お前、身体はもういいのかよ?」

 

「あぁ。ミラとアイルのお陰でな。身体が軽くなったように感じる」

 

「確かに、前に会った時より健康的に見えるかも!」

 

グレイに続き、ルーシィに身体をまじまじと見られながらそう評価される。

 

「ナツ、お前達はまた壮絶な戦いをしてきたと見える。また見ないうちに強くなったんじゃないのか?」

 

「おうよ!今ならお前に勝てるかもしれないぜ」

 

「フン。勝負はまた今度だ。俺も本調子じゃないからな」

 

血気盛んなナツを見て、いつも通りなことに安心した。ジンは次にチラッとエルザの方を見る。

 

(エルザは随分と包帯を巻いているな。それに……どこか重荷が取れたような和らげな表情……大体いつも気が張っているエルザが妙に満足げにして肩の力を抜いたこの感じ……色々とあったのだな)

 

その時の話を聞きたい気持ちはあったが、本人が話したくないこともあるかもしれないと可能性を考え、他の者に聞いてみようと思いとどまる。

 

「にしても何だかなー……別にここまで変える必要ねーのに。前の方が好きだった」

 

「ナツはどうやらお気に召さなかったようだな」

 

ナツは前のギルドの方が居心地が良かったのか、新しいギルドをまだ受け入れるのに抵抗があるようだった。

 

「ジンはどうなんだよ」

 

「俺は別に何もない。俺は見た目よりも、このギルドの雰囲気が好きだからな」

 

「へー。まっ、それは俺も好きだけどな」

 

今日はナツ達とジンが帰ってきたと同時にギルドの復興祝いということで、みんなで盛り上がって一部の者がステージに上がって催しを披露した。

 

ミラの音楽。ガジルの下手なギターと歌があったりなど。ガジルもギルドに馴染もうと必死なのが伝わった。

 

「いってぇ!物投げたの誰だァッ!!?」

 

「誰だ足踏んだ奴!!」

 

些細なことで観客席にいるナツ達が喧嘩した。前のギルドでも散々見た光景だ。

 

「……相変わらず元気だな、みんなは」

 

ギルドは相変わらず騒がしい。だが、これが妖精の尻尾なのだ。変わらない姿にジンは安心しながら静かにご飯を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「こんなところに呼び出して何の用だ?」

 

ガジルは目の前の男2人にそう言う。誰もいない広場に呼び出されたガジルを睨む2人の男、ジェットとドロイ。その後ろでは小柄な女の子、レビィが心配そうに見ている。

 

この3人は『チーム・シャドウギア』というチーム名で普段は共に行動しており、幽鬼の支配者との抗争前、ガジルによって大木に磔にされ、抗争の火種として利用された。

 

「ギヒッ、器のちいせぇ奴らどもだ」

 

「んだと!?」

 

ジェットとドロイはその時の恨みを忘れていない。ギルド内で最もガジルを警戒してる二人だろう。

 

「や、やめようよジェット!ドロイ!私はもう……あの時のこと、何とも思ってないから……」

 

何とも思ってないと言うレビィだが、それは嘘である。確かに恨みを晴らそうという気はないが、あの時受けた傷は深い。何とも思わないわけはなかった。

 

ただ。これ以上憎んでも仕方ないと思って触れないようにしていた。だが、ジェットとドロイはそれでは気が済まない。

 

「これは俺たちにとってのけじめだ!」

 

「いくぜ!」

 

二人は魔法を駆使し、ガジルに攻撃を仕掛ける。

 

「ぐっ!?」

 

植物を操るドロイが先に仕掛け、速さがウリのジェットが蹴りでガジルを追い込む。ガジルは二人の打撃攻撃を受け続け、ふっ飛ばされて倒れてじう。

 

「おい、どういうつもりだ?」

 

ガジルは二人の攻撃を全く避けず、直撃を許す。身体を鉄のように硬くすればダメージすら受けないはず。だというのに、それをしなかった。

 

それどころか、それに対して全く反撃をしてこない。その様子にジェットとドロイは怪訝な顔をしたのだ。

 

「何だ?こんなところで弱い者いじめか?」

 

するとそこに、また一人の男が現れた。

 

「ラ、ラクサス!」

 

ギルド内でも傍若無人として恐れられているラクサス。S級魔導士の一人が現れ、ジェットとドロイも一歩下がって黙ってしまった。

 

ラクサスは膝をついているガジルを見下しながら睨みつけた。

 

「コイツが俺のギルドに上等かましてくれたガキか。またジジイが他の奴らにナメられないように加えたってか。……ふざけてんじゃねぇ!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

怒りの怒号を上げ、ラクサスは雷魔法をガジルにぶつける。あまりの威力にガジルは痺れながら悲鳴を上げ、痛みにもがき苦しむ。

 

「ギルドが壊された後、街の奴らは妖精の尻尾は弱いだの終わりだのほざいてやがった。テメェがかましてくれたおかげでなァッ!死んで詫びやがれ!!」

 

「ぐぅぅぉぉっ!?」

 

ラクサスは蹴りと殴りだけでなく、雷の魔法を何発もガジルに浴びせる。だが、ガジルは何の抵抗もせず、ただその攻撃を受け続けた。

 

「いくらラクサスが強いからって、こうも一方的かよ……!?」

 

ガジルはナツと同じ滅竜魔導士で、幽鬼の支配者ではS級魔導士の立ち位置だった。そんなガジルが本気で戦えばこんな一方的にはならないはずだと思っていた。

 

「ま、まさかガジルの奴……わざと無抵抗で……!?」

 

「私達の仲間って認めてもらう為に……?」

 

ジェットとドロイの攻撃に対しても反撃をしなかったガジル。そんな彼には贖罪の意志があったのだと察する。

 

しかし、ラクサスにはそんなことは関係ない。トドメを刺そうと拳に雷を纏わせてそれを振り下ろそうとするが……

 

「やめろラクサス」

 

「ッ!?」

 

それをいつの間にか現れたジンに拳を掴まれて止められた。どうやら偶々近くで騒ぎがあったのを見て駆けつけたようだ。止めたジンに対してラクサスはギロリと睨む。

 

「ジン……!?何の真似だ」

 

「コイツのやったことは確かにギルドにも、メンバーにも傷を負わせた。だが、無抵抗の者をここまで痛めつけることはないだろう」

 

「テメェごときが俺に説教か?」

 

「どう受け取るかはどうでもいい。しかし、お前も堕ちたものだなラクサス」

 

「何ッ……!?」

 

「毎回、自分より力の弱い奴にしかデカい態度を取れない。ファントムとの戦いに参加もせず、傍観を決め込んだ奴が本来口を出す権利もない上、帰ってきてみればギルドを我が物と扱い、他者を制裁する。実に滑稽だ。お前のくだらんプライドと自尊心を振りかざして他の者に迷惑をかけるな」

 

「テメェ……!!黙って聞いてれば好き勝手言うじゃねぇか……腰抜けの分際でよォ……!!」

 

「いいのか?周りが見てるぞ」

 

「ッ!?」

 

掴みかかるラクサスだが、騒ぎが気になって駆けつけてきた街の住人たちがラクサス達を怖がりながら見ていた。

 

「俺に手を出しても構わないが……その際、妖精の尻尾の悪い噂はまた広まるだろうな。『妖精の尻尾は無抵抗の人に手を上げる悪魔のようなギルド』……とかな」

 

「テメェ……!!」

 

ラクサスは嵌められたと心の中で憤慨する。ジンが珍しく口数が多くペラペラと話していたのは、こうして街の住人達を少しでも多くこの場に引きつけるためであった。

 

「いつも『俺の妖精の尻尾』とほざいてるお前からしたら、これ以上周りの評価を下げられたら困るだろう?まぁ、結局気にしてるのはお前だけだがな」

 

「……チッ、命拾いしたな。覚えておけよジン。いつか俺に対して生意気な態度をとったことを後悔させてやる」

 

「好きにしろ」

 

さっさと行けと言わんばかりに受け流し、ラクサスから視線を外してガジルの方へ歩み寄って肩を支えて立ち上がらせた。

 

「テメェは……銀翼の凶星……?なんで助けた……?」

 

「放っておけなかった。それだけだ」

 

だが、ガジルは支えてくれるジンを力なく突き放すと、ヨロヨロになりながらも去っていく。

 

「待ってくれガジル!」

 

その時、去ろうとするガジルにジェットが呼び止めた。

 

「その……悪かった。やりすぎたと思ってる。もう、あのことはいいからよ」

 

同じくドロイも謝罪する。ガジルの意志が伝わったのだろう。その謝罪に対し、ガジルは特に答えることもなく、どこか哀しみや寂しさを感じる表情で去っていった。

 

「ガジル……」

 

レビィはそんなガジルを見て、今までは恐怖を感じていたのに、今は違う感情を抱くようになるのであった。

 

また、ジンは何かを考えたのかガジルの後を追いかけていく。

 

「待て」

 

「ッ!?銀翼の凶星……?まだなんか用があんのか」

 

「黒鉄のガジル。俺と仕事に行かないか?」

 

その言葉にガジルだけでなくアイルも驚いた。いきなり仕事に誘われるなどと思ってもいなかったからだ。しかも、さっきが初対面だというのに。

 

「ハァッ!?なんでだよ!!」

 

「その仕事はルーシィに渡してやれ。さっき取り合っていただろう?俺の受けた仕事を2人で行こう。かなりの難易度の高いモンスターでな。お前がいてくれると心強い」

 

「強い奴なら火竜(サラマンダー)と行けばいいだろ!」

 

「アイツは調子が良くないらしい。仕事も行けそうにないくらいな。それに、ナツが好調でも俺はお前を誘おうとしていた」

 

「チッ、どうしてそこまで……」

 

「ジン……」

 

「すまないアイル。今日はコイツと二人で行かせてほしい。コイツの持ってる手配書をルーシィに渡してやってくれ」

 

アイルはジンの目をしっかり見る。何か考えがあってことだとは理解出来る。何となくだが、ジンのやりたいことは分かってるつもりだし、自分から仲間の為に何かをしてあげたいと思うジンの姿を自分は応援するべきだと判断した。

 

「うん、分かったよ!僕は二人がすぐに美味しいご飯を食べられるように待ってる!」

 

アイルはガジルの手配書をルーシィに届けるため、テクテクと歩いてギルドの方へと戻っていく。ガジルは押しに負け、とりあえずジンの提案を受けることにした。

 

「で、オメーほどの実力者が協力を要請するほどってのは一体どういうモンスターなんだそいつはよ」

 

「そいつは硬い甲殻を持ち、巨大でありながら素早い動きと鋭い鋏で獲物を狩る。硬い甲殻を打ち破る且、その鋏を弾く鉄の硬さは貴重だ。だからおまえが良いと思った」

 

「なンだァ、その聞く感じ蟹みてーなのは?あまり強そうに思えねーな……。まぁいい。さっさと駅行くぞ」

 

瞬間、ジンは身体が硬直するほどの衝撃を受けた。聞き流すことのできない言葉に対して、どうしても聞いておかなければならないことがあった。

 

「お前……列車で行くつもりなのか……!?」

 

「ハァ?当たり前だろ」

 

何言ってんだコイツ、みたいな目でジンを見るガジル。なんと、あの冷静で表情が固いジンが珍しく動揺していたのだ。

 

「滅竜魔導士は乗り物酔いするはずだ。まさか、お前は平気なのか……!?」

 

「何言ってンだッ!?そんな法則知らねぇよッ!!」

 

「頼む……列車だけはやめてくれ。俺は乗り物に弱いから死んでしまう」

 

「大袈裟だなオイ……」

 

「提案だ。俺がお前を乗せて飛んでいく。それでどうだ?列車よりも速いぞ。すぐに着く」

 

「バカか!オメーの噂は予々聞いてンだよ!そんな速さで飛ばれたら俺が酔って死ぬわ!!」

 

「ならばジャンケンで決めよう。俺が勝ったら俺が飛ぶ。お前が勝ったら列車だ」

 

「上等じゃねぇか!!やってやンよォ!!」

 

「「じゃんけん!ぽん!」」

 

数分後

 

「おおぉぉぁぉぁ……し、死が近づいてくる……」

 

ジン、敗北。あいこもなく、あっけない敗北であった。列車の中でジンは吐き気に苦しむ羽目となってしまう。

 

「おい、絶対吐くンじゃねぇぞ。吐いたらぶっ殺すからな」

 

「安心…しろ……。絶対、吐かない…ぞ……うっぷ……!!」

 

「コイツ、本当にあの銀翼の凶星なのかよ……」

 

先が思いやられるとガジルは溜息を吐いた。2人の受けるクエストで待ち構えるモンスターとは?




モンスターハンターをクロスということで、勿論モンハンのモンスターも一部登場します。次回出すモンスターは硬い甲殻、鋭い鋏。予想してみてください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。