紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

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気がつけば日間ランキングに載っていました。読者の皆様、誠にありがとうございます。これからも精進します。


一狩り行こう

「うっ……やっと着いた……」

 

「オメェ大丈夫なのかよ……」

 

やっと乗り物から解放されたジンは何とか死なずに済んだ。幸先は悪いが、まずは依頼主のいる村へと向かった。

 

今回の依頼はモンスターの狩猟である。

 

事前に村の者が偵察に行った結果、どうやらそのモンスターはこの町に向けて進行しているらしい。こことは離れた別の村では壊滅こそしなかったものの、食糧が一部奪われ、家を荒らされたという被害の報告もあった。このままではこの村まで被害が及ぶので対処して欲しいというのが今回のクエスト内容だ。討伐と捕獲どちらかは問わないものとする。

 

二人は依頼を受け、目的地へと向かう。到着すると岩の陰に隠れながら目標らしきものを発見する。

 

「アレが目標のダイミョウザザミだ」

 

見ると背中に大きな骨を背負った蟹のようなモンスターがいた。獲物を容赦なく挟み込む鋏のような爪は盾にも見えるほど巨大だ。

 

「思ったより数倍デケェな……。って、おい!まさかアレは……ドラゴンの頭蓋骨か……?」

 

ダイミョウザザミと呼ばれたモンスターは一本の角が生えた竜の頭蓋骨を背負っていたのだ。既に死んでいるとはいえ竜の姿を見られたことにガジルとジンは驚いた。

 

「どこから拾ってきたのかは定かではないが、ダイミョウザザミは他のモンスターの頭蓋骨を背負って行動をするらしい。竜の頭蓋骨を背負っている個体を見るのは初めてだな。一角の竜……あの頭蓋骨の竜が何時ごろ骨になったかも分からんが、やはり竜は世界中に存在していた時期があった。それが今では生きてる姿の目撃すら無い。不思議だろう?」

 

「バカな……まさか、777年の俺達の竜が失踪した時、一斉に竜が死んだとか……?」

 

「さぁな。だが、そう決めつけるのは早計だ。まだまだ俺たちは竜について分からないことが多すぎる。これ以上の手掛かりは掴めそうにない。とにかく、今は依頼をこなすぞ」

 

「あの蟹、そんなにつえーのか?」

 

「正直、ただのダイミョウザザミであれば大したことはない。だが、あの巨大に発達した爪……普通の環境では見られない。よほど過酷な環境で育った個体なのだろうな。それで、話は変わるが……大丈夫か?」

 

「何がだ」

 

「お前、初めてだろう。誰かと一緒にクエストをやるのは」

 

そう指摘されてガジルは一瞬ビクッと肩を振るわせる。図星だったようでガジルは照れ隠しで頭を掻く。

 

「あぁ、そうだよ。ファントムにいる時は他の奴の手なんて借りずにこなせたからよ。それよりもお前の方は意外だぜ。仲間第一なナツ(サラマンダー)ならともかく、お前みたいな強者は1人でやるもんだと思ってた。いつもあのネコと一緒にやってんのか?」

 

「そうだ。アイルは俺の大事な相棒だからな。クエストではアイツのサポートにいつも助けられている。だが、最初は中々上手くいかなかったものだ。連携などすぐに出来るものじゃない。こういうのは積み重ねが大事だからな。良いものだぞ。誰かと達成するクエストというものは」

 

ガジルにはよく分からなかった。ジンは当然言葉だけで理解できないのは承知していたので実践で分かってもらおうと早速剣を構えた。

 

「さぁ、やるぞ。アイル的に言えば……『一狩り行こう』…ってやつだ」

 

ダイミョウザザミはジン達の存在に気づいておらず気を抜いて油断していた。故に、素早く眼前まで近づいてきた彼等に気付くのが遅れた。

 

「天彗龍の槍翼(そうよく)!」

 

「鉄竜剣!!」

 

ジンは剣を槍のように突き刺す形で攻撃。ガジルは腕を鉄の剣に形を変えてダイミョウザザミを攻撃した。

 

不意の攻撃に対応できず、ダイミョウザザミはダメージを喰らいながら後ろに仰け反った。

 

出会い頭の不意打ちには成功した。だが、大きくダメージを与えたとは言い難い。文字通り鉄の硬さを誇るガジルでさえ、ダイミョウザザミの甲殻は硬いと認めざるを得なかった。

 

「コイツには俺の龍属性はあまり効かない。やはり、お前の強力な一撃が必要となる」

 

「らしいな。硬ぇぜ……こりゃ」

 

ダイミョウザザミは今の攻撃を受けて、二人を完全な敵として判断して威嚇行動を取る。そして、口から水の泡を溜め込む。

 

「ブレスだ!」

 

これは遠距離攻撃だとすぐに判断してジンは叫ぶ。事前に攻撃方法が分かっていたので、その水圧ブレスを何とか躱す二人。今度はこっちの番と口に魔力を溜める。

 

「天彗龍の……」

 

「鉄竜の……」

 

「「咆哮ォッ!!」」

 

龍属性と鉄のブレスを同時に放ち、ダイミョウザザミへと向かっていく。着弾と同時に爆発と爆風が巻き起こる。

 

しかしその後、爆風が漂う中、煙に紛れたダイミョウザザミが水のブレスを放ってきた。

 

「うぉぉあっ!!?」

 

「ガジル!」

 

煙に紛れたブレスに反応が遅れてガジルはガードしたものの飛ばされた。ジンは煙が晴れ、その先にいるダイミョウザザミに接近して剣を振るう。

 

背中の頭蓋骨に当ててもダメージはない。ならば背後からの攻撃は無意味と判断して正面や横からのフェイントを織り交ぜて剣撃を行う。しかし、手を止めた瞬間にダイミョウザザミはその大きな爪を振るって反撃をしてきた。

 

(このダイミョウザザミ……素早いだけでなくガードと攻撃の切替も早い!全く隙が生まれないとは……戦い慣れしている。それに所々古傷のようなものがあることから、他のモンスターと争い続けた歴戦の猛者と考えられるな)

 

「しかも魔法も使えるとは……。この異常な硬さとスピード…これは単純な『身体強化魔法』だな。だが単純故にシンプルに強い……!」

 

ジンはハッとなってダイミョウザザミに向き直るが、既に自分の視界から消えていた。

 

「ぐっ!?」

 

いつのまにか背後へと回っていたようで、ダイミョウザザミは巨大な爪を鈍器のように扱い、横殴りでジンをふっ飛ばす。

 

「銀翼ッ!クソ……!」

 

ガジルは攻撃をするが、ダイミョウザザミは背後にジャンプしたり素早い横歩きでそれを避け続けた。

 

(コイツ……!?銀翼の攻撃は受けて俺の攻撃は躱そうと動いてやがる!)

 

ダイミョウザザミは打撃攻撃メインのガジルの攻撃はなるべく避け、斬撃攻撃メインのジンの攻撃は受け止めカウンターを狙っていた。ガジルの攻撃は自分の甲殻を破る為に必要だと分かっているからだろう。

 

戦闘慣れしている者が相手によって戦闘スタイルを変えるのは珍しくはないが、ただの甲殻類がここまでクレバーな戦い方をすることにガジルは驚きを隠せなかった。

 

「ぐぁぁっ!!」

 

避けた末、ダイミョウザザミはカウンターをガジルにお見舞いして彼をふっ飛ばす。飛ばされた所を追いかけるようにダイミョウザザミはジャンプして追撃を行おうとする。それを喰らいそうになるガジルだが、間一髪でジンが猛スピードで近づき、ガジルを抱えて追撃を躱す。そのまま離れて距離を取った。

 

「大丈夫か?」

 

「くっ……このガジル様が蟹如きに遅れをとるなんてな……!」

 

ジンはガジルが随分と疲弊していることに違和感があった。確かに攻撃を喰らい続けたが、ナツと激戦を繰り広げた彼がここまで早く消耗するとは思えなかった。

 

と思っていると、突然ガジルのお腹から『ぐぅ〜』と腹の音が鳴る。

 

「…お前、まさか腹が減ってるのか?」

 

「う、うるせぇ!」

 

ジンは少し考える。確かにギルドで見た時から食事を取る所は見たことがない。妖精の尻尾に入ってからまともに食事をとってないことが考えられる。それに、ここにくる前もラクサスに散々やられて体力が落ちていることから、ガジルが本調子を出せていない理由としては十分だ。

 

「すまなかったな……そこまで気が回らなくて。だが、こういう時のために『アレ』を持ってきている」

 

「アレ……?」

 

クエストを受ける前、アイルから一部荷物を預かっていたと言うジンはそこから何かを取り出すと、何やらパーツがいくつか出てきた。それらを組み合わせると一つの器具として完成する。

 

「携帯肉焼きセットだ」

 

「ケイタイニクヤキセット……?」

 

「遊ぶ時も、任務の時もいつでも肉を焼くことが出来る優れ物だ。俺がお前のために肉を焼いておく。それまで時間稼ぎをしてくれ」

 

説明の後、少し沈黙が続いた。ポカンとしていたガジルはハッとなって怒号を上げた。

 

「って、戦闘中に肉焼くバカがいるか!肉食っただけで戦況変わるわけねぇだろ!!」

 

「本当は撤退してから肉を焼きたい所だが、奴の進行ルートは真っ直ぐ村へと向かっていた。撤退してからでは、奴が先に村にたどり着いてしまう。

 

それに、このセットから手に入れられるこんがり肉を甘く見るな。『食』とは己の身体を創り上げる為の大事な儀式だ。俺は日々の鍛錬だけでなく、アイルの料理のお陰でこの強靭な身体とスピードを身につけたといっても過言ではない。これを食べた時、お前は今までにない力を発揮できるはずだ」

 

「チッ……妙に説得力あんな……。仕方ねぇ。確かに本調子じゃないからな……そこまでいうなら信じるしかねぇか……!」

 

ガジルは腹を括り、仕方なく肉を焼くまでの時間稼ぎのため、ダイミョウザザミに向けて突進する。

 

一方、ジンは持ってきている骨付き生肉に蜂蜜を組み合わせたソースを下味として付け、それを携帯肉焼きセットにセッティング。そして、下から昇る火で炙りながらクルクルと回して全面が焼けるようにしていく。

 

「オイ!なんか音楽流れてねぇか!!?」

 

肉を焼いている間に妙な音楽から流れているのがガジルにとって気が散るようだ。

 

「この肉焼きセットには音楽を流せる魔水晶(ラクリマ)が埋め込まれていてな。場を盛り上げてくれる優れた機能だ」

 

「その機能要るかァッ!?って、ごほぁっ!!」

 

よそ見をしている間に盾のように大きい爪をハンマーのように振り回して攻撃してきたダイミョウザザミ。

 

「この蟹野郎がっ!鉄の硬さをナメんなァッ!!」

 

頬を殴られるガジルだが、彼はふっ飛ばされずに堪えてチェンソーの腕に変化させてダイミョウザザミの鋏を切り刻もうとする。

 

「!」

 

流石にチェンソーの切れ味は侮れず、殻が削れていくのに驚愕したのかダイミョウザザミは後ろにジャンプして距離を取った。

 

『上手に焼けました〜!』

 

「だから何だその音声ッ!?」

 

肉は焼けたようだが、また変な音声が流れた。まったく意味がわからないガジルはツッコミが止まらないが、とにかくこれで時間稼ぎには成功した。

 

「よし、できたぞ。ガジル!これを受け取れ!!」

 

肉が焼け、それをガジルに投げ渡す。絶妙なコントロールで、それはガジルの手に渡った。

 

しかし、ダイミョウザザミはそれを阻止しなければならないと思考する。本能的に危険を感じ取ったのか、勢いよくジャンプしてガジルに近づこうとした。

 

「させるかっ!天彗龍の……」

 

ガジルの邪魔はさせまいとジンは足と頭に龍属性エネルギーを溜め込み、ダイミョウザザミに向けてジャンプした。

 

剣角(けんかく)ッ!」

 

「ギッ!?」

 

龍属性エネルギーを推進力として利用し、ジェット機のようなスピードでダイミョウザザミに頭突きをかます。ダイミョウザザミも勢いを止められずカウンター気味にくらったことで大ダメージとなってふっとばされた。

 

「おぉ……これは……」

 

ガジルはいざ出来上がった肉を凝視するとあまりの美味しそうな見た目に喉を鳴らす。ジューッと肉汁が溢れ出てくるこんがり肉を見て、空腹のガジルが食欲を抑えられるわけもなく、勢いよく齧り付いた。

 

「な、なんだこの肉……めちゃくちゃ美味えッ!脂がぎっしり詰まってるはずなのに、若干蜂蜜で味付けしてるからかギトギトさが薄れてしつこく感じない。ただの上質な肉なのかもしれねぇが、飲み込む度に体力がみるみる回復してきやがる……!!」

 

一方、頭突きをしたジンは追撃として倒れているダイミョウザザミに向けて剣を振り下ろした。

 

しかし、それをダイミョウザザミは倒れながらもジンを見失わず、タイミングを見計らって鋏を盾にして受け止めた。

 

「くっ……!」

 

(なんて反射神経だ……!これをまともに受け止められるとは)

 

片方の盾で受け止め、もう片方の腕でジンを仕留めようとするダイミョウザザミ。だが、次の瞬間

 

「鉄竜棍!!」

 

ダイミョウザザミは横から大きな衝撃を喰らって体勢を崩す。今までで1番ダメージを喰らったからかヨロヨロと怯みながら倒れた。

 

攻撃したガジルも自分の力に驚いていた。体力が回復しただけでなく、力がみなぎるのを感じ、ガジルは後ろにいるジンに声をかける。

 

「おい、銀翼」

 

「ん?」

 

「……助かったぜ。久しぶりに……良い飯が食えた」

 

顔は見せないが、若干声が嬉しそうなのが分かる。素直に礼を言われたジンは彼の横に立って再び剣を構えた。

 

「そのようだな。……俺も準備が整った。反撃だ」

 

「おう」

 

「死兆よ……来たれッ」

 

地獄変(ヘル・フォース)を発動したジンは、攻撃とスピードを大幅に強化し、一瞬でダイミョウザザミに近づいた。

 

「フン!!」

 

剣に龍属性魔法を纏わせ、全開の力を込めて上から振り下ろす。ダイミョウザザミはそれを先程と同じく腕を盾にしてガードをするが……。

 

「!?」

 

鍔迫り合いの状態となり、受け止めた甲殻からビキッ!と何かがひび割れる音が聞こえた。ダイミョウザザミは自身の殻が打ち破られようとしてあることに驚愕する。さっきまでは効かなかったのにと困惑しているかのようだ。

 

龍属性の効果が薄めとはいえ、単純な攻撃力が強化された一撃をダイミョウザザミは受け切ることができずにノックバックされた。

 

「ギッ!?」

 

「天彗龍の鉤爪ッ!」

 

追撃を受けそうになるダイミョウザザミは危険を察知する。明らかに目の前の相手の力が大幅にアップしたこと。そして、攻撃を受け止めるだけでは対処できないとすぐに理解した。すぐに回避戦法に転じようとするが……。

 

「ガードを解いたな!喰らいやがれッ!」

 

すぐさまガジルの鉄棍棒が繰り出されてガードを解いたダイミョウザザミの顔にヒット。

 

追撃としてもう一発叩き込もうとするが、ダイミョウザザミはすぐに体勢を立て直し、空高くジャンプする。

 

「あっ!?この……カニが飛ぶなッ!!」

 

憤慨するガジルは近くにあった岩石を持ち上げ、それを空中にいるダイミョウザザミに投げ当てた。

 

それはゴン!と頭部にクリーンヒットし、ダイミョウザザミは体勢を崩して真っ逆さまに落ちてしまう。背中に巨大な頭蓋骨を乗せたことが仇になり、そのまま一角竜の角が地面に突き刺さった。そしてそのまま動けなくなるという情けない体勢になったことで完全な無防備となる。

 

「今だ!鋏に打ち込め!!」

 

ジンの指示の元、ガジルは腕を鉄の棍棒へと形を変えた。

 

「鉄竜棍!!」

 

ガジルはその鉄棍棒を連続でダイミョウザザミの鋏に叩き込んだ。ナツが自分を倒した時も、彼が連続で拳を放ったことを思い出す。ナツに負けた時の悔しさと屈辱が記憶として蘇ってくるが、余計な気持ちはすぐに振り払った。

 

「うおおおぉぉっ!!」

 

怒涛の攻撃の末、ダイミョウザザミの腕の甲殻がバキンッ!と割れて大きく砕けた。

 

「今だ!銀翼!!」

 

「天彗龍の……紅雷!」

 

盾も壊れ、攻撃力も防御力も大幅にダウンしたダイミョウザザミに向けて上から特大の龍属性を纏わせた斬撃を叩き込んだ。ジョゼを倒した一撃をダイミョウザザミはモロに受け、瀕死の状態となる。痛みにもがき苦しむが、暴れた末に力尽きたのかそのまま動かなくなって絶命した。

 

「ぜぇ…ぜぇ……て、手こずらせやがって……!」

 

やっと終わったと安堵して地面にへたり込むガジル。ジンも少し疲れたのか同じように地面に座った。

 

「今回で鈍っていた身体も叩き起こせた。どうだガジル……クエストを達成した気分は」

 

「フン……悪くはねぇ」

 

「それは良かった」

 

最初は一匹狼でやり通すつもりのガジルだった。しかし、こうして誰かと共にやっていくのも悪くはないと思い始める。これこそが、妖精の尻尾の良さなのだと理解した瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーあ……今日はガジルの受けた仕事を譲ってくれたのは良いけど、今月の家賃をちゃんと払えるか心配……」

 

マグノリアの街。ルーシィは夜暗い時間の中、自分の家に帰る途中だった。何かお金が一気にたくさん貰える仕事はないかと悩みながら家へと到着。

 

家に着いたがルーシィは道中よりも警戒していた。実は、彼女の家にはよくナツ達が入り込んでいる場合がある。それ故に若干のファイティングポーズをしながら部屋に入った。

 

「いない……って、何で自分の家なのにこんなドキドキするのかしら」

 

とりあえずいないことを安心するルーシィ。風呂に入り、歯を磨き、さて寝ようとベッドに潜り込む。

 

「……」

 

突然嫌な予感がした。なんか隣にいるなと気配を感じて布団を剥ぐとそこには……。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

ナツとハッピーが寝ていた。まさかベッドに寝ていたとは思わず悲鳴をあげた。ルーシィの悲鳴で目が覚めたナツとハッピーはゆっくり起き上がった。

 

「あい……」

 

「おお、おはようルーシィ……」

 

「アタシこっち!てかここアタシんち!!アタシのベッド!!」

 

ナツは寝ぼけて全く違う方向を見ていた。怒るルーシィは眠気覚ましとしてナツが身につけてるマフラーを引っ張って奪うが、ナツは気だるそうにまたベッドに寝た。

 

「ジンもいるぞぉ」

 

「えっ?どこ?」

 

「後ろだ」

 

「ギャァァァァァァァッ!!?」

 

キョロキョロと周りを見た瞬間、すぐ後ろから声が聞こえて、まるで幽霊にでも会ったかのような悲鳴をあげたルーシィ。背後にはいつのまにかジンとアイルがいた。

 

「僕もいるよ〜。やっほールーシィ」

 

「な、なななんでジンとアイルもいるのよ!?ナツが連れてきたの!?」

 

「いや、どちらかと言えば俺がナツをここに連れてきた。コイツがルーシィの家に行きたいと言っていてな。しかし、どうも調子が悪そうだからおぶってきた。ナツが『ルーシィは勝手に家に入っても快く迎えてくれる良い奴』と言っていたから安心したぞ」

 

「悪影響を受けてるぅぅ!!?というか、ベッドの中にいたナツはともかく、ジンはさっきまでどこにいたのよ!?全く気が付かなかったんだけど!」

 

「簡単だ。お前の視界に入らないように天井や壁を伝って素早く移動していた」

 

「忍者かアンタは!」

 

「これがサプライズというやつだ」

 

「絶対誰かの入れ知恵でしょ!!」

 

ルーシィはツッコミが止まらなかった。正直、ジンはまともな人と思っていたのでここにきて変人だと自分の中で確定した。

 

すると、ルーシィはふと自分がさっき奪ったナツのマフラーを見る。

 

「そういえば、ナツは普段このマフラー全然放さないよね」

 

「そいつは滅竜魔法を教えてくれたイグニールから貰った物らしい。ちなみに、俺が持ってる剣も育ててくれたバルファルクから貰ったものだ」

 

「へぇ……ドラゴンから贈り物なんて、滅竜魔導士同士でそんな共通あったんだ」

 

「そうだよ〜。だからこそ、2人はこの贈り物を大切にしているんだ」

 

「うっ……」

 

「ねぇ、ナツ……大丈夫なの?」

 

ルーシィは心配そうにナツを見てる。ナツはギルドに帰ってくる前にある者と激戦をしてきた。その際、パワーアップの為に炎を含めた多くの属性が含まれた『エーテリオン』を食べたことでパワーアップを果たした。

 

「エーテリオンを食べたことが今になって響いたんだよ。ナツは前にラクサスに勝負を挑んで、その時ラクサスの雷を食べたことがあるんだ。それで今みたいな状態になったの。そのうち体調は戻ると思うよ。ジンはどう?ナツみたいになったことがある?」

 

「俺は雷ではないが、別の属性魔法を食べた経験がある。ナツと同じようになったがな」

 

「何で滅竜魔導士って何でもかんでも食べるのかしら……」

 

「その時、俺も食べて良いかどうか迷った。だが、とあるクエストで会ったある冒険家の助言で『迷ったら食ってみろ』とアドバイスを受けてな。それで実際に食ったらこのザマだ」

 

「多分、その人も魔法を食べるとは思ってなかったわよ……」

 

「滅竜魔導士は属性を持つ魔力を食べられるとはいえ、俺たちの身体には受け付ける属性と受け付けない属性がある。ナツは炎。俺は天、または龍属性を受け付けるが、それら以外は毒となる」

 

「ナツは炎だって教えてもらったけど、ジンは何を食べて強くなれるの?あんな赤黒い魔力を食べるのかしら?」

 

「俺は自分以外に龍属性を扱う魔導士や魔獣は見たことがない。だから俺が食べるのは基本的に天……つまり空気と思ってくれれば良い。だが、それにも良し悪しがある。例えば、ゴミが集まった場所の空気は最悪だから食べても不味く栄養にもならない。逆に自然豊かな場所は淀みのない空気が流れて美味いんだ」

 

「へぇ〜……そうなんだ……ってことは普段あまり食事には困らなそうね。便利〜」

 

「困りはしないが、空気だけ食べても味に飽きてしまう。それに、今はアイルの料理に満足してるからな。普段は空気をあまり食事として食べることは滅多にない」

 

「えっへん!」

 

「ははっ…アイル嬉しそうね……」

 

誇らしげに胸を張るアイル。この評価あって、いつも料理に精が出るのだろう。

 

「あっ、そうだ!ルーシィにこれを渡しにきたんだった。お金に困ってるんでしょ?」

 

ハッピーが自身の持つ荷物から何やら紙を取り出してルーシィに渡した。

 

近いうちにマグノリアで毎年行われる『収穫祭』というお祭りが開かれ、その催しの一つとして開催されるイベントの内容が書かれている。

 

「ミス・フェアリーテイルコンテスト?優勝賞金……50万ジュエル!?家賃7月分!?そして何で私向き!」

 

ミス・フェアリーテイルコンテスト。ギルドの女性メンバーのナンバーワンを決める大会である。最も魅力のある女性を決めるこの大会をルーシィは目を輝かせて参加を希望した。

 

「ミラやカナも出るよ」

 

「ミラさんも出るの〜……?週ソラのグラドルやってるのに、アタシ勝てるのかな〜……。いや、でもアタシの方がちょっと若いし、フレッシュな魅力ってことで……行けるッ!!行けるわ50万ジュエル!!絶対優勝してやるんだから!!」

 

ベッドの上でガッツポーズを取るルーシィ。悩んでいたかと思えば、自信満々な表情へとすぐ変わり、それを見てるハッピーは笑ってジンに耳打ちする。しかもベッドで寝ているナツを思いっきり踏んでいた。

 

「ね?ルーシィって面白いでしょジン」

 

「あぁ、面白いな。表情豊かで見てて飽きない」

 

イベントに燃えるルーシィに挨拶をして、ジンはナツを連れて部屋を出て行った。これから各自、収穫祭に向けて準備を進めることとなる。ルーシィは勿論、ジンもまたイベントの手伝いをする為、表情に出さないが心の中で張り切るのであった。




出てきたのは「矛砕ダイミョウザザミ」です。今後もまた別のモンスターを出す予定ですので、クロスオーバーならではのオリジナル魔法や戦闘を描写出来たらいいと思っています。
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