トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。 作:秋津モトノブ
これからもちょいちょいこういう変化球を入れていきたいです。
祭りばやしに、楽しそうな声。
空気に乗って漂う、香ばしいソースの香り。
日頃の熱気もなりを潜め……てはねえな。
だって――
「すいませーん、焼き鳥2本と味噌鍋1人前」
「あいよォ!」
考え事を中断し、注文品をよそう。
ああ、鉄板の熱が直にきて結構しんどいな。
ま、楽しいからいいが。
「けーびいんさんっ!鶏肉がもうなくなりそうだよ~!」
「マジか!?ペース早いな……タマ、合宿所まで頼む!」
「ウチに任しときぃっ!!」
元気よく答え、タマが走り出す。
悪いなあ、バイト代弾まねえと。
「とってもいい匂い……す、すみません、味噌鍋くださ――ええっ!?なんでおじさまが!?」
「あ!ライスちゃんだ~、いらっしゃ~い!」
「ウララちゃんまで!?ど、どういうことっ!?」
新しい客……ライスが、俺とウララを確認して驚いている。
可愛らしい浴衣姿だ。
「らっしゃいライス!可愛い浴衣だなあ、トレーナーさんが見たら卒倒するぜ」
「えへへ、ありがとうおじさま!お姉さまはもう3回も失神……じゃなくて!一体なんで夏祭りで屋台してるのっ!?」
一瞬照れたライスが、すかさずツッコんでくる。
ほほう……冴えたツッコミだな。
「なんだっけなあ……まあ、成り行き?」
「えぇ……?」
???という顔をしたライスを見ながら、俺は今回のきっかけを思い返していた。
・・☆・・
「はあ、屋台……ですか?」
『そうだ』
今朝。
朝早くに社長から電話があった。
なんでも、今晩近所である夏祭りで屋台をやってほしいのだと言う。
USCからも専属で警備員が派遣されるイベントだ。
俺は派遣組には入っていなかったが……
『急なトラブルで店舗スペースが1軒空いたようでな、夜警のついでにやってみないか、イチロー。経験者だと前に言っていただろう?』
「いやまあ、たしかに焼き鳥屋台のバイト経験はありますけど……んじゃ何ですか?今日の勤務は屋台兼夜警ってわけです?」
『そうだ、以前の件から目立った不審者情報はないが……用心はしておいた方がいい。夏祭りにはもちろん警備員を増強するが、それとわからない形での警備も重要だからな』
「はー……なるほど。あ、不審者と言えば本社の方は大丈夫なんです?」
こっちはあれから何もねえがな。
『ああ、流石に不良4流記者は打ち止めだな。誹謗中傷のメールはこの騒動以前からもよく来るし……直接的な襲撃などはないな、むしろ来てくれれば全員半殺しにできるのだが』
「そ、そうですか……あ、そういうことなら屋台はやりますよ。ああいうのは好きですし」
祭りに参加っていうか、あの雰囲気の中で働くのは好きだ。
屋台バイト時代を思い出すぜ……
『そうか、やってくれるか!屋台は準備会から貸与されることになっているから心配するな、燃料代も材料費も会社が持つぞ』
「ありがたいです、実はまた猪を1頭仕留めましてね、もう1回BBQをせにゃらならんかと思ってまして……助かりますよ」
『また狩ったのか……猟友会に睨まれるぞ』
「稽古してたら襲ってきたのでやむを得ず、です。それこそ猟友会に連絡しましたよ、あの山おかしいですって」
前にブライアンたちとキャンプした山。
今度は1人で行ったらまた猪が出た、しかもメス。
発情期でもねえのにどうなってんだよ。
『ふむ……まあよかろう。買う材料についてはきちんと書類を提出しろよ、それと、くれぐれも食中毒には気をつけろ』
「新しい方は〆て速攻で冷凍してるんで大丈夫です、合宿所の冷凍庫がバカみたいに広くって助かりました」
『庫』っていうか『室』だけど。
その一角を使わせてもらってるが、ようやく空けられそうだ。
「それじゃ、早速準備にかかります」
『うむ、よろしく頼むぞ――』『一郎さんのお声がしますわっ!?お母様、電話の相手というのは――』
「オツカレサマデース」
テンマっぽい声が聞こえた瞬間に電話を切る。
アイツの耳どうなってんだよ……悪い奴じゃないけど、いったん話が始まると長ェからなあ……
すまんな、すまん。
というわけで、屋台の準備を始めるか。
なんかワクワクしてきたな……!
「諸々の理由で屋台をすることになった」
『ミギャアアアアアアアアアアアアッ!?なぁんでウチがいない時に限ってそんな面白いイベントが起こるんスかッ!!』
「面白いってお前な……」
社長との電話の後、ライから着信があったので今日のことを言ったら吠えられた。
「仕方ねえだろ、お前今北海道にいんだから」
『出身地が憎いッス……』
「親御さん泣いてんぞ……」
ライは現在帰省中である。
親戚が多いからか、とんでもねえ量の土産を持って帰ってたな。
『来ます?』って言われたけど普通に仕事があるから断った。
いや、なくても行かんが。
『うぅうう……ブライアンちゃんたちとの山籠もりにも参加できなかったし……ウチは世界一不幸なウマ娘ッス……』
「世界中のウマ娘に土下座して謝れよ。まあ、戻ってきたら飯でも奢ってやるから」
『言質取ったッスよ!!『スターゲイザー』で優雅なお茶会ッス!!』
やたら名前が長い飲み物が大量にある喫茶店チェーンの名前を出し、ライが元気になった。
現金なヤツめ……
・・☆・・
というわけで、早速準備にかかることにする。
夏祭りの実行委員に連絡し、屋台の寸法や設備を聞いた。
ガスコンロの数や焼き台から、出品する料理を決定する。
「焼き鳥と……猪肉は味噌鍋だな」
他にも焼き鳥の屋台はあるだろうが、メインは鍋だし問題なかろう。
焼き鳥の方は、まあオーソドックスなモモとネギまあたりにしておこうか。
あんまり種類増やしても問題だしな。
「鶏肉は前にBBQやった所で仕入れるとして……味噌鍋の野菜は……商店街で買うか」
両方とも、前にBBQをやった時に世話になった所だ。
社長にも周辺で買えって言われてるし、ちょうどいいだろ。
「あ、さすがに俺だけだとキツいな……姐さんたちに……いや、あっちは祭りの警護か。でも、さすがにこれだけのためにバイト募集すんのもな……時間もねえし」
「山田はん、今バイトって言うた?」
お?タマじゃないか。
合宿所の玄関前で考え事しちまってたな。
そりゃ目立つだろう。
「よおタマ。実は今晩の夏祭りで屋台をやることになってなあ、ライがいねえから手伝いがいるなって思ってよ」
「はーん……なるほど!せやったらウチが手伝うたるで!山田はんには猪の恩もあるしな!」
フンス!と胸を張るタマ。
おお……ちっこいのに謎の頼もしさがあるな。
「いや、でもお前も夏祭りに参加したいだろ?屋台だと終わるまでずうっとやってることになるしよ」
「うーん、別に祭りはこれで最後っちゅう訳でもあれへんからな?それにウチ、祭り側に参加すんの大好きやねん!」
あー、なんかわかる気がするその気持ち。
俺もそうだから、今回屋台をする気になったんだし。
「そっか……そんならお願いしようかね、もちろんバイト代は出すぞ」
「ええのん!?」
「いや……むしろ当たり前だろ。学生を無賃金で働かせたら理事長と社長に殺されちまう……あ、もちろん北井トレーナーには俺から話通しとくからな」
そういう所の段取りはしっかりしとかねえとな。
「じゃあタマにはタコ焼きを作ってもらおうかな。ライが美味い美味いって言ってたしよ」
「へへん!本場仕込みやから当然やッ!ウチに任しときぃ!!」
「よし、そうと決まれば材料調達だな!おっと、タコ焼き器の予備があるか運営に問い合わせなきゃなあ」
「心配無用や!前に使うたモンがあるさかい、材料だけあったらいけるで!」
そういえばそうだったか。
……今更だが、合宿にまでタコ焼き器を持ってくるタマってすげえな。
大学時代のツレに関西出身がいたが、そこまでのタコ焼きジャンキーじゃなかったぞ。
「そうか、じゃあ俺は仕入れに行ってくる。タマは練習が終わったら祭り会場に直で来てくれ」
「今日はオフやねん、オグリもロードワークに行ってもうたから暇やし……一緒に行ってもええか?」
そういえば普段着だな。
「お、別にいいぞ。っていうかありがたい」
ウマ娘はこんなに小さくても力持ちだからなあ……大助かりだ。
「じゃあ行くk」「けーびいんさんっ!おはよーっ!」
朝から元気な声。
そして俺をこう呼ぶウマ娘といえば……そう!ハルウララだな!
「あっタマモさん!おはよーっ!」
「おはようさん!朝から元気やなウララ」
ウララは普段着だ。
ってことは……この子もオフかな?
「ようウララ、おはよう」
「2人でおでかけ?」
「ああ、実は――」
今までの顛末を説明した。
すると、ウララが目を輝かせる。
「お祭りで屋台するのっ!?すっごーい!わたしも手伝うよ、けーびいんさんっ!」
「えぇ?そりゃ有難いけど、ウララもお祭りに行きたいだろ?店ばっかりになっちまうぞ?」
そう言うと、ウララは少し困った顔をした。
「えっとね……今日はキングちゃんとトレーナー、いないんだー」
なんでも、急な用事?でキングヘイローとトレーナーは出張中らしい。
前から祭りを一緒に回る約束をしていたので、ぽっかりと予定が空いてしまっているとか。
他にも友達はいるが、タイミングが悪かったり合宿所が違ったりでどうにもうまく嚙み合わなかったとのこと。
ふーむ……そういうことなら、いいか。
「そうか、それならお願いすっかなあ。福久トレーナーには俺から許可を取っておくよ」
今更ながら、ウララ達の担当トレーナーの名前だ。
若くてぽやぽやした雰囲気だが、芯がしっかりしていて敏腕だと評判である。
そりゃ、トレーナーだもんな。
同年代と比べても出来が違ェだろうよ。
……俺よりも、よっぽどしっかりしてるわ。
「わーいっ!わたし、とっても役に立つよ~!」
ウララは嬉しそうにその場で飛び跳ねている。
ほんと、かわいいなァ。
孫や子供どころか嫁さんもいねえのに、なんかこう……家庭持ちの幸せを実感しちまった。
「よーし、そうと決まればさっそく仕入れに行くか!一気に回って、ついでに飯も食っちまおう!!」
「よっしゃ!奢りやろな!?」
「あったり前だろタマ!学生に金なんぞ出させるわけねえだろ!ウララも行くぞー!仕事の前に腹いっぱい食わせるからな!」
「やったーっ!」「やったでーっ!!」
ハイタッチするウララとタマを引きつれ、駐車場へ向かうことにした。
それから仕入れに回ったんだが……ウララとタマのお陰で、恐ろしい量のおまけを頂いた。
まあな、両方ともレースで有名だし(タマに言うと怒るが)ちっちゃくて可愛い。
前に野菜を調達した八百屋の店長なんか『鍋に入れるんなら全部持ってってくんな!形が悪いが味は抜群なんだ!!』って言ってB級野菜をどっさりくれた。
そして、奥から出てきた女将さん共々ウララ達のサインとお礼を貰ってデレデレだった。
うーん……明らかに買った量よりオマケの方が多いんだが、まあ、いいか。
牧場でも似たようなかんじだったしな、いいのか流通業。
こっちは困らねえけど。
まあ、そんなこんなで材料は揃った。
昼食を食った後に合宿所に戻り、キッチンを借りて3人で仕込みをし……準備も整った。
祭りが始まるだいぶ前に俺達は出発した。
・・☆・・
そんなこんなで祭り会場に到着。
運営、それから周辺の屋台に挨拶をして(向こうもウララ達を知っていて驚かれた)晴れて店開きとなった。
ちなみに、商品ラインナップは『焼き鳥』『猪の味噌鍋』『たこ焼き』の3品だ。
これ以上は面積の関係もあって難しい。
あと、純粋に手が足りねえ。
それに……大儲けしたいわけじゃねえしな。
材料費は会社から出るし。
……あれ、そういえば売り上げの扱いってどうなるんだ?
まあ、後で社長に聞いておこう。
そして、夏祭りが始まった。
始まったが……俺は、舐めていた。
ウララとタマの、知名度を。
「ハルウララちゃんが売り子してる屋台があるって!?」「タマモクロスちゃんが焼いてるたこ焼き屋台があるらしいぞ!」「マジかよッ!?今日はお祭りか何かか!?」「お祭りだよ」
まーあ、客が絶えない。
次から次へと客が来る。
周辺の屋台には迷惑かけたかな……って思ったが、こっちに来た客が流れていくので喜ばれてはいるようだ。
そして、現在。
ライスに今までのことを説明した。
「……ってわけだ。ホイ、味噌鍋おまち!熱いから気をつけろよ~」
「あ、うん。ありがとう、おじさま……うわあ、美味しそう!」
皿と箸を渡す。
……超今更だが、真夏の夏祭りで味噌鍋ってどうなんだろう。
まあ、売れてるからいいけど。
「オグリさんが見せてくれたキャンプの写真で出てきた味噌鍋だよね。ライスも食べたかったんだあ……」
ライスは、屋台脇の飲食スペースへと向かって行った。
この子も小さいのに無茶苦茶食うからな、かわいい食いしんぼさんだ。
腹いっぱい食えよな~……
「――ご馳走様でしたっ!おじさま、ライスもお手伝いしたいんだけど、い、いいかな?」
食うのが早ェよ。
しっかり噛んで食ったか?
「いや……こっちとしちゃありがてえけどよ、祭りの方はいいのか?」
「えへへ……もう2周しちゃったからいいかなって」
2周。
食い物屋を2周したってことか?
ここ、結構な規模なんだが……マジで!?
「そ、そうか……あれ、一緒に回る友達とかはいいのか?」
「合宿所も離れちゃったし、休みの予定も合わなくて……今日はお姉さまと一緒に来たんだけど……」
そう言って、ライスが飲食エリアの一角を指差した。
そこには……
「聞いてるう?うちのラァイスがもぉう可愛くて可愛くて毎日がエブリディなのよォ~……わかるぅ???」
「わかりますっ!普段は儚く消え入りそうな雰囲気ですが!ことレースになると……フゥー!!たまらないでしゅッ!!!!」
「話がわかるじゃないィ……ホラホラ、デジタルちゃんも飲んで飲んでェ」
「いたらきましゅ!」
えーと、アグネスフローラ……いやいや今デジタルって言ったな……アグネスデジタルに寄りかかってベロッベロに酔っぱらったライスのトレーナーさんがいた。
オイあんた!未成年に酒……じゃねえな、〇ァンタのボトルだ、ならいいや。
「……ね?あの状態のお姉さまを放っても置けないなって……だから、ここにずっといたいんだけど……」
トレーナー思いだなあ、ライス。
そういうことならこっちが断る理由もねえ。
「よし、じゃあお願いしようかな!もちろんバイト代は出すぜ!」
「ライスちゃんも一緒にがんばろうねっ!」
「ウララちゃん……うん!……ライス、頑張るよ!」
ライスは浴衣だから客引きを担当してもらおうかな!
あ、トレーナーさんに許可……ベロベロになってアグネスデジタルを抱き枕にして寝てる……後で謝り倒そう、そうしよう。
「あ、山田さんだ! お兄ちゃん、こっちこっち~♪」
「ウゥ……浴衣のカレンチャンかわいい……あ、ほんとだ。あそこだけ学園祭みたいになってる……」
お、川添トレーナーとカレンチャン。
相変わらず一緒にいるな、仲のいいこって。
「あー!カレンちゃんだ!いらっしゃいませ~!」
「ウララちゃ~ん!全部一品ずつくださいな~♪」
「は~い!けーびいんさん!」
「おう、こっちは大丈夫だ……タマがまだ戻らないが……」
言ってる間にタマがダッシュで帰ってきた。
「鶏肉の追加や!」
「おうサンキュ、たこ焼きの方は大丈夫か?」
「おう、カレンやないか!待っとれよ~!最高のん焼いたるからな~!」
俺に鶏肉を手渡すなり、タマが凄まじい勢いで焼き始める。
この期間でさらに洗練されて……いるような気がする!!
「(山田さん山田さん助けてください、浴衣のカレンが可愛すぎて死にそうなんです)」
脇から寄ってきた川添トレーナーが縋り付いてきた。
「(いや……カワイイんならいいじゃないですか?それよりちゃんと浴衣褒めてあげました?)」
「(着た瞬間から褒めまくってますよ!!)」
さすがだな。
「(ならいいじゃないですか)」
「(いいけどよくないんですウゥウウウ!!!!)」
難儀なもんだな、ほんと。
しかし俺には何もできんぞ……それに関しては。
「(まあ、その、頑張ってください。型稽古は心が落ち着きますよ?)」
「(ここでできないじゃないですかヤダーッ!!)……あ、これお金です」
「マイドアリー!」
だが、無情にも時間切れ。
「おいしそ~☆ お兄ちゃん、あっちで一緒に食べよ~♪」
「ウゥ……ウキウキで味噌鍋その他を持つカレンチャンカワイイ……」
川添トレーナーはカレンチャンに腕を組まれ、どこかへ連行されていった。
強く生きろよ……
「カレンさんたち、いつも仲が良くって羨ましいな……」
ライスがそう言うが、そっちもトレーナーさんと……うん、まあ、仲がいいな。
ジャンルは違うけど。
「おい!ライスシャワーちゃんが売り子してる屋台があるってよ!」「カレンチャンが紹介してたよな!浴衣姿がカワイイ!!」「おい!カレンチャンもカワイイだろ!!」「そんな当たり前の話になんの意味があるの???」
「そうだよな!こうなるよな!俺のバ鹿!!」
「けーびいんさんっ!モモとネギマ5本ずつっ!!」
「おじさま!味噌鍋5人前だよっ!タマモさん!タコ焼き10人前できるかな?」
「ウチに任しときッ!!」
ウララとタマの時点で客が多かったのに、ライスまで増えたらこうなるだろ!!
何故それがわからんかったんだ!
いっぱい客が来ていいなあ!と思うことにする!!
「すまない、味噌鍋とタコ焼きを……山田さんじゃないか、それにみんなも」
「ええとこに来たなオグリぃ!!在庫が切れそうやから合宿所まで取りに行ってくれへんか!?後でタコ焼き食わせたるさかいッ!!」
「――任せろ!」
「おおい!『山田の屋台』って厨房に伝えたらすぐに出してくれるからなー!」
恐ろしい勢いで走り去ったオグリに補足しておく。
素晴らしい助っ人だ、助かった。
「たぶん何回かの追加でカンバン(売り切れ)になっちまうな!みんな、あとちょっとだから頑張ってくれ!!」
「「「おーっ!!!」」」
さあ、もうひと踏ん張りだ!!
・・☆・・
「あー……みんな、今日は本当にお疲れ様だった!ほんっとうに助かった!ありがとう!!」
祭り開始から数時間が経過した。
俺達の屋台は、まだ祭りの時間が残っていたにもかかわらず完売となった。
……余るくらい用意したんだが、まあ綺麗に売れたもんだ。
あ、勿論社長に言われた警護っちゅうか偵察?もしっかりやった。
店にいながら見える範囲だけだが、特に喧嘩やトラブルの様子はなかった。
こうして店が終わったから、ちょいと休憩したら警邏の真似事でもしようかね。
「つかれたけど、とっても楽しかった!」
恐らく集客率ナンバーワンのウララが、他の屋台から買ってきたニンジンジュースを片手に喜んでいる。
「いっぱいファンの人が来てくれて、ライスも嬉しい……」
ライスも喜んでいる。
例のブーイング事件のレースを見ていた人たちが、入れ代わり立ち代わり応援や激励をくれていたから嬉しかったんだろう。
もしもブーイングする側みてえな連中が来たらボコボコにしてやろうと思っていたが……杞憂でよかった。
「や、やりきったでえ……」
「おう、お疲れさん」
タコ焼きを大量に量産したタマは、成し遂げたような顔をして俺に寄りかかっている。
ジュースを飲む気力もないようだ。
「あまり私は戦力になっていなかったが……その、食べてもいいのか?」
そして、オグリ。
あらかじめ残しておいた食料の数々を前に、俺に伺うような視線を送ってくる。
「気にすんなよ、お前の弾丸輸送で楽になったんだし。遠慮せずに食え食え」
そう言うと、オグリは嬉しそうにタコ焼きを頬張った。
うんうん、オグリはこうでなくっちゃな。
不意に、どおんと大きな音がした。
「あ、けーびいんさん!花火だよ、花火ーっ!!」
屋台越しに見える夜空に、大きく花火が打ち上がった。
おー……ちょうどいいな、一息ついた所に。
「うー、でもちょっと見えにくいね?」
残念そうなウララを持ち上げて、肩車をする。
「さあ、これならどうだウララ?」
「すっごーい!よく見える!ありがとーっ!!」
「はっは、どういたしまして」
俺にとっちゃ、この笑顔の方が花火よりもよっぽど元気が出るけどなァ。
次々と打ち上がる花火に歓声をあげるウララを肩車しながら、俺はなんとも言えない達成感を感じていた。
「あ、あの、おじさま……その、ら、ライスも……」
「お?そうかそうか、よしウララ、右にズレろ……ライスは左肩な!」
「いらっしゃーい!ライスちゃん!」「お、お邪魔しまふ……」
「はっはっは、軽い軽い!次はタマもどうだ?」
「……あんなあ、ウチはもう子供とちゃうで?……せや、ほんならオグリはどないやぁ?」
「む、それは是非お願いしたい!」
「うせやろ……」
【タイキシャトルのヒミツ】
・実は、練習の疲れで寝落ちしてしまって夏祭りに参加できなかった。
結構本気で落ち込んだ。