トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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16話 平穏な日々はどれだけ続いてもいい、古事記にもそう書きたい。

「いやー……マジで重傷人ッスね、パイセン」

 

「発案者おめえと社長じゃねえかよ」

 

 現在時刻は、朝の10時過ぎ。

校舎に沿って巡視しながら、ライに突っ込む。

誰のせいだと思ってんだ、誰の。

 

「……もうこの包帯取らねえか?会う生徒会う生徒に心配されるんだが」

 

「アホすかパイセン。まだ試合から3日しか経ってないのに包帯外したら、さらに別の意味で騒ぎになるッスよ」

 

「むぐぐ……」

 

 フドウギクとの試合から、今日で3日。

俺は……ライと社長が言う所の『偽装工作』の為に、いまだに全身を包帯でグルグル巻きにされている。

そりゃあ、『無名』と背格好の同じ警備員が、試合と同じ所に怪我してりゃあ怪しいとは思うが……これはこれで超目立つんだよなあ。

 

 そうそう、ライスにも言ったがこの怪我はマジで『カモの親子を助けようとして撥ねられた』からってことにした。

言っちまったモンは仕方ねえからな……

おかげでその話が学園中に広まっちまったが、甘んじて受けるしかねえ。

しかしこの格好……

 

「死ぬほど暑いんだよ……」

 

「あー……そうッスよねえ。こればっかりはどうも……っちゅうか、ホントの怪我はどうなんスか」

 

「眉の傷は治ったが……痕が残っちまった。それに右肘もまだ満足に動かん」

 

 医師の診断の結果、筋が痛んでいるようだ。

後に響くような傷じゃないってのが救いだな。

 

「痕ッスか、それはきついっスね」

 

「いや別に。体の方には傷まみれなんだし、今更1つ増えたくらいどうってことねえよ」

 

 モデルとか芸能人なら死活問題なんだろうが、俺にとっちゃ関係ない。

 

「パイセンは男らしいッスねえ……あ、そういえば聞きました?フドウギク選手、まだ入院中だって」

 

「ああ、聞いた。まあ精密検査だろ、やった俺が言うのもなんだが『蛟』を脳天にぶち込まれたんだしな」

 

 加速した踵を脳天に、だもんな。

ああしなきゃ勝てなかったから、後悔はないが。

格闘ウマ娘の防御力なら、大丈夫だと思いたい。

相手を気にしながら戦っていたら、今頃入院してんのは俺だ。

 

「すっごい技だったッスよねぇ……アレが必殺技ッスか?」

 

「前にも言ったろ、『必殺』技は試合じゃ使えねえよ。殺すための技なんだからな」 

 

 『討マ流』には嘘か誠か千年の歴史がある。

その歴史の中には、使えない技、使えるとは思えない技、そして『使ってはならない』技がある。

知識としては知っているが、俺も使うつもりはない。

俺は、『格闘ウマ娘と戦う技』を使うが『格闘ウマ娘を殺す技』を使うつもりはない。

 

 そりゃあ、リングの上で事故が起こる可能性はある。

俺もU-1運営に『試合の上で大怪我しても文句言いません』的な誓約書を会社経由で送ってるしな。

だが、それでも『殺すために』技を使うのは違う。

うまく言えないが、そういうこった。

 

「そうだ、前から言ってたラーメン屋、来週末どっスか?」

 

「俺はいつでも空いてるぞ。ウララ達の都合がいいなら大丈夫だ」

 

「だいじょぶッス!ウララちゃんもライスちゃんも、なんならたづなさんも大丈夫ッス!」

 

「そういえばそうだったな……結構な大所帯じゃねえか」

 

 いつの間にか増えたなあ。

まあ、今更だが。

むしろこれ以上増えないでいただきたい。

具体的にはオグリとか。

いや……奢るにはやぶさかじゃねえんだが、あの子は行く予定のラーメン屋を出禁になってるんだ。

なんでも、食い切ったら1万円!とかいうタイプのデカ盛りラーメンを毎回食ってたらしい。

そら、出禁にされるわ。

チャレンジメニューを食事にすんじゃねえよ。

 

「とりあえず今日も平和みたいだし、飯食って昼からゆったりしてそれからオフっスよ~」

 

「お前完全に忘れてんだろ、今日は変則勤務だぞ」

 

「……はへェ?」

 

 どこに出しても恥ずかしくない呆けツラしやがって。

マジで忘れてたんだな。

 

「昼休憩の後から、アイルランドSPの皆様と合同会議だろうが。月初めの申し送りで聞いてたろ?俺の横で」

 

「……うなぁ~~~!忘れてたっス!!パイセン、なんかいるものとか言われてましたっけ!?」

 

 ライは仰け反っている。

動きがダイナミックだな。

 

「うんにゃ、精々筆記用具だな。ホレ、今月末にホッカイドウトレセンとの交流行事あんだろ……アレについてだよ」

 

「あー……そっかそっか、もうそんな時期だったスねえ……」

 

 今初めて聞きました、みてえな顔すんじゃねえよ。

あの時本当に起きてたか?お前。

目を開けたまま寝てたんじゃねえの?

 

「ファインちゃんとこのSPさん達っスか。あんま関わりないんスよね~」

 

「俺なんかもっとねえよ。ファインモーションと話したことすらねえしな」

 

 お前はラーメン屋の情報とかもらってる分、俺よりも親しいと思う。

 

「とりあえず、巡視の続きだな。ほれ、グラウンド回るぞ」

 

「いっつも思うんスけど、授業中のグラウンドを巡視する必要あるんスかねえ?」

 

「あるに決まってんだろ、不審者がいたらどうすんだよ」

 

 そう言うと、ライがニヤっと笑う。

 

「……パイセンがぶっ飛ばすんじゃないんスか?」

 

「あのなあ……信頼してもらってるとこ悪いが、俺ァ怪我人なの」

 

 まあ、実質的には右肘だけなんだが。

 

「あ、そうッスよね。ウチとしたことが――」

 

「感覚が戻ってねえからうまく手加減ができねえんだ。このコンディションだと人間相手なら最悪殴り殺すかもしれん」

 

 全身の包帯もあるしな。

もし戦うにしても、スタン警棒でなんとかするしかねえな。

普通ならぶん殴った方が早いし強いんだが。

 

「……ウチ、頑張るッス。パイセンがお縄にならないように!」

 

「お、おう。まあよろしくな」

 

 ライが拳を握って気炎を上げている。

よくわからんが、やる気がでたならよかった……か?

 

 

・・☆・・

 

 

「パイセン何にしたんスか?」

 

「C定食だ、今日は麻婆豆腐の気分だったんでな」

 

「あ、ウチもそうしよ。暑い日にこそ辛いモンッスよねえ!」

 

 俺達は午前中の勤務を問題なく終え、現在はカフェテリアにいる。

ちなみにグラウンドに不審者はいなかったが、草まみれになっていたハテナがいた。

葉っぱを取ってやると、ハテナは俺達に向かってにゃあと鳴いて帰って行った。

平和な勤務だ。

 

「ライデンオーちゃん、今日も山田さんと一緒なのねえ。仲が良くておばさん羨ましいわ~」

 

「えへへ、そりゃもうウチとパイセンはバッチリのコンビッスから~」

 

 ライは顔なじみの食堂のおば……お姉さんと何やら話し込んでいる。

ああいった話に割り込むと碌なことにならんのは経験済みだ。

先に席に行っておこう……どうせついてくるだろうし。

 

 今日は平日だ、あと30分もすれば飢えた生徒たちが殺到してくる。

とっとと食って席を空けてやらんとなァ。

 

「お待たせッス~」

 

 俺と同じC定食……麻婆豆腐とサラダ、中華スープに白飯のはずなんだが、相変わらず量のせいで同じメニューに見えねえ。

こっちは『ウマ盛り・普通』でライは『ウマ盛り・特大』だ。

見た目の破壊力がすげえ。

っていうか……

 

「なんかお前の麻婆豆腐、赤くねえか?」

 

「うへへ、追加豆板醤とラー油ッス!」

 

 ……コイツ、大の激辛好きなんだよなァ。

ケツが爆発しても知らんぞ。

ド級のセクハラになるから言わんが。

 

「ま、食うか。いただきます」

 

 まずはレンゲで麻婆豆腐を一口。

うん、今日も安定してうめえや。

口元には包帯が無いから自由に食えるな。

……でも早く取りてえな、コレ。

 

「いっただっきまース!はむ、んんんんん!んっま!!んひぃ~!この突き抜ける辛さがたまんねッス~!!」

 

 見るからに辛そうな真っ赤な麻婆豆腐を、ライが何のためらいもなくパクついている。

見てるだけで汗が出そうだ。

 

『では、次の話題です。先日行われたU-1トーナメント、無名選手対フドウギク選手の戦いですが――』

 

 つけっぱなしのテレビから、身近な話題が流れてきた……

マジで持ち切りだな、この話題。

俺の試合だけじゃなく、トーナメント全体だが。

半年かけて行う大トーナメントだからな、無理もない。

 

「あ、フドウギク選手のセコンドさんが出てるッス」

 

 麻婆豆腐に集中していると、ライが言った。

視線を動かすと、病院が背後に見える野外で見覚えのあるセコンドがいくつかのマイクを突きつけられていた。

これは……生中継か。

 

『――フドウギク選手の容体は!?』

 

『問題ありません。脳波にも異常はなく、各部の打撃等も後遺症が出るようなものはないと言われました』

 

 俺よりも少し年上に見えるウマ娘は、静かにそう答えた。

そうか、よかった。

 

『無名選手の攻撃が危険すぎたという意見が出ていることはご存じですか!?』

 

「――はァ?」

 

 思わず声が出た。

危険って……『蛟』が?

 

『そうは思いません。ルール上でも問題のない攻撃でしたし、見た目には驚きましたが通常の蹴りと同じようなものです』

 

「そッスそッス、このレポーターは節穴野郎っス」

 

 口元が真っ赤になったライが同意している。

……後でちゃんと拭けよな。

 

『しかし、現にフドウギク選手は――』

 

 なおも言い募るレポーター。

 

『――いい加減にしろォ!!』

 

「うお」「ひゃあ」

 

 セコンドが吠えた。

あまりの迫力に、カメラまでが震える。

 

『貴様、どこの局だ!!』

 

『い、いやあの……』

 

 セコンドが詰め寄り、狼狽するレポーターの胸元を確認する素振り。 

 

『TCTだな……おい、発言には注意しろよ!貴様の今の言葉は、つまり……無名選手がウチのフドウギクに忖度して戦えばよかったと、そういうことか!?』

 

『いえ、そ、そのような』

 

『気を遣って!危なくない技で戦えばよかったと!貴様はそう言いたいのだな!?』

 

 セコンドが、怒っている。

青筋が浮かび、目が血走っている。

 

『馬鹿にするなよ、馬鹿にするなよ貴様ァ!!』

 

 さらにセコンドが詰め寄る。

顔色を蒼白にしたレポーターが、後ずさりの途中で地面に尻もちをついた。

 

『あの場において!危なくない技などない!!フドウギクの攻撃を喰らった無名選手の右肘はどうなった!?あれは危なくない攻撃か!?オイ、どうなんだ!?』

 

 尻もちをついたリポーターに、セコンドがさらに近付く。

 

『貴様の発言はなァ!無名選手も、フドウギクも、いや、全ての格闘家の顔に泥を塗るようなものだ!!身に付けた技だけで修羅場を戦う、全ての格闘家たちの努力を!研鑽を!!地に落とすものだ!!』

 

『落ち着いて!落ち着いてください!!』

 

 他のリポーターが慌てて止めに入る。

 

『……呆れたものだな、程度の低いテレビ局だ、TCTは。おい貴様、今度同じようなバカげた質問をほざいてみろ……巌流空手道の構成員、全員からそっぽを向かれることを覚悟しておけ!!』

 

 それだけ言うと、セコンドは駐車場に向かって歩き始めた。

 

『すみません、もう少しお話を――』

 

『不愉快だ!そこに転がっている3流以下のテレビ局のせいでな!今はこれ以上何も話す気はない!……では、失礼する』

 

 セコンドは憤怒の形相のまま去った。

残されたレポーターたちは、何も言うことができなかった。

しばし画面はそのままの状態で……急にスタジオに切り替わった。

 

『えー……これは……』

 

 スタジオのアナウンサーが、引きつった顔で話し始めた。

 

「うへぁ、かっこいいッスけど……巌流炎上しないスかね」

 

「……まあ、多少の文句は出るだろうが大丈夫だろ。巌流の関係者は色んな所にいるからなァ」

 

 それこそ、警察にも。

だから、あまり大事にはならんだろう。

 

「……そういえば、アトヴァーガとのウマインはどうなんスか?」

 

「あのなあ……他人のプライバシーを開示できねえだろ」

 

 まあ、でも……

 

「小学生の、姪っ子的な?存在とメールしてる気分だ」

 

「情緒……」

 

 『今日はいい天気ね!』とか『お昼はこれを食べたのよ!』とかな。

あまりにも試合中と変わり過ぎだろ。

まあ、別に嫌じゃないからいいけどな。

 

「ウチ、あれから調べたんスけど……アトヴァーガ、子供の時は随分な田舎でお婆ちゃんと2人で暮らしてたらしいッスね。そういう所も関係してるんスかねえ……」

 

「婆ちゃんと、2人か……」

 

 そうか、そりゃあ……寂しいよな。

 

「あっ、やべッス、パイセンのおかんスイッチがオンになった気配がするッス!……このライデンオー、一生の不覚っス!」

 

「俺の知らないスイッチを勝手に増設すんのやめてくんない?」

 

 

「お腹すいたーッ!!」「今日は何かなあ」「肉が食いたい」「ちゃんと野菜も食べるんだぞ、野菜も」「ムウ……」

 

 しばし後、生徒の第一陣がやってきた。

さっさと食って退散しようか。

 

「ライ、早く食って出るぞ」

 

「ご馳走様っしたーッ!!」

 

 早いなオイ。

まあいいが。

 

 皿に残った麻婆豆腐を中華スープで流し込み、食事を終えた。

今日も美味かった。

 

 

・・☆・・

 

 

「それでは、合同会議を始めさせていただきます」

 

 トレセン学園、大会議室。

そこに、俺達USCの警備員と……アイルランド本国から派遣されたSP隊がいる。

もちろん、巡回等の警備員は別だ。

例の爺さん3人衆とかはそちらへ割り振られている。

何かがあれば、無線で一斉に連絡が来ることになっているから安心だが。

 

「配布した資料をご覧ください、今月末の交流行事において――」

 

 ウチの先輩であるウマ娘が、資料片手に説明を始めた。

ライにも言った、毎年恒例のばんえいウマ娘とサラブレッドウマ娘の交流行事だ。

まあ、言ってみれば体育祭みてえなもんかな。

お互いに混合チームを組んで走ったり跳んだり綱引きしたり……って感じだ。

抽選による人数制限はあるが、ファンの入場も許可するので結構な盛況になる。

そりゃあな、トゥインクルシリーズとばんえいレースのファンが集まるんだから当然だ。

 

「昨年度の状況を鑑み、USCからは従来の駐在員に加えて本社選抜30名のウマ娘『特別』警備員を派遣。並びに当日は警視庁より『騎バ隊』一個小隊も派遣していただきます」

 

「(一個小隊ってどんくれえだったかな)」

 

「(分隊が分隊長と隊員4名ス。それが三個分隊で一個小隊なんで、他の補佐入れて20名弱ッスね)」

 

 ライは相変わらず妙なことに詳しいなァ。

……本社から選ばれたトップ警備員30人と、騎バ隊20人か。

軽く戦争でも起こせそうだな、マジで。

 

「それではイベント中の警備体制について、ファインモーション殿下直属のSP隊隊長殿にご説明を頂きます」 

 

「――はい」

 

 控えていたウマ娘が立ち上がる。

サングラスをかけ、長い髪を後ろで1つにまとめた妙齢のウマ娘だ。

着こなしたダークスーツ越しの肉体は、無駄な所が一切ないような均整の取れたモノ。

……やはり、U-1にも出れそうな感じのすげえ体だ。

出身はサラブレッド家系だろうが、よくもあそこまで鍛え上げたもんだな……

 

「(パイセンの目がやらしいッス)」

 

「(節穴だよお前の目)」

 

 神に誓ってそんな目はしていない。

 

「我々としては殿下のご安全を第一に考えて動きますが、イベントの都合上イレギュラーな展開があると予想されますので――」

 

 SP隊長の説明が続く。

当たり前だよな、アイルランドからファインモーションを守りに来てるんだし。

この会議の目的は『ウチらはこんな感じで布陣しますよ~』と、向こうさんにキッチリ把握してもらうためのモンだ。

なんたって相手は国賓、王族だ。

それを預かっているトレセン学園で何かがあれば、最悪国際問題になっちまう。

報連相はしっかりしておかんとなあ。

 

「スケジュール上の動きとしましては――」

 

 おっと、予定表に書き込まねえと。

右手がアレだから仕方ねえが、左手だと書きにくいな。

 

「(もし、もし)」

 

 お?

左手に四苦八苦していると、横から声をかけられた。

見ると、SP隊員さんがこちらを見ている。

サングラス越しに、心配そうな目線がこちらへ注がれている。

 

「(資料をこちらに、私が代筆いたします)」

 

「(いやそんな、悪いですよ)」

 

「(お気になさらず、我々は既に把握していることですので――)」

 

 そう言ってSP隊員さんはレジュメを取り、さらさらと書き込んでいく。

そうだとしても、悪いなァ。

 

「(出遅れたッス……おにょれアイルランド……)」

 

 ライがよくわからん悔しがり方をしている。

いや、お前はしっかりメモしろよ。

 

「――と、いうことになります」

 

「(はい、どうぞ)」

 

 資料が返ってきた。

 

「(ありがとうございます、助かります)」

 

「(いいえ……聞けば動物を庇って大怪我をされたとか。その職業精神、感服いたします)」

 

「(……ひ、人として当然のことをしたまでですので、はい)」

 

「(素晴らしいです、尊敬いたします。我々もその姿勢をお手本にさせていただきますわ)」

 

 にこ、と隊員さんが笑った。

 

 ……なんで、カモのアレがアイルランドの護衛にまで伝わってんだよ!!

どういうルートで伝わったん……あ。

 

「(おいライ、お前ひょっとして……)」

 

「(ファインちゃんにラーメン話のついでに話しちゃったッス……で、でもあっちは既に知ってたっスよ?)」

 

 ……謎が明らかになって、謎が増えた。

まあ、ここは女子高みたいなもんだしな……噂が回るのも早い、のか? 

カモ庇って路面電車にとか、俺が無関係だったら絶対話のネタにするしよ。

……もうちょっと普通?の題材にしときゃよかった。

 

 ニコニコと尊敬の眼差しを向ける隊員さんに凄まじい居心地の悪さを感じつつ……俺は会議が終わるのを待つのみだった。

 

 

・・☆・・

 

 

「oh!ヤマダサーン!ハウディ~?」

 

 会議が終わるのと、生徒たちの授業が終わったのが同じタイミングだった。

会議室から廊下に出た所、ばったりタイキに出くわした。

 

「あー……アイムベリーベリーファイン!」

 

 そう言うと、タイキは目を輝かせてこちらへダッシュ。

これは――ハグの動き!

 

「ア!の、ノォウ!ヤマダサン、怪我してマース!!」

 

 かと思えば、俺の前まで来て急ブレーキ。

手をわきわきさせたまま、こらえるように止まった。

 

「そういえばそうだった」

 

「(設定抜きにしても大怪我してる癖に何言ってるんスか……パイセンはたまにアホッス)」

 

 なんだとコイツ……まあそうだが。

 

「ノープロブレム、ノープロブレムだタイキ。アイアム超ストロングだ……カモン!」

 

 俺は叫び、左手を広げた。

 

 ここは、会議室に4つある出口の1つ。

後ろにライ以外誰もいないし、問題ない。

タイキがこんな、捨てられた子犬みたいな顔してるのに放っておけるかってんだ。

 

「!い、いいんデスカー?」

 

「バッチコーイ!俺は出身高校では核シェルターの異名で呼ばれた男だ!」

 

「なんスかそのアホみたいな異名」

 

 しばしウズウズした後、タイキは再び走ってきた。

お、いつもの調子に戻ったな!

 

「ドーンっ!デス!」「――ふんっ!!」

 

 重心を前に倒し、タイキを受け止め……受け止めた瞬間に足の関節を使って衝撃を吸収、地面へと拡散させる。

これぞ討マ流が誇る防御法……『磐根』!

大きな岩が衝撃を大地へ拡散させるように……的な技だ!

 

「どうだタイキッ!俺は超元気だ!」

 

「ホントデースッ!あ、でも右腕、動いてないデース!?」

 

 あっと、流石に気付くか。

 

「ふふふ、俺の腕はノーマル人間の10倍の力があるんだ!片方使えないくらいノープロブレムさ!」

 

「ワーオ!すっごいデース!トウヨウのシンピ?デース!」

 

「はっはっは、そうだろうそうだろう」

 

「……何度見ても絵面がぶつかり稽古過ぎてあんまり羨ましくねッス」

 

 ライが正直な感想を呟いている。

何を言うか、ラグビーのタックルにも似てるだろう!

 

「あーっ!けーびいんさーんっ!」

 

 む、廊下の向こうからウララ!!

こっちに走ってくるあの動きは……ハグ2号だなァ!

 

「よぉウララ!バッチコーイ!!」「バッチコイデースッ!!」

 

 俺はタイキと一緒に、ウララに向かって手を広げたのだった。

 

「じゃ、じゃあその後はウチも……」

 

「あ、すいませんコレ大人は無しなんスよ」

 

「んなぁあ~~~~!!!」

 

 

・・☆・・

 

 

「隊長、あの方は……」

 

「……いや、詐病ではないな。少なくとも右腕は確実に負傷している」

 

「ではその状態で、サラブレッドウマ娘のタックルを正面から……?」

 

「……しかも、衝突の瞬間に下半身の関節を連動させて衝撃を拡散させている。あのような技術、私も見たことがない」

 

「……危険な方、でしょうか?」

 

「……ハルウララ様があれ程懐いているのに、それはあり得ないな。しかし……少し、興味はあるな」

 




【ハルウララのヒミツ】
・実は、ハグしてからグルグル回転させられるのも大好き。
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