トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

22 / 66
20話 交流祭、開始

「チケット取れてよかった……」「毎年高倍率だもんなぁ」「でも転売屋はいないからまだ納得できるよ、個人情報と通し番号が紐付きになってるからな」

 

 帽子を目深に被った俺の前を、ウキウキとした様子のファンたちが通っていく。

誰もが二次元コード付きのチケットを片手に、正門に仮設された入場ゲートへ向かっている。

 

 今日は、こことホッカイドウトレセン学園の交流祭……正式名称『交蹄祭』の当日だ。

昨日のうちに飾り付けられた門が、ファンたちを出迎えている。

さあ……今日は忙しくなるぞォ。

 

「『――こちらライデンオー、こちらライデンオー、感明オクレ』」

 

 イヤホンからライの声。

胸にマウントしたレシーバーを操作し、マイクで通話する。

 

「また自衛隊方式かよ、本職に怒られんぞ……なんだ?」

 

「『……こうしてるとパイセンに耳元で囁かれてる感じがしてむっさアガるッスね……』」

 

「二度とかけてくんなアホ」

 

「『冗談!冗談っスよ……とりあえず今の所問題なしッス』」

 

「こちらもだ。油断しねえように頑張ろうな、ライ」 

 

「『デレたッス……了解ッス!ウチ、頑張るッス!!』」

 

 テンション高く、通話は終了した。

真面目なんだか不真面目なんだかわからんなあ、アイツ。

 

「……先輩離れしろってんだ、まったく」

 

「ふふ……本当に山田様とライデンオー様は仲がおよろしいんですね」

 

 俺の横に立つウマ娘……アイルランドSP隊の隊員さんが笑っている。

この人は、以前の会議で代筆をしてくれた人だ。

何かとご縁があるなァ、この人。

 

 ここには他にも先輩方が配置されているが、俺の近くにはこの人だけだ。

今は近くに部外者がいないので、話くらいは良いだろう。

 

「腐れ縁ですよ、腐れ縁」

 

 SP隊は基本的に、というかずっとファインモーションに張り付くのが仕事なんだが……今回はイベント。

要所に何人かを派遣し、USCとの連携を強化するって方針だ。

それで、この人はここにいるってワケだ。

俺としても、少しは関わりのある人が配置されて助かる。

 

『皆様、ようこそお越しいただきました。本日は――』

 

 遠くの方からルドルフの声が風に乗って聞こえてきた。

どうやら始まったようだ。

少し気になるところだが、俺の配置場所はここ。

交代要員の来る昼までは、ここを離れるわけにはいかん。

 

「……そういえば、隊員さんってなんてお名前なんですか?」

 

 今に至るまで隊員さんとしか呼んでいない。

少なくともファインモーションが卒業する何年か後までの付き合いになると思うので、名前くらいは聞いておこう。

 

「わ、私ですか?ええと……そう、そうですね、『メイヴ』とお呼びください」

 

 ……この言い方、絶対偽名だろ。

悪いこと聞いちゃったかな。

個人の特定を避けるとか、そういう意味で偽名なのか?

 

「メイヴさん、ですか。いい名前ですね、改めてよろしくお願いします」

 

 が、俺は大人なので流すことにする。

別にここに突っ込んでもいいこともないしな。

 

「あ、俺は山田一郎です」

 

「ふふ、よく知っていますよ」

 

 おっと、またファンが来た。

会話を中断する。

 

「もう始まってる!」「なんで電車遅延すっかなあ!」

 

「まだ時間には余裕がありますので、足元にお気をつけください」

 

 走り込んできたファンにそう声をかけつつ、ゲートを指して誘導。

電車遅延か……こりゃ、駅からダッシュで来る連中も多そうだ。

 

 レシーバーで本部を呼び出す。

 

「こちら山田、どうやら電車に遅延が発生した模様です。急ぎのお客様が怪我をするかもしれませんので、医務室の方にも連絡お願いします」

 

「『本部了解、すぐに動けるように手配しておくよ』」

 

 お、この声は真波さんだな。

イベントが見れる位置にある本部……ちょっと羨ましいぜ。

 

「これからもまだ駆け込みが発生しそうですね、山田様」

 

「ええ、それに乗じた不法侵入にも注意しないと」

 

 さっきの客も言っていたが、チケットの抽選は熾烈だったようだしな。

バタついてるときほど、変な奴は出るもんだ。

 

 駅の方角から、塊になってこちらへやってくる一団が見える。

おっと、きたきた。

 

「足元にお気をつけください」

 

 そう声をかける俺の前を走り去る一団。

荷物からチケットを取り出し、入場ゲートへ急ぐ。

 

「チケットを読み取り機にかざしてください、二次元コードをはっきり見せて――」

 

 先輩社員が指示をしている。

読み取りは機械とはいえ、指示はしっかりしとかないとな。

 

 急ぎの客たちは足早に手続きを済ませ、入場を――

 

『エラー、エラー、エラー、コードが違います。コードが違います』

 

 おっと、来なすった。

閉じたゲートの前で、男が狼狽している。

中肉中背、特に特徴のない男だ。

 

「すみません、チケットを拝見いたします」

 

 そう先輩が歩み寄ると、男は踵を返して逃げ出した。

よし、ビンゴ!

 

「メイヴさんはそこにいてください」

 

 傍らにそう言い、男の進路を塞ぐ。

 

「申し訳ありません、チケットを拝見――」「どけよォッ!!」

 

 俺の言葉を遮り、男はリュックサックを振り回しながら走ってくる。

おうおう、元気だねェ。

 

 男に向かって踏み込みつつ、振り下ろされるリュックサックに手を沿える。

そして、それを引き寄せながら――軽く右肩で胸に体当たりした。

 

「げっぇ!?ごぼ!?」

 

 U-1で使う100分の1くらいの力だが、普通の人間にはこれで十分。

胸を打たれた男は、目を剥いておとなしくなった。

 

「はい、おとなしくしてくださいねー」「うぁ、う、ぐうぅう!?」

 

 そのまま地面に男を押さえつけ、拘束。

 

「でかした!騎バ隊来るまで抑えといて~」「了解!」

 

 先輩がサムズアップしつつ、無線機を使う。

 

 ほんの2、3分で、校内の詰所から派遣された騎バ隊員が2人走ってきた。

制服に、プロテクターまで着込んでいるのに速いなァ。

壁が走ってくるみてぇな、すげえ迫力だ。

 

「協力、感謝します。後はこちらで」「はーい、おとなしくしてくださいねー」

 

 どこかのSF雑誌で見た連行される宇宙人のようなスタイルで、男は連行されていった。

尋問コースかなあ。

たぶん偽装だろうチケットの出所とかも調べるんだろうし。

あの反応、明らかに偽造って知ってる感じだったしな。

 

「お見事な手際ですね、山田様」

 

「USC警備員ですからね、当然です」

 

 アレくらいなら他の警備員でもできる。

相手は普通の人間だしなァ。

 

「偽造チケットでしょうか?」

 

「でしょうねェ、あの反応を見るとわかってて使おうとしたって感じですが……どっかで売られてるんでしょうか?」

 

 個人情報と紐付けされてるってのに、危ない橋を渡るもんだ。

イベント自体は後日ウマチューブで公開されるってのに、捕まる危険性を押してやるほどのことかァ?

自分の目で見たいってことかね?

 

 それとも……変なアングルから盗撮とかかァ?

それこそ無謀だぜ、中はここより何倍も警備が厳重なんだぞ?

いや、でも聖蹄祭にもいたな……盗撮犯。

ちょっとライに聞いてみるか。

 

「――こちら山田。ライ、今大丈夫か?」

 

「『ウッスウッス、パイセンの連絡ならいつでも大丈夫ッスよ~』」

 

 ライの後ろから、大層盛り上がってるっぽい歓声が漏れ聞こえてくる。

競技が始まったみてえだな。

 

「たぶん偽造チケットで侵入しようとした不審者をとっ捕まえたんだ。そっちの様子はどうだ?」

 

「『今年は早いっすね!こっちは今の所何も……あ!今観客が先輩3人に囲まれて連行されてったッス!』」

 

 おっと、そちらもか。

 

「『あー、たぶん盗撮ッス。今スマホ押収されてたッスから……うへぇ、キモ』」

 

「気持ちはわかるが周囲に聞こえるように言うんじゃねえぞ……了解、邪魔したな。頑張れよ」

 

「『ウッスウッス!』」

 

 無線を切り、メイヴさんに向き直る。

 

「向こうじゃ盗撮っぽいのが出たらしいですよ、今年は荒れますねェ」

 

「まあ……嘆かわしいことですね」

 

「ですね。俺の目の前でやりやがったらカメラを粉々にしてやる……あの子たちがショック受けたらどうしてくれるんだよ」

 

 真剣に頑張ってるウマ娘たちになんてことしやがるんだ。

男の風上にも風下にも置いておきたくねえな。

 

「ふふ、山田様は本当にお優しいのですね」

 

「普通でしょ。これくらいは普通ですよ、ええ」

 

 メイヴさんが手を口元に当てて、上品に笑う。

……そら上品か、王族の護衛なんだし。

この人もやんごとない家系の出身なんだろうなァ。

俺からすりゃ、雲の上の存在だな。

……そういえば、ファインモーションのトレーナーもそんな感じの人だってライが言ってたっけ。

王族の担当になるには、それなりの出自じゃないと駄目なんかね。

 

 

 しばらく駆け込み入場が続いたが、その後は特に問題はなかった。

その間にも学園の中からは歓声が聞こえてくる。

うーん、盛り上がってんな。

 

「ようやく落ち着いてきましたね、その分中は大変でしょうが」

 

「そうですね。山田様のお陰で私は楽をさせていただきました」

 

「いやいやそんな……」

 

 あんな雑魚くらい、この人も即制圧できるだろうに。

要人警護の訓練は一応受けたが、どうも俺には苦手だしな。

 

 さて、人通りは落ち着いた。

さすがにイベントが始まってすぐに帰ろうって連中はいないだろう。

これからは少しゆったりとした時間になるな。

まあ、暇なのは嫌いじゃない。

むしろ、俺の仕事としては良いことだ。

警備員がひっきりなしに走り回るってことは、えらいことになってるって証拠だからな。

 

「あの、山田様。少しよろしいですか?」

 

 そんなことを考えていると、メイヴさんが話しかけてきた。

なんかの用事だろうか。

 

「はい、なんでしょう」

 

「少し……お話してもよろしいでしょうか?」

 

 ふむ。

暇だから会話したいってことかな。

別に俺も構わんが。

 

「大丈夫ですよ、なんなりと」

 

「あら、フトッパラですね……あの、ホッカイドウトレセンの皆様がこちらへいらした時のことなのですが……」

 

 ……アレか?

ここで俺の『正体』について探るつもりなのか?

参ったなあ、そういうのは社長にやってくんないか?

 

 メイヴさんは少しためらった後、口を開いた。

 

「その……あの、リョーガテンマ様をハグなさった時の技術についてなのですが……」

 

 うあ、やっぱりそうか。

……どうやって誤魔化そうかな。

 

「はい、アレがなにか?」

 

「……見事な所作でした。それで……私達の任務にも役立つと隊長が仰っておりまして……」

 

 ……はぁん?

なんか、妙な話になってねえか?

 

「っこ、このイベントが終わりましたら……その、『実演』を交えてお教え願えれば、と」

 

「……は、はあ」

 

 メイヴさんは俯いている。

これ、本気で言ってんのか?

恥ずかしいのか、それとも嫌なのか……歯切れが悪いな。

だが……まあ。

 

「……USCにそちらから打診をして、許可されるのであれば。俺としては問題ありませんよ」

 

「そっ!そうですか!やっていただけますか!!」

 

 予想以上に食いついてきたぞ、オイ。

あの抱き留め方がSPの何に役立つというのだろうか……

 

「特に特別なものじゃ、ないんですけどね……」

 

「いいえ!いいえ!!素晴ら……とても有用なものです!とても!!」

 

「そ、そうですか」

 

 なんか知らんが……まあ、予想してた質問とは違うからいいとしようか。

誤魔化したりしらばっくれたりすんの、苦手なんだよな。

外国のエリート護衛相手に、腹芸はとてもできん。

 

「早速隊長に報告しなければ……しばし失礼いたします!」

 

 俺から少し距離を取り、自前の無線機を使い出すメイヴさん。

そんなに!?そんなに重要な事かアレ!?

……しかし、通話していても目は油断なく周囲を見渡している。

そういう所はさすがだなあ。

 

「『パイセンパイセン、暇ッス』」

 

 ライからの連絡。

コイツ……携帯並みの気軽さで無線使いやがって。

 

「……いいことじゃねえかよ、平和で」

 

「『ウチのとこ、微妙に競技見えないんスよ~……実況だけは聞こえるんスけど、それがかえって超気になるんス~』」

 

「俺の方は実況も聞こえねえんだよ、音だけでも楽しんどけ」

 

 贅沢な悩みだぜ。

 

「『オグリちゃんが38個目のドーナツに取り掛かったらしいんスけど、どんな感じのパン食い競争なんスかね?』」

 

「……迷路みてえなコースになってんのか?どんな競技なのかビタ一わかんねえ……」

 

 このイベントは、サラブレッドウマ娘とばんえいウマ娘がチームを組んで赤白2つのチームで勝敗を競う。

双方の良さを活かした、エンターテイメント性の高い競技になってるらしいんだが……皆目見当がつかん。

手元の式次第を確認したが『ワクワク☆パンイーター』しか書かれてねえ。

かえって謎が深まるばかりだ。

 

「……盛り上がってんのか?」

 

「『めっさ盛り上がってるッス。さっきからオグリコールが鳴りやまないッス』」

 

 死ぬほど盛り上がってんじゃねえかよ。

それは俺も気になるな。

公開されたらチェックしねえと……

 

「『ライスちゃんも25個と大健闘ッス!うぁあ~!見てえッス!!』」

 

「俺はもっと見てえんだから我慢しろ。実況だけ聞いておとなしくしとけ」

 

 誘惑が凄いので、無線は切っておく。

人通りが少なくなったとはいえ、油断は禁物だからな。

 

「メイヴさんもお姫サマのご活躍が見れなくって残念ですね」

 

「確かに残念ではございますが……仲間が録画してくれておりますので。勤務後にじっくりと楽しませていただきます」

 

 おお、ご立派な職業倫理。

俺も、爪の先くれえは見習わねえとな。

 

「そういえばお姫サマは大層なラーメン好きらしいですが、SP隊の皆さんは日本料理ってどうなんですか?」

 

「そうですね……私は『ジンギスカン』が好きです。こちらへ来て初めて食べましたが、あのソース……病みつきになってしまいますね。アイルランドでも羊はよく食べますが、日本のものはまた違います」

 

 へえ、アイルランドってそうなんだな。

こちとら日本から出たことねえから、外国の話だってだけで興味深いぜ。

 

「そいつはいい、今日の打ち上げはジンギスカンパーティーなんですよ。向こうから肉とタレを空輸するんで、本場の味が楽しめますよ」

 

「あら! それは楽しみですね、とっても!」

 

 手を組んで喜ぶメイヴさん。

そうすっとぐんと若く見えるな。

……俺よりは若いだろうが、そもそもいくつかわからんがね。

 

「ちなみにアイルランドではどんな風に羊を食うんですか?」

 

「色々ですよ、私はシェニーズパイというパイ料理が好きですね!ウィックロウ産のラム肉はとても有名で――」

 

 思ったよりもずっと話しやすいメイヴさんと、人が少ないのをいいことに会話に華を咲かせることとなった。

周囲の姐さんたちがニヤニヤしてるのがちょいと気になるが、まあ、平和でいいこった。

 

 

・・☆・・

 

 

「パイセンお疲れっス~」

 

「おう、午前はこれで終わりだな」

 

 USCの詰所でライと合流した。

これから昼休憩になる。

いつもならカフェテリアで……ってなるところだが、今日はここで弁当を食う。

校舎、スタジオ等の建物には歩哨が立ち、入場が制限されているからだ。

 

「はいパイセン、『人間用・大』ッス」

 

「お、サンキュ」

 

 ライが弁当を持ってきてくれた。

カフェテリアの飯が食えねえのは残念だが……ここの仕出し弁当も美味い。

なんたってUSCの提携店だからな。

ウチの社長は食に妥協しないタチだし、ここに就職してよかった。

 

「いつもより休憩短いからちゃっちゃと食うッス~」

 

 ライの前には、弁当が3つ。

正確に言えば米だけのが1つ、おかずが2つだ。

 

「だな。お前昼からどこだっけ」

 

「医務テント歩哨ッス!やっと競技が見れるッスよ~。パイセンは?」

 

「グラウンド外延部からの警邏だ。俺もまあ、遠いが見えそうだな」

 

 大分遠いし、俺の仕事はまず林に変なのがいねえかどうか見ることだしな。

競技ばっかり見てるわけにはいかねえ。

 

「まーた離れたッスね……んももも、ももう、ももっも(さながらロミジュリッス)」

 

「食いながら話すんじゃねえよ」

 

「ももむももも(パイセンだけッスよ~)」

 

「そもそもなんて言ってるかわかんねえんだよ」

 

 明らかに豆板醤で真っ赤な中華弁当を貪るライ。

見てるだけでも辛いよ。

 

 俺の方は和風弁当なので目に優しい。

お、サワラの西京焼きじゃねえか。

これ好きなんだよなあ……

 

「んぐ……そういえば聞いたッスよ、パイセンがSP隊の美人とイチャコラ異文化交流してたって」

 

「なんだよその風評被害はよ」

 

 姐さんたちだな……情報源は。

まったく、ゴシップ好きにも困ったもんだ。

 

「何の話してたっスか!?欲求不満の解消方法ッスか!?」

 

「……美味いアイルランド羊料理の作り方だ、そんな変な話じゃねえよ」

 

「胃袋を……胃袋を掴みにきてるッス……」

 

 よくわからん妄言を吐きながら、ライがチンジャオロースを白飯で流し込んでいる。

食うか悩むかどっちかにしろ、まったく。

 

「とっとと食って移動すんぞ、ライ」

 

「もももっもむ(ウッスウッス)」

 

 ハムスター娘に進化したライを横目で見つつ、西京焼きに箸を伸ばした。

うん、美味い。

 

 

・・☆・・

 

 

「山田さん、よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 昼食後、グラウンドを迂回して集合場所へ。

そこにいたのは……ライの先輩である騎バ隊のヒメザクラさんだった。

この人かァ……嫌な人じゃないけど、ちょっと苦手というかなあ。

俺の『正体』疑ってるし。

 

 この場所の警邏は、不審者を発見した場合に即連行できるように警察と組んで動く。

一番不審者が潜んでそうなポジションだからな。

USC警備員3人に警官1人が普通なんだが……人員の関係上俺は1人だ。

別に嫌われてるってことじゃないぞ?

『イチローなら大丈夫だろう』という、社長のアレな指示のせいだ。

まあ、いるかどうかわからん不審者よりも今いる生徒や観客の方へ多く人を回したいってことなんだろうけどな。

 

「アナタがいれば安全ですね」

 

 防御服というか装甲服を着込んだヒメザクラが笑うが、それはこっちのセリフだと思う。

盾はさすがに持っていないが、タックルするだけで大抵の人間は吹き飛ぶだろうよ。

 

「はは、お邪魔にならないように頑張りますよ」

 

 だが、俺は空気の読める大人なので余計なことは言わん。

 

『それでは、次のプログラムに移ります……』

 

 エアグルーヴのアナウンスを聞きながら、警邏の始まる時間まで待機することにした。

えーと、次の競技は……と。

 

『トレセン合同騎バ戦』

 

お、盛り上がる奴じゃん。

ばんバが3人でチームを組んで、上にサラブレッドウマ娘が乗る。

それで、上の奴の鉢巻きに着いた紙風船をスポーツチャンバラの棒で割り合うのだ。

見た目もダイナミックだし、勝ち負けが分かりやすい。 

なにより、ウマ娘の反射神経でやるんだからそりゃあもう凄い。

観客たちも手に手にカメラを持って興奮している。

 

 校舎側には白組、こちら側には紅組が布陣している。

もうすぐ入場だな。

 

「騎バ戦ですか、懐かしいですね……トレセン時代を思い出しますよ」

 

「ああ、そっちの学園はもっと派手ですもんねえ」

 

 俺もあっちで勤務をしてたので知ってる。

 

「見た目はほぼ同じですけど、得物が槍ですもんね、槍」

 

 見た感じちょっとした合戦だよ、合戦。

さすがにサラブレッドウマ娘にアレ持たせるわけにはいかんなあ。

振り回すのはできるだろうが、スポチャン用のヘニョヘニョ刀じゃねえと大怪我だ。

アレはばんえいウマ娘の防御力があるからできるんだ。

 

「ヤマダサンデース!ハウディ~?」

 

「アイム超ファイン!センキュー!!ドゥーユーアベスト!!」

 

「ノープロブレム、頑張りマース!!」

 

 入場待機列から俺を見つけて手を振るタイキに返しながら、ヒメザクラと一緒に歩き出した。




【オグリキャップのヒミツ】
・実は、応援席に山田がいなかったので少ししょんぼりした。
それはそれとしてパンは大量に食った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。