トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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21話 交流祭、つつがなく終了。

「盛り上がってんなあ」

 

「そうですね、いいことです」

 

 ヒメザクラと並んで歩く。

競技の方ばかり見ているわけにはいかないが、それでも歓声が響くとちょっと気になる。

 

「メーン!デース!!」「うわっちゃ!?あああ……」

 

 おお、今まさにタイキが1人討ち取ったぞ。

相手のウマ娘は……ええと、誰だっけ。

2000人以上いるからわかんねえ……

ウワサだと理事長は全員顔も名前も覚えてるって聞くが、マジなんだろうか。

だとしたらすげえや。

 

「ウチの後輩たちも頑張っていますね」

 

「さすがばんえいウマ娘、持久力と体力はえげつないや」

 

 3人で1組とはいえ、上に動き回るウマ娘を乗せているというのによく動く。

丈夫な足腰あってこそのモノなんだろう。

 

「最後まで見てたい所ですけど、そろそろ林に入りますか」

 

「はい、行きましょう」

 

 盛り上がるグラウンドに背を向け、先に立って林へ。

俺の仕事は警邏だからな、観戦ばっかりってワケにもいかん。

こればかりは仕方ない。

 

 

 林に入り、奥へと進む。

歓声が木立に遮られ、聞こえなくなってきた。

……ここまで入れば大丈夫か。

このまま、林の中を外延部に沿って巡回だ。

 

「この奥からの侵入は可能ですか?」

 

「道に面したところには2メートルの塀があって、さらにその上に5メートルの有刺鉄線があります。空でも飛ばなきゃ侵入は不可能でしょう」

 

 加えて、監視カメラと人感センサーがある。

そっちはUSCが常時確認してくれているので、何かあればすぐに連絡が来ることになっている。

 

「そうですか、それなら安心ですね」

 

 前日に門から潜入して……ってのもまあ無理だろう。

昨日はいつもの3倍の人員が夜警してたし。

だが、物事に絶対はない。

油断だけはしないようにしねえとな。

 

「ヒメザクラさん、そういえば午前中に偽造チケットっぽいのを捕まえましたけどアレどうなりました?」

 

「目下尋問中です。チケットの方はかなり精巧に作られていました……自作なのか購入なのか、まだ口を割りません」

 

 あらら、ご愁傷様。

今頃騎バ隊に詰められてんだろうな、圧力が凄そう。

あ、騎バ隊っていえば……?

 

「あの、話せないんなら全然大丈夫なんですが……以前に合宿所に出た連中ってどんな動機だったんですか?」

 

 新聞では片隅の方に『合宿所に侵入した男たちを逮捕』っていう記事が載っただけだったしな。

たぶん、報道規制が敷かれたんだろう。

 

「ああ……他言無用でお願いしますよ?」

 

「当然です」

 

 一瞬周囲に視線を飛ばしたヒメザクラが、声を落とした。

 

「まあ、よくある『反ウマ思想』に毒された奴らです。ネットの掲示板で意気投合し、あの日に集合したと」

 

「はぁ……組織的な連中じゃなかったんですか。それで、随分物騒なモン持ってましたけど目的は?」

 

 そう聞くと、ヒメザクラは苦笑。

 

「『特にない』んだそうです。しいていえば『盗撮』です」

 

「……は?」

 

 そりゃ、どういうこった?

 

「侵入して、お目当ての生徒の映像なり写真なりを手に入れたかったそうですね……」

 

「いやいやいや、さっきの『反ウマ娘思想』は?それに、催涙スプレーやら大型ナイフやら持ってましたが?」

 

「彼ら曰く『護身用』だそうです。もしも警備員に見咎められたら、それで反撃するつもりだったとか」

 

 力が抜けるのを自覚する。

なんだ……その、アホは。

 

「一応その思想は、まあ、持っていたようです。ただ、ファッションというか、遊びというか……さほど積極的に活動しているようなタイプの人間ではありませんでした」

 

「……つまり、『なんちゃって反ウマ娘思想』ってことですか? 馬鹿じゃねえの……?」

 

 似たような浅い思想でキャッキャしてた変態の集まりかよ。

 

「最近多いんですよ、ああいったタイプの人間は。『なんとなくウマ娘が気に入らない』程度で、積極的に排除したり、傷つけたりしようとはしないのですが……それでも今回のような事件がたまに起こります」

 

「なんてアホだ、世も末ですね」

 

「ええ、本当に」

 

 俺もヒメザクラも苦笑しかできない。

 

「ああ、それと『あの警備員を暴行で逮捕しろ!』と暴れている男がいました。催涙スプレーにサバイバルナイフまで持ち出しておいてよくもまあ言えたものですが」

 

「ははは……」

 

 なんかこう、後ろにえげつない思想団体でもいんのかと思って損しちまった。

まさかそんなにアホだとは……この山田の目をもってしても見抜けなかったぜ。

 

「……つまり、ナチュラルにウマ娘が『下』だと思ってんのか。だから無茶苦茶なこともできる、ってことかよ……反吐が出やがる」

 

 上だの、下だの。

しょうもねえ連中だよ、本当に。

人間……いや、生き物やらしとくのが勿体ねえぜ。

 

「もちろん、山田さんが訴えられるようなことはありませんのでご安心を」

 

「それはありがたいですねェ」

 

 ま、民事で訴えられてもそんときゃ社長に頼るがね。

USCの誇る敏腕弁護士連合軍で粉々にしてやるわ。

清々しいほどの他力本願だが、こういうのは適材適所だしな。

 

「内容は内容ですが、このタイミングで世間に晒すのは少し問題ですので……URAからの要請でこのような形に落ち着きました」

 

「……成程」

 

 『無名』関連でざわついてたからな。

あの後すぐに例の『公式声明』出したけどなァ。

ほんと、人の勝負を変な形で利用しやがってよ、ゴミ共が。

『俺』が強いだけで、『人間』が強いわけじゃねえだろっての。

気色悪い勘違いしやがって。

 

「ウマ娘が気にくわねえんなら、どっかの無人島にでも引っ越せってんだよ……」

 

「はは、その通りですね。山田さんは本当に……ウマ娘のことを大事に思っておられる」

 

 やめてくれよ、背中が痒くなっちまう。

 

「USCの警備員ですので、当然ですよ」

 

「そうですか、ふふ」

 

 何やら生暖かい視線を感じたので、気恥ずかしくなって先に歩き出した。

……これくらい普通だと思うんだがなあ。

 

 

・・☆・・

 

 

「問題ありませんでしたね」

 

「ええ、平和でした……お前下りない?」「めぇおう~」

 

 林の中は平和そのものだった。

不審者も、スズメバチも、蛇もいなかった。

そして何故か木の上に登って下りられなくなったハテナさんがいた。

見つけるや否や、彼?彼女?は肩に飛び乗ってきた。

そして下りない。

ここで暮らします!くらいに寛いでいらっしゃる。

 

「いい人は動物に好かれると言いますからね」

 

「いやこれ、キャットタワー的な意味で好かれてるだけでしょ」

 

 俺のジト目をものともせず、ハテナは肩の上で喉をグルグル……いやドゥルドゥル鳴らしている。

ちっちゃいバイクかお前。

 

「あー!けーびいんさーんっ!」「ヤマダサンデースッ!!」「一郎さんですわーっ!」

 

「よお、ウララとタイキうおおおおお!?」

 

 聞き馴れた声に振り向くと、満面の笑みのタイキと何故か騎バ戦状態のウララが走ってきた。

いや、騎バ戦っていうか……ウララはテンマに肩車されてんのか。

そんなに高くて怖くねえのかな?

 

「お疲れ2人とも……タイキストップ!今は駄目だ!」

 

「ワッツ!?オゥ!猫ちゃんデース!」

 

 ハグ体勢で加速してきたタイキは、肩のハテナを見て急ブレーキ。

……ハテナだけじゃなく、今は部外者もめっちゃいるからな。

ハグ写真がネットに出回ったら炎上しちまう。

ありがとう、ハテナ。

 

「最初のころは見てたが、活躍してたなあタイキ」

 

「ハーイ!ゴニンヌキ?しましタ!」

 

 五人抜きかあ、やるじゃねえか。

こちらを見ている観客がいなかったので、思う存分ワシワシしてやる。

 

「ン~♪」

 

 タイキは目を細めて嬉しそうだ。

 

「ウララは……騎バ戦にはいなかったよな?」

 

 参加は志願制だし、どう見ても不向きだし。

 

「うん!わたしは次の『二人玉入れ』に参加するの!テンマちゃんといっしょ!」

 

「ですわ~♪ ウララちゃんと一緒に玉という玉を入れまくりますわ~♪」

 

 二人玉入れってのは、見ての通り肩車状態でやる玉入れのことだ。

通常の競技より何倍も高い位置にゴールがある。

 

「カワイイ友達ができてよかったじゃないか、テンマ」

 

「ヒメ先輩、ごきげんよう~♪ ええ、素晴らしい出会いですわ~♪キングちゃんとも仲良くなれましたし、来てよかったですわ~♪」

 

 ヒメザクラとは顔見知りらしい。

まあ、卒業生……それも有名人だからな、当然か。

 

「そういやいねえな、キングヘイロー」

 

 だいたいウララと一緒にいるんだが、姿が見えない。

 

「ええと、キングちゃんはねぇ……今保健室にいるんだよー……」

 

「オーウ、ブレッドイートでガンバリすぎましター……」

 

 ブレッド……ああ、パン食い競争か。

嘘だろキングヘイローが!?

どんだけ食ったんだよ……アレ午前中の競技だから結構長いこと離脱してんのな。

 

「あの体で22個も食べたのは凄まじいですわ~……ですが、ライスシャワーさんには少し及びませんでしたけど」

 

 テンマが補足する。

22個……すげえな、頑張ったんだな。

 

「巡回のついでに見舞いに行ってやろうか……ちなみにライスは大丈夫だったのか?」

 

「オグリさんの次にい~っぱい食べてたんだよ!全部で35個!次の玉入れにも出るんだって~」

 

 よし、ライスは大丈夫だな。

アレだけ食うのになんでちっこいまんまなんだろうか、謎だ。

 

『次の競技に参加する選手は、入場ゲートへ集まってください。繰り返します、次の競技に――』

 

 おっと、アナウンスだ。

 

「ウララ、それにテンマ。怪我に気を付けて頑張れよ~」

 

「はーい!いってきまーす!」「行きますわよ~ウララちゃんっ!」

 

 ウララとテンマが、正確に言えばテンマが結構な勢いで走り去っていく。

おお、速い速い。

 

「ワタシもオウエン、いってきマース!」

 

「おう、いってら」「にゃおぅ!」

 

 タイキはハテナを一撫でして去っていった。

みんな、元気で何よりだ。

 

「テンマ、会う度にデカくなるなあ。末は自衛隊か警察か……」

 

「テンマはUSCを希望すると思いますけどね」

 

 ああ、そういえばそうか……社長が実母だし。

いい戦力になるだろう。

 

「私としては、騎バ隊の後輩になって欲しい所ですが……」

 

「でしょうねえ……さて、引き続き回りますか」

 

 競技が始まれば、人の目は当然そこへ向く。

何度も言うが、トラブルが起こるのならその間だろう。

応援したい気持ちをしまい込みつつ、校舎方面へ足を向けた。

 

 校舎の間を歩いていると、前方から泣き声が聞こえてきた。

ヒメザクラと視線を交わし、速足でそこへ向かう。

この感じ……子供かな?

 

 

「ああもう……ね、お名前言える?どこから……あー、泣かない、泣かないの、よしよし」

 

 開けた場所にたどり着くと、そこにはしゃがみ込んで泣く子供のウマ娘と。

なんとか泣き止ませようとしているタイシンがいた。

こりゃ、珍しい組み合わせだ。

 

「タイシン、どうしたんだ?」

 

 そう聞くと、タイシンがこちらを見た。

とても困惑した様子だ。

 

「泣き声がしたから来てみたんだけど……この子、泣いてるばっかりで何にも話してくれなくてさ」

 

 あー、迷子あるあるだなあ。

パニックになってんだろう。

 

「うし、任しとけ……ハテナ、お前の力を貸してくれ」「めぇおう」

 

『しょうがねえな……』みたいな顔のハテナを持ち、子供の前にしゃがみ込んだ。

 

「お嬢ちゃん、コレ見てみ~」

 

 俺の声に顔を上げた子供は、目の前にでんとドヤ顔しているハテナを見て目を丸くした。

泣いてる子供ってのは、言葉で聞くより何か興味を惹くものを見せた方がうまくいく場合が多い。

 

「グス……ねこさん」「にゃぁお」

 

『猫さんですよ~』的なよそ行きな声を出すハテナを、子供に押し付けた。

 

「この猫さん、迷子なんだよ。ちょっと抱っこしてあげてくれるかい?」「う、うん……」

 

 子供はおずおずとハテナを抱きしめた。

すると、ハテナは涙が付いた頬をひと舐め。

何度か繰り返すと、子供は笑顔になった。

アニマルセラピーの効果は抜群だな。

 

「えへぇ、かわいい~……」「まお、にゃぁう」

 

 しばらくしてすっかり元気になった子供。

今度は、ヘルメットを脱いだヒメザクラが横にしゃがみ込んだ。

 

「こんにちは、おまわりさんだよ」

 

「こんにちは~、おねえさん、きばたいのひと?」

 

「そうだよ、よーく知ってるねえ」

 

「おねえちゃんもそうなの!」

 

「へえ、そうかい……」

 

 よしよし、うまくいきそうだな。

 

「タイシン、よく面倒見てくれたなぁ」

 

 あっちはヒメザクラに任せて、タイシンに声をかける。

 

「別に……来ただけだし、それに役にも立たなかったから」

 

「いやいや、そんなことはないぞ。お前がいたからあの子はここに残ったんだ……泣きながら別の場所に行かれる方がマズい」

 

 それだけでも大したもんだ。

 

「放っておけなかったんだろ?さすがはトレセン学園の優しいおねえちゃんだな、うん」

 

「っば、馬鹿にしてんの!?そんなんじゃないし!」

 

 タイシンは真っ赤になった。

素直じゃないんだからもう……逆鱗に触れるだろうから言わないけどな。

 

「まあ、なんにせよありがとうな、タイシン」

 

「……別に、普通だし」

 

 頬を染めてそっぽを向くタイシンに、俺は心が温かくなった。

……ホラな、ウマ娘はいい子ばっかりじゃねえか。

『反ウマ』のアホ共に見せてやりてえよ、ほんと。

 

「山田さん、この子を迷子センターまで連れて行きます」

 

 ヒメザクラは、泣いていた子供を抱っこしている。

子供はさらにハテナを抱っこしていた。

ほっこりするな、この光景。

 

「よろしくお願いします、俺も一回りしたらそちらへ顔を出しますよ。……お嬢ちゃん、その猫ちゃんを頼むな?今頃飼い主が寂しくって泣いてるかもしれんから」

 

 そう言うと、涙の痕を付けた子供が二コリと笑った。

 

「うん!おじちゃん、おねーちゃん、ありがとう!」

 

「いいってことよ」「……どういたしまして」

 

 俺達に手を振り、子供はヒメザクラに抱かれて去っていった。

あの様子なら大丈夫だな。

ハテナ……子供のメンタルはお前に任せた。

あとで適当に逃げといてくれ。

 

「っていうか、アンタ慣れてんだね。子供の相手」

 

「そりゃお前警備員だもんよ。最近はここ専属だが、デパートの施設警備なんかやっと大体迷子に出くわすぞ」

 

 俺はまあ、人相もよくねえし身長もデカいからな。

そのままだと確実に怖がられちまうから、色々やり方を考えたんだ。

 

「いくつか簡単な手品とかも覚えたな。泣いてる子供をあやすのにあれ程便利なモンはねえぞ」

 

「ちょ、ちょっと想像できないんだけど……あはは!」

 

 ほら見ろ、タイシンにも大うけじゃねえかよ。

やはり手品は偉大だな。

 

「そういえば、お前競技はいいんかよ」

 

「ちょっと空いてたから散歩。その、人ごみってあんまり好きじゃないから……」

 

 あー……コイツちっちゃいもんな。

これで高等部ってのもビックリだ。

タマもそうだけどよ。

 

「そっかそっか、まあ俺達が見回りしてるから大丈夫だとは思うが盗撮とかには気を付けろよ。なんかあったら走って逃げて警備員か警察に言え」

 

「うわ、そんなんいるの、キモ……まあ私は、大丈夫なんじゃないの?」

 

 ……何言ってんのコイツ?

 

「はぁ?お前むっちゃ美人じゃねえかよ。バリバリ盗撮されるわ、もしいたら」

 

「……は?」

 

 タイシンは目を丸くしている。

いや……その反応はおかしいだろ。

だいたい、ウマ娘って種族は美人まみれじゃねえかよ。

今までの人生で美人じゃねえウマ娘見たことねえぞ。

 

「……何アンタ、セクハラ?蹴るよ!」

 

「なんでだよ!前だって変なのにナンパされてただろうがよ!?客観的事実だ、事実!」

 

 やめろォ!お前の足はそんなしょうもない目的に使うようなモンじゃねえだろうが!

あと言われて蹴られるんならいいが、不意打ちだと思いっきりダメージを与えちまうだろ!そっちに!

格闘ウマ娘に蹴られても大丈夫なように鍛えてるんだから!

 

「自覚しろって、ウマ娘はどいつもこいつも美人しかいねえんだからよ。お前だってその一員だし、なによりレースでも有名じゃねえか……狙われる側なんだよ、お前は」

 

「う……ま、マジで言わないでよ!そんな真正面から……」

 

「じゃあ横から言えばいいのかよ」

 

「そういうことじゃない!まったく……」

 

 タイシンはぷりぷりと怒っている。

 

「……アタシ、もう行くから」

 

「おう、怪我に気を付けて頑張るんだぞ~」

 

「……うっさい! まあ……うん」

 

 耳をぴこぴこしながら、タイシンは歩き去った。

耳と尻尾が忙しいなあ、お前。

照れてんのか?

かわいらしいこった。

 

 さて、俺も行くか。

 

 

・・☆・・

 

 

 あれからは、特にこれといって何かが起こることはなかった。

いや、迷子とかは多数発生したが……荒事はなかった。

最初に盗撮犯人をとっ捕まえたのがいいパフォーマンスになったのかね?

まあ、普通の人間なら平均身長2メートルのばんえいウマ娘、さらに同サイズの警察が山ほどいる空間で暴れねえか。

 

 合間合間に見ていたが、競技の方も大盛況だったしな。

俺の知ってる子たちも、いろんな競技で頑張っていた。

観客も喜んでたし、本当にいい交流祭だったな。

ほとんど見れなかったのは残念だが、そこは仕方ねえ。

 

「山田さん、もういいか?」「ヤマダ、まだか?」

 

「ステイ!ステイだお前ら!今置いたばっかり!置いたばっかりだから!!生肉!まだ生肉!!」

 

 そして、現在時刻は夜。

『交流祭お疲れ様!来年もよろしくねジンギスカンパーティー』の真っ最中だ。

機材その他が撤去されたグラウンドの端で、イベントに参加した全ての関係者が思い思いの場所で楽しんでいる。

BBQ用の焼き台の半分に、北海道では見慣れたあのドームが乗っている。

ハイブリッド仕様だな。

 

 俺も日中の疲れを癒そうと端も端の方をライとキープしていたんだが……なんか、オグリとブライアンがいる。

お前ら大活躍したんだから真ん中の方へ行けよ!!

ああ、ブライアンはそういうの苦手だったよな……じゃあオグリは?なんとなく?ああ、そう……

 

「仕方ねえなホントにお前らは……」

 

 持ち込んだクーラーボックスを開け、中から包みを取り出す。

 

「ホレ、これでも齧って待ってろ。猪ジャーキーだ」

 

「ありがとう!」「ン、ン」

 

 炙って喰おうと思ってたのに……まあ、いいか!

美味そうに食う顔には敵わんしな!!

 

「パイセンパイセン!あーん!あーん!」

 

「しょうがねえなお前……」

 

「んなぁ!?ナイフに刺すのはアブねッス!?ウチにそんな性癖はないッス!!」

 

 どんな性癖だよもう。

仕方ねえから摘まんだ奴を……お前そこは俺の指だ変態!!

 

「見せつけてくれるな、イチロー」

 

「社長もなんでこんな端っこに来たんですか」

 

「私は今回の主賓ではない。ここら辺りがあっているのでな」

 

 ぬっと社長が出てきた。

見せつけてるのは漫才みてえなもんです。

 

「私もいましてよ!」「わたしもーっ!」

 

 その後ろからテンマが顔を出す。

さらにその後ろからはウララだ。

おいおい、大所帯だな。

 

「おう、2人ともお疲れ……ウララ、キングヘイローは大丈夫か?」

 

「うん!あっちでトレーナーと一緒にいるよー!」

 

 そっかそっか、元気になってよかった。

 

「山田さん……」「ヤマダ……」

 

「おおっと!焼けたな!食え食えっ!」

 

 捨てられた子犬のような顔をした2人にゴーサイン。

猛然とラム肉が消えていく。

 

「ウチ、追加もらってくるッス!!」

 

「私もお手伝いしますわーッ!!」

 

 ライとテンマが走っていく。

頼むぞ、そこら辺の焼き肉屋が裸足で逃げ出すような量を頼む! 

 

「オグリ……はいいとして!ブライアンはタマネギさんも食おうな~、タレが沁みててうめえんだから」

 

「もももむむむも、もももも(そうだぞブライアン、この玉ねぎはとても美味しい)」

 

「ンウ……わかった」

 

「よーしよしいい子だいい子。おっとウララ、コッチも焼けたぞ」

 

「ありがとーっ!」

 

 ウララの取り皿に肉と野菜を盛ってやる。

いろいろ頑張ったんだからしっかり食わないとな。

 

「うまいか?」

 

「んん~……おいしい!いくらでも食べれちゃうかも!」

 

 花が咲いたように笑うウララ。

あーあー、タレが口に付いてんぞ、まったく。

拭いてやろう。

 

「ほれほれ」「わわっ……えへへ」

 

 あー、なんだこれ。

無限に世話を焼きたくなるな、キングヘイローの気持ちがよくわかる。

 

「イチローは本当にウマコンだなあ」

 

 やめてください社長!

こんな無垢な娘の前で!教育に悪いでしょ!!

 

「うまこん?」

 

「おおっとウララ、ニンジンも焼けたぞ」

 

「わーい!ありがとーっ!けーびいんさんも食べてね、はい、どーぞ!」

 

 ウララが焼けた肉を俺の取り皿へ。

はあ、なんだこのいい子は、いい子すぎる。

……『反ウマ』の連中にも見せてやりて……いや、ウララに悪影響がある、絶対見せねえ。

 

「そうだイチロー、SP隊との会談は明日になった。立っているだけでいいからお前も来い」

 

「……了解です」

 

 うええ、俺も行くんかよ。

まあ、社長のことだから悪いようにはならんだろうが……

 

「戻ったッス!」「ただいま戻りました!ですわーッ!!」「ヤマダサーン!」

 

 ライとテンマが肉とタイキを持って帰ってきた。

増えた!食う奴が増えた!!

いや、そこは別にいいけど面積足りるか……?

 

「おじさま!ライスが焼いたニンジン、ど、どどど、どうぞっ!!」

 

 ウワーッ!?ライスまで!?

お前ソレ鉄串に刺しすぎだろ!?俺はばんえいウマ娘じゃねえぞ!?

 

「ンぐググ……美味い!ライスはニンジン焼きの才能があるなァ!!」

 

「わ、わーい……!」

 

 だが漢山田、ウマ娘に悲しい顔はさせられんのだ!!

 

「ライス、お肉もいっぱい焼くね、前のBBQのお返しだよ!」

 

「はーもう!みんないい子だなァ!いい子!!どこに出しても恥ずかしくねえいい子ばっかりだ!!!」

 

 俺は、明日の胸やけを覚悟したのだった。

 

 

・・☆・・

 

 

「離して!離してカレンチャン!ライスが……ライスが!」

 

「離しませ~ん☆ ほらお口アーン☆」

 

「むぐぐぐぐ!!」

 

「(何のためらいもなく梅ペーストまみれのトウモロコシを食べさせるカレンチャンカワイイ……)」

 

「っぷは!ちょっと川添!助けなさいよ!!」

 

「カレンチャンがカワイイので無理です」

 

「や~ん♪」




【ビワハヤヒデのヒミツ】
・実は、野菜を食べるブライアンを涙目で見つめていた。何故かそれを見てウイニングチケットは号泣した。
ナリタタイシンは呆れた。
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