トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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23話 試合前のBBQは気合が入る。

「――っし!!」

 

 放った右のミドルキックが、キックミットに吸い込まれる。

3枚を重ねたそれは、俺の蹴りをしっかりと受け止めた。

 

「――ふっ!!」

 

 脚を引き戻し、軸足をスイッチ。

すかさず左ミドル。

 

「――っし!!」

 

 また引き戻してスイッチ。

右ロー。

 

「――っだ!!」

 

 左ロー。

 

「――おぉっ!!」

 

 右ハイ、そして左ハイ。

 

「ふううぅう……」

 

 息を吐きつつ、後退。

残心しつつ、構えを解く。

 

「……大丈夫か、テンマ」

 

 キックミットを保持していたテンマに声をかけた。

 

「だいっじょうぶですわっ!バッチコイですわーっ!!」

 

「よし、休憩な」

 

「ちょっ、なぁんでですの!?」

 

「生まれたての小鹿みてえな足しといてよく言うぜ。助かったよ、ホレ水飲め」

 

 蹴りの衝撃で足を震わせるテンマに、スポーツドリンクを投げた。

 

「あわわ、わわわ」

 

「ホレ見ろ」

 

 受け取ろうとしたテンマは足をもたつかせ、尻もちをついた。

……調子に乗って蹴り過ぎちまったな。

 

 時刻は夕暮れ。

場所は、警備員詰め所の奥へ行った所にある空き地である。

生徒たちはまず来ないし、近隣の工事現場の騒音もあるのでいい隠れ蓑だ。

 

「今日はライ先輩がお仕事ですので、わたくしが一郎さんをしっかりサポートしなければなりませんの!」

 

「はいはい、ありがとうよ。とりあえず休憩な」

 

 俺もベンチに腰かけてドリンクを煽る。

火照った体が冷えて気持ちがいい。

 

「お邪魔しますわ~♪」

 

「なんで隣に来る……まあ、いいけどよ」

 

 もうちょっと端に寄れよ。

ベンチぶっ壊れるぞ。

俺達2人ともでっけえんだから。

 

「いよいよ明後日ですわね!一郎さんの試合は!」

 

「だなあ、あっという間だよ」

 

 早いもので、対戦相手の発表からもう2週間。

交流祭が終わってテンマたちが帰ったのが、つい昨日のことのようだ。

 

「今回は補習がない上に、まさか前々日に来るとはなあ」

 

「お母様の上京に着いて来ましたの!今度は見逃すわけには参りませんので!」

 

 フンス、を気炎を上げるテンマ。

まあ……動機はともかく、補習をクリアしたのは喜ばしい。

 

 昼過ぎに『戻ってきましたわぁ~♪』とか言いながら走ってきたから何事かと思ったぜ。

ちなみに俺は日勤、ライは準夜勤なので今頃先輩社員とタッグを組んで巡回中だ。

 

「一緒に観戦なさるタマモさんたちともまた会えて嬉しかったですわ~」

 

「アイツら今度も来るんだよな……何が気に入ったんだか」

 

 ちなみに今更ではあるが、テンマには当初から俺の正体はバレている。

だってエキシビション参戦を決めた時にその場にいたもんよ。

コイツはぽやぽやお嬢様マインドではあるが、口はとても堅い。

だから別に問題はない。

 

「ウララちゃんたちには言わないんですの?」

 

「……タイミングが、なあ。それに、アレだ、見た目がその……ショッキングだから……」

 

「一郎さんはお優しいんですのね~……でも、慕っている方に隠し事をされている方がショックですわよ?」

 

「うぐぐ」

 

 ぐうの音も出ねえ。

ううむ、どうすっかなぁ。

でもな……今言うのもなあ。

 

「……次の試合に勝ったら言うわ」

 

「ノン!あり得ない事ですが、『負けても』言うんですの!」

 

 ……こうなったらテンマは頑固だ、社長のDNAを感じる……

 

「わかった、わかったよ……」

 

 もはや頷くことしかできない。

それを見て、テンマはにっこり笑って頷くのだった。

 

 しかし……どの程度のやつらにバラしたらいいんだ?

意外と交友関係広いぞ、俺。

ウララとライスは確定として、タイキは……どうすっか。

まあ、その場その場で考えよう。

 

「まあ、次が終われば残りの組み合わせがわかるしな。ちょうどいい頃合いか」

 

 次に勝てば、ベスト8だ。

そしてあと3回勝てば……優勝だな。

参戦を決めた時ははるか遠い道のりだったが……少し、頂が見えてきたな。

 

「なんにせよ、今日はこの辺にしとくか。お前もしっかりストレッチするんだぞ、その後にここで小規模BBQといこう」

 

「やりましたわ~!」

 

 もちろん学園に許可は取ってあるぞ。

ライは勤務中なので参加できんが……後で何か差し入れてやるかね。

 

 

 柔軟を済ませ、シャワーを浴び、着替えて詰所の外に出る。

 

「テンマ、お前は今日ここに泊まるんだっけか?」

 

「ですわ~、またトレセン学園にお泊りできますわ~♪」

 

 まあ、社長の娘なんでそこら辺は自由だ。

ここには風呂も寝る場所もあるしな。

 

「じゃあ俺は材料の買い出しに行ってくる。適当にしといていいぞ」

 

 ウララ達にラーメンを奢っても、俺のファイトマネーはまだビクともしていない。

稽古に付き合ってもらったんだから、しっかり飯を食わせないとな。

 

「でしたらわたくしもご一緒いたしますわ~!荷物持ちとしてお手伝いいたしますわ~♪」

 

 歩き出すと、足取りも軽やかにテンマが追ってきた。

変な所で律儀なヤツだ。

 

「ヤマダサンデース!」

 

 正門の所でばったりタイキに会った。

 

「タイキちゃんですわ~!」「テンマデース!」

 

 2人は嬉しそうにお互い走り寄ると、どごっという異音を響かせてタックル……じゃなくてハグ。

おいおい、大迫力だな。

だがテンマはばんバ、ビクともしていない。

そうか、ウララ経由で知り合ってたんだっけこいつら。

 

「どうしマシター?ホッカイドウ、帰ったんじゃないデース?」

 

「あ~……ちょっと用事があったんですの!それより……これからお食事ですの?」

 

『ホラ、とっととバラさないからですわ』みたいな目線をこちらへ送るテンマ。

スマン……スマン……

 

「そうデース!今日は外、行くつもりデシタ!」

 

 お、外食予定か。

そりゃあいい。

 

「あら、それなら丁度いいですわ……ねえ、一郎さん?」

 

『わかってますよね?』という目線。

ハイハイ、わかってますよ。

俺もその気だったし。

 

「タイキ、それなら俺達と一緒に飯食わねえか?これから買い出しに行くんだがよ」

 

 そう言うと、タイキは目を輝かせた。

 

「ワーオ!ワタシも一緒、いいんデスカー!?」

 

「ノープロブレム、むしろバッチコイだよお姫様」

 

「ですわ~♪」

 

 タイキに詰所で待っているように伝えて行こうとすると、彼女もついてくると言う。

断る理由もないので、3人で連れ立って歩き出した。

おっと、崇城トレーナーに許可を取っておこう。

 

 

・・☆・・

 

 

 学園から徒歩で商店街に向かう。

ここはすぐに来れるから何かと重宝している。

豪華賞品が当たる福引とかもやってて、このご時世にけっこうな繁盛ぶりだ。

 

「どうも、おやっさん。ちょいと遅いけどまだ野菜あるかい?」

 

 まず向かったのは八百屋。

ここに赴任してから長いので、すっかり顔見知りだ。

 

「山田さんかい。おやおや……今日はまた両手に華じゃねえか!タイキシャトルちゃんと……」

 

「コンバンワー!」

 

「お初にお目にかかります、ホッカイドウトレセンのリョーガテンマですわ~」

 

 タイキに続き、テンマがデカい体を折って優雅に挨拶した。

……本当に今更だが、なんでコイツこんな口調なんだろうか。

出会った頃からこうだったが。

社長の教育、か?

 

「北海道!そうかいそうかい、遠くからよく来たねえ!」

 

「社長の娘でな、今ちょっと用事でここに来てるんだよ。いっちょ飯でも食わしてやろうかと思ってねェ」

 

「よっしゃ!待ってな!!」

 

 俺がそう言うや否や、おやっさんは店の奥へ。

しばし待っていると、台車に段ボールを満載して帰ってきた。

 

「ホラよ!今日食うんなら問題ねえ!傷が入ってるから全品半額だぜ!」

 

「おいおい、いいのかこんなによ」

 

 傷ったって……全然綺麗じゃねえか。

 

「いいに決まってんだろ!どうせ売れ残ったら捨てるしかねえんだ!アンタら3人なら楽勝だろう?台車ごと持ってけ、明日返してくれりゃいいからよ!」

 

「ワオ!ワオワオ!すごいデース!サンクス!」

 

「素晴らしいですわ~♪大事にいただきますわ~♪」

 

 タイキ達の感謝に、おやっさんは帽子を目深に被って照れくさそうに手を振った。

さすが、トレセン学園のご近所さん。

皆ウマ娘が大好きなんだな。

 

「じゃあ……ありがたく買わせてもらうぜ、おやっさんよ」

 

「おう!次はウララちゃんを連れて来いよな!!」

 

 俺から金を受け取るなり、おやっさんは奥へ引っ込んだ。

へへ、照れてやんの。

 

「幸先がいいなァ、女神サマが2人もいると御利益があっていいぜ」

 

「もうっ!そんなに褒めても何も出ませんわ~♪」

 

「痛い!?」

 

 やめろ背中が爆発するだろお前このバ鹿力!?

加減してくれ!!

 

 

 その後、肉屋でも同じようなやり取りを終え……学園に帰った時にはちょっとした卸売り業者くらいの荷物になっていた。

あの商店街の連中、なんだかんだ毎度オマケしてくれるけど経営とか大丈夫なんだろうか。

いくらなんでも太っ腹すぎるだろ。

 

「明らかに払った額より貰った量が多いな……」

 

「トレセン学園は地域に愛されておりますのね~」

 

「タイリョーデース!」

 

 タイキは台車を押し、俺とテンマがそこへ乗り切らなかった食材を持っている。

絶対3人分より多いが……まあ、余ったらライとか同僚へ差し入れりゃいいか。

 

「懐かしいですわ~、一郎さんはホッカイドウでもよくやっておりましたわね♪」

 

「おう、校庭の隅でやってて熊が出た時はビックリしたなァ」

 

 匂いに釣られて来たのかなんなのか、いきなり藪から出てくるんだもんな。

咄嗟に鼻面をぶん殴ったら逃げてったからいいけど、猟友会に連絡したり色々大変だったなァ。

その点、ここじゃあ野生動物の心配はしなくていいから楽だ。

 

「ホッカイドウ、行ったことないデース!」

 

「いい所ですわ~♪今の時期は涼しくて最高ですのよ~」

 

「ああ、行くことがあったらホッカイドウトレセンを紹介してやるよ。あそこに聞けば何でもわかるぞ」

 

 タイキはまだまだ日本にいるんだから、オフシーズンとかに行くチャンスもあるだろう。

アメリカに帰る前に、レース以外の思い出も沢山作っていければいいなァ。

崇城トレーナーに相談してみようか。

 

「ヤマダサンも、行きまショー?」

 

 タイキが袖をくいくい引いてくる。

 

「俺ェ?うーん……まあ、時間があったらなァ」

 

「言質取りましたわ~♪」

 

「やりマシタ!」

 

 ……懐かれたもんだよ。

でっかい妹が出来ちまったなあ。

テンマも含めて。

 

 そして、誰にも見られることなく詰所まで戻ってこれた。

そろそろ夕飯時だからな、人が少なくてよかったぜ。

ここの子たち、みんな鼻がいいからなァ……いや、別に見つかってもいいんだがあんまり大所帯になってもな。

 

「よーし、じゃあ準備だ。テンマとタイキは焼き台持って空き地で火を起こしておいてくれ、俺は食材を用意するから」

 

「了解ですわ~!タイキちゃん、行きましょう!」

 

「ハーイ!」

 

 2人は楽しそうに走っていく。

うんうん、若さって最高だな。

 

「待て待て待て!焼き台はここだ!倉庫!手ぶらでどこ行くつもりだよ!?」

 

 ……若さって暴走しがちだよな。

よくあるこった。

 

「さてさて、やるか」

 

 つっても適当に切るだけなんだがな。

台所から包丁とまな板を借りてきて……おや。

 

「山田くんじゃないか。随分な大荷物だね」

 

 真波さんだ。

 

「はは、今からテンマとタイキとちょいとしたBBQするんですよ。よかったら真波さんもどうです?」

 

「楽しそうなお誘いだけど、今日は早上がりなんだ。孫と食事の約束があってねぇ」

 

「おっと、そいつはお邪魔しました。前に行ってたトレセン志望の子ですか?」

 

「ああそうだよ。来年の受験に向けてね、一度学園の話をしっかり聞きたいんだとさ」

 

 小学生なのにしっかりしたお孫さんなんだなあ……俺がその年の頃なんてアホが具現化したような存在だったぞ。

おふくろとおやじに怒られまくった記憶しかねえわ。

 

「それじゃ、失礼するよ」

 

「はい、お疲れ様でした」

 

 お孫さんのことを考えているのか、真波さんはいつもより3割増しくらいニコニコしながら出て行った。

孫ってのはいいもんなんだろうなァ。

俺の場合はまず嫁さんから探さんといけんがね。

 

 さてと、準備だ。

こんなこともあろうかと持ち込んでおいてよかったぜ……秘伝のタレを!

……ま、とはいっても市販のタレに少しだけ果物とか香辛料を加えただけのモンだがね。

だが、あるとないとじゃ大違いだ。

もう1つあるが……上手く出来てりゃいいな。

 

 野菜を食べやすい大きさに刻み……野菜が多い!肉も多い!

誰だよこんなに買ってきた奴は!俺だァ!!

どうしよう……いくらなんでも多すぎんぞ。

ちょっと大仕事だなあ……

 

 あ、そうだ。

もう向こうに持って行って順次やろう。

下味も向こうで付けるか。

おっと、焼きそばも持って行かなきゃな、それに炊いた米も……さらに荷物が増えた!!

まあ、いいか!

 

「山田さん……凄い荷物だな」

 

 野菜その他を抱えて詰所から出た所で声をかけられた。

声の方向は山盛りキャベツがいて見えないがこの声……!

 

「いい所へ来たオグリ!今ヒマか?」

 

「ああ、少し散歩をしていたんだ。仕事中のライさんが『パイセンが暇すぎて泣いてるから遊びに行ってやったら喜ぶッス』と言っていたので」

 

 ライ……いい仕事しやがって。

だが断じて泣いていないぞ。

 

「オグリ……焼肉食わないか?」

 

「――食べる。いいのか?」

 

 おお、見えないけど真剣な顔をしている気がする。

 

「いいに決まってんだろ、それじゃあ悪いけど食材を半分……」

 

「――任せてくれ。こっちの段ボールは私が持つ」

 

 ちょいと真剣さを無駄遣いしているような気がするが、コレで手伝い兼消費役が増えたぞ。

北井トレーナーに許可とらんとな。

 

 

「オグリデース!」

 

「タイキ、それにテンマもいるのか」

 

「お仲間が増えましてよ~♪」

 

 キャッキャしている3人を見つつ、食材を置く。

焼き台には見事に火が起こっている。

 

 ……そうだ、一応確認しておこう。

スマホを取り出し、ウマインを立ち上げる。

 

「『ブライアン、今どこにいる』っと」

 

 すぐさま返信が来た。

 

『実家だ。姉貴と一緒に食事している。どうした』

 

 シンプルな文面だなあ。

しかし実家、実家ね。

じゃあしょうがないな。

 

『グラウンドの葉っぱを見ていたらお前を思い出してな。特に用はない』

 

『ひょっとしてバ鹿にしているのか?』

 

 なんか……すまん。

とりあえず今は内密にしておいて、明日何かを食わしてやろうか。

今から来るとか言い出したらハヤヒデに迷惑かかっちまうし。

 

 じゃあウララとライス……あ、ウマッターに食事風景が上がってる。

こっちもキャンセルだな。

 

「よーし、じゃあ始めるか……あ?」

 

 スマホをしまい、振り向くと……なんか増えてない?

タイキの横でギザ歯をきらめかせるちびっ子!お前は!

 

「ターボじゃないか」

 

 いつ見てもようわからん髪色のツインターボだ。

何度か肩車したりおんぶしたり全力高い高いをしてやった仲だ。

ウララとはまたジャンルの違う子供っぽさがかわいらしい。

 

「やっほーヤマダ!なんか面白そうなことやってるから来てみた!」

 

 元気に挨拶できてえらいなあ。

百点満点だ。

 

「ふーん……お前も焼肉食うか?」

 

「食う!」

 

 いいお返事だこと。

 

「一瞬待て、上館トレーナーに確認を……っと」

 

『ターボに飯食わせていいですか?野菜も勿論食わせますんで』

 

『いいよ』

 

 早い!いつもながら返信が早すぎる!

上館トレーナーっていつもいつも行動が早いんだよな、俺も見習わないと。

 

「オッケーだ、ホイ箸と取り皿。タレは甘いのと普通のと死ぬほど辛いのとどれがいい?」

 

「死ぬほど!死ぬほど辛いのッ!」

 

 コイツもライと同じ激辛信者なんだよな。

強がりかと思ったら、真っ赤なカレー食ってケロッとしてたし……大丈夫だろう。

 

「ホラどうぞ……もうおかわりはいないな?」

 

 ターボに諸々を渡しつつ周囲を見渡す。

うん、誰もいないな。

 

「それじゃ、どんどん焼いていくからみんな好きに食えよ~」

 

 とりあえずは切ったキャベツと肉を並べていくか。

同時並行でカボチャを切る……ふん!

それにしても、突発焼肉は準備で困るなあ。

今度からは突発ハンバーグとかに変えておくかな?いやそっちの方が大変か。

 

「ターボ、キャベツもしっかり食うんだぞ」

 

「うん!」

 

 いいお返事だこと。

ターボは焼けたキャベツをバリバリと美味そうに頬張っている。

やっぱトレセン学園にはいい子しかいねえな。

 

「テンマたちもしっかり食えよ。野菜も肉もいいもんだから美味いぞ……タレはちょっと手を加えただけだがね」

 

「デリシャスデース!」

 

「ふももふもも~♪(おいしいですわ~♪)」

 

「ももも、むむ、も(タレも美味しいぞ、隠し味はなんだろうな)」

 

 ごめん、テンマとオグリは何言ってるかわかんねえや。

ちゃんと飲み込んで喋れ。

 

「ヤマダも食べて!ホラ!」

 

「おう、すまんねターボ……ゴッホ!?!?」

 

 タレ付きだこれ!?

うおお……喉が焼けるぅう……

『ライのおススメ!』だけはあるぜ……辛いを通り越してもはや痛い。

 

「た、ターボ……お前、このタレ大丈夫か?」

 

「何が?むっちゃおいしいぞ!ライねえちゃんのおススメは最高だな!」

 

 ……ウマ娘、凄い。

 まあ、こんなこともあろうかと……牛乳とヨーグルトは完備している。

辛いもの、特に唐辛子系に水は逆効果だからな。

 

「ホレ、皆も飲んどけ。俺が定期購入してる十勝の牛乳だ」

 

 北海道の牛乳はうめえなあ。

ちょいと値は張るが、この美味さには代えられない。

 

「おっと、タイキちょっといいか?」

 

「ハーイ?」

 

「このソース試してくんない?」

 

 タイキの前の肉に、特製ソースをかける。

いつか食わしてやろうと思って用意していたんだ。

 

「はむ……ン!ンン!~~~~~~ッ!」

 

 タイキは肉を頬張ると目を見開き、咀嚼しながら涙目になった。

うあ、やべ……不味かったか?

 

「や、や、ヤマダサーンっ!!」

 

「うおおおお!?」

 

 かと思えば、俺に全力で抱き着いてきた。

し、締まる!すげえ力だ!!

 

「このソース、おんなじ……ステイツのBBQとおんなじデース!ううう……ありがとう、ありがとうございマース!!」

 

 俺に抱き着きながら、タイキは声を震わせている。

……成功だが、ちょいと効きすぎたな。

 

 こいつはビネガーと赤トウガラシに、いくつかの香辛料をブレンドしたソース……タイキの故郷でよく食べられているものを再現したんだ。

たまには故郷の味が恋しいかと思ってな……ネットの知識に感謝だ。

 

 テンマはニコニコとしながら、オグリは……もぐもぐしながら俺たちを見ている。

ターボはタイキが心配なのか、不安そうな顔で手をワキワキさせている。

 

「いいってことよ。前にも言ったがお前さんはこんなに遠くで、1人で頑張ってるんだ……遠慮なく大人に甘えていいんだよ」

 

 背中をポンポンと叩く。

……やっと圧力が緩んできたな、安心してきたんだろうか。

しかし、絵面的には最悪だな。

訴えられたら負けそう。

 

「ハイ……ハイ!」

 

「よっしゃ、それなら飯の続きだ。ソースは大量にあるしな!調子に乗って作り過ぎちまったんだよ、ははは」

 

 タイキは最後にもう一度俺をキツく抱きしめると、パッと顔を上げた。

少し目は赤くなっているが、それ以外はいつも通りの元気な顔だ。

 

「ワタシも、ヤマダサンに焼きマース!どんどん食べてくだサーイ!」

 

 さっき泣いたカラスがもう笑った、ってやつだ。

随分と可愛らしいカラスだがな。

 

「すまない山田さん、私もそのソースを……」

 

「わたくしも!」「ターボも!」

 

「よーしよし!今日はケンタッキー風BBQパーティといこう!なあタイキ!」

 

 ニコニコと肉を焼くタイキにそう言うと……彼女は向日葵のような笑顔を見せた。

 

「ハイ!」

 

 試合に向けて、気合が入ったなァ。

最高のコンディションで臨めそうだ。

 

 特製ソースに舌鼓を打つ3人を見ながら、タイキの焼いてくれた肉を頬張った。

うん!美味い!!

 

「『……山田さんは最高のお兄さんですっ!大好き!』」

 

「ごめんタイキ、今なんて?」

 

「ナイショ、デース!!」




【ナリタブライアンのヒミツ】
・実は、翌日に知って盛大にスネた。
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