トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

30 / 66
26話 綺麗に終わらせてくんねえのか、三女神よ。

「あー……3人ともよく来てくれた、な」

 

 トレセン学園、第二会議室。

そこには、俺とライの他に3人のウマ娘がいた。

 

 ハルウララ、ライスシャワー、そしてタイキシャトルだ。

全員、神妙な顔をして椅子に腰かけている。

ウララとタイキは、特に違和感があるな。

まあ、それは仕方がない。

何故なら……

 

 ――目の前にいる俺が、前にも増して包帯の化け物と化しているからだろう。

 

 ジャルワールとの一戦から一夜明け、現在は昼の休憩中。

準夜勤の俺は、まだ勤務時間ではない。

勤務時間ではないから、ライに頼んで3人をここへ呼んだ。

 

 来た当初、3人は本当に大変だった。

ウララは『どーしたのっ!?』って飛びついてくるし、ライスは『救急車さん呼ばないと!』ってスマホを取り出すし、タイキに至っては無言で俺を保健室へ連行しようとさえしてきた。

ちなみに、全員涙目だった。

なんならちょっと泣いてた。

 

 それをなんとかなだめすかし、席についてもらったのが今だ。

 

「……まずは謝っておこう、俺は、3人に隠し事をしていた」

 

 そして、まずは深く頭を下げる。

 

「前回の大怪我は、カモを助けたんじゃねえんだ」

 

「「「えっ」」」

 

 3人が同時に驚いた。

あ、全員それ信じてたんだ。

ちょっと、いやかなり罪悪感。

 

「実はな……これは、実際に見てもらった方が早いか。ライ、頼む」

 

「ういッス」

 

 ライがリモコンを操作すると、あらかじめ下ろしておいた壁のスクリーンに映像が映る。

そこに映る映像……それは、U-1トーナメントエキシビジョンマッチの録画だ。

こうなったら見てもらうしかねえ。

 

 3人は「?」という顔をしている。

映像の中で、選手……俺とスターラッシュがリングに上がる。

その時。

 

「あ!けーびいんさん!」

 

 ウララが驚いたように声を上げた。

えっ、なんでもうわかったんだ?

 

「えっ!?ウララちゃんなんで……あ、おじさまだ!?」

 

「ワオ!ホントにヤマダサンデース!?」

 

 そして、カメラが寄って俺がアップになった瞬間にライスとタイキも気付いた。

えぇ……なんでェ……?

目と口元しか出てないんだけど、俺。

 

「な、なんでわかったんだウララ……?それに2人も」

 

「だって目が一緒だもん!」

 

「うん、おじさまの目だね」

 

「おんなじデース!」

 

 目……か。

たしか、ルドルフにも同じことでバレたんだよな。

ウマ娘の目、良すぎ。

 

「ああ、うん……そうだ、俺はな、『無名』って名前で……U-1トーナメントに参加してる。前の怪我も、今回の怪我もこのトーナメントで負ったもんだ」

 

 今回のネタバラシ、もちろん社長も納得済みのことだ。

 

『ああ、あの3人か……よかろう、好きにするがいい。ウマコンのイチローとしては、いたいけな娘たちに隠し事をするのが忍びないのだな?フフン』

 

……色々と言いたいことはあるが、許しは得てある。

もういいよ、俺はウマコンで。

でも、人間が嫌いってことじゃねえぞ。

ウマ娘の方が好きなだけだ。

 

「じゃあ……そのすっごい怪我もそーなの?」

 

 ウララが心配そうに聞いてきた。

 

「ああ、昨日試合があってな……っていうか今更だが、3人ともU-1見てないのな?」

 

 かなりの視聴率だし、トレセン学園でも話題になっていたというのに。

3人ともこの映像が初見のようだ。

 

「えへへ……あるのは知ってるけど、その時間には寝ちゃうんだ~?」

 

 と、ウララ。

なるほど……健康的だな。

U-1の放送は夜10時以降になるから、その頃には夢の中か。

 

「ライスはその……こういうの、苦手で」

 

 申し訳なさそうなライス。

うん、まあそんな感じはする。

俺の試合以外も、流血や骨折はしょっちゅうだからな。

明らかにこの子は苦手そうだ。

 

「ワタシも、あんまりデース!痛そうなの、得意ちがいマース!」

 

 まあ、タイキもそうだろうな。

知ってる中だと……そうだな、ターボとかは見てそうだが。

アイツは……まあ、聞かれたらその時に答えようか。

 

「そうか……まあ、というわけでスマン。俺が隠していたことはソレだ、その……怖がらせるかと思ってな」

 

「どーして?」

 

 きょとん、とした顔でウララが聞いてくる。

いや、だって……

 

「……格闘ウマ娘を、正面から殴り倒せる男が警備員なんだぞ?そんなのがいたら怖いだろ?」

 

「え?でも、けーびいんさんだよ?」

 

 ……なんて?

 

「だって、けーびいんさんはわたしをボカってしないでしょ?」

 

「当たり前だろ、する訳ねえ」

 

 何をいきなり言い出すんだ。

当然のことだろうが。

 

「じゃあ、ぜーんぜん怖くないよ!ねえライスちゃん、タイキちゃん!」

 

「うん……知らない人なら少し怖いかもしれないけど、おじさまだもん」

 

「イエス!ヤマダサンは、ヤマダサンデース!とってもいいヒト、デショー?」

 

 3人の表情には、少しの陰もない。

3人とも、心からそう言っているのが……わかる。

 

 そうか。

そうだったのか。

本当に怖がっていたのは……俺、かァ。

情けねえ……

 

「杞憂だったッスねえ、パイセン?」

 

 横から、ライがひょいッと顔を覗き込んできた。

なんだその顔……ニヤニヤしやがって。

 

「……俺が思うよりも、何倍も、何百倍も、この子たちがいい子だったってこと、か」

 

 っへ、情けねえ。

俺はウマ娘を知っているつもりで……まだまだ何も知らんかったって、ことかよ。

はは、情けねえなァ。

 

「なんか、力が抜けちまったなァ」

 

 どかっと椅子に腰かけた。

自分一人で先走った結果、か。

 

「じゃ、じゃあ……おじさま?その傷はたいしたことないの?」

 

 恐る恐る、ライスが聞いてくる。

この包帯は大袈裟なカムフラージュだからな。

 

「ああ、心配かけたな。肋骨2本と左上腕にヒビが入って、額が裂けてるだけだよ」

 

「大怪我だよっ!?!?」

 

 物凄く突っ込まれた。

あれェ!?

 

「いや、だってよ?どこも折れてねえし……」

 

「 大 怪 我 だ よ ッ ! ? 」

 

 もっと大声出された。

いつになくライスが本気だ。

 

 そのまま俺に走り寄ってきたライスは、涙目を復活させて縋り付いてきた。

そして、そっと額の包帯を撫でた。

 

「ほ、ホントだ……血のにおいがする!」

 

 鼻がいいなァ、ウマ娘。

遅れて、ウララとタイキも寄って来る。

 

「すんすん……ほんとだ!けーびいんさん!病院行かないと!」

 

「やっぱりホケンシツ、連れて行きマース!!」

 

 ああもう、さっき泣いたカラスがまた泣いてやがる。

 

「ああ、昨日の試合後にすぐ病院に行ったから大丈夫だ。お医者さんも大丈夫だって言ってくれたよ」

 

 『もう試合すんのやめない?』みたいなことは言われたが。

医者の方も、格闘ウマ娘にぶん殴られた人間を診察するのは俺が初めてだって言ってたしな。

『こんなになるの?殴られただけで?こわぁ……交通事故じゃんこれ……』的なことも言ってた。

 

「ホント?ホントにー!?」

 

 ウララはもうめり込むんじゃねえかってくらい抱き着いている。

ライスは額を擦り続けているし、タイキは何故か無事な手をずっと握り続けている。

なんだこの状態。

 

「ああ、ほんとだ。前にも言ったが俺ァ最強だからな……今日も普通に仕事できるぜ?」

 

「ウチにはそれが一番信じられねッスよ……社長も今日休めって言ってたじゃないッスか」

 

 いや、だってテンマと約束したし。

『ずえったい言うんですのよ~!』って叫びながら成田に消えていったし。

今日言う方がいいかなあ……って。

 

「で、でも無理したら駄目だよ、おじさま?」

 

「そうデース!ムリイズノットデース!!」

 

「いや、別に無理してねえってばマジで。だって動くし、体」

 

「発想が人間の、いや生物の域を超えてるんスよパイセンは……普通は休むッス。ウチなら一日中寝とくッス」

 

 だって仕事はしねえと駄目だろ。

有給使う程の怪我じゃねえし。

 

「まあ……というわけでな、怪我の本当の理由はアレなんだわ」

 

「つ、次の試合はいつなのおじさま!?」

 

 次ぃ?

ええっと……

 

「……今月末だな」

 

 トーナメントの発表はその2週間前だが、まだ時間はある。

 

「そうなんだ……あ、あの、ライスも応援に行っていい?」

 

「うえ?だって苦手だって……」

 

「お、おじさまなら別なのっ!」

 

「お、おう」

 

 いつになく、ライスの押しが強い。

目も本気だ。

 

「あ、ああ。USCが席を確保しているから……」

 

「じゃあ行くね!絶対行くね!」

 

「わたしも行きたい!」

 

「ワタシもデースッ!!」

 

 ウララとタイキまで!?

 

「……ま、こうなるっしょ普通。社長にはウチが連絡しとくッスよ」

 

「す、すまねえ……」

 

 ううむ、すんなり受け入れられた上にこういう展開になるとはなあ……

わからんもんだ。

案ずるより産むが易し、ってヤツかねコイツは。

 

「……あのよ、この話はナイショにしといてくんねえかな?理事長は知ってるけどなにせ『無名』は有名だから、ここに勤務してるって知られたら迷惑が掛かると思うんだよ」

 

 だが、ここだけは譲れない。

職場に迷惑がかかるのは絶対駄目だ。

 

「それと、もしバレそうな……っていうか、正体に感付いてるっぽい子がいたら教えて欲しい。俺から個別に話すからよ」

 

 今正体がバレてる子以外にも、勘がいいのがいるかもしれん。

 

「うん!わかった!」

 

 ウララは毎度毎度いい返事をするなァ……

 

「あの、あのね、おじさま……これって……」

 

 片手でスマホをいじっていたライスが、顔を赤くして画面を向けてきた。

なんだ?これは……うあ。

これ、俺の声明文じゃねえかよ。

厳密に言えば俺じゃねえが……なんで見つけちまうかなァ。

 

「……これ、本当?」

 

 ここで『嘘でーす!!』と言えるほど、俺は鬼じゃねェ。

嘘でもねえし。

 

「……本当、です……ハイ……」

 

「そうなんだ……ふうん、そうなんだ……えへ、えへへ……」

 

 絞り出すように答えると、ライスは嬉しそうに体を左右に揺らし始めた。

急に機嫌がよくなったな……まあ、声明文を見たなら俺がその、ウマ娘大好きだってのはわかるだろうし……

 

「ライス、それなんデース?」

 

「えへへ……はいタイキさん。翻訳版だよ」

 

「フムム……!?オゥ!わ、ワーオ!!」

 

 ちょっと!?なんでそんなバージョンあんの!?

あああ、タイキもじっくり見なくていいから……!

無茶苦茶テンション上がってんじゃん!?

 

「ん~?なあに、ライスちゃん」

 

「えっとね、ウララちゃん。おじさまがね……」

 

 ウララまで興味津々だ!?

あっちょっとライス、説明しなくてもいいから!!

 

「ライ……!」

 

「残念でもないし当然ッス、甘んじて受けるッス」

 

 頼れるかもしれない後輩は無慈悲だった。

ぐうう……

 

「へえ~!けーびいんさんはわたしたちが大好きなんだねっ!……でもそんなこと、わたしよく知ってるよ~?」

 

 ……とりあえず頭を撫でておくことにした。

 

「えへ~♪」

 

 ……ウララは天使かもしれんなァ(学名・現実逃避)

 

 

・・☆・・

 

 

 とにかく、まあ、問題は解決した。

解決したと思う。

解決したと思いたい。

 

「昨日見とったけど、改めてえらいことになっとんなぁ……山田はん?そないに項垂れてどないしたんや?傷が痛むんやったら休んだ方がええで?」

 

「大丈夫だ……ちょっと人生について深く考えているだけだから」

 

 ウララ達と別れ、勤務が始まるまでベンチで黄昏ていると……いつの間にかタマが横にいた。

 

「は、はあ……まあ、大事ないならええわ」

 

「おう……大丈夫だから気にすんなよ、ありがとうな」

 

「こんなん当たり前やんか、くすぐったいからやめてぇや……ほな、ウチは練習行くで?」

 

 俺を心配しながらタマは去って行った。

優しさが身に沁みるぜ……あの子は立派なウマ娘になる、ちっこいけど器はデカい。

 

 腕時計を確認。

2時か。

勤務まで1時間あんな。

いっそのこと、詰め所で寝てようかな。 

 

「あ、あの……山田さん、大丈夫ですの?」

 

 む。

この声は……

 

「大丈夫だ、めじょまっきーん」

 

「め、メジロマックイーンですわ!寝ぼけていらっしゃるの!?」

 

 心配そうな声の方へ頭を向けると、めじょ……メジロマックイーンがいた。

筋トレ仲間であるメジロライアンと同じ、名門メジロ家のお嬢様だ。

口調がテンマと被っているのでたまに混乱する。

まあ、声は全然違うが。

 

「金曜日にお見かけした時は普通でしたのに……これは一体どうなさったんですの?」

 

「うん、まあ……ちょっと色々あってな。見た目ほど大した傷じゃねぇよ」

 

 この子はいい子だし、情報開示もやぶさかではないが……こんな往来じゃなあ?

それに、知り合いだからって片っ端から正体バラすってのもなあ。

別に差別してるわけじゃないぞ。

 

「お顔までグルグル巻きですことよ?」

 

「額が割れただけだ、もう血は止まってるよ」

 

「十分大怪我ですわ!?」

 

 ……そうかァ?

ライスもそうだが、どうにも常識にズレがある気がする。

この子たちの方がマトモ、って意味だが。

 

「それ、ライスにも言われたよ」

 

「当たり前ですわよ!?山田さんにとっての大怪我ってなんですの!?」

 

 大怪我ねえ。

うーん……

 

「……手足が千切れるとか?」

 

「それは瀕死の重傷と言うのですわよ!?」

 

 そうかな……そうかも……?

 

「……ともかく、ご自愛なさってくださいませ。そんな様子ではウララさんに泣かれてしまいますわよ?」

 

 もう泣かれました。

 

「マックちゃんは優しいなあ……メジロの威光がありがてぇぜ……今スイーツ制限とかしてる?」

 

「大袈裟ですわよ……?ええと、今は特に制限はしておりませんが……?」

 

 ……顔を見ると本当のようだ。

この子、スイーツ関係じゃ嘘が爆裂にヘタクソだし。

 

「そんな優しいマックちゃんには……ハイ、干し芋。北海道直輸入の一級品だ」

 

 足元のクーラーボックスを開け、中身を取り出す。

 

「まあ!よろしいんですの!?」

 

 一瞬で目がキラキラになったな。

ほんと、甘いものに目がないよなこの子。

 

「よろしいんですのよ?テンマからのお土産だし、『マックちゃんによろしくですわ~♪』って言ってたし……お前らいつの間に知り合ったの?」

 

 マックイーンに干し芋を渡す。

彼女はそれを、相変わらずキラキラした目で受け取った。

 

「あむっ!……んんんん~♪自然な甘みがたまりわせんわ~♪」

 

 幸せそうな顔してやがる。

奢り甲斐があるってもんだよ。

だいたいのウマ娘はそうなんだけどよ。

 

「……その顔見てると、怪我も早く治るぜ」

 

「もむむ、あらいやですわ、お上手なこと」

 

 少し恥ずかしそうなマックちゃんに、追加の干し芋を渡す。

テンマの奴、業者くらい持ってきたからいくらでも在庫はあんだよ。

 

「ホレ、言っとくが1人で全部食うなよ?メジロのみんなで仲良く食うんだぞ?」

 

「さすがにこれだけの量を1人では食べませんわよ!?山田さんは、わたくしをアホの子だと思っていらっしゃいますの……?」

 

 そんなまさか。

時々だけさ、時々。

それも甘いもの関連だけだし。

 

「んじゃ、仕事に行くわ。マックちゃんも無理だけはすんなよな……」

 

「その状態の山田さんにだけは言われたくありませんわね?」

 

「テンマにも似たような事言われたなァ」

 

「ふふ、ではくれぐれもご自愛なされませ?」

 

 ふわりと微笑んだマックちゃん。

干し芋持ってなきゃ、お高い絵画みたいだ。

あげたの俺だけど。

 

「じゃあな、最近不審者多いから気を付けるんだぞ。なんかあったら俺のとこに逃げて来い、ソイツ挽肉にしてやるから」

 

「じょ、冗談ですわよね……?」

 

「不審者が?」

 

「挽肉の方ですわっ!」

 

 ……へへへ。

俺は、曖昧に笑ってその場を後にした。

 

「ちょっと、説明してくださいましッ!」

 

「頑張れよ~……」

 

 

・・☆・・

 

 

「本当に大丈夫かい?……アレだよ?しんどいなら休憩しててもいいんだからね?」

 

「いえいえ、見た目だけですよこんなのは。この状態でも猪までは対応できます、ヒグマが出たら逃げましょう」

 

「本州にヒグマはいないよ……」

 

 そして、勤務が始まった。

今回はライとシフトがズレたので、珍しいことに真波さんが相棒だ。

勤務が始まってからずっとこの調子だ。

優しさが身に沁みる。

 

「前の傷が治ったと思ったらソレかい。今度は何の動物を助けたんだい?」

 

「いやあ、これは普通に階段から転がり落ちたんですよ」

 

 そうそう嘘のネタも思いつかねえ。

かといってご老人にネタばらしして余計な苦労をしょいこますのもな…… 

 

「そんなことより、お孫さんとの進路相談はどうだったんですか?」

 

「それがねえ!聞いてくれよ山田クン!あの子はレースチームに所属してるんだけれども、そこの成績が良くって……」

 

 孫持ちの方に必殺の『孫のこと教えて』作戦がみごとに直撃。

真波さんは、立て板に水って感じでニコニコと喋り出した。

 

「コーチのトウショウボーイさんにも『このままいけば重賞も狙える器になる』なんて言われてね……」

 

 ちょっと待ってトウショウボーイ!?トウショウボーイだって!?

TTG世代でお馴染みの超絶有名バじゃねえかよ。

そこのレースチーム、有力ウマ娘ばっかり排出してるってとこじゃんか。

……真波さんの孫、かなりの逸材と見た。

こりゃあ、遠くねえうちにこっちでお目にかかるかもしれねえなあ……

 

 真波さんと話しながら、規定ルートを辿って正門まで来た。

 

「おや、来客かな?」

 

 彼がそう言うように、正門の向こうに人影が見える。

かなりの長身、たぶん俺と同じくらい……そして、おそらく男。

俺の視線に気づいたんだろう。

 

 その人物から――濃い、殺気が放出された

 

「……あ、多分知り合いですわ真波さん。ちょっと話してきてもいいですか?」

 

「おや、そうなのかい?それなら、休みつつ話してくるといい……私は詰所に戻っておくよ」

 

 真波さんは人影に頭を下げ、踵を返して去って行く。

規定ルート巡回はこれで最後。

この後は詰所で待機し、しかるのちに再巡回だ。

 

 そして俺は、門を越えてそいつに近付く。

 

 近付くうちに、内心で確信が湧き上がってくる。

アイツは……同じだ。

俺と同じ、『武』の側に立つ人間だ。

 

 まだ暑さの残る時期だというのに、黒いロングコートを羽織ったその男。

ダブついたその下に、強靭に発達した筋肉があるのがわかる。

 

「――申し訳ありません、この時間帯の来訪には事前の許可が必要でして……」

 

 表面上はにこやかさを装いながら、さりげなく引き千切った袖口のボタンを手の内に握り込む。

さて、どうなるかねェ。

 

 男は……口元を笑みの形に歪めて、こう言った。

 

 

「――表に出てきたな、討マ流」




【ライスシャワーのヒミツ】
・実は、寮の部屋に戻ってからも例の声明文を何度も読み返してはベッドの上をゴロゴロ転がっていた。
 
 同室のトランジスタグラマーウマ娘「こわい」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。