トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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27話 同類と呼びたくねえが、ジャンル的にはギリ同類。

「――はん、お仲間かい」

 

 仕事モードを消し去り、目の前の男に吐き捨てた。

どうにも、とらえどころのない男だ。

若いようにも、年寄りにも見える。

 

「ほう、気付くか」

 

 低い男の声。

かすかに愉悦を感じる。

 

「てめえが俺をそうだと認めたように……目ェ見りゃわかんだよ。何の用だ、お仲間と言っても……討マ流じゃねえな」

 

 コイツは、戦うものの目をしている。

身に付けた技術を、『現実で』振るいたくってしょうがねえって目をな。

スポーツとしての武術を修めている人間じゃねえ。

 

 ――『殺し合い』に端を発する業を身に付けた、血の臭いがする。

 

 俺が重心を後方へ逃がすと、奴の姿勢も僅かに変わる。

ふん、最低限の練度はありやがるな。

 

 ……この男、ロングコートの内側に暗器をしこたま仕込んでやがる。

 

見た目の重さと、裾の下がり具合が釣り合ってねえ。

たぶん、警察に調べられたら即銃刀法違反でしょっ引かれるレベルのモノがジャラジャラ出てくるだろう。

 

「それでェ?わざわざ仕事先に来やがって……何の用だ」

 

 呼吸をはかりながら対峙する。

さすがにここでおっぱじめる程アホじゃねえだろうが……どんな目的だ?

マスコミに情報を売ろうってんなら、まだ『カワイイ』レベルなんだが絶対違うしな。

 

「なに、自己紹介だ。私だけがそっちの情報を知っているのはフェアではない」

 

 ざっ、と。

奴が足を開く。

 

「だから、こうして出向いたわけだよ」

 

「そうかい、ありがとよ……っと!」

 

 ひゅお、と風切り音。

しならせた腕で軽く弾く。

その何かは、後ろで門に当たった。

重く、固い音……鉄菱、か。

大層なご挨拶だ。

 

「ふん、弾くか」

 

「ったりめえだ。こちとら格闘ウマ娘とやり合ってんだよ、反応できねえワケねえだろ」

 

 コイツも、『討マ流』と同じか。

 

 格闘ウマ娘を相手にするために、技術を磨いた流派だ。

流れるように暗器を使うこの思い切り……人間相手にしちゃ、攻撃力が過剰すぎる。

 

「それでは流派の名を名乗ろう、か!」

 

「――ッ!!」

 

 風が、動く。

飛んできたモノを、両手を回して弾く。

数は、4つ。

一呼吸でこれ、か。

はん、中々『使う』な。

 

「……は、痒いぜ」

 

 鉄菱じゃなくて苦無か、今の。

腕の包帯が裂け、ひりつくような痛みがある。

しかも後方で金属音がしねえってことは……ワイヤーかなんかで結んでやがんな。

再利用たあ、エコだねぇ。

 

「眉一つ動かさん、か。かかか、いいなァ、今代の『討マ流』は」

 

 初めて、男が嗤った。

闇が噴き出すような、そんな嗤いだった。

 

「……前言撤回だ。てめえは『お仲間』じゃねェな、もっと昏くて悍ましい……人間の屑だ」

 

 俺は『戦って勝ちたい』

反して、この男は……『勝ちたい』だけだ。

正々堂々とか、ルール上で死力を尽くしてとか、そういう考えはねえ。

 

 ただ、身に付けた技と業を振るいたいだけの、狂犬。

そんな気配だ。

 

「言い得て妙だな。そうだよ……討マ流」

 

 男の手が翻る。

びゅお、と風を裂いて何かが飛ぶ。

続いてじゃら、と金属音。

 

「――ぬんっ!」

 

 額に向かうそれを、裏拳で弾く。

一瞬見えた紐状のものは、奴の袖口へ消えた。

っへ、鎖分銅か……令和の時代に忍者もねえだろ。

 

「か、かか。よく動くなァ……今日はこのくらいにしておこう」

 

 男から殺気が霧散する。

同時に、重心が変わった。

 

 

「さて……名乗りが遅れたな討マ流。私は――『マ(がい)流』だ」

 

 

 ちり、とうなじが逆立つのが自分でもわかった。

 

「――ッシ!」

 

 半歩踏み出し、さっき防御した時にポケットから抜いていたペンを――放つ。

表の1本と、その影に1本。

 

 ――討マ流、射ノ型『陰穿(かげうがち)

狙いは奴の顔面と、心臓。

 

「っふ、は。素敵な返礼だ」

 

 奴は、コートの裾を大きく翻してそれを弾いた。

今の金属音……コートにも金属片を入れ込んでやがる。

 

「――喋るな、薄汚れた歴史の汚物がよ。この場でぶち殺してやるから…逃げんじゃねえぞォ!」

 

 この男が名乗った流派、『マ骸流』

それは、『格闘ウマ娘に勝ちたい』討マ流に対し――

 

 

『全てのウマ娘を殺す』

 

 

ことを、目的とした流派だ。

 

表の歴史から消えてすでに何百年……とっくのとうに消滅したと思っていた、そんな流派だ。

俺も、師匠にいつだか聞いた記憶しかねえ。

 

これは、伊達や酔狂で名乗るような名前じゃねえ。

そこらの有象無象が知っている、そんなありふれた名前じゃねえんだ。

 

「まあ待て、討マ流。私は別にここのウマ娘に興味はない」

 

 無抵抗を示すように、男が軽く両手を上げる。

表情は張り付いたような、笑み。

 

「寝言なら寝てほざけや、屑」

 

「いやいや、本当だよ……私の目当てはお前さ、討マ流」

 

 ……俺、だと?

 

「見たよ、テレビ……いいよなァ、討マ流は。『表』で戦えて」

 

「……ああ、そういうことかよ」

 

 ほぼ素手の技で構成されている討マ流に対し、伝え聞く『マ骸流』は……いや、今見た通りの武器術。

徒手の技もあるんだろうが、主はそっちじゃねえ。

とても、テレビの前には出ていけねえだろ。

 

「武器アリでウマ娘とやり合える催しなんざねえもんなァ。それどころか、人間の大会もねえ」

 

 こいつらは『表』に出れない。

当たり前だ、スポーツじゃないマジの殺人武術……この時代には、討マ流以上に出番はねぇ。

出る気がないのかもしれんが。

 

「あの成果、まずは称賛しよう。格闘ウマ娘と同じ土台で戦って、勝つ……なるほど素晴らしい」

 

「そいつは、どうも」

 

「だが……それで最強を名乗られては困るんだよ」

 

 再び、滲み出る殺気。

 

「……最強ォ?討マ流がァ? それこそ寝言だぜ……格闘ウマ娘と戦って勝った、だから最強だァ?ちゃんちゃらおかしいや」

 

 こんなもん、ただの……いくらでもある一流派だ。

『なんとか戦える』だけだ、こんなのは。

 

 『最強』には程遠い。

『最強』ってのは、そんなに軽い称号じゃねえ。 

 

「か、かか」

 

 男が嗤う。

 

「よかった、お前は正しい価値観を持っているようだな討マ流。そうだ、最強とはそのように軽いものでもないし、分かり易いものではない」

 

 なんだよ、ただのカマかけかよ。

驚かせやがって。

とんでもねえバ鹿野郎かと思ったじゃねえか。

 

 

「――だがね、世間は愚かだ」

 

 

 またも、殺気。

ああ……コイツの殺気は俺に向けられているようで、その実そうじゃねえんだな。

 

「民衆は、愚かなものは、より分かり易い対象をもてはやす。景気のいい、センセーショナルなものを、な」

 

「ま、そうだろうよ」

 

 『俺』の勝利を『人類全体』の勝利だと錯覚した『反ウマ』の連中のように。

 

「だからね……私は、マ骸流は――討マ流に挑戦しようと思う」

 

 男は、嗤った顔で……一切表情を感じさせない目で、そう言った。

あーあー……そこに帰結すんのか、やっぱり。

 

「ないとは思うが……まさか逃げるとは言うまいな?」

 

「……大事な試合を控えてるんだがねェ?」

 

 これからいよいよ本格的なトーナメントが始まるってのに。

 

 そう言うと、男の雰囲気が変わった。

 

「そうそう……言い忘れていたが、私はとある『反ウマ』組織に雇われていて、な」

 

 足元の石を蹴り上げ、掌底で飛ばす。

案の定、男は軽く避けた。

 

「ふっふ、はは――いいねぇ、いい。やはりそちらのアキレス腱はそこ、かァ」

 

 男は、心底から嬉しいようだ。

心からの笑みを浮かべている。

 

「――場所と、時間は。生かしてやるからとっととほざけ」

 

 自分でも驚くくらい、低い声が出た。

 

「ふふ……追って、いずれ。しばらくは英気を養っておくといい」

 

「勿体ぶるんじゃねえよ、塵が」

 

 くつくつ、と嗤い声。

 

「まあ、安心しておきたまえ、雇い主はまだお前の正体を知らんし、言う気もない。それに……私とお前が立ち合うまで、『反ウマ』は文句は言わん……否、『言わせん』よ」

 

 どういう力関係か知らんが、雇い主に随分と強く出るもんだな。

……ああ、そうか。

コイツも『反ウマ』じゃねえかよ、それもとびきり質の悪い。

雇い雇われってより、『同じ穴の貉』か。

 

「失礼しても、いいか?こんな明るいうちから、しかも前途ある女子に見せるような戦いでもないだろう?」

 

「それには同意する。とっとと消えろ、消えちまえ」

 

 刺激が強すぎらァ。

トラウマになっちまうぞ、あの子ら。

 

「……それほどウマ娘が好きか?」

 

「じゃなきゃこんな仕事してねえよ」

 

「成程、成程」

 

 す、と。

男が足を引く。

 

「おい」

 

 声をかける。

 

「俺が勝ったらな、てめえの雇い主のこと教えろよ」

 

「……それを聞いてどうするね?」

 

 どうする、だぁ?

 

 

「――決まってんだろ、全員死ぬ一歩手前まで殴り倒してやんだよ。てめえの次に、なァ?」

 

 殺気を、正面から叩きつける。

さっきから散々飛ばしてきやがってよ、お返しだバ鹿野郎。

 

「――ふ、は、はは、ひひぃ、ひ」

 

 キショい笑い声だ。

性根のほどがよくわかるなァ。

 

「結構……結構……それでは、また」

 

 男が去って行く。

正直この場で警察に連行してもらいてえが、こんな歴史の影で生きてきたやつがさっさと捕まるワケねえわな。

こうして俺の前に姿を現したのだって、この場から確実に逃げられる算段があるんだろうさ。

じゃなきゃ、今まで生き残っていられるはずもねえ。

 

「おい、本当にウマ娘には手を出さねえんだな?」

 

「――マ骸流の名前まで出したんだ、さすがにそれくらいの分別はある」

 

 こちらを振り向くことなく、男はそう言った。

……今、ここでできることは、ねえか。

この距離じゃ近付かれる前に逃げられちまう。

それに……奴にとって、流派の名はそれほど軽くねぇだろう。

そこだけは、妙な確信がある。

 

「――また会おう、討マ流」

 

「――てめえの顔面ぶん殴れる日が楽しみだぜ、マ骸流」

 

 それきり、男は振り返ることなく歩き去った。

……背後から見ても正中線に一切のブレがねぇ。

いるもんだなあ、ああいうバケモンが……まだ。

 

 さっきは試合がどうこう言ったが……ああいう手合いはいつでも受けて立つ。

殴り倒しても心が痛まねえ、徹頭徹尾の屑だ。

どこでだって、喜んでぶん殴ってやるぜ。

 

 それに……そう近いうちに戦いそうな感じがしねえ。

アイツの言い分からして……トーナメントが終わるか、俺がもっともっと『話題に』なってからって感じがすんな。

その俺を倒して……溜飲を下げるのかね?

まあ、その場合は世間も大騒ぎだろうがな。

 

「――山田様!」

 

 んお?

 

「どうなされたのです!?血が!」

 

 考え事をしていたら、正面にメイヴさんが回り込んできた。

 

「ああ、メイヴさん」

 

「傷が開いたのですか!?」

 

 傷……ああ、さっきの苦無で付いた傷か。

視線を落とすと、なるほど盛大に血が滲んでいる。

かなり鋭く研いであったのか、痛みに対して傷がデカい。

動脈は逸れて、もとい避けて弾いたからいいが。

 

「ああ、まあそんなもんですよ。ちょいと無理な『稽古』をしました」

 

 さりげなく患部を隠し、包帯を巻き直す。

この人は熟練の護衛だ。

俺の傷を見れば、それが『何』に付けられたものかすぐにわかってしまうだろう。

こうなってみると、アイツが苦無を使い捨てにしなくてよかった。

 

「すいませんね、ちょっと気が昂ってたようです」

 

「いえそんな……あの、試合は昨日の今日ですので、どうかご自愛をなさってくださいませ?」

 

 心配させちまったかな、こりゃ。

お優しいこった。

 

「ええ、申し訳ないです」

 

 よし、巻き直し完了。

傷口は恐らくスッパリ切れてるハズだから、詰所で消毒して固定しときゃいいかな。

切れたのは皮だけだし。

 

「しかし……山田様は試合の度にボロボロになりますね……」

 

「はは、そりゃ当たり前ですよ。なんたって格闘ウマ娘と戦うんですから」

 

 元から肉体の質が違うんだ。

それに勝とうってんだから、そりゃあ怪我もするさ。

毎度毎度、綱渡りの連続なんだ。

このトーナメントが終わるまで、五体満足でいれればいいなァ。

……さっきのアイツの件もあるし。

 

「ところで……メイヴさんはなんでここに?俺に用事ですか?」

 

 そう聞くと、彼女は少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「今は交代の時間なのですが、その……軽食を食べに行こうかと思っておりまして」

 

「ああ、なるほど」

 

 それで門から出ていく時に俺を見かけたってワケか、納得。

 

「軽食なら商店街の近くにある喫茶店が美味しいですよ、緑の屋根のとこです」

 

「あら、ありがとうございます!早速行ってみますわ!」

 

 嬉しそうに手を合わせ、俺に会釈をしてメイヴさんが去って行く。

うーん……歩き方にも隙がない。

オフでも油断はしませんってこと、か。

さすがアイルランドSP隊。

 

「さて、色々あったが詰所に帰ろう」

 

 真波さんをあまり待たせるのもよくねえし。

アイツも、ああまで言ったんだから今日明日に……ってことじゃねえだろうしな。

 

「マ骸流……か」

 

 知らず、拳を握っていた。

俺が考える『反ウマ』の中でも最上級の屑。

なにせ、ありとあらゆるウマ娘を殺してやろうってイカれた連中だ。

 

「なら、いいよな」

 

 俺にとって『人間じゃねえ』カテゴリーだ。

そんなら、その時は。

 

「そんときゃU-1じゃ使えねえ、いや使う気もねえ技……全解禁だ」

 

 『表』に対しては『表』の、『裏』に対しては『裏』の技がある。

いずれ来る戦いを想像しながら、詰所へ向かって歩き出した。

 

 

・・☆・・

 

 

「パイセーン!ウチがいなくて寂しかったッスか~?」

 

「いや全然。つうかお前なんでいんの」

 

 真波さんと合流して次の巡回まで休憩していると、何故かライが来た。

お前今日日勤だから勤務終わって帰ったはずだろ。

家にいろよ、そのまま寝てろよ明日まで。

 

「素直じゃないんスからあ~?」

 

「生まれてこの方ずうっと素直だよ俺ァよ……で?なんで帰ってきたんだ?」 

 

「パイセンが寂しくて泣いてるかもしんないんで~……わわわ!近くで夕ご飯の買い物したついでに寄ったんス!アイアンクローの構えはやめてほしいッス!?」

 

 右手をごきりと鳴らすと、すぐに素直になるライ。

うん、最近嗅覚が磨かれてきたなお前も。

 

「おや、ライちゃんじゃないか」

 

 トイレに行っていた真波さんが帰ってきた。

 

「ウッスウッス!真波さん差し入れッス~!」

 

 そう言って、ライはビニール袋から湯気の立つたい焼きを取り出した。

お前……気が利くな……

しかもよく見たら無茶苦茶あるじゃねえか。

残り全部自分用か?

 

「パイセンにもどーぞ~」

 

「おう、ありがとな……中身はなんだこれ?」

 

 ありがたくいただいたら……なんか、たい焼きから匂っちゃいけない感じの匂いがするんだが。

 

「あっ!すんませんそれウチ用のハバネロミートソースでした!パイセンはこっちの粒あんッス!」

 

 間違えて食ったら悶絶するところだったぜ。

そんな中身もあんだなあ……

 

「これはありがたいね、今お茶を入れようか」

 

「あ、真波さん俺がやりますよ」

 

 年上を働かせちゃいけねえや。

後輩らしく動かねえとな。

 

「ほうじ茶がいいッス!」

 

 お前はちょっと遠慮しない?

まあいいけどよ。

 

「ああ、玄米茶な」

 

「ぶっちゃけパイセンが淹れてくれるんなら白湯でもなんでもいいッス」

 

 それはそれでなんかやだな……無敵かコイツ。

 

 

「こんちは~!絆創膏ない~!?」

 

 

 ばあん!と扉が開いて……ターボが入ってきた。

 

「ターボ、どっか怪我でも……してんな。なんで保健室いかねえんだよ」

 

 見れば、膝小僧を両方擦りむいている。

こりゃまたアグレッシブにこけたもんだ。

 

「こっちの方が近いから!」

 

 一応ここはトレセン学園とは別組織なんだが……まあ、今更か。

 

「そっかそっか、ちょいと待ってろ今救急箱を……」

 

「持ってきたよ、山田クン」

 

「じーちゃん、ありがとー!」

 

 真波さんの行動が早い!

ウララとかターボみてえな孫系?ウマ娘には特に親身になるんだよな、この人。

今も、ターボのお礼だけで恵比寿顔になってるし。

 

「あ、すいません。よしターボ、そこのソファに座れ」

 

「はーい!……すんすん、なんかいい匂いがするぞ!」

 

 さすがウマ娘、鼻がいい。

 

「ふふーふ、ターボちゃんがとってもいい子にして治療を受けたら……このハバネロミートソースたい焼きをプレゼントするッス!」

 

「マジで!?ターボむっちゃいい子にする!!」

 

 ……在庫山ほどありそうだもんな。

それにしたって太っ腹だが。

 

「うーしターボ、ちょいと沁みるが我慢しろよ?」

 

「ターボは最強だからだいじょぎゃあああああっ!?きゅ、急にはやめてほしいぞ!?」

 

 こういうのは不意打ちに限るんだよ。

特に子供はな。

 

「はいはい……よし、終わった。しかし盛大に擦りむいたもんだな、足は大事にすんだぞ?」

 

「はーい!!」

 

 いいお返事、100点満点中の100億点だな。

 

 大き目の絆創膏があってよかった。

キチンと傷口も綺麗に消毒したし、化膿はせんだろう。

 

「いい子にしてたっスね~……じゃあホラあーん!」

 

 よくわからんステップを刻みながら、ライがたい焼きをターボの口へ。

 

「あーんぐ!」

 

 おお、今日も立派なギザ歯だな。

あの落とし穴ばっか作ってる……ウインディちゃんにも負けてねえ。

 

「んぐぐぐぐ……かっらい!!うっまい!!最高!!」

 

「はっはっは、将来有望ッス!そらそらもう1個~♪」

 

「はもももも!ももも!」

 

 絵面が拷問に見えなくもねえが、ターボの尻尾は大興奮なので良しとする。

 

「ウマ娘が刺激物に強いのは知っているが……知っているが……だ、大丈夫なんだろうか?」

 

 完全に孫を見る目になっている真波さんが慌てている。

 

「……まあ、大丈夫なんじゃないでしょうか?ホラ、ライも激辛大好きだし」

 

「山田クン!サラブレッドウマ娘でしかもまだ小さいターボちゃんなんだよ!?」

 

 真波さんの圧が凄い。

いや……上館トレーナーが何も言わんのだから大丈夫でしょ。

あの人東大を首席で卒業してるし、俺なんかより何倍も頭いいんだから。

 

「賑やかだねえ……おや!ターボちゃんじゃないか!練習頑張ってえらいねえ、そら、激辛ッチョをあげようねえ」

 

 奥から萩谷さんが出てくるやいなや取って返し、芋で作られた死ぬほど辛い菓子を持ってきた。

アレ、絶対ターボ用だろ。

爺さん3人衆は小さいウマ娘に甘すぎる。

俺が言えたことじゃねえが。

 

「わーい!ありがとー!」

 

「萩谷お前なあ……まあ、いいか!うんうん、いっぱいお食べ」

 

 注意しようとした真波さんは、ターボの輝く笑顔を見てまた恵比寿様に進化した。

うーん、好々爺。

 

 気が付くと、さっきのアレとの邂逅で感じたどす黒い気持ちが消えているのに気付いた。

ああ……やっぱりトレセン学園は最高だぜ!




【ツインターボのヒミツ?】
・実は、大量に貰った今回のたい焼きを間違えて食べてしまったマチカネタンホイザが、昏倒して保健室に担ぎ込まれる騒ぎが起こった。
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