トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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30話 サンドウィッチはどう作っても美味いのだ、たぶん。

 『マ骸流』とのアレやコレがあった翌日。

準夜勤の為に正午過ぎに出勤した俺は、正門を入ってすぐの所でうつぶせに倒れた人影を発見した。

 

「ちょっ……大丈夫ですか!?」

 

 見た感じ、髪の長い女性だ。

かなり小柄だが、スーツを着ているので生徒じゃないとわかる。

あの倒れ方はまずい!顔面からいってるぞ!

無線機はないからまず意識レベルを確認して……ん?

 

「ああ……いつものことか」

 

 慌てて近付いたが、近付くにつれてダッシュから小走りへ。

そして歩きになった。

 

「あの、もしも~し?大丈夫ですか?」

 

 倒れていたのが、たぶんよく知った人だったからだ。

いまだにピクリともしないその女性に近付いてしゃがみ込み、軽く肩を叩く。

 

「知らない人が見たらビックリしますよ。とりあえず起きましょうか?」

 

 かなり癖が強く、長い黒髪がぶわっと広がっている。

うん、間違いない……

 

「起きてくださいってば」

 

 何度か揺すると、反応が返ってきた。

 

「んにゃむ……ねみゅい……ねかしぇて……」

 

 そうしてやりてえのは山々なんだが、流石にここで寝かすのは控えめに言っても事件にしかならん。

……周囲には誰もいない。

タイミング的に、立ち番の交代時間にかち合ったか。

……ああもう、仕方ねえなあ。

コレが初めてでもねえし、運んでやるか。

 

「じゃあ、俺が運びますよ」

 

「よきに……はかりゃえ……」

 

 よし、寝言だが言質を取ったぞ。

 

 とりあえずひっくり返して……かっる。

ちゃんと飯食ってんのかね。

ごろっとひっくり返してみると、やはり思った通りの人物だった。

 

 若干パサついた長い黒髪。

長すぎる前髪の下の顔は、かなり整ってはいるが目の下のクマが全てを台無しにしている。

身長はライスよりも少し高いくらい……知らなきゃ学生だと思っちまうな。

 

「ウェヒヒ……」

 

 よくわからん寝言を垂れ流し、現在進行形で幸せそうに眠る女性。

彼女の名前は『椎名トレーナー』

夏祭りの時に見かけた、アグネスデジタルのトレーナーである。

こんな見た目だが、外国のなんとかってすげえ大学を出たっていう天才だ。

当たり前だが、トレーナーはみんな高学歴だねェ。

俺は顔しか知らねえが、飛び級で卒業した帰国子女トレーナーもいるし。

 

「よっせ」

 

 抱え上げても起きる様がもない。

仕方がないので横抱きにし、保健室へ連れて行くことにする。

こんなん誰かに見られたら誤解……されねえな、しょっちゅうだもん。

 

「ヤマダサンデース!ハウディ~?」

 

 そしてタイキに見つかった。

タイミングがいいのか悪いのか……

 

「ワッツ!?ワッツハプン!?ジケンですカー!?」

 

「いつものことだよ、知ってるだろ?」

 

 俺の状況を見てダッシュしてきたタイキだが、抱えている人物を見て納得したようだ。

 

「……オゥ、デジタルのトレーナーさんデース!また、スリーピーですカー?」

 

「そうだよ、もはや風物詩だな。担当とウマ娘は似るって言うが……こりゃ似すぎだろう」

 

 俺はたまにしか見かけないが、アグネスデジタルも同じように気絶というか失神している。

このトレーナーさんもそうだ。

まあ、この人の場合はそれ以外にも疲れとか色々な理由もあると思うがね。

 

「とにかく保健室に連れて行くわ、ここに転がしとくわけにはいかないしな」

 

「ワタシもついていきマース!」

 

「なんで?まあいいけどよ」

 

「暇デス!」

 

 ああ、そういう……自由だな。

昼休憩なんだろうな。

 

「そういえば、昼飯はもう食ったのか?」

 

「まだデース!ヤマダサンもいっしょに食べマショー?」

 

 随分と懐かれたもんだ。

以前のBBQのアレが駄目押しかね。

ま、この子も寂しいんだろうな……俺もカワイイ妹分が増えて特に困らんし。

だが昼食ね……

 

「今日は弁当なんだよ。あ、よかったら一緒に食うか?かなり多めに作ったから」

 

「ワーオ!いいんデスカー?」

 

 今朝、安売りで買った在庫のパンの賞味期限がヤバいのに気が付いてな。

とりあえず片っ端からサンドウィッチにしたんだ。

野菜と燻製ハム、それに肉が大量にあって助かったぜ……なかったら素のトーストを齧り続けるハメになってた。

かなりの量を作ったが……オグリに比べればアレだが、タイキもよく食う。

消費に一役買っていただこう。

 

「味は期待するなよ?」

 

「ノープロブレム!ヤマダサンのゴハン、好きデース!」

 

 可愛いこと言いやがって。

今までにBBQと燻製しか食わせたことねえけど。

 

「んじゃ、椎名トレーナーを保健室に……い?」

 

 ふと下を見ると、目が合った。

椎名トレーナーと。

なんとも言えない表情で、俺を見つめている。

 

「……起きました?」

 

「……ひゃい」

 

「……歩けます?」

 

「……ひゃいぃ」

 

 なるほど、大丈夫そうだな。

顔が真っ赤なのは仕方があるまい。

起きたらデッカイ男にお姫様抱っこされてんだからな。

そっと椎名トレーナーを下ろす。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ご、ごごごごご迷惑を……」

 

 無茶苦茶慌ててんな。

 

「いいんですよ……それで?今回の原因はなんです?」

 

「ウェヒ……外国の大レースの映像を見まくってまして……徹夜に……」

 

 だろうな。

この人は担当のアグネスデジタルと同じく、ウマ娘が好きで好きでしょうがないってタイプだ。

 

「……まあ、ウマ娘が好きなのはよくわかりますけど体壊しちゃ元も子もないですよ。デジタルが悲しみますしね」

 

「んめ、面目ありません……」

 

 椎名トレーナーは、その小さな体をさらに小さくして謝っている。

 

「いえいえ、学園内だったらいつでも運びますけど……さすがに外では倒れないでくださいよ?」

 

「はい……いつもお世話になりましゅ、山田さん……」

 

 そんなにいつもってわけじゃねえけどな。

ライとか崇城トレーナーに運ばれてる方が多いんじゃないのか?

まず運ばれるってのがおかしいんだが。

 

「お気になさらず。俺はウマ娘が大好きですからね、そのサポートをするトレーナーさんたちならいつでもお助けしますよ」

 

「山田さんの背中に後光が見えますぅ……ど、同志ィ……」

 

 まだ寝ぼけてんのか?

 

「ヤマダサーン、ワタシも、ダイスキですカー?」

 

 タイキ、そんなにシャツを引っ張るんじゃねえ。

ズボンから出ちゃうだろうが。

っていうかお前にはネタバラシしてるから知ってるだろ?

例の声明文見てるし。

 

「おう、大好き大好き」

 

「テキトウデース!テキトウなのはバッドデース!!」

 

「うお、引っ張るなそして叩くな!」

 

 タイキはシャツを引っ張りながら背中をぽこぽこ叩くというマルチタスクを披露してきた。

なんだこの動き。

 

「あひっ……尊い、ほっぺ膨らませたタイキちゃん尊かわいい……フヒ」

 

 そして椎名トレーナーはいつも通りだ。

さっきまで目の下にあったクマが、若干消えているような気がする。 

尊かわいいってなんだよ。

 

「……その様子だともう大丈夫ですね、それじゃ俺はここで」

 

「っは!はいっ!お世話になりましゅた!!」

 

 噛んだな、今。

コレで有能トレーナーなんだから世の中わからねえもんだ。

いや、好きなものに全力投球するからこそ……なのかもしれんな。

 

 椎名トレーナーは、何度も頭を下げながら去って行った。

まあ、大事なくてよかったよかった。

 

「タイキ、それじゃ飯にすっか」

 

「ハーイ!」

 

 まだ出勤時間には余裕がある。

弁当も持ったままだし、いっそのこと外で食うかな。

今からカフェテリア行ったら混んでるだろうし。

 

「あそこの奥にあるベンチで食うか。飲み物もあるからタイキはそのままでいいぞ」

 

 あんまり表から見えるとこだと食いにくいし。

 

「駄目デース!飲み物、ワタシがゴチソーしマース!!」

 

 そう言うや否や、タイキがカフェテリアに向けて走り出す。

気にしなくていいのにな……律儀な子だ。

っていうか俺の飲むもの聞いて行かなくていいのかよ……

 

 

「オマタセしましター!!」

 

 ベンチに弁当を広げて待っていると、タイキが息を弾ませて帰ってきた。

そんなに急がなくてもいいのになあ……

 

「ドーゾッ!」

 

「おう、悪いな」

 

 受け取ったのは、よく冷えたアイスコーヒー。

よかった……変なものじゃなくて。

前にライに『適当でいい』って頼んだら『スパークリング飼い葉味』とかいう恐ろしいブツを持ってきたからな。

 

「ワーオ!これ、全部ヤマダサンが作りましたカー!?」

 

 タイキは、ベンチに広げられた弁当を見て目を輝かせている。

改めて見るとちょっと作り過ぎたかな……どう見ても一般ウマ娘5人分はあるぞ。

オグリだと1人分だろうが。

 

「そんな大したもんじゃないけど、一応バランスよく作ってるからな。不味かったら言ってくれよ?」

 

「とんでもありまセーン!とってもビューティフル、デース!」

 

 まあ、彩とかには気を遣ったが、一応。

 

「では、いただきます」「いただきマースッ!」

 

 とりあえずキュウリサンドをぱくり。

うん、自家製マヨが我ながらいい仕事している。

キュウリを親の仇のように使ったサンドウィッチだが、これが不思議と美味い。

イギリス出身のウマ娘に教えてもらったんだ。

元気にしてっかな、アイツ。

 

「美味いか?」

 

「ン~♪デリシャス、デース!」

 

 タイキが食ってるのは……卵とハムの奴ね。

目がキラキラな所を見ると、本当に美味いと思ってくれてるらしい。

豪快だが汚くない、見ていて気持ちいい食い方だ。

 

「ヤマダサン、なんでもデキマース!リスペクトデース!!」

 

「なんでもはできねえよ、できることだけな」

 

 師匠のお陰で料理スキルが育ったな。

基本的に山に叩き込まれるんだもんよ、料理というか食えるものと食えないものを見分けねえと死んじまう。

それに、どうせ食うなら美味く食いてえしな。

 

「このハム、なんのお肉ですカー?変わってますけど、オイシイデース!!」

 

「そいつは猪……ボアだ。前に狩ったのを燻製にしたんだよ」

 

「ハントしたんデスカ!?やっぱり、ヤマダサンはなんでもできるスゴイ人デース!」

 

 やめてくれよ、背中が痒くなっちまう。

 

「おいタイキ、ほっぺにマヨネーズが付いてるぞ……誰も取らねえからゆっくり食え」

 

 ナプキンで拭いてやる。

見た目は大きいが、なんかウララと被るなあ。

 

「ワッツ……!?せ、センキュウ……」

 

 一丁前に照れてやがら。

……コレ、セクハラにならんよな?

 

「ははは、いいってことよ。さ、まだまだあるから食ってくれよな~、いっぱい食べてバンバンレースに勝つんだぞ?」

 

「ハイッ!」

 

 タイキは尻尾をブンブン振りながら新しいサンドウィッチにかぶりついた。

うんうん、ウマ娘は元気が一番だな!

 

「そっち側はニンジンサンドだ。いっぱいあるから好きなだけ食って――」

 

 そこまで言ったところ、弁当箱が影の中に入った。

誰か後ろに立ってるようだ。

 

「……無言で立つなよ、ブライアン」

 

「ああ、すまん」

 

 振り向くと、ブライアンがいた。

声くらいかけてくれよ、怖いから。

そしてその後ろには――

 

「よお、今日も小顔でモデル体型だな!ハヤヒデ!」

 

「誰の頭が――あ、ああ、こ……こんにちは山田さん」

 

 ブライアンの姉、ハヤヒデことビワハヤヒデ。

 

「ブライアン!ハヤヒデ!ハウディ~?」

 

「元気だ」「こんにちは、タイキ」

 

 タイキと話している2人に声をかける。

 

「お前ら、飯食ったか?」

 

「食っていない」

 

「ああ、今からカフェテリアに向かう所だ」

 

 ふむ、それなら丁度いい。

 

「じゃあ食ってけ、見た通り大量に作っちまったからな」

 

「そうか」

 

 ブライアンがためらわずに俺の横に腰かけた。

いや……いいけど狭い。

隣のベンチに座ればいいじゃん!

 

「いや、山田さん。さすがに悪い」

 

 ハヤヒデは遠慮しているが、別になんともない。

 

「気にすんな気にすんな。俺とタイキじゃ食いきれないし」

 

「とってもデリシャスデース!」

 

 ブライアンは既に手を伸ばしている。

 

「ブライアン、何食ってもいいけど合間に野菜サンドも食うんだぞ?こっちのBLTサンドは我ながらよくできた」

 

「……ン、いただきます」

 

 よしよし、いい子だ。

 

「ホレ、ハヤヒデも食え食え……あ、そうだ」

 

 弁当を入れていたクーラーボックスを開け、もう一つのランチボックスを取り出す。

 

「前から思ってたんだけどタイミングが悪くてな……ちょうどいいから、これの味見を頼んでもいいか?」

 

「……これは?」

 

 食べ始めたブライアンを見て、ハヤヒデもタイキの横に腰かけた。

ここのベンチがデカくて助かったな。

 

「最近フルーツサンドってやつを試作してるんだ、んで……こいつはバナナサンド」

 

「……ほう!それは!」

 

 ハヤヒデの目が輝いた。

前から知っちゃいたが、コイツ本当にバナナ好きだよな。

 

「これはデザートだからな、さあ食え食え、先にメインを食え」

 

「そ、それでは……いただきます」

 

 しばしの葛藤の後、ハヤヒデはレタスサンドに手を伸ばした。

 

「……おいしい、山田さんは本当に料理上手だな」

 

「はっは、ありがとうよ」

 

 顔が綻んでいる。

その顔が何よりのご褒美だ。

 

「ヤマダは本当にウマコンだな。いっそのこと食堂でも開いた方がいいんじゃないのか?」

 

「ウマコン言うなよ、ただでさえ低い俺の社会的地位が下落すんだろうが。食堂ね……それも悪くねえと思うが、お前が週7くらいで来そう」

 

「馬鹿を言うな、そんなに行かない……週5くらいだ」

 

 とんでもねえ常連じゃねえかよオイ。

俺休めねえな?それだと。

 

「その評価に免じて……この焼肉サンドを進呈しよう。タレに付け込んだハラミ肉が美味いぞ!」

 

「ン……ン!ふ、ふん……悪くないな、悪くは」

 

 美味そうに食いやがってよ……無限に食わすぞ?

 

「ヤマダサンも食べてくだサーイ!アーンデス、アーン!!」

 

「いや、流石に自分で食えもごごごがご」

 

 断ろうとしたら口にツナサンドをねじ込まれた。

強引だなオイ!

 

「ン、これは猪だな……また食べられるとは思わなかった」

 

 ブライアンはマイペースだ。

 

「ブライアン、ちゃんと野菜サンドも食べ……ているな。なるほど、肉メインのモノにも野菜を加えているのか……今度私も試してみよう」

 

「んぐ……肉と合わせると旨味が出る野菜も多いからな、キャベツなんかは油物と一緒にすると美味いぞ」

 

 ツナサンドを飲み込み、ハヤヒデにアドバイス。

今食ったツナサンドも、タマネギと合わせてあるし。

 

「なるほど……そうだ山田さん、以前いただいたバナナチップスはとても美味しかった。ありがとう」

 

 ああ、そういえばそんなことがあったな。

 

「いいってことよ、あの時は良いバナナが手に入ったんだ。ハヤヒデみたいなウマ娘の力になれたら、あのバナナも喜ぶだろうよ」

 

 また手に入ったら作ってやろう。

 

「バナナチップス!ワタシも食べたいデース!」

 

「なんでシャツを引っ張るんだよ……いくらでも食わせてやるよ、アレくらい」

 

「やりマシター!」

 

 喜んじゃってまあ、かわいいこった。

こんなに喜んでくれるから、いくらでも世話焼いちまうんだよなあ……

 

「ヤマダは本当にウマコンだな」

 

「はいはい、ソースが可愛いほっぺに付いてるぞブーちゃん。拭いてやろう」

 

「だっ、だからその名前で呼ぶなと言ったろう!!自分で拭けるからだいじょうムムムム!」

 

「ブライアン、急に立つんじゃない」

 

 結局、大量に作ったサンドウィッチは綺麗になくなった。

デザートのバナナサンドはハヤヒデに大好評で、『ウマインでレシピを送ってほしい』とかなり真剣な顔でリクエストされたぜ。

あの冷静なハヤヒデの尻尾が大暴れしてたもんな、そんなに好きかバナナが。

あんなに喜んでくれるんなら、安いもんだ。

これがあるからやめられねえんだよな。

まったくウマ娘は最高だぜ!!

 

 その後は3人と別れ、詰所に向かった。

向かったんだが……

 

 

「ベンチでウマ娘侍らせてキャッキャしてたらしいッスねぇえ?」

 

 なんか、たいそう機嫌の悪いライに出迎えられた。

コイツ、夜勤なのになんでいるんだよ……

 

「いや、作り過ぎたサンドウィッチを消費してもらってただけなんだが……」

 

「なんでウチを呼ばないんスか!」

 

「お前夜勤じゃん……」

 

「パイセンに呼ばれたら飛んでいくッスよ!!」

 

 コイツ俺好きすぎだろ。

 

「……えっと、なんか、スマン」

 

「ライスちゃんにも謝るッス!」

 

「それは本当になんで!?」

 

 今の一連の話のどこにライスに謝る要素があったんだよ。

 

「タイキちゃんがウマッターに上げた写真を見て『なんで呼んでくれないんだろ……』って落ち込んでたッス!」

 

 ずい、とスマホが差し出された。

そこには『ランチです!』という文言と……俺のサンドウィッチの写真が。

 

「……なんでコレで俺が作ったってバレるんだよ、サンドウィッチしか写ってねえじゃん」

 

「端っこの方にパイセンの包帯が写ってるッス!バレバレッスよ!!」

 

「これでバレバレとかおかしいだろ……99%はわからねえぞ、絶対」

 

 たしかに包帯らしきものが見えるが……コレでェ?

ライにしろライスにしろ、目ざとすぎるだろ。

 

「ああ、まあ……ライスには悪いことした、かなあ?」

 

 一応声をかけるべきだったか。

あの子は飯時にはすぐカフェテリア行くから、もう食ったんだとばっかり思ってた。

 

「ウチには!?」

 

「おもさげなござんす、お許しえってくだんせ」

 

「何で急に南部盛岡出身になるんスか!!その程度じゃ許さねえッスよ!!」

 

「……そっかあ、じゃあこの試作イチゴ大福はいらねえか」

 

 ライとはシフトが別れたので、メモ付けて冷蔵庫にぶち込んでおくつもりだったがな。

 

「いるっすよいりまくるっすよ!!あーもう許した!全部許したッス!パイセンの前世からの罪も全部許したッス!!」

 

 ライはものすごい勢いで縋り付いてきた。

なんだよ前世って。

俺は何をやらかしたんだよ。

 

「はいはい、じゃあどうぞ……あーん」

 

「ももむい!もむむ!(うっひょお!サービス満点ッスね!!)」

 

 冗談で言ったら指ごと食いやがった。

コイツは本当に……

あ、ライスにも連絡しておこう。

 

「『青いバラのお姫様に、イチゴ大福の味見を頼みたいんだが』っと……うおっ」

 

 送信した瞬間に既読マークがつき、さらに返信が送られてきた。

 

「『いまからいくね』」

 

 変換もしてねえから怖いよ……そして速ェよ……

 

 ご機嫌にイチゴ大福を頬張るライを見ながら、ライスの足音が聞こえるような気がした。




【ナリタブライアンのヒミツ】
・実は、山田が燻製をしていないか見回りついでに徘徊するようになった。
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