トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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34話 色気のねえウインドウショッピングもあったもんだぜ。

「ヤマダサーン!グッモーニンデース!」

 

「はいよ、おはようさんタイキ」

 

 私服のタイキが、両手をぶんぶん振りながら駆けてくる。

休みの日でも元気いっぱいだなあ。

 

 駆け寄ってきたタイキが俺に飛びつこうとして……周囲に気付いて急ブレーキ。

よしよし、よく我慢したな。

ここはトレセン学園じゃねえからな。

拡散されたら大惨事になっちまう。

 

「待ったか?」

 

「ノーウ!ワタシも来たバカリ、デース!」

 

 なんかデートの待ち合わせだな、これじゃあ。

事案にならねえといいんだが。

 

「じゃあ行くかぁ」

 

「ハーイ!レッツゴー!デース!!」

 

 タイキは嬉しそうに、先に立って歩き出した。

 

「おいおい、先に行くなよお前。場所知らねえだろ」

 

 慌てて後を追って歩き出した。

 

 さて、何故こんなことになったかと言えば……事の発端は昨日だ。

 

 

・・☆・・

 

 

「ヤマダサーン!」

 

「おう、今日も元気だな」

 

 巡回中の俺を見つけ、タイキが飛びついてくる。

それを、いつものようにぶん回してやる。

 

「外ではやらない方がいいスよ、それ」

 

「わかってる、流石にな」

 

 今日の相手はフドウギクだ。

本当はライのはずだったんだが……ウマ娘を対象とした急な研修が入って北海道本社に行っちまった。

『おキクちゃん!頼むッスよ!パイセンに悪い虫が付かないように頼むッスよぉ~!』と、妄言をほざいていたが。

悪い虫ってなんだよ。

 

「ヤマダサン、グッドなニュースデース!」

 

「おん、どうした?」

 

 嬉しそうなタイキが言うには、以前……夏合宿あたりに入院していたアメリカの親戚が退院したんだとか。

おお、そいつはめでたい。

 

「よかったなぁ!コレで家族ともバンバン連絡取れるなあ!」

 

「ふふ♪ ハーイ!」

 

 がしがしと頭を撫でてやると、タイキは嬉しそうに目を細めた。

……背後にゴールデンレトリバーが見える気がする。

やはりタイキはウマ兼イヌ娘かもしれん!

 

「それで、ヤマダサンに相談、アリマース!」

 

「相談?」

 

 なんだろう。

このタイミングで聞かれるってことは……親戚の退院関連なのか?

アメリカの入院事情なんざ知らねえけど。

 

「シュリケン!売ってるトコロ知らないデスカー!?」

 

 ……なんで、手裏剣?

もうちょっと詳しく説明してくんない?

 

 

「なるほど、そういうことか。本当に外人さんはニンジャが好きだなあ」

 

「ウチの道場にも多かったス。というか『ニンジャは実在する』と今でも思ってる門下生も多いス」

 

 とりあえず説明してもらって判明した。

退院したというタイキの親戚だが、ニンジャ大好きなんだとか。

それで……それ系の快気祝い?を送りたいのだが日本に詳しくないのでわからない、ということらしい。

ははあ、なるほどねえ。

 

「手裏剣ね、いくつか心当たりはある」

 

「やっぱりデース!ヤマダサンは頼りになりマース!!」

 

 嬉しそうにタイキが飛びついてきたので、またぶん回してフドウギクへパス。

彼女も問題なく受け止めた。

 

「……山田先輩に比べて軸がブレたス。タイキさん、もう一番お願いするス!」

 

「ノゾムトコロー!」

 

 が、何かが駄目だったらしく2人は再度組み合っている。

どおん、と周囲に轟音が響いた。

うーん、大迫力。

 

「山田のダンナぁ!?なんか事故……ああ、そういうことか」

 

 音に驚いたのか、イナリが駆け寄ってきて……様子を把握したようだ。

 

「山田はん!今の……なんや、タイキかいな」

 

 そしてタマもやってきた。

2人並ぶと初等部と勘違いしそうになるな、絶対に言わんが。

 

「フドウギク、上半身だけ考えたら駄目だぞ。インパクトの瞬間に足の関節を総動員して衝撃を拡散させんと」

 

「押忍、やったんスけど……」

 

「足の指も、だ。段階的に曲げることでサスペンションの役割になる」

 

 ウマ娘は身体能力が高すぎるから、ちょいちょいそこら辺をおろそかにすることがある。

まあ、別におろそかにしても大丈夫なんだが。

トップレベルの戦いじゃなきゃ、問題にならん部分ではある。

 

「指……!押忍!ご指導感謝するッス! タイキさん、もう一番!」

 

「ハーイ!」

 

 どむ、と轟音。

流石はU-1ファイター……、学習能力が高ェ。

もう軸のブレが収まりつつあるな……アイツはまだまだ強くなるぞ。

 

「……おい、タマ。山田のダンナって警備員だよな?格闘家じゃねえよな?」

 

「うぇっ!?あ、ああ、うん……せやせや。変な警備員やろ~?」

 

 タマが一瞬俺にジト目を向けた。

え?これ駄目?後輩の指導くらい普通だろ……?

 

「うあ!もう授業の時間じゃねえか!そんじゃ、アタシはここで失礼するぜ!」

 

「なんやて!?アカン遅刻してまう~!」

 

 タマたちが泡食って走り出した。

 

「タイキも急げよ!さっきの話は放課後に詰所にでも来りゃいい!」

 

「ハーイ!」

 

 タイキも俺たちに手を振って走り去った。

「3人とも!廊下をバタバタ走るんじゃない!あ!ブライアン!お前もだ!!」

 

 そして、エアグルーヴの怒声。

アイツも苦労してんなあ……

 

「今度、リラックス効果のある日本茶を差し入れてやろうかね……」

 

「山田先輩は本当に面倒見がいいス。ライ先輩に聞いた通りスね」

 

「よせやい、こんなもん人として当然だぜ」

 

 フドウギクに手を振り、巡回に戻ることにした。

 

 

・・☆・・

 

 

 で、翌日の今に至る。

 

 タイキには店の場所を教えようとしたんだが、日本に不慣れな彼女を1人で行かせるには心もとない。

今回の店がある場所は下町というか、入り組んだ場所にあるしな。

 

 崇城トレーナーが一緒に行ってくれればいいかと思っていたが、残念ながら出張で留守だった。

電話で『山田さんさえよければ、お願いしてもいいでしょうか~?』と言われたので、快諾したというわけだ。

俺も今日が休みだったし。

フドウギクも誘ったが、『死ぬほど行きたいスけど、道場に出稽古ス』ということなのでこうなった。

 

「……ヤマダサン、次の対戦相手決まりマシタカー?」

 

 周囲に人影がないので、タイキがこっそり聞いてきた。

 

「うんにゃ、なんと今日の昼に発表だ。どっかで飯食いながらニュースでも見るか」

 

 そう、今日は俺の次の試合の2週間前。

対戦相手の発表というか、トーナメントの全組み合わせが発表される日でもある。

 

「オシショーサンも、応援に来るデース?」

 

「来るって言ってたなァ……VIP席がどんどん賑やかになりそうだ」

 

 師匠はまだ俺の部屋にいるが、今日は別行動。

なんでも、知り合いの所に遊びに行くとか。

顔が広いからなあ、あの人も。

……そういえば、あの人って何の仕事してんだろ?

一応『貫水流』の道場主ではあるが……門下生そんなにいたっけか?

ジャムとかは作ってるけど……ううむ、謎だ。

この前の寿司屋もカードで払ってたし、謎過ぎる。

 

「楽しいヒトデース!それにヤマダサンとイッショ!とっても優しいデース!」

 

「そうかな………そうかも………」

 

 あれから毎日学園に遊びに来てるからな、師匠。

タイキもすっかり慣れたようだ。

 

 もちろん、しっかり許可を取ってるからだが。

さすがに師匠とはいえ、不法侵入は看過できないからな。

いつの間にかUSCの許可まで取ってたのは驚いたがな……顔が広いなァ。

 

「まあそりゃ、タイキたちが優しくっていい子だからさ。みんな優しくするだろ、普通」

 

「ワオ!違いマース!ヤマダサンはイツデモ優しいデース!」

 

「はいはい、わかったわかった」

 

「ノーウ!テキトウ!テキトウはバッドデース!!」

 

 少し耳を絞ったタイキに肩を叩かれた。

うーん、流石はウマ娘。

力が強ェなあ。

 

「っと、タイキ。そこの角を右な」

 

「ハーイ!」

 

 商店街を歩き、そこからさらに脇道へ。

うん、やっぱりついて来てよかった。

知らなきゃかなりわかり辛い道だもんな。

 

「『ブジュツカン、ハヤシ』……ここ、ですカー?」

 

「そうそう、ここだ。ちゃんと漢字が読めたな、えらいぞタイキ」

 

「ベンキョーしてますカラ、当然デース!」

 

 脇道に入って少し歩いた所に、お目当ての店があった。

タイキが言った通り『武術館 林』というのが店名だ。

その名の通り、林さんがやってる武術関係の店である。

 

「相変わらずいつ客が来てるかわかんねえ店だねェ……やってるかい?」

 

 引き戸を開け、店内へ声をかける。

すると、店の奥……カウンターに座っている影が動いた。

 

「一言余計だよ、山田のボウズ。アンタがいねえところでしっかり繁盛してるさ、ウチはな」

 

 そこいるのは60代くらいのオジサン……店主の林さんだ。

ここは、この人が1人で切り盛りしている。

他府県にも店があるが、そっちは息子さんが取り仕切っている。

 

 ここには何を隠そう……俺の胴着を発注しているんだ。

元々は師匠の紹介だが、『正体』はバレてない。

っていうかU-1に参戦してから初めて来るしな。

破れた胴着は電話で注文してたし。

 

「久しぶりじゃねえかよ、そんで今日は何……オイオイ、まさかデートの場所にウチを選びやがったのかァ?」

 

 林さんが、俺の横で興味深そうに店内を観察しているタイキに気付いた。

 

「コンニチハー!」

 

「はいよ、こんにちはお嬢さん……たまげたね、タイキシャトルちゃんじゃねえか。ボウズ、お前さんどこで引っ掛けてきやがった?」

 

「ウチの職場で。そもそも俺の恋人じゃねえよ、こんな年上のオッサンの恋人扱いされちゃあタイキに失礼だろうが」

 

 しかし、林さんもタイキ知ってんのな。

俺が思うよりも、トレセン学園の生徒って知名度高いらしい。

レースの視聴率もとんでもねえしな。

 

「?ヤマダサン、とっても素敵デスよ? オッサン違いマース!」

 

「な?涙が出るほどいい子だろうがよ」

 

 嬉しいことを言うのでとりあえず頭を撫でることにする。

トレセン学園はいい子ばっかりだ。

 

「えーと、それでな?タイキ、説明できるか?」

 

「ハイ!テンチョーサン!実は~……」

 

「『おっと、英語で構わないよお嬢ちゃん』」

 

 嘘だろオイ。

林さんから流暢な英語が飛び出した、だと!?超似合わねえ!!

 

「なんだその顔は?ウチにゃあ海外のお客様も多いんだよ、英語は必須技能だぜ?……『それで、本日のご用向きはなにかな?』」

 

「『はい、実はアメリカの親戚が~……』」

 

 謎の敗北感を覚えつつ、俺はタイキと林さんの話を見守ることにした。

……英語、俺も勉強した方がいいのかねぇ……

 

「成程ねェ、泣かせるじゃねえか……」

 

 会話が終わった林さんは、少し目を潤ませている。

師匠曰く、この人は苦労して店を大きくしたから、タイキみてえな頑張る学生に弱いらしい。

 

「それくらいの歳ならまずは自分のことを第一に考えるだろうに……偉い!見上げた根性だァ!!」

 

「ワッツ!?」

 

 林さんのテンションに驚いたタイキが飛びついてきた。

おお、どうどう。

 

「ちょっと待ってなァ!」

 

 倉庫に消えていく林さん。

しばしドタバタと音が響き……埃まみれになって帰ってきた。

手には、何やら荷物を抱えている。

 

「そら!タイキシャトルちゃん……お望みの手裏剣詰め合わせセットだ!お値段なんと1000円ポッキリ!!」

 

 箱の中には、実際に使われていたであろう各種手裏剣が綺麗にディスプレイされて詰め込まれていた。

棒手裏剣、四方手裏剣、八方手裏剣に……おお、なんと千本まで!

……安くね?

どれも4枚ずつ格納されてるし、年代物なら1枚で楽に1000円超えるぞ。

林さん、安売りしすぎだろ。

 

「……売れ残ってたからな、ディスカウント品ってことだ」

 

 俺の視線に気付いてか、林さんは照れくさそうに目を逸らした。

 

「……それとな、サイン、書いてくれや。店に飾るからよ」

 

「ハーイ!素敵なシュリケン、ありがとうございマース!!」

 

 タイキが林さんに頭を下げ、両手で握手している。

おうおう、赤くなっちゃってまぁ……

 

「……なんでぇボウズ、その目はよ」

 

「うんにゃ、なんでも。タイキシャトルイズベリーキュートってこった」

 

「ワッツ!?きゅ、急に褒める、ダメデース!サイン、書くの難しいデース!!」

 

 わかった、わかったよタイキ。

マジックを振り回すのだけはやめてくれや、あぶねえから。

 

 サインをしているタイキから離れ、店を見物する。

へえ、土産物までありやがんのか。

武術道具だけじゃ経営厳しいんかねえ……お?

 

「林さん、これも売り物か?」

 

「おう、結構売れ行きがいいんだよ……お前も色気づいてきやがったな?」

 

「あのよォ、俺がいくつだと思ってんだ……これ、買うぜ」

 

 そう言って、小さめの簪を取った。

向日葵の意匠がワンポイントの、可愛い奴だ。

ウララとライスにはラーメン奢ったしな、タイキも俺の『正体』知ってんのに誰にも話さずに秘密にしてくれてるし……これくらいは、な。

 

 ……だが、俺の中の何かが『タイキだけにプレゼントはまずい』と叫んでいる。

だから、他にも色々見繕っておく。

 

「おいおいおい、モテるねえボウズ。そんなに渡したい相手がいんのかよ」

 

「……まあ、多少はな」

 

 そんなに高いもんでもねえし、な。

みんなに簪ってのも芸がないし、髪の短い子もいるからなあ。

色々あって助かるぜ。

 

「んじゃ、会計よろしく」

 

「おう、まあボウズには毎度毎度胴着を発注してもらってるからな……勉強しといてやるよ。というかおめえ、胴着駄目にし過ぎだろ、またヒグマと喧嘩してんのか?」

 

 ……まあ、うん。

 

「似たようなもんだよ」

 

「来るたびにでっけえ傷こさえやがってよ……いつか死んじまうぞ?」

 

 ヒグマよりも危険な相手かもしれねえけど、な。

 

「精々、そうならねえように気を付けるよ」

 

「おう、真っ当な仕事もしてんだから気を付けろよ?それと、干支野にもたまには顔出せって言っとけ」

 

「了解」

 

 タイキが色紙を書き終わり、金を払っている。

どうやらここで海外発送の手続きもできるらしい、住所っぽいものも書いてるな。

グローバルな武術店だなあ、ホント。

 

「オネガイシマース!」

 

「おう、責任もって発送準備するよ。こんなにいいサインも貰っちまったんだしなあ」

 

 タイキのサインを見て、林さんは恵比須顔だ。

俺の周り、ウマ娘のファンばっかりだな。

いいことだ、うん。

 

「お待たせしまシター!」

 

「はいよ……ホレ、タイキ」

 

 買ったばかりの簪を渡してやる。

 

「この前レースに勝ったんだってな?これは俺からの祝いだ、コングラチュレーション!」

 

「オゥ!ワタシにデスカ~!?嬉しい……とっても嬉しいデース!」

 

「うおっとぉ!?」

 

 タイキが飛びついてきた。

あぶねえ!簪が刺さる!!

 

「いちゃつくのは外でやってくんねえかなあ」

 

 林さんの生暖かい視線に、とりあえず苦笑いで返した。

 

 

・・☆・・

 

 

「ン~♪フフ~ン♪」

 

 いつものポニーテールに簪を差し、弾むような足取りでタイキが先を歩く。

すっかり気に入ったようだな、よかったよかった。

 

「気に入ったようでよかったよ」

 

「ハーイ!ずうっと、大事にしマース!宝物デース!!」

 

 そんなに高いモノでもねえのに、まあ喜ぶこと。

こんなに喜んでくれるんなら、贈った甲斐があったな。

 

「飯食って帰るか。この先に美味い中華料理屋があるんだが……タイキ、中華大丈夫だっけ?」

 

「ハイ!チャイニーズレストラン、ステイツでもよく食べてマシタ!それに、ヤマダサンのオススメならきっとデリシャス、デース!」

 

「俺への信頼が重過ぎねえか……?まあ、いいがよ」

 

 よほど嬉しかったのか、器用に俺の周りをグルグルするタイキ。

やはり見える……大型犬めいたスタンドが……!

尻尾もえらいことになってるじゃねえかよ。

 

「っと!タイキ前!」

 

「ワオッ!?」

 

 タイキが立ち止まっていた人にぶつかりそうになったので、肩を引く。

あぶねえあぶねえ……こんなところで怪我でもしたらバ鹿らしいや。

 

「ウ~ン……」

 

 ぶつかりそうになった人物は、こちらに気付いた様子もなく手元に目を落としている。

なんだアレ?地図……?

 

「オゥ、お困りデスカー?」

 

 それに気付いたのか、タイキがその人……ウマ娘に声をかけた。

 

「……道、迷っタ。ココドコ?」

 

 地図を見ていたウマ娘が、困ったようにこちらを見てくる。

カタコトだな、外国人……アジア系か。

俺よりも少し低いくらいの長身……体付きはすらっとしているが、筋肉の付き方が痩せた体系のソレじゃねえ。

おそらく、格闘ウマ娘。

顔は、フードに覆われていて見えないが……耳の形がくっきり浮き出ている。

 

「あー、地図見せてくれるか?」

 

 とりあえずそう聞く。

さすがにここで放って飯食いに行くのもな。

 

「ン、どぞ」

 

 彼女が地図を差し出してくる。

えーと、なになに……お?

 

「この目的地……『春華楼』か?」

 

 なんだ、今から向かう中華料理屋じゃねえか。

 

「ソウ!ソコ、行きタイ!ワタシの、オジサンの家!」

 

「そうなのか……そいつは丁度いい。俺たちも今から行くところなんだよ、一緒に行こうか」

 

 聞き取りやすいように、ゆっくり言う。

 

「谢谢你(ありがとう)!よかた、連れてイッテ!」

 

「ハーイ!一緒に行きマショー!」

 

 手を差し出してきた彼女。

タイキがそれを握りながら、ニコッと笑っている。

このコミュ力よ……

 

「アイヤ!あなタ、タイキシャトルさんネ?レース見た!とても強い走リ!ワタシ、大ファンよ!」

 

「オーウ!嬉しいデース!」

 

 そしてこの知名度よ。

トレセン学園でも上澄みだからな、そりゃ有名だろうな。

 

「コチラ、お兄さんカ?トテモ……強そうネ!」

 

「YES!ヤマダサンはワタシの……トッテモ優しいお兄さん、みたいな人デース!」

 

 血縁関係はありません。

出身国も違うし。

あとそんなに優しくねえぞ?たぶん。

 

「どうも、山田だ。この国は初めてかい?」

 

 恐らく年下だと思う彼女に、そう声をかける。

 

「半年、前?来タ!トウキョウ、道難シイ!オジサンの家、いつも帰る道、間違えル!」

 

「あらら、そいつは大変だな……特にこの辺はややっこしいからなあ。ま、とりあえず行こうか」

 

 連れ立って歩き出す。

 

「ア、名乗る、忘れてた。ワタシ、『飛龍』いうヨ!」

 

 フェイロン、フェイロンか……こりゃまた格好いい名前だな。

……んん?推定格闘ウマ娘で、名前がフェイロン?

まさか……

 

「フェイロンサンは、日本に何しにきましたカー?レースデス?」

 

 タイキの質問に、フェイロンは嬉しそうに口元をほころばせた。

 

 

「――レース、違ウ。ワタシ、戦いに来たヨ」

 

 

 ……やっぱりかぁ。

なんか聞き覚えがあると思ったぜ。

 

 中国出身の格闘ウマ娘、フェイロン。

たしか、何度かニュースで見たっけな。

U-1にも参戦していて、そして……いまだに勝ち進んでいるハズだ。

 

 顔が隠れているからよくわからんかった……世間は狭いねェ。

まさかこんな所でお目にかかるとは、な。

 

「ファイト、ですカ~?」

 

 しばし考え込んだタイキが、はっとした顔でこちらを振り向く。

おいおい、リアクションがでけぇよ。

とりあえずウインクしたら、何故か顔を逸らされた。

なんでだよ。

そんなに不格好だったか?

 

「ま、とりあえず行こうか」

 

 ボロが出ないように、先に立って歩くことにした。

 




【タイキシャトルのヒミツ】
・実は、外出の服装に無茶苦茶悩んだ。
その相談に付き合った同室のメジロドーベルは、かなりの寝不足となった。
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