トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

47 / 66
43話 入院生活、開始。

「――う、あぁ?」

 

 自分の声で、目が覚めた。

自分の声とは思えないほど、しゃがれている。

周囲は真っ暗だ。

 

「……夜、か?」

 

 駄目だ、体が動かねえ。

次第に目が慣れ始め、周辺の状況が分かってきた。

 

 綺麗な天井に、蛍光灯。

首しか動かねえ体に鞭打って、下を見る。

……動かねえわけだ、体が装具で固定されて点滴まで付いてやがる。

ってことは、病院かここ。

しかも個室……だな。

豪華だねェ。

 

「まあ、なんとか、生きてる……か」

 

 だが、思考はしっかりしているし指は手も足も動く。

神経は大丈夫か……

 

「――う、ぐ!」

 

 息をすると、胸が酷く痛む。

ってことは、肋骨だな……

 

「試合、どうなったんだ……?」

 

 『伏雷』を叩き込んだ辺りまでは覚えてるんだが……あのままぶっ倒れて負けたのか?

それとも、アレでフェイロンを仕留め切れたのか……?

ああ、わからん。

 

 トーナメント終了後のヒーローインタビュー、どうなったんだろうな。

今考えても、仕方ねえか。

 

「考えても……うぐ、分からんなら……」

 

 下手な考え、休むに似たりか。

 

「二度寝、しちまおう……朝になりゃあ、誰か来るだろ」

 

 ナースコールを鳴らすほどのことじゃない。

どっこい生きてるし、寝よう、寝よう。

 

 

・・☆・・

 

 

「……よォ、2人とも」

 

 次に起きて目を開けると、天井よりもまずライが目に入った。

その後ろには、フドウギク。

2人揃って、目を見開いている。

ハハハ、なんだその顔。

 

「ぱ、ぱぱぱ、パイセ、パイセエエエエエエン!!」「――駄目ス!先輩!!今飛びつくのはマジでトドメになるス!!」

 

 涙目のライがダッシュで寄ってくるが、素早くフドウギクが飛びついて止めた。

おお、それでもちょっと動いた……さすが、ばんえいウマ娘!

 

「……あのよォ、俺勝った?負けた?」

 

「開口一番がそれっスか!?パイセンはアホッス!アホアホアホ!!」

 

 すげえ罵倒するじゃん。

俺病人だぞ、一応。

 

「ああ……すまん、心配かけたな」

 

 だがまあ、謝っておこう。

朝?からこうして見舞いに来てくれたんだし。

 

「本当ッスよォ!!パイセン、ゴバアアアアアッ!って血を吐いてぶっ倒れたんスからからね!!」

 

「マジか、なんか喉がゴロゴロするなっては思ってたんだが」

 

 そんなに?

よく生きてたな、俺。

 

「とにかく、お医者さんを呼ぶス!」

 

 フドウギクが、ナースコールを押した。

そんなに急がなくてもいいんだが……おい、睨むな睨むな。

 

 

「ウッソでしょ!?もう起きてる!?」

 

「ああ先生か、今回もお世話になりました」

 

「会話もできてる!?!?現代医学の敗北だァ!?!?!?」

 

 やがてやってきた医者が、ダッシュで部屋に入るなりそのままの勢いで膝を折った。

ジャルワール戦が終わった後に治療してくれた、若い外科医さんだ。

なかなかのイケメンだが、現在は顔面蒼白である。

 

「先生よォ、俺勝ったんですかね?」

 

「まず聞くのがソレえぇえぇぇぇ!?!?」

 

 そう聞くと、医者は完全に地面に倒れ込んだ。

 

「すいません先生、まずは治療をお願いするス。あと先輩は勝ちました、凄まじい勝利だったス」

 

「ああうん……わかったよ、じゃあ診察するぅ……」

 

 何かを諦めたような顔で、医者は聴診器を取り出した。

そっか、勝ったのか。

勝ったのかァ……やったぜ。

 

 

「驚くことに、今回の怪我以外は健康体だ……キミ、やっぱり突然変異のウマ息子とかじゃないのォ?」

 

 一通りの診察を終え、医者は力なく椅子に腰を下ろした。

元気ならいいじゃねえかよ、なんでそんなに打ちひしがれてんだよ。

 

「ええっとね、まあ、とりあえず現状報告だ」

 

 そう言って、医者はバインダーを取り出した。

 

「全身の擦過傷と打撲…それと肋骨や指の骨折がヒビも含めて10箇所ある……簡単に言うと以上だ」

 

 ふむ、成程……

 

「軽傷、ですね?」

 

「なわけねえだろバ鹿かキミは!?!?」

 

 医者がバインダーを床に叩きつけた。

 

「肋骨がグズグズになってんの!普通ならこれだけで大変な事なんだよ!?両腕の痣も深いし、なにより指ィ!脱臼したのを無理やり嵌め直したモンだから、それでヒビが入ってんだぞ!?わかってんの!?」

 

 顔が真っ赤だ。

無茶苦茶興奮してんな。

 

「ああ……すいません、あのままだと戦いにくかったもんで」

 

「格闘家ってみんなそうなのォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?!?」

 

 今度は仰け反って床に倒れる医者。

イケメンが台無しだよ。

 

「で、アレですよね?今日くらいに退院ですか?」

 

「バ鹿野郎!!!!ふざけんなァ!!!!絶対安静!!少なくとも1週間!!!!」

 

 マジで!?

 

「いやあの、息すると痛いだけでもう大丈夫なんですが」

 

「医者のォ!!言うことはァ!!聞きなさぁあい!!!」

 

「アッハイ」

 

 ぜいぜいと息をつき……医者は立ち上がった。

 

「……ちなみに!本日は試合から2日後!キミは丸一日眠ってたの!『普通の人間なら』!こんなに早く目覚める時点でおかしいの!!」

 

「はぁ」

 

 でも、今回は頭も殴られてねえし、肺に骨が刺さってねえから大丈夫なんじゃ……あ、もうなにも言わんほうがいいな。

薮を突くと八岐大蛇だ。

 

「じゃあ!僕は行くからね!何かあったらすぐ呼んでね!あと勝利おめでとう!!」

 

「アッハイ、ありがとうございます」

 

 それだけ言い捨て、医者は速足で出ていく。

 

「とにかく!今日1日はトイレ以外はベッドから下りない事!!それ破ったら尿瓶だからね!!それじゃゆっくり休んで!!」

 

 最後にそう言い、勢いよく扉を開けて医者は去った。

……まるで嵐だぜ、うん。

 

「――パイセン、いつでも言ってくださいッス」

 

「尿瓶を持つな、ライ。血反吐吐いても御免被る」

 

 なんでちょっと嬉しそうなんだよ。

このHENTAIが。

 

「とにかく、会社は病休になってるって社長が言ってましたし……ゆっくり休んでください、山田先輩」

 

 フドウギクが水のペットボトルを渡してくれた。

ありがてえ、喉が超乾いてたんだ。

早速飲む……超うめえ、水。

 

「んぐ……それであの後、どうなったんだ?」

 

「パイセンがぶっ倒れた後ッス?そのまま担架で運ばれて、社長が呼んだ救急車でここに直行ッス」

 

「フェイロンは?」

 

「先輩のあの……最後の蹴りで吹き飛んでTKOス。あっちもすぐに救急車でこことは違う病院に運ばれたらしいス」

 

 両者ノックアウト、か。

アレで決まらなきゃ、確実に負けてたなァ。

 

「応援の連中にも心配かけちまったなあ……」

 

「ッスッス!ウララちゃんは泣くし、タイキちゃんは泣くし、ライスちゃんは失神したッス!!」

 

「マジかよ俺より大変じゃねえか!みんな無事なんか!?」

 

「パイセンよりかは大丈夫ッスよ!!社長が速攻隔離したから観客にも気付かれてないス!!」

 

 めっちゃ怒られた。

 

「まあ、今回は見た目に包帯はないし……はいパイセン、チーズ!!」

 

 ライが怒りながらスマホを向けてきた。

思わず笑ってピースすると、すぐさま写真が撮られた。

 

「これ、とりあえずみんなのウマインに流すッス。社長に連絡取るんで、公式SNSは広報部に任せるッス……そっち用はマスク被ってもっかい撮るッスよ!」

 

「……あ、社長からメール来てるス。『イチローが泣きわめいても最低1週間は休ませる、ベッドに縛り付けてでも絶対に病院から出すな』だそうス」

 

 みんな優しいなァ……俺の我がままに付き合ってもらってるのによ。

そんな中、不意にドアがノックされた。 

 

「あ、どうぞ」

 

 そう言うと、ドアが開き……看護師さんが入ってきた。

 

「いっく~ん、朝ご飯の時間だよ~?」

 

 いや違う、ロングコートのエリモねえさんが入ってきた。

 

「じゃじゃ~ん!」

 

 そして、そのコートを脱いだらピンク色の看護婦衣装だった。

この人は……自由すぎる!!

 

「あ、不法侵入じゃないよ~?ここの院長にサインあげたらノリノリで許可されたよ~? それに、もちろんこの服はこの部屋でしか着ないよ~?」

 

「そ、そうか……」

 

 コンプライアンス大丈夫か、ここ。

そして、根は常識人?だなエリモねえさん。

 

「ちょ、ちょっとウチも借りてくるッス……(ナース、そういう手もあったッス……!!)」

 

 サイズがねえと思うぞ。

言わねえけど。

そして絶対借りられねえと思うけど。

 

「はいはい、みんなで朝ご飯にしようしよう。ホラいっくん、あ~ん」

 

 立派なドラゴンの形に切られたリンゴ。

それを俺に差し出しながら、エリモねえさんが笑っている。

なんだこの、才能の無駄遣い……

 

「先輩のスマホでス」

 

「おう、サンキュ……ヒエッ」

 

 その通知欄には、『新着メッセージ:99件』と表示されていた。

……とりあえず、リンゴ食ってから考えよう。

 

 

・・☆・・

 

 

「イチロウ~!!」

 

「うわ来たッス!?どっから情報漏れたんスか!?」

 

 朝飯を食って眠り、起きて昼飯を食ったころ。

ドアが爆発したように開き、アトヴァーガがやってきた。

 

「よかっタ!よかっタ!!」

 

 目を真っ赤にしたアトヴァーガが駆け寄って来て……抱き着こうとして急ブレーキ。

おお、かしこい。

そこはわかってるみてえだな。

 

「おう、なんとか勝てたぜ……応援してくれたのか?」

 

「トーゼン!『愛しいヴォールクの試合ですもの!勿論録画もしているわっ!!』」

 

 すまねえがロシア語はサッパリなんだ。

 

「『先に行きすぎだっての……病室わからないのに』ア!いタ!ヤッホヤッホ!」

 

 嘘だろ、ジャルワールじゃねえかよ!?

なんでコイツまで!?

 

「いっくんの人徳だねぃ。さささ、椅子だよ椅子だよ~♪」

 

 エリモねえさんがささっと椅子を用意している。

いい加減に看護師のコスプレやめねえ?

 

「アリガート!『専属の看護師さん?USCってすごいのねェ』」

 

「『山田一郎の妻です。いつも夫がお世話になっております』」

 

「オクサン!?!?!?ウソ!?!?!?!?」

 

 流暢なポルトガル語で挨拶するエリモねえさんに、ジャルワールが驚愕している。

奥さん!?何言いやがったこのレジェンド!!

 

「俺は独身だ!!!!」

 

 とんでもねえ嘘付きやがってからに!! 

うが、大声出したら胸がいっで、いででで。

 

「イチロウ、結婚してル!?ウソ!?!?!?!?」

 

「してねえ!ロンリーマンだ俺ァ!!うぐあッ!?いででででで!!」

 

「イチロウ~!!『救急車!救急車はァ!?』」

 

「『アトヴァーガちゃ~ん、ここ病院~♪』」

 

 時間差でアトヴァーガまで驚愕している。

ついていい嘘と悪い嘘があるじゃねえか!!

ああくそ!叫んだら胸が痛い!物理的に!!

 

「気紛れジョ~ク☆」

 

「このG1バめが……!!」

 

 なんだそのウインクはよ。

似合うじゃねえかちくしょう。

 

「なんて自信……やっぱりウチも限界ギリギリセクシーナース服を着るしかないッス……」

 

「先輩先輩、ソレは絶対関係ないス。むしろ逆効果ス」

 

 そうだぞフドウギク、もっと言ってやれ。

お前だけが、このトチ狂った空間の最後の良心だ。

 

 結局この騒動は、騒ぎを聞きつけたさっきの医者が怒鳴り込んでくるまで続いた。

すいませんっした!!尿瓶だけは勘弁してください!!!!

 

 

・・☆・・

 

 

「おいそこの……入ってこいよ、何してんだ?」

 

 アトヴァーガとジャルワールが見舞いに来て、山ほどの土産を置いて行ってしばらく後のこと。

なんか、扉の向こうに影が見える。

全然動かないな……誰だァ?

 

 ライもフドウギクも飯食いに行ってていねえからなあ。

動くと怒られるし、ここから声をかけなきゃならんのが面倒臭い。

あ、エリモねえさんは何故かセーラー服に着替えてどこかへ行った。

もう何もわからん、あの人は。

 

「……ヤマダ」

 

 声が聞こえたのか、ドアが開いてブライアンの顔が半分覗いた。

なんだお前か。

 

「おうブライアン、見舞いに来てくれたんか、サンキュな。ホラ入れよ」

 

「ン……」

 

 おや、ハヤヒデはいないんだな。

アレ、でも今は……

 

「お前学校は?」

 

 椅子に腰かけたブライアンに聞く。

 

「遠征でレースに出たから振替で休みだ、今日はな」

 

「ほ~ん……あ、見舞いまで持ってきてくれたんか、すまんなぁ」

 

 ブライアンはフルーツの盛り合わせを抱えていた。

まるで重病人の見舞いだぜ……あ、俺カテゴリー的には重傷だった。

 

「姉貴とオフクロからだ」

 

「……そっか、それにしてもお前元気ねえなァ?アレか?負けたんか?」

 

 耳がションボリしてるぞ。

ションボリブライアンだな。

 

「ン……勝った」

 

「お、そいつはおめでとう……見ての通り大量の見舞いがあるからちょっと食ってけよ。1人じゃ食いきれねえし」

 

 アトヴァーガたちの持ってきてくれた大量の見舞いを示す。

……改めて見るとビーフジャーキー無茶苦茶あるな。

 

「……ふふ、ヤマダは相変わらずだな」

 

 ビーフジャーキーを放ると、それを受け取りながらやっとブライアンが笑った。

よかった、元気になったなァ。

 

「あぁ?当たり前だろ……あ!そういえば俺も勝ったんだよ、見てたか俺の雄姿をよォ」

 

「見た。姉貴と通話しながらな……すごく心配していたぞ、その、姉貴がな、姉貴が」

 

 そんなに?

そいつは悪い事したなァ。

まだ見てねえけど、結構刺激的な試合展開だったからな……

 

そういえば今更だが、試合前にネタバラシしといたんだった、ハヤヒデにも。

いつまでも妹だけ知ってるってのもアレだしな。

当の本人は『そうじゃないかとは思っていた』と言ってた。

やはり頭脳明晰なだけあって、それなりに付き合いがあればバレちまうか。

ブライアンは野生の勘で見抜いてきたが。

 

ハヤヒデにも言っちまったからなあ、タイシンとチケットにもいつかは言わんとなあ。

 

「ブライアンは?」

 

「……ム、ムム、ム」

 

 どういう種類の感情だ、ソレ。

なんか耳が凄く忙しい。

 

「……や、ヤマダが、その、うん、アレだ……まあ、勝つだろうな、とは、思っていたから……うん」

 

「ソイツは嬉しいねえ、リンゴを剥いてやろう」

 

 ブライアンは顔を赤くして下を向いた。

おーおー、照れちゃってカワイイねェ。

 

「びょ、病人が無理をするな!私がやる……!」

 

「マジか、ありがとうなァ」

 

 ナイフを取り、ブライアンが……

 

「やめろやめろお前!指切り落とすぞオイ!?いっ……いだだ、だだ!?」

 

 なんちゅう持ち方してんだ!?

日本刀みてえに持ちやがって!

カボチャじゃねえんだぞ!切るのは!!

 

「ヤマダ!?だ、大丈夫か!?」

 

「ナイフ!ナイフ持ったまま寄ってくんじゃねえ!いっで!?うぐぐ……」

 

 チンピラが腹にドスってやる体勢だぞ、ソレェ!!

 

「あぅ、す、スマン……」

 

 あらら、またションボリブライアンになっちまった。

 

「……俺ァ最強だから大丈夫だ、心配かけたな」

 

 にじり寄ってきたブライアンの頭を撫でる。

いつもと違って、まるで中等部どころか初等部だ。

 

「……ン」

 

 しばらく撫でていると、ブライアンが落ち着いてきたようだ。

……まあ、なあ。

知り合いが血反吐吐いて入院したんだからなァ……そりゃ、心配するか。

普段はキリっとしてても、子供だしなあ、コイツも。

 

「ホラ、リンゴ剥くからジャーキー食ってろ」

 

「……ン」

 

 ナイフを受け取り、しおらしくなったブライアンを見てなんかほっこりしちまった。

へへ、心配してもらえる程度には……好かれてるんだな、俺。

なんかちょっと、嬉しいもんだなァ。

 

「ウサギさんにしてやるからなァ、ブーちゃん」

 

「こ、子ども扱いするんじゃない!」

 

 俺にとっちゃ、カワイイカワイイお子様だよ。

とっても優しい、な。

言うとキレそうだから、言わねえけど。

 

 ブライアンはモクモクとリンゴを食って、しばらく会話してから帰っていった。

『また来る……来てもいいか?』と、ぼそりと呟きながら。

……いい子だねェ!

ハヤヒデ!妹は何処に出しても恥ずかしくねえいい子に育ってるぞ!

もちろん、OKを出したさ!!

 

 

・・☆・・

 

 

「そんでウチは言ってやったんス!『撃ってもいいのは撃たれる覚悟が――』……お?」

 

 話していたライが、ふとドアを見る。

ガラス越しに影が……また見舞いかァ。

もう夕方だってのに、トレセンの関係者なんかな?

悪いなァ。

 

 っていうかライも帰れよ。

フドウギクはもう帰ったんだぞ?

泊まる気じゃねえだろうなコイツ……

 

「どうぞ、入ってください……ッス……」

 

 ドアが少し開き、その隙間から指が出てきた。

その指は、がしりとドアを握りしめ……ゆっくりと、隙間が開いていく。

 

「――山田ァアアァァアァァ……!!」

 

 地の底から響くような、声。

 

「っぴぎゃあ!?な、ななな、ナウマクサマンダバサラダンセンダンマカロシャダソワタヤ……!!」

 

 ライが飛び下がり、仰々しいお経を唱え始める。

何故不動明王……

 

「ラァイスを、泣かせてェエ……こぉの、悪鬼羅刹ゥウ……!!!」

 

 ……あ、知り合いだコレ。

ええっと、この人には俺の正体伝わってねえよな?

どういう説明になってんだァ!?

今聞くワケにもいかねえしよォ!

 

「すいませんでしたァ!!」

 

 ベッドの上で、土下座の体勢を取る。

うぐ、胸が圧迫されて痛ェ!

 

「なぁにしてんのォ!怪我が酷くなったら世界一カワイイライスが悲しむでしょおォ!?指一本もォ!動かさずにィ!安静にしてなさいよォ!!」

 

 ずるり、と病室に入ってきたライスのトレーナー。

彼女は変な所で常識人だった。

よく見たらしっかりフルーツ盛り合わせ持ってるし……根はいいヒトなんだよな、根は。

 

「ライスが選んだ最高のフルーツよォ……ありがたァく貪り食って、即日全快しなさいよォ……!!」

 

「アッハイ、アリガトウゴザイマス」

 

 やっぱ、トレセン学園には善人しかいねえな、うん。




【ナリタブライアンのヒミツ】
・実は、病室の周囲を30分ほどうろついて入ろうかどうしようか悩んでいた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。