トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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45話 入院は続く、もう退院したい。

「……もう落ち着いたか?」

 

「……ううん、まだ。まだだもん……」

 

「そうかァ」

 

 日の光が差し込む病室。

鳥の声が聞こえるそこで……俺は毛布のお化けに抱き着かれている。

 

「毛布いらねえんじゃねえかな?」

 

「だ、駄目だよ!は、恥ずかしいもん……」

 

「じゃあ離れたら……」

 

「 ぜ っ た い に い や 」

 

「そ、そうかァ……」

 

 迫力満点の声で返してくる毛布モンスター。

 

「お、おじさまが悪いんだよ?ライス、本当に心臓さんが止まっちゃうかと思ったんだから……」

 

 そう、中身はライスである。

 

「そいつは申し訳ねえなァ……」

 

 俺は、何度目になるかも覚えていねえが……とりあえずその背中らしき部分をポンポン叩いたのだった。

 

 

 ちょうど朝飯を食い終わった頃、ライスは1人でやってきた。

帽子を目深に被り、見舞い品らしき箱を持って。

そして、来てくれてありがとうと俺が声をかけるかかけないかってくらいに……泣きながら走って来て縋り付いてきたんだ。

何故か俺の毛布を途中で被ってな。

ズルー!ボフンッ!!って感じで、すげえ早業だったぜ。

 

 そうして、毛布のモンスターと化したライスはそのままベッドに乗り、俺の胸に顔らしき部分を埋めて泣き始めた。

よほど心配してくれたんだろう……俺の背に回された腕の力は、結構強かった。

肋骨にダメージがいかないように、気にしているような感じではあったがな。

 

 とまあ……そういうわけで今に至る。

 

「まあ、そんなに酷い怪我じゃねえから大丈夫だよ」

 

「ぜ、絶対に嘘だよ……お医者さんが『なんでか知らないけど元気だよ、なんでか知らないけど』って言ってたから……」

 

 ……あの医者めが。

心配させるような言い回ししやがって……

 

「アレだよ、超鍛えてるからこの程度で済んだんだ」

 

「……ううう、おじさまってそう言っておけば大丈夫だと思ってるよね……?」

 

「ぐう」

 

 ぐうの音しか出ねえ。

……うん参った、俺は永遠に女性に勝てねえらしいや。

 

「そういや、ライスのトレーナーさんがフルーツ持ってきてくれたぜ。ライスが選んでくれたんだってな?ありがとうよ」

「う、うん……美味しかった?」

 

「ああ、お陰で傷も早く治りそうだよ」

 

 頭らしき部分を撫でる。

 

「え、えへへ……よかったぁ……」

 

「まだまだあるからよ、一緒に食おうぜ? 俺もそうだがライスも腹減ってるだろ?」

 

 現在進行形で見舞い品が増え続けてるからな。

明日をも知れぬ大病の患者でもこんなに貰わんぞ。

 

「も、もうちょっと……いいかな?」

 

 ぎゅっと、毛布が密着してきた。

はいはい……

 

「いくらでもどうぞ、お姫様」

 

 断るっていう選択肢は、元から俺の中には存在しなかった。

 

「……事案かにゃ~?」

 

「違う」

 

「はひゃあ!?」

 

 ドアからエリモねえさんが満面の笑みを半分覗かせていた。

この人、まだ東京にいるのか……いや、そもそもこの人に現住所とかあんのか?

 

「トレセンでゴルシちゃんと遊んでたらこんな時間だよォ……いいねあの子、才能がある……」

 

「へえ、ゴールドシップかァ。そんなに速いのか、アイツ」

 

 真波さんに超懐いてる葦毛のウマ娘だったよな。

この前ライに名前を聞いたから覚えてる。

 

「今はレースの話してないよ~? ゴルシちゃんには凄まじい才能がある……モトクロスの!」

 

「あー、そっか、すげえなソレ」

 

 なるほど、ゴールドシップは『そっち側』のウマ娘か。

このわけわからんエリモねえさんについて行けるんだ、そりゃあもう……わけわからんウマ娘なんだろうさ。

俺にはそれしかわからん!

まあトレセン学園にいるんだから走りの才能は保証されてるだろうしな!

 

「……で、その毛布の子は……なるほどなるほど、ライスシャワーちゃん!!」

 

「へぇえ!?な、なんでわかるの……?」

 

 俺もビックリだよ。

そこからだと毛布の化け物にしか見えないと思うんだが。

 

「カワイイ尻尾がはみ出してるからねェ、お姉さんにはお見通しなのだよ♪」

 

 何故尻尾で判別できるんだ……

 

「いっくんが心配で会いに来て、思わず泣いちゃって恥ずかしくなっちゃったんだねぇ~♪」

 

 何故わかるんだ。

 

「え、えっと……こ、こんにちは!」

 

「ハイこんにちは~♪ いっくんいっくん、ちょっとライスちゃん借りるね~♪」

 

 エリモねえさんは、音もなく寄って来て毛布ごとライスを抱え上げた。

 

「わ、わわっ!」

 

「ふふーふ、お姉さんが完璧に処理して差し上げよう~♪(もう泣き止んだけど、泣き顔を見られるのが恥ずかしいんだよね~♪」

 

「あ……よ、よろしくお願いしましゅ!あうぅ……」

 

「はっはっは、任せておきたまえ~♪」

 

 ライスに何事か耳打ちし、ねえさんはそのまま病室を後にした。

なんだったんだ……まあ、いいか。

果物でも剥きつつ待つとしよう。

 

 

「ほいライス、あーん」

 

「あむむ……しあわしぇ……」

 

「はいいっくん、どっせい」

 

「もがごごご」

 

 なんだこの状況。

ライスに果物を食わせるのはいい、元からその予定だったんだしな。

だが何故エリモねえさんは……俺にひたすら硬焼きそばを食わせてくるのか。

 

「ゴルシちゃんとの合作だよぉ~♪ ほれほれ、ライスちゃんにも~♪」

 

「もふぁ……パリパリでおいし……♪」

 

 ……ゴールドシップは何者なのか。

まあ、ライスが喜んでるからいいかな。

毛布も取れたし、すっかりいつも通りだ。

 

「無茶苦茶いい匂いが廊下まで漏れてるんだけどォ!?いい加減にしろよキミぃい!!」

 

 うわ、医者が突撃してきた。

俺に食事制限はないが、個室だからってはしゃぎ過ぎたな……!

 

「おや先生、ウチのいっくんがお世話になっております……はいどうぞ、あーん」

 

「え、えええエリモジョージさんじゃないですか!?ぼ、ボク昔から大ファンでもごごごっ!?!?」

 

 そして、素早く動いたエリモねえさんに……何故か焼き芋をねじ込まれている。

おいちゃんと冷ましたかソレ?

大やけどすんぞ。

 

「換気に気を付けますね~♪ あと、こちらつまらないモノですが私のサインとブロマイドと新曲のCDです~♪」

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!!家宝にしますッ!!」

 

 医者は大喜びだ。

あと新曲のCDってなんだよ。

ねえさん、そんなことまでしてたのか……

 

「うへへへ……あ、い、以後気を付けるように!それとありがとう山田さん!!」

 

「あっはい」

 

 デレデレになった医者は、ねえさんからのプレゼントを抱えて去って行った。

うーん……この世界、ウマ娘のファン多すぎる。

特に困りはしないが!

 

「ふふふ……これぞエリモ式処世術……」

 

「す、すごい……」

 

「見習わらねえほうがいいぞ、ライス。ほい、おかわり」

 

 今度はオレンジだ。

 

「はむ……しゅあわせ……♪」

 

 すっかり機嫌が直ってくれて、俺も嬉しいよ。

しかし残るはタイキか……病室ぶっ壊れねえといいなァ。

 

 

・・☆・・

 

 

「こんばんわ~♪」

 

「うらァ!世界一カワイイ後輩がやってきたッスよォ!!」

 

 エリモねえさんが『もう遅いから送っていくね~♪』と、ライスを伴って帰ってからしばらく。

相変わらず暇なのでテレビなんかをダラっと見ていると……ドアが開いて来客。

ノックしろよ。

 

「たづなさん、わざわざありがとうございます」

 

「ウチはァ!?」

 

「センキューソウマッチ」

 

 たづなさんと、ライだ。

ライは手ぶらだが、たづなさんは紙袋を持っている。

お見舞いか……悪いなあ。

 

「学園の様子はどうだった、ライ」

 

「マスコミがちょっと多い以外は別にいつも通りっすよ、『外』は」

 

 どかり、と俺の横に腰かけるライ。

『外は』ァ?

 

「生徒さんたちの方が少し……あ、これお見舞いです」

 

 反対側に腰かけたたづなさんが、少し困ったように眉を潜めた。

 

「ありがとうございます、生徒が?」

 

 たしか……イルカを助けて溺れたとかいう超笑えることになってんだよな、俺。

マジでもうちょっと考えてくれ、社長……

 

「ええ、今まで山田さんが大怪我をすることはあっても……入院は初めてですから。私も何人かに容体を聞かれて困りました」

 

「ウチもッス!今日はチケゾーちゃんに泣きながら聞かれたッス!命に別状はないって言ったら『よがっだよおおおおおおッ!!』ってうれし泣きしてたっス」

 

 チケットも心配してくれたのか。

ううむ、心苦しい限りだなあ。

 

「あら、こちらには今日ナリタタイシンさんが聞きに来ましたね。『あ、アイツ……生きてんの?』って……不安そうで、少し可哀そうでしたね~……」

 

「意外と広範囲に心配されてんだなァ……ライ、痛いんだが」

 

 何故腹を抓る。

 

「パイセンの朴念仁は国宝級ッス……!心配するに決まってんじゃないスか!四六時中ウマ娘ちゃん構って、飯食わせて、相談に乗って、レースに勝ったら胴上げして喜んでる癖に!そんな相手が入院したら普通に心配しまくるッスよ!!」

 

「あらあら、無自覚ですね~……そこもまあ、人気の秘訣なんでしょうけど♪」

 

 身の置き場がない。

そんなにィ……?

俺にとっちゃ普通のことなんだが?

 

「パイセンの『普通』は!『ダダ甘』ってことなんスよォ!!さっすが稀代のウマコンッス!普通のランクが高すぎるんス!!」

 

「そうですよ~?USCの方々はみんなお優しいですが、まあ、『普通』ではありませんからね?自覚しておきましょうね?山田さん」

 

「アッハイ……」

 

 左右からの圧が超凄い。

これは謝るしかねェ……

しばらく謝り続けよう。

 

 

「はい、山田さん。リンゴが剥けましたよ」

 

「ああどうも、すみません」

 

「パイセン!こっちもッス!」

 

「なにそのサイコロステーキみたいなの……あ、ああ、ありがとうよ」

 

 朝からフルーツばかり食っている気がしないでもない。

まあ、ほぼ全てをウマ娘の方がよく食ってるな。

病院食って味気ねえんだよな……俺に作らせてくれねえかな?

医者が倒れそうだから言わねえけど。

 

「しかし減らねえな……見舞い品」

 

 個室の一角に山と積まれている。

結構食ってるハズなんだが……

 

「日持ちしそうにないのだけ食べちゃって、後はゆっくり食べればいいッスよ。ウチも手伝いますし!」

 

 まあ、そうするしかねえよな。

 

「山田さんの人徳ですね♪」

 

「そ、そうですかね……あ、ウララに聞きましたよ、たづなさんがうまいこと言ってくれたって。ホントすいません……今度何か奢りますよ」

 

 理事長秘書なのにまあよく働くよ、この人は。

生徒のことにも超詳しいし。

 

「あら♪素敵ですね……それじゃあ元気になったら、前に言っていた喫茶店に行きましょう♪」

 

「(いつの間にそんな約束を……!!こ、このヒトミミ、抜け目ないッス……!!)」

 

 なんかライの耳がレーダーくらい回転している。

なにを受信してんだお前。

 

「ぱ、パイセン……ウチにも何か、その、無いッスかァ?」

 

「……俺が全快したら盛大に燻製を作る、ソレの味見を頼む」

 

 あまりにも必死な顔なので、思わずそう言った。

 

「言質取ったッスぅ!!ひゃっほい!!」

 

「ぶべら!?」

 

 ライが喜んだ拍子に、メロンの皮が顔に飛んできた。

この野郎……まあ、今の俺は機嫌がいいから許してやる。

 

「あああ、キレイキレイ」

 

「むめめめめ」

 

 ライ、今俺の顔を拭いているのは雑巾だ。

まあ、許してやろう……お前にも世話になっているからなァ……

 

「パイセンの目が情熱的ッス……」

 

 眼鏡をお勧めしてやろうか。

 

「あ、そうでした!もうすぐのはずですね……」

 

 たづなさんがスマホを見ていると、ドアが開いた。

 

「どうも~、お届け物です~」

 

 運送業者だ。

へえ、病室まで運んでくれるのか……って、ハァ!?

 

「山田一郎さんですか?」

 

「あ、はい」

 

「では、受取表にサインをお願いします~」

 

 ペンを受け取り、サインをする。

 

「はい確かに~。それでは、失礼します~!」

 

「ああ……お、お疲れ様でした」

 

 配達員が去り……クソデカい荷物が残された。

なにこの……なに?

おかしいだろ、なにあの花輪と……大量のお菓子とか果物とかは。

 

「ああ、聞いていた通りですね……はい、山田さん」

 

 たづなさんが荷物の中から、カードを取り出して渡してきた。

 

「『ご健康をお祈りしつつ、トレセン学園でお待ちしております。 アイルランドSP隊 一同』……なる、ほど」

 

「パイセンは愛されてるッスねぇ~」

 

 嬉しいことは嬉しいが……どうすんだよ、この量は。

 

「オグリ、毎日来てくれねえかなァ……」

 

 腐っちまうぞ、コレ。

 

「足が早そうなモノはトレセンの冷蔵庫に入れとくッスね~、戻ってきたらみんなで食べるッスよ!」

 

「……ライ、お前っていい後輩なんだな……」

 

「にゃぁ!?なんスかいきなり褒めて!ウチを褒めてもセクシーボディしか出てこないッスよォ!?!?」

 

「あ、それは結構です」

 

「急に敬語になるの酷くないッスか!?」

 

「ふふふ……本当に仲がいいですね、お2人は」

 

 いつもの漫才めいたやり取り。

それを聞きながら、たづなさんはいつものように笑っていた。

この人も肝が太いなァ……

 

 

・・☆・・

 

 

「こんばんわ~……うわ、思ったよりも普通だ!」

 

「あ、どうも」

 

 たづなさんとライが帰ってしばらく。

面会時間の残りもあと1時間くらいとなった頃……川添トレーナーがやってきた。

思ったより普通ってなんだよ。

しかし、こいつは丁度いい……

 

「うわあ、凄い量……あの、これお見舞いです。カレンが選んでくれたクッキーなんですよ」

 

「おー、そりゃあ有難い」

 

 賞味期限が長いものは超助かる。

 

「鮫に襲われたイルカを助けて大怪我したんですって?大変でしたね……」

 

 入院してから1週間も経ってねえのに、もう噂に尾ひれが!!

しかもより面白れぇ形で!!

 

「えーっと……どんなふうに聞いてます?」

 

「え、だから……鮫に追われてるイルカの親子を助けたんでしょ?凄いですよねェ、4匹くらい水中で絞め落としたんですって?」

 

 無茶苦茶だ!

誰だ!どんどん噂を拡大させてるヤツは……!!

 

 すると、スマホにメッセージ。

社長からだ。

今しがた送信したら、すぐに返事が来たな……この人も行動むっちゃ早い。

 

『川添トレーナーか、問題ないぞ。というかトレセン関係者なら基本的に問題ない』

 

ふう、ありがてえ。

 

 この参戦が決まった時には、まさかこうまで大事になるとは思わなかったんだよなあ……

信用できる相手にはもう開示していくか、俺の『正体』

 

「いや、実はですね川添さん、俺が入院している本当の理由は……」

 

 座った川添さんに、俺はゆっくりと話し出した。

 

 

「マッジすか!?マジで!?うわー……有名人じゃないですか、山田さん!!」

 

「なんか……ええ、まあ」

 

「うわあ……そりゃあ強そうだとは思ってましたけど……桁が違いましたねェ!」

 

 正体を開示したら、川添さんはむっちゃテンションが上がった。

意外とミーハーらしい。

 

「あれ、でもワイドショーでエリモジョージが似顔絵を……」

 

「あー、アレ社長が頼んだ嘘なんすよ。知り合いなのは本当なんですけどね」

 

「それはそれで凄いですね!あのG1バと知り合いなんて!!」

 

 ……他にもゾロゾロいるんだよな、レジェンドG1バの知り合い。

 

「しかし……いいんですか?オレなんかに話しちゃって」

 

「ぶっちゃけもう何人かには言ってるんですよね。勘のいい子だと自分から気付いたみたいだし……こんなに大騒ぎになるのがまず予想外なんですよ」

 

「いや、なるでしょ大騒ぎに……公式で格闘ウマ娘に勝ったの、山田さんが初なんですよ?」

 

 まあ、そう言われればそうなんだが……

 

「それにまあ、警備員が格闘ウマ娘殴り倒してるとか知ったらその、怖がる子がいるかもしれないって思って……」

 

「いやー、山田さんなら大丈夫でしょ。生徒たちから山田さんの悪い噂聞いたことないっすよ、誰に聞いても『いい人』って言うと思いますよ……じゃなきゃあんなにしょっちゅうBBQ主催できないでしょ」

 

「それは飯に釣られてるだけなんじゃ……」

 

「さすがに怒られますよソレ。変なヤツがやってるBBQにウチの子らがホイホイ参加するわけないっしょ」

 

「うぐう……」

 

 これもまた、ウララ達の時のように俺が怖がり過ぎただけだったってことか……

 

「……というわけで、これからもよろしくお願いします。まあ、U-1が終わる頃には静かになってるでしょ」

 

「いやなってないですよ絶対」

 

 川添さんのツッコミが痛い。

 

「しかしなあ……いやね、カレンが前に言ってたんですよ。『山田さんは絶対に強い』って……そういうことだったのかぁ」

 

「カレンチャンが!?……いや待てよ、たしかあの子はウマ娘合気道の……」

 

「ええ、有段者ですよ。前にノリで頼んだら、空中で3回転させられました」

 

 そんなに……

そうか、武道系か。

そりゃ気付くかもしれんなァ。

クレッセントさんの言ってた通り、『強い』ってのは意外とすぐバレるってことか……

 

「あ!でもカレンと戦うのはやめてくださいよ!」

 

「当たり前でしょトゥインクル・シリーズのヒロインなのに!!俺ァ格闘ウマ娘としか戦いませんよ!!」

 

「や、やっぱり山田さんはいいウマコンなんすね……」

 

 悪いウマコンってなんだよ。

とにかく、サラブレッドウマ娘と戦うなんて考えただけで恐ろしいや。

あの子たちにはレースって言う最高の大舞台があるんだからさ。

 

「あ、すいません長居しちゃって」

 

「いやいや俺の話ばっかりだったじゃないですか。そういえば……カレンチャンとは最近どうです?」

 

 そう聞くと、川添さんは項垂れた。

な、なんかあったんか……?

 

「……喧嘩でも?」

 

「いや、カレンとは何もないんですけど……必死に断ってたんですが、担当が増えそうで……」

 

「へえ、すごいじゃないですか」

 

 複数人の担当を許されるってのは、一流トレーナーの第一歩みたいなもんだぞ。

オグタマの北井さんしかり、ウララ達の福久トレーナーしかり。

いや、そういえば福久トレーナーはこの人よりも若いな……

 

「いやいやいや!オレはカレンだけで手一杯なんですよ!無理!キャパオーバーなんですって!で、でもこの前生徒本人が直談判しに来て……ちょうどそこにカレンがいて、助け船出してくれるかと思ったら『いいと思うな~☆』ってェ!!」

「おおう……担当に外堀を埋められて……」

 

 そりゃ、もう本決まりじゃないかほとんど。

 

「距離も被ってないし、脚質も違うし……カレンがいいって言ったもんだからその子もグイグイグイグイ押してくるし……」

 

 川添さんのオーラがどんどん黒くなっていく。

 

「……ちなみになんて子なんです?」

 

「ダイワスカーレットって子ですよ、中等部の」

 

 ああ、あの性格のよさそうな子だな。

毎朝元気に挨拶してくれ……

 

「――中等部ゥ!?」

 

「あ、やっぱりそう思いますよね?アレでちょっと前までランドセル背負ってたなんて嘘でしょ……」

 

 ウマ娘、発育がいいっていうか……人間で言う第二次性徴期で一気に身長伸びるもんなァ。

テンマなんか伸びすぎて成長痛で入院したらしいし。

しかし中等部か……俺はまた高等部だとばっかり……

 

「タマやライスよりも年下なのか……むしろウララよりも」 

 

「ウマ娘って、凄いっすねえ……」

 

 俺と川添さんは、揃ってウマ娘の神秘に思いを馳せるのだった。

頑張れ、川添さん。




【カレンチャンのヒミツ】
・実は、川添トレーナーの実家の場所を知っている。
それどころか何回か挨拶に行ったことがある。
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