トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

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46話 尽きることのない見舞いと、不穏な気配。

「ウウウウ……!」

 

「よしよし、おーよしよし」

 

 デジャブを感じる……

 

「もう落ち着いたか、タイキ?」

 

「ノットイェットデース……マダマダデース!!」

 

「さよか、まあ好きにしな」

 

「ウウウウ……!!」

 

 ベッドの上に半ばはみ出すようにタイキがいる。

さっきドアから入ってきて俺の顔を見るなり、おんおん泣きながら抱き着いてきたんだ。

それからは、ずっとこの調子である。

ウララ、ライス、そしてタイキ。

これで泣き虫コンプリートだ。

……心が超痛ェ。

今現在の肋骨よりも、よほどだ。

 

「すまんなぁ、折角応援に来てくれたのにショッキングな試合見せちまってよ」

 

「ウウウ、ち、違いマース!とってもかっこよかったデース!でも、でもとってもバッドなサプライズ、でシタ~……」

 

 そうか、それは……喜んでもいいモノかどうか。

 

「ま、なんにせよ俺は元気だ。こんなもんお前たちの見舞いとこのハグで治っちまうよ、すぐにな」

 

「嘘デース!絶対嘘デース!!」

 

 なんか今日は頑なだな、タイキ。

まあいいか……気がすむまで抱っこ?してやろう。

 

「……お前は本当にかわいいなァ、タイキ」

 

「ワァッツ!?か、かかか、からかうの、NOデース!!」

 

 なんか急に振動し始めたな。

セクハラにならんといいんだが。

いや無理か、この状況を誰かに見られたら言い訳できね――

 

 

 ――ドアから、エリモねえさんがニヤニヤした顔を半分出している。

彼女はピースサインをした後、音も立てずに廊下へ消えた。

 

 

 ……ありゃあ、しばらくからかわれるなァ……

いい顔してやがる。

 

 

「ヤマダサン!アーンデス!アーン!!」

 

「なんかここ最近毎日こうしてる気がすrもごごごっ」

 

 開けた口に、薄味の煎餅がねじ込まれる。

口の中の水分が残らず消失したぞ!!

せめて果物にならんか!?

 

「お茶デース!!」

 

「んぐぐぐぐ」

 

 今度は水差しで麦茶がねじ込まれた。

なにこれ、新しいジャンルの拷問?

 

 なんとか煎餅を飲み込み、一息つく。

ついたが、タイキの目が輝いている。

いかん!次が来る!!

 

「タイキ、お饅頭をどうぞ。あーん」

 

「もむ……デリシャスデース!」

 

 ふう、命拾いした。

しかしこの状況……大丈夫なのか?

ウララは中等部だし、体が小さいから子供みたいなもんだし……ライスは……うん、体が小さいし。

しかしタイキはなあ……でっかいもんなあ。

だが、中身の方はどちらかというとウララに近いもんがあるし……返す返すも、ここが個室でよかった。

本当に、USCに感謝だな。

 

「学校はどうだ? まだマスコミがうろついてるか?」

 

「ン~……そういえば、いないデース!一昨日まではいまシタ!デモ今日、1人もいないデース!」

 

 ふむ……一昨日ってことは、エリモねえさんのワイドショー、か?

まさか連中、俺がどこぞの孤島勤務ってのを真に受けて……?

マジかよ、まあ、それならありがてんだけどな。

 

「そっかそっか、迷惑かけてすまんかったなあ」

 

「ノーウ!ヤマダサン、ぜんぜん悪くないデスカラ!」

 

「そうか……」

 

 とりあえず頭を撫でることにした。

はー、いい子ばっかりだ、いい子。

 

「ンフフ……♪」

 

 タイキは目を細めて嬉しそうにしている。

やっぱこうしていると、ウララと変わらんように見えるんだよなあ……

振り回される尻尾の迫力がすげえけど。

ゴールデンレトリバーのソウルを感じる……!

 

「どうしマシター?」

 

「ああいや、その……タイキはかわいいなあ」

 

「ワッツ!?も、モ~ッ!!」

 

 

・・☆・・

 

 

「もう何も驚かない……痣と浅いヒビの部分の回復が異様に速いけど驚かない……」

 

 元気を取り戻したタイキが『マタ来マース!!』と帰っていってしばし後。

医者の巡回があった。

彼は俺の簡単な診察をした後、何故か打ちひしがれている。

 

「あのさ……言っても無駄だと思うけど、次の試合も出るの?棄権しない?」

 

「いや、次の試合まで1ヶ月もあるんで出ますよ」

 

 この感じなら、半月でなんとかなるだろう。

その後調子を戻せば、問題ない。

 

「1ヶ月『しか』ないって言うんだよそれは!……はぁ~……」

 

 医者が力なく項垂れている。

 

「試合の映像からイメージしたダメージと、実際のダメージが釣り合わない……どういうことなんだ」

 

「ああ、そりゃあ打点をずらしたり……当たる瞬間に骨の硬い部分を当ててるからですね」

 

 討マ流では当たり前の防御法だ。

それができないと最悪死ぬし。

 

「シレっと言うんじゃないよォ……なんちゅう動体視力なんだ、人間の限界ギリギリじゃん……」

 

「まあ、自分で言うのもなんですけどトップ層ではありますね、人間では」

 

 じゃなきゃまずエキシビジョンマッチにたどり着けねえんだし。

 

「あ~……そういえばそうか。ヒューマントーナメントの人間選手の怪我よりかはマシだよね……そうだよね、キミの打撃を人間が受けたらああなるよね……」

 

 あの時は俺も興奮しててなァ。

特に初戦の相手には悪い事しちまったな。

 

「ウチの系列の病院に入院した選手がいたねえ……担当医が『牛の突進でも受けたのか!?』って言ってたなァ……肋骨が全部グズグズでさ……」

 

 あ、それがたぶん初戦の相手だな。

たしか結構いいパンチ打ってきたんで、カウンターの『拍打』がそりゃあもう綺麗に決まったんだよ、胸に。

いい音したなァ、あん時は。

勿論、ヒューマントーナメントでは討マ流を使った。

だって望んで戦いに来るんだもんよ、皆。

申し訳ねえが『手加減』はしたがね。

初戦の感触で、本気で打つと死ぬかもしれんってわかったからな。

 

「キミ、絶対に人間に技使わない方がいいよ……」

 

「まあ、相手が達人で、さらに日本刀でも持ってこなきゃ大丈夫ですよ」

 

「武侠小説じゃないんだよこの世界は!」

 

 どっこい、たまにそんなのがいるんだよな、この世界。

師匠に言われて、非合法なお仕事に従事している事務所にカチ込んだこともあるしなあ……

斬られると痛いというか熱いってのは、その時学んだよ。

 

「っていうかさ……前の診察の時にも思ったケド、キミの体の傷に明らかにおかしいのがあるんだけど……」

 

「あ、背中の傷ですか?それは北海道でヒグマと戦った時に抱き着かれて……」

 

「あーもうわかったわかった、よくわかった!動物愛護団体に嗅ぎつけられないようにね!!」

 

 がたん、と医者が立ち上がった。

あの時は遭遇戦だから大丈夫だと思う……失神させたけど殺してねえし。

トドメを刺すほど、俺にも余裕がなかった。

後で調べたら骨折れまくってたんよな……恐るべし、ヒグマ。

 

「とりあえず……今週は筋トレ禁止ね!筋トレ全般だからね!握力鍛えるのもナシ!!」

 

「はぁい……」

 

 それだけ言い捨てて、医者は出ていく。

 

「あ……この前興奮しすぎててちゃんと言い忘れてた。あの、またエリモジョージさんが来たら本当に感謝してるって言っておいて!あれから家に帰って玄関先にサイン飾ってるんだ!対紫外線加工の額縁に入れてね!!」

 

 少年のような顔で、スキップしながら。

うーん、俺が思うよりも何倍もあの人はすげえらしい。

いまだにこんな熱心なファンがいるんだからなあ。

 

「それはそれは嬉しいですねェ♪ じゃあコレ、追加のブロマイドサイン付きっ♪」

 

「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!(狂喜」

 

 ……なんか、廊下から幸せそうな悲鳴が聞こえる。

よかったなァ、先生。

 

 

・・☆・・

 

 

 ボケっとしていると、ノックの音が響いた。

 

「どうぞ~」

 

 許可を出すと、ドアが勢いよく開く。

おいおい、落ち着けよ。

 

「や……」

 

 にゅ、と頭が出てきた。

黒髪ショートカット、外ハネ。

そして耳飾り……

 

「よおチケ――」

 

「やまだざああああああああああああああああああん゛っ!!!!!」

 

「ウワーッ!?!?!」

 

 元気いっぱいのウマ娘、ウイニングチケット。

そいつが、元気いっぱいに突撃してきた。

ギャン泣きしながら。

 

「グフーッ!?!?!?!?」

 

 チケットは恐ろしい末脚を発揮して、あっという間に俺に抱き着いてきた。

 

「よがっだよおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「おまっ!バ鹿!そんなに軽々しく男に抱き着くんじゃねえよっ!!」

 

 さっきタイキに抱き着かれてたことを一瞬思い出したが、それはそれだ。

うら若き乙女なんだぞ!もうちょっと考えろォ!!

 

「よがっだああああああああっ!!!」

 

「ああハイ!わかったわかった!ありがとうよ!だから落ち着けって!俺ァ大丈夫だから――」

 

 ふと、視線を感じた。

開いたままのドアの方向……そこから、頭が覗いている。

ちっこい体、特徴的な前髪、そしてジト目。

 

「タイシン!助けてくれ!元気に絞め殺されちまう!!」

 

「ふぅん、元気そうじゃん……ちょっとは嬉しそうな顔しなよ?」

 

「何怒ってんのお前!?聞けってホラ!ギチギチ音が鳴ってるじゃん今まさにぐええぇえ……」

 

「ど、どうだか……」

 

 タイシンの後ろに、また影。

体よりもまず、ボリューミーな髪が覗いた。

 

「すまない、山田さんの病室はここで……山田さん!?チケット!?」

 

「――いい所へ来た!助けてハヤヒデ!!」

 

「うえええええん!!よがっだよおおおおおおおおおおっ!!」

 

 さっきまで静かだった病室は、今やすっかり賑やかだ。

 

 

「ううう……ごめんね、山田さん」

 

「気にすんなよ、これくらいなんてことねぇさ……」

 

 ようやく落ち着いたチケットを撫でる。

おお、耳が頭にくっつくくらいへにょってんな。

 

「まったくもう……チケット、コイツがこのくらいで死ぬわけないじゃん。動揺しすぎだって」

 

 相変わらずジト目のタイシンが、呆れた顔をしている。

 

「……大丈夫、なんだよね?」

 

 かと思えば、窺うようにこちらを見てきた。

へへ、お優しいこって。

 

「ああ、ちょっくら肋骨がボキボキになってるくれえでな。これくらいすぐ治るさ」

 

「重傷じゃん……あきれた」

 

 ジト目が強くなった。

なんでぇ?

 

「その、山田さん……大変だったんだな、ブライアンが心配していたぞ」

 

「ああ、お見舞いに来てくれたよ……いい子に育ってんなあ、ねえちゃん」

 

「ふふ……そうだな」

 

 ブライアンは普段の様子だとちょいと誤解されるかもしれんが、蓋を開ければ超いい子だからな。

どこに出しても恥ずかしくねえくらいの、な。

 

「――さて、チケットが落ち着いた所でちょいと3人に話がある。俺の怪我なんだがな……イルカレスキューで負ったもんじゃねえんだよ」

 

 社長にはあらかじめ許可は取ってあるし、ハヤヒデはもう知ってるしな。

ここらが潮時だろう。

仲のいい3人の中で、1人だけ真実を知ってるってのは本人も辛いだろうしな。

 

「ン……なに、改まって?」

 

 俺の雰囲気が変わったことに気付いたのか、タイシンの表情も変わった。

ハヤヒデは『ああ、言うのか』って表情。

そしてチケットは……ウララみてえなキョトン顔だな、かわいい。

 

「実はよォ……俺、今U-1に出てるんだわ。コレ証拠な」

 

 そう言って、枕の下に隠しておいた無名マスクを被った。

 

「皆には内緒にしたままでいこうと思ってたんだがよ、さすがに仲のいい……いいよな?連中に嘘ついたままってのは極まりが悪くてなァ」

 

「……はぇ?」

 

 おお、タイシンの目がまん丸だ。

口も半開きだし、驚いたハテナみてえ。

 

「あ、嘘だと思うんならホレ、コレも証拠な」

 

 スマホを起動し、選手控室でアトヴァーガと並んだ写真を表示する。

マスクも取ってるし、これなら分かり易いだろう。

 

「えっ」

 

 チケットも目を見開いている。

なんか、こうして見るとより幼く見えるなァ。

 

「ふむ」

 

 あらかじめ知っているハヤヒデだけは、いつも通りだった。

 

「うっ……」

 

 チケットが再起動し、口を大きく開けた。

あっやべえ、これ叫ぶんじゃ――

 

「うっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」

 

 遅かった。

この部屋の防音が優れていることを祈ろう。

 

 

「ビックリしたけど、チケットの声の方がもっとビックリしたよ」

 

「確かに」

 

「ううう……ごめぇん……」

 

 何故かチケットが落ち込んでいる。

 

「別に責めてねえよチケット。ホレ桃剥いたぞ、食え食え」

 

「もぐ……おいしい!」

 

 そりゃよかった。

あれからひとしきり騒いでいたが、ようやく落ち着いたようだな。

 

「タイシンも食え、メロンだメロン。アイルランドSP隊から貰ったから絶対に高いやつだぞコレ!」

 

「ああうん……ふふ、いつも通りなんだね……いや大きい!大きすぎ!」

 

 ああ、そういえばタイシンはあんまり食えねえんだっけ。

さすがに4分の1はデカすぎたか。

 

「うっかりしていた……山田さん、お見舞いのバナナだ」

 

 ハヤヒデが見事なバナナを一房差し出してきた。

バナナ好きすぎだろ。

 

「ありがとよ……ではお返しのバナナだ。これもアイルランドからだ、たぶん美味いぞ」

 

「ム!そうか……それでは有難くいただこう!」

 

 ウキウキでバナナを頬張るハヤヒデ。

尻尾が大暴れな所を見ると、気に入ったらしい。

 

「むぐ……それにしても、まさか『無名』だったなんて思わなかった」

 

「ごくん……だよね!おんなじくらいおっきいとは思ってたけど……!」

 

 タイシンとチケットのテンションがちょっと高い。

アレか?有名人見てテンション上がった感じか?

 

「山田さん、テレビに出る人だったんだねー!」

 

「いや、お前らの方が出てるじゃねえかよ。俺なんかよりもよっぽど注目されてるし」

 

 いかにU-1が有名とは言えど、トゥインクル・シリーズには敵わねえぞ。

 

「いやいや、アンタっていうか『無名』……ネットニュースで凄い人気だから。ホラ見なって」

 

 タイシンがスマホを見せてきた。

なになに……

 

『今なお謎の格闘家!無名の素顔に迫る!!』

 

「『外人部隊』『傭兵』『殺し屋』それに『環境活動家』だァ?……最後のはエリモねえさんのせいだな」

 

 俺の正体について、数々の考察がされている。

暇な人間が多いもんだなァ。

 

『軍事評論家・ロジャー=南方氏は語る 無名は過去に殺人を犯した経験がある!!』

 

「誰だよロジャー=南方……人を勝手に前科持ちにすんじゃねえって」

 

「呆れた偏向報道だな、山田さんはとてもいい人だというのに」

 

 ……ハヤヒデの優しさが身に沁みるぜ。

 

「そーだよそーだよ!アタシ、今度のレースで勝ったらインタビューで抗議するッ!!」

 

「やめときなって、もっと変な報道されるよ」

 

 ぷんすか怒るチケットをなだめるタイシン。

 

「ああ、その気持ちだけで十分だよチケット」

 

「うわっ……へへへ」

 

「……あのさ、頭撫でるのもセクハラになるんだからね?」

 

 チケットの頭を撫でたらタイシンに睨まれた。

せ、セクハラか……

 

「すまん、いつもウララとかライスを撫でてる感じでやっちまった。訴えないでくれチケット」

 

「え~?別にいいよいいよ!山田さんの手っておっきくて気持ちいいんだよタイシン!」

 

「なにそのセールスポイント……っていうか、ライスは高等部だよ?ウララはまあ、うん、子供みたいだからいいけどさ……」

 

 俺から言わせりゃ中等部も高等部も一緒なんだがね……

言わねえけど。

ブライアンも撫でたけど。

これも言わねえが。

 

「まあ、とにかく山田さんが元気そうでよかった。ブライアンが相当落ち込んでいたからな……」

 

 そんなにぃ?

 

「野菜どころか肉もあまり食べなかったからな、あの日は」

 

「大問題だなそりゃあ……復帰したら盛大にBBQ大会を開かねえと」

 

 そんなに心配してたんかアイツ。

 

「ねー、山田さん。次の試合っていつ?」

 

「たぶん、来月の終わりだな……それが終われば1月空いて、大晦日に決勝だ」

 

 思えば遠くに来たもんだぜ。

参戦した時は、まさかここまで勝ち上がれるとは思わなかったなァ。

 

「そっかぁ!じゃあバッチリ応援するね!」

 

「マジか、悪いなあ」

 

 意外と格闘好きって多いのな。

 

「ブライアンもすっかり格闘技に夢中になってしまってな、毎日よく見ているよ」

 

 あー……アイツハマったのか。

前からその素養はあったけど。

 

「ちょっと待って……じゃあなに、前のカルガモ騒動も……!」

 

 今更気が付いた様子のタイシン。

そりゃ、当たり前だろ。

 

「かわいそうなカルガモも路面電車もいなかったんだから……まあ、いいじゃねえかよ。ほれタイシン、シャインマスカットを食え食え……あーん」

 

「貰うけど!自分で食べるから!け、蹴るよ!」

 

 悪乗りしすぎた。

反省しねえとな……

 

 

・・☆・・

 

 

「イチロー、今いいか?」

 

 ハヤヒデたちが帰った後、面会時間ギリギリに社長がやってきた。

 

「どうぞ……社長、いつこっちに?」

 

「つい先ほどな、こちらで会議があったからついでだ」

 

 小脇に紙袋を抱えて、社長が椅子に腰かけた。

 

「北海道土産兼、見舞い品だ」

 

「こりゃどうも……お、マーガリンサンド」

 

 ライが好きなやつだな。

明日にでも来ると思うし、食わせてやろう。

 

「それで?医師からの説明は聞いたが……お前はどうだ?」

 

「問題ありません、次戦もいけますよ」

 

 後遺症もねえし、なんともねえ。

まだ呼吸すると若干胸は痛むが、これも半月もすれば治るだろう。

 

「野生の鹿100匹組手に比べりゃあ、まだなんとかマシですよ」

 

 あの時は死を覚悟したからな……

 

「……討マ流の稽古は常軌を逸しているな」

 

「動物愛護団体が怖いですね、ええ」

 

「そこではないのだが……まあ、いいさ」

 

 社長は溜息をつき、禁煙パイプを咥えた。

そして一度息を吸いこみ……少し笑ってから口を開いた。

 

 

「――明日、ここにU-1の執行部が来るそうだ」

 

 

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