トレセン学園警備員さんは、ウマ娘に勝ちたい。   作:秋津モトノブ

65 / 66
61話 焼き芋はどう作っても美味いのだ。

「うー、さぶ……」

 

 今日も今日とて勤務は続く。

試合は近付いているが、それとこれとは別だ。

というわけで今日は朝勤務。

元気に登校する生徒たちの見送りも終わり、校門前は閑散としている。

 

「パイセンパイセン、ウチのおっぱいホッカホカなんスよ。知ってました?」

 

「……そこだけじゃねえだろ。寒風の中でレースできるばんバはな」

 

 たづなさんも去り、ここにいるのは俺と……いつものように妄言をほざくライだけ。

一応周囲に生徒はいないが、教育に悪いことこの上ない。

 

「そうなんスよ~! だからパイセンを全身であっためるッスよ~!」

 

「ここ監視カメラにバッチリ映ってるからな? なんかしたら社長に殺されるぞ、今校舎に来てるし」

 

 カメラが無くても駄目だがな。

勤務時間中に何考えてやがんだ。

いや、勤務が終わっても駄目だが。

 

「パイセンがストイックでウチはキュンキュンッス」

 

「今まで何度も言ったが、無敵かお前」

 

 メンタルがオリハルコンでできてんのかね、コイツ。

さぞやレースでも活躍したことだろうさ。

 

「ってかなんで今日社長いるんでしたっけ?」

 

「お前……会議中目開けて寝てたのか?」

 

 ガッツリ会議してただろうに……起きてたと思うんだが、コイツ。

 

「前にビリオンクロック来たろ? その件が本決まりになって、今日はそのお試しっていうか初日だってえの」

 

「あー! 講師の派遣ッスね~? にゃるほろ」

 

 そう、生徒の身体能力向上のためという名目での講師派遣。

ここの子たちの主戦場は勿論レースだが、各種トップアスリートの教えは役に立つ。

今回はビリオンクロック先生によるボクシング講座だ。

……巡回の合間に俺も見学してえな、ちょっと。

 

 前にスパーはやったが、引退したとはとても思えん身体能力だった。

『反ウマ』のクソ共の横槍さえなきゃ、まだまだ現役続行したかったんだろうに……

つくづく、アイツらって生きてるだけでウマ娘の邪魔になってんな。

 

「ああ畜生。戦国の世なら『反ウマ』全員殴り殺してやりてえな……」

 

「バイオレンスなパイセンも素敵ッスね~?」

 

 無敵か、コイツ。

 

「しっかし東京でも寒いモンは寒いッス! パイセンパイセン、焼き芋食べたいッス」

 

「俺も食いてえな……在庫はあるからオヤツにでも食うか」

 

「……ウチが言うのもアレッスけど、なんでここに在庫あるんスか」

 

 はあ? そんなんお前……

 

「前みたいに腹ペコで死にそうな子がいたら食わすためだろうがよ」

 

「今日も平常運航ッスね……ま、そういうとこも素敵なんスけど~」

 

 よせやい、照れるぜ。

 

「はっは。北海道から取り寄せた逸品だぜ、絶対美味いぞ」

 

「ウチ、一瞬で火を起こせる自信があるッス」

 

 コイツも食う気かよ……ま、いいけど。

焼き芋屋台ができるくらい在庫はあるし、軍資金も山ほどあるしな。

……『無名』グッズのマージン、無茶苦茶振り込まれるんだもんよ。

俺もまあ、結構な人気者になったとは思うんだが……レースのレジェンドたちには及ぶまい。

いや、及んでたまるか。

……あっちはとんでもねえ売上なんだろうなぁ。

エリモ姉さんなんか、いまだに写真集とか出してるしな。

 

「こうなってみると、いっそ雪でも降ってくれた方が暖かい気がするな」

 

「そッスね。天気がいいと照り返しであったかいし……ホッカイドウは積もってるんでしょうね……雪かきだけはもう絶対やりたくねッス」

 

「あー、アレも練習の一環だってやってたな。ラッセル車みてえで格好よかったな、トレセンの子たち」

 

 今頃テンマもやってんだろうかな……

元気に……してるな、今朝もウマイン来てたし。

 

「……関東で5メーターくらい積もらないッスかね? そしたらウチの雄姿でパイセンを惚れさせるんスけど~?」

 

「やめてくれ、未曽有の大惨事だしレースも中止になっちまう」

 

 そりゃもう異常気象だよ。

もしくは氷河期って言うんだ。

 

 

・・☆・・

 

 

「山田さんが美味しいものを作る予感がしたんだ」

 

「そうか……すげえな、オグリ」

 

 15時で勤務を終え、ライと一緒に事務所の裏で焚火の準備を始めてすぐ。

いつの間にか、オグリが立っていた。

オグリは俺と目が合うと、ニッコリ笑って小走りにやって来たんだ。

なんだこいつ、可愛いな。

 

「これは焚火の準備か……まさか、焼き芋なのか?」

 

「そのまさかだよ。なんだオグリ、焼き芋嫌いか?」

 

 物凄い勢いで首を横に振り続けるオグリ。

わかった、わかったから……残像と風圧がすっげえ。

 

「大好物だ!」

 

「そっかそっか、そいつはよかった……ちなみに嫌いなモンは?」

 

「ない!」

 

「おーおー、いい子だなオグリちゃんは」

 

 尻尾の自己主張もすごい。

流石はカサマツのヒロインだな……いやなんだそれ、意味わからん。

 

「トレーナーに許可取れたら食っていいぞ、在庫は店くらいある」

 

「もう取ってあるぞ!」

 

 オグリはフンス! って感じでスマホをかざす。

そこには北井さんとのウマイン画面があった。

『いつもすまないと言っておいてくれ』だそうだ。

俺の方にも似たようなメッセージが来てるな……

 

 北井サン、俺が飯を食わさないって可能性は一切考慮してねえのな。

ま、そんなことしねえけどよ。

 

「うし、じゃあライが芋を持って来るから俺達は火起こしだ。もうちょい校庭から落ち葉集めてくっか」

 

 勿論、焚火も落ち葉拾いも許可を取ってある。

理事長とたづなさんは昼から出張だから参加できなかったが。

たづなさん、むっちゃ落ち込んでたな……今度スイートポテトでも差し入れてあげようか。

 

「――私に任せろ!」

 

 言うや否や、オグリは掃除道具とクソデカゴミ袋の束を持って走り出した。

お前、何トン集めてくる気だ……まあ、掃除になっていいかもしれんがな……

 

「たっだいまッス~」「たっだいま~!」

 

 ライと……オマケが、芋を満載した段ボールを抱えてやって来た。

相変わらず不思議なグラデーションの髪色、そしてギザ歯!

ツインターボ! 今日も元気そうだ!

 

「ようターボ、お前も手伝ってくれたんか。勿論食ってくだろ?」

 

「うんっ! 食べる! いいの!?」

 

「これで食わさねえって奴がいたらソイツを焚火に放り込んで燃やしてやるよ」

 

 目をキラキラさせやがって……かわいい奴めが。

 

「あ、トレーナーに許可……」「取った取った! 『お腹いっぱい食べていいよ』だって~!」

 

 ……さすがの判断の速さだ。

俺も見習いてえな。

 

「うーし、そんならいい。じゃ、みんなで芋を洗おうか」

 

「ウッスウッス」「はーい!」

 

 いいお返事だな、素晴らしい。

 

 

「無農薬栽培の芋だから、泥を落とすくらいでいいぞ。皮にも栄養があるからな」

 

「ターボ、皮も食べるよ!」

 

 詰所裏の水道で芋を洗う。

サツマイモの皮は栄養満点だからな。

焦げた所以外は問題なく食える。

というか食った方がいい。

 

「おー、いい子だなあターボ」

 

「うあ~! やめろ~! えへへ……」

 

 汚れてない手で思わず撫でちまう。

この学園は頭を撫でたくなるウマ娘が多くって困る……困らん!

 

「ウチは半生でもボリボリ食べるッスよ!」

 

「はいはい、すごいね」

 

「扱いの差が癖になるッス……ウチの性癖が変になったらパイセンのせいッスよ!」

 

 やっぱり無敵だな、この後輩は。

そんなハイレベルの変態の面倒は見切れんぞ。

 

 ……む?

地響きにも似た足音……これは!

校庭の方を見ると、土煙を上げて走ってくる人影があった。

もう帰ってきたのか、オグリ……だけじゃねえな?

 

「戻ったぞ!」

 

「いっぱい集めたよ~!」

 

 葉っぱ満載のごみ袋をいくつも担いだオグリと、誇らしそうなウララ。

そして……

 

「なんやようわからんけど、集めたったで~。んで、何の騒ぎや? 奉仕作業か?」

 

 よくわからないという顔をしたタマまで。

コイツ、オグリに巻き込まれたな……?

 

「焼き芋だ、タマも食ってけ食ってけ。勿論ウララもな」

 

「えーっ!? 焚火で焼き芋するの? わーい!」

 

「こらええ給料やな! せやったら遠慮せえへんで!」

 

 ウララは小刻みに跳び、タマは嬉しそうに鼻をこすった。

こいつら、焼き芋のことを知らずに手伝ってくれたのか……なんていい子たちだよ、泣けるぜ。

腹が爆発するくらい食わせてやる! 特にタマには!

 

「とりあえず適当な大きさに落ち葉を盛ってくれ。全部じゃねえからな、事務所まるごと燃えちまう」

 

「はーい!」

 

 いい返事だな、ウララ。

 

 焚火のセッティングはオグリ達に任せてっと……

んじゃ、洗った芋をホイルでしっかり巻いていくか。

 

 おおっと忘れてた。

焚火は落ち葉だけだとすぐに燃え尽きるし飛んでっちまう。

あらかじめ用意しておいた薪で骨組みと重しをして……

 

「オグリ、ターボ。芋が多すぎるぞ、それだと生焼けになるから半分以下にしろ」

 

 なんで焚火予定と同じくらいの量の芋を入れようとするんだ。

火が付くかどうかもわかんねえぞ。

 

「すまない、お腹が空いて……」

 

「いけるかな~って?」

 

 ちょいと前のめりすぎるだろ……とりま、オグリにはコレだな。

 

「ほい、猪ジャーキーだ。硬いからしっかり噛んで食えよ」

 

「ありがとう! むむむむ……」

 

 ぱあっと笑顔になったオグリが、ジャーキーを頬張る。

用意してきてよかったぜ……

 

「ヤマダ! ターボも! ターボも欲しい!」

 

「お前にはこっちの辛さマシマシのをやろう。ホレあーん」

 

「あーん! ふもも! からい! 辛くて美味しい~!」

 

 ターボに冗談で差しだしたらためらいなく噛みついてきた。

真波さんたちに甘やかされてるんだから慣れてんだろうな。

 

「よし、じゃあ火をつけ……なんだ、みんなか」

 

 残りの連中がターボの後ろに並んでいる……ウマ娘はよく食うからなあ。

ま、在庫は山ほどあるから問題あるまい。

 

「ほいウララ、あーん」

 

「あーん! おいひい!」

 

 ……ライも目を瞑って口を開けている。

 

「ほれライ、備長炭」

 

「しょうがないッスね~……パイセンのためなら紀州備長炭でもバリバリ食うッスよ」

 

 俺が悪かったけど、お前俺のこと好きすぎだろ。

もちろん、放り込んだのはジャーキーの塊だ。

 

「ほれタマ、あーん」

 

「なんでやねんむももも! うっま!」

 

 

・・☆・・

 

 

 久しぶりにやったが、芋は問題なく焼き上がった。

ホイルを剥いて割ると、素晴らしく食欲をそそる断面が顔を出す。

うん、問題なく美味そうだ。

 

 で。

 

「はふはふ……おいひ~」「あむあむ……糖分が脳に効くねえ、美味しいねえ」

 

 どこから嗅ぎつけたのか、ライスとタキオンが芋を美味そうに食っている。

ライスの方は手伝ってないからと遠慮してたが、問題ない。

食べさせねえって選択肢はナシだ。

 

「いっぱいあるから遠慮すんじゃねえぞみんな……おっと、バターを忘れてた。ま、なくても十分甘いが好みでどうぞ」

 

 ホッカイドウ直輸入の最高のバターだ。

俺はつける派なのでチョット塗って……美味ぇ!

うーん、最高に美味い。

 

「けーびいんさん、おいしいね~!」

 

「肌寒い中で食うと更に美味いよなあ」

 

 頬っぺたに欠片をつけたウララが笑っている。

まったく……こういう所は年相応の子供だな。

レース中はまた違うがよ。

 

「ほれ、お弁当ついてた」「むわわ……えへへ~……」

 

 かけらを取ってやる。

何が嬉しいのか、ウララは横に座った俺の肩に頭をリズミカルにぶつけてきた。

かわいらしいこった、妹を思い出すな。

 

「むもも……ターボが焼いた芋、美味すぎる!」

 

「お前……どこをどうすりゃそうなんだよ、ったく世話の焼けるギザ歯だぜ……」

 

 ターボに至っては顔の広範囲に芋の爆撃が。

濡れタオルで拭いてやろう。

 

「ももももも……焼き芋が美味しすぎるのが悪いの!」

 

「はいはい、そうだな」

 

 まあ、こいつも中等部だからな……まだ子供か。

ちっこいし。

 

「……タマ、それで足りるのか? 山田さんは遠慮しなくていいと言ったんだぞ?」

 

「オグリは逆に遠慮せんかい! ウチはもう腹一杯や!」

 

 ……タマモちっこいんだよなあ。

アイツ高等部なのに。

 

「オグリ、気にすんな。ダンプカー一杯食っていいからな」

 

「そうか……頑張るぞ!」「腹破けるで!?」

 

 しかしオグリはよく食うな、いいことだ。

 

「一般的なばんバよりちょっと食うくらいか、なあライ?」

 

「ふめももも、もももん、むめめ?(そっスね。テンマちゃんと同じくらいッスかね?)」

 

 ライはハムスターと化している。

頬破れねえのかな? 一応社会人なんだからもっと綺麗に食えよ。

 

 む、袖を引くのは……ライスか。

 

「おじさま、このバターとっても美味しいよ! お芋さんも、とっても!」

 

「おう、どんどん食えよ……はは、そんなに急いで食うからだぞ」

 

 満面の笑みを浮かべるライスの頬にも芋が。

拭いてやろう。

 

「ふわぁ……ふわぁ……えへ、えへへ」

 

 耳が大暴れしてるな。

さすがに高等部には恥ずかしかったか、反省。

 

「めめめめ、ももも、まみゃみゃ(ライスちゃん……恐ろしい子! ッス!)」

 

 ライ、何言ってるかわからんから飲み込んで喋れ。

 

 

「あーっ! 焼き芋してる~!」

 

 

 この声は……アイツか。

声のした方を見ると、特徴的な流星とポニーテールが見えた。

やっぱりそうか。

 

「ヤマダー! このテイオー様に黙って焼き芋とはイイドキョーだ~!」

 

「テイオー! トレーナーに許可取ったら食っていいぞ!」

 

「ヤッター!!!!」

 

 トウカイテイオーことテイオーが、スマホを取り出して凄まじい勢いでタップしている。

しばらく見ていると許可が下りたのか、大きくガッツポーズをしてからこちらへ走ってくる。

おお、はやいはやい。

 

「いいってさ~!」

 

 結構な末脚を発揮したテイオーが走り込んで来た。

 

「ほい、熱いから気を付けろよ」

 

「フッフーン! ボクは無敵のテイオー様だから平気アヅゥイ!?!?!?!?」

 

「言わんこっちゃねえ」

 

 何故いきなりかぶりつこうとするのか。

そんなに腹減ってたのか、コイツ。

 

 テイオーとは例のBBQの後からよく話すようになって、仲良くなった。

ムーブがガキンチョそのものだけど、レースの才能はピカ一。

流石はエリートぞろいのトレセン学園だ。

 

「ふーっ! ふーっ! あふ、あふふ!」

 

 こうして見てると、ただの女の子なんだがな。

ウマ娘は神秘に満ちてるぜ。

ウララだってレースになったら大迫力の走りするしなあ。

 

「皆大丈夫だとは思うが遠慮すんなよ。推定オグリ10人分の在庫があるからな、おかわりもドンドン焼くぞ」

 

「やったー! ヤマダだいすき!」「わたしも~!」

 

 ターボとウララにもどんどん食ってもらわんとな。

こいつらちっこいからなあ……食ってレースに勝ってもらわんと!

 

「ヤマダクンはホントーにボクたちが大好きだね? ニシシ」

 

 なんだテイオー、ニヤニヤしやがって。

 

「そうだが?」「むげっほ!?」

 

 しかも何故驚く? ようわからんなコイツ。

 

「ももももも(式はいつ挙げますか?)」

 

 だから飲み込んで喋れって、ライ。

 

「あむあむ……ヤマダくんが刺されるのは困るので、何かいいモノを考えておこうねえ……あむあむ」

 

「刃物くらいなんとでもなんぞ、タキオン」

 

「こわいねえ……自信に満ちたその顔がとってもこわいねえ……焼き芋しか喉を通らないねえ……」

 

 じゃあいいじゃねえかよ。

 

 

・・☆・・

 

 

「おーい、警備員の山田だ、開けてくれ~フジ」

 

 寮の前に立って呼ぶと、しばらくしてドアが開いた。

 

「おや、山田さん。ここに来るなんて珍しいね」

 

 出てきたのはトレセン学園栗東寮の寮長、フジキセキだ。

見回りとか夜警で顔を合わせる機会が多いから、すっかり顔なじみだな。

美人というかイケメン枠の人気者だな、それでいて面倒見もいい。

さすがは寮長だ。

 

「おう、送迎だよ」

 

 そう言って横を向く。

 

「これはこれは……素敵なタクシーさんだ」

 

 俺が背負っているものを見て、ふわりと微笑むフジ。

 

「ふみゅ……」

 

 背負っているウララが可愛らしい寝息を立てている。

軽くて空気でも背負ってる気分だぜ。

 

「焼き芋をたらふく食わせたら寝ちまってな。ライに頼もうかと思ったら、アイツは食いすぎで動けん」

 

 今もオグリと一緒に妊婦みたいな腹で寝ているだろう。

テイオーは同じ寮だが、用事があるとかで生徒会室に行っちまった。

お土産の芋をごっさり持たせたら、ブライアンもむくれないだろう。

 

「焼き芋か……いいねえ。私も行けばよかったな」

 

「俺のポシェットに入ってるぞ、遠慮なく持ってけ」

 

「え、ええ……それ、ちょっとしたリュックくらいの大きさなんだけど……腰は大丈夫かい?」

 

「丈夫だけが取り柄なんでな、とりあえず先に眠り姫を起こさねえと」

 

 ウララを降ろして、声をかける。

 

「おーいウララ、着いたぞ」「ふみゃ……あさぁ?」

 

 残念、夕方だ。

 

「あ、フジさんだ~……こんにちは~……」

 

「はい、おかえりポニーちゃん。夕飯まで部屋で眠るといい、キングを呼んだ方がいいかい?」

 

 目をこするウララは、ゆっくり首を振った。

 

「だいじょぶ~……けーびいんさん、またね、ありがと~……」

 

「おう、また明日な」

 

 若干フラつきつつも、ウララは俺に手を振って寮へ入って行った。

……大丈夫そうだな。

 

「ふふ、まるで娘を見送る父親だね山田さん」

 

「はっはっは、相手もいねえのに娘ができちまったな……ホレ、レンジでチンすりゃホコホコで食えるぞ」

 

 フジに焼き芋を渡してやる。

 

「やあ、これは嬉しいね……ちょ、ちょっと多い! 多いから!」

 

「そうか?」

 

 フジはジト目になった。

 

「……山田さんにとって、私はそんなに食べるように見えるのかい?」

 

「え? 特に少食だって聞かねえしオグリの半分くらいは食うだろ?」

 

「お腹が破れるよッ!」

 

 そっかあ……じゃあ10本はやめとくかな。

 

「ほいよ、それなら3本くらいか……頑張れよ寮長さん」

 

「もう……ふふ、ありがとう。あなたもね、警備員さん」

 

 ジト目を解除したフジは、やっぱりイケメンだった。

 

 

 帰り道でマックちゃんに会ったんだが、こちらが何か言う前に『焼き芋ですわ~!』とダッシュしてきた。

どうやら強制ダイエット期間は終わったようなので、メジロの皆と仲良く食えと余った芋を押し付けた。

なんか、よくわからんダンスで喜んでいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。