ts娘のやつ   作:霜降り 

8 / 9

 この小説は性癖を込めるというよりも性癖を封印するために書いてるのですがあまりにも不定期。


ただ浅ましく

 

「宏にぃは僕のこと犯したんだから」

 

 何を言ってるのだろう。

 どこか、夢を見てるような気分だった。

 

「それなのに僕のこと捨てるわけないよね?」

 

 何を縛っているのだろう。

 どこか、悪夢をみてるような気分だった。

 

「そんな、最低なことするわけないよね?」

 

 何を締め付けているのだろう

 今僕はどこにいるのだろう?

 

 宙に浮いたような世界の中では、自分の口からでたその言葉が、自分のものだとは思えなくて。

 止めることもできず、ただ自分の口が動くのを感じることしかできなかった。

 そんな僕の目の前にはスマホを握った彼がいて

 目の前の彼は目を見開いて

 その顔には、僕への罪悪感、ただただ申し訳ない、そんな優しさに包まれたかのような……そして、苦しみが浮かんでいて

 

 彼のスマホを奪い取って。

 

 その数列を消す。

 

「ね、宏にぃは家族だよね?」

 

 そして、

 ようやく、僕は気づけた。

 

 目が覚めた。

 

 今、僕は何を言った。

 僕は、何を言ってしまった?

 

 僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、僕は、

 

 僕は、

 

 何をした?

 

 嘘をついた違うもっと酷いことで最悪最悪最悪違う言い訳だ駄目僕は嘘をついた違うそんなのじゃない酷いもっと酷いこと最悪最低謝らなきゃ謝らないと謝れ謝れ謝れ怖い怖い怖い怖いなにが言い訳許されない何が返ってくる謝罪終わる捨てる捨てられる関係消える嫌だ嫌だ嫌だでもでもでもでも悪い痛い悪悪最悪嘘嘘嘘をついてる犯した誰が僕が犯された違う嘘僕は嘘許されない知られたくない捨てられる痛い家族許されない駄目痛い罪捨てられる捨てられたくないでも嘘最悪なになに僕はなにを嘘嘘じゃない本当犯す犯された違う今違う消した消したなに違うそれじゃない痛い頭痛い嘘嘘騙す騙した縛った縛った誰宏にぃ宏にぃ好き好き抱きしめて黙れ黙れ今は痛い痛む僕何を何をあり得ない痛い犯す犯した僕が僕が心何をやだやだ捨てられたくない痛い痛いよ宏にぃ見て見て僕僕のこと見ないで違うなに言ってる僕は捨てられる怖いやだ嫌だ嫌だ言い訳逃げ嘘嘘ついたそれは犯した僕は宏にぃ助けて駄目そんなの駄目許されない罪罪人僕何をした嘘嘘泥棒最低謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ煩い痛い煩い痛い煩い痛い宏にぃ助けてよ違うそれをやめろ僕は僕僕って誰だ私違う僕は捨てられたくないだからだから嘘嘘ついた自分勝手最低痛い犯した僕は最低宏にぃ好き犯して犯したい心僕が痛い痛む疼く痛む捨てられる捨てられない無理やだやだ宏にぃ宏にぃ宏にぃ近く僕を好きに駄目頭痛い頭痛い大好き僕私犯して好きにして逃げそれは違う僕は痛い嘘嘘をやめろ痛い捨てられたい捨てられたくない好き好きだから違う浅ましい黙って僕僕は嘘嘘つき嘘つき謝れ謝れ痛いやめてやめてよ僕最悪許されない罪人罪人宏にぃ僕捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない捨てられたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくないああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い僕は僕は僕は宏にぃ好き大好きだよ

 

 彼が見てくる。

 

 彼が、彼って誰だっけ?宏にぃが、宏にぃが見ている。

 誰を?僕を?なんで?想い暗い見たくない見えている。

 

 その顔が、

 

 僕は、

 

 捨てられる?

 

「…………」

 

 喚く脳内に酷い頭痛、警鐘、警報

 

 隠す、隠せ、隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ

 

 僕の心を悟られたら、終わる。

 

 この関係も何もかも僕も

 

 全部、全て終わる。

 

 それは避けないと、僕は

 

 ()()()()()()()()()()

 

 笑う、笑う、笑う

 

 口を動かして目尻を持ち上げて、彼の隣に並ぶ。

 

「あ、見て、宏にぃ、月綺麗だよ」

 

 顔を持ち上げて空を見上げる。

 きれいなまんまるおつきさま。

 スポットライトみたいに青白く僕達を照らしている。

 静かな静寂、夜、夜特有の、夜特有だよね?

 何も言わない、何も言えない。今口を開けば僕はもう駄目になりそうだった。

 

「……………………伊咲」

「なぁに?」

 

 どくんっ、恋する乙女のように僕の心臓が疼いた。

 

 それを悟られないようにおつきさまから目を離して彼へ視線を向ける。

 かっこいい、かっこいいなあ。

 何を考えてるのかは何もわからなかった。

 

「…………」

「…………」

 

 そのまま、何も言わない静寂がまたあった。

 向き合う目が辛くて逸らしたくなって、それを堪えて、僕は右手で左の手首を強く握りしめた。

 痛い

 痛い、痛みがする。

 

「い「冷えるし、部屋に戻ろうよ」

 

 彼が口を開いたのを見て僕は声を重ねた。

 何を言うつもりだったのだろうか、わからないしりたくない。

 彼は僕の言ったことに反対せず、「そうだな」と言うと部屋のドアを開けた。

 

「……伊咲?」

「あ、うん」

 

 僕を呼ぶ、僕の名前を

 何故?部屋に入れてくれるから。

 彼より先に僕が部屋に入る。

 入っていい?いいんだ。そうなんだ。

 彼の優しさに僕の心が痛みを発するのを感じたけど頭痛にかき消される。

 

 部屋に入る。暖かい、風の入らない部屋は外なんかよりよっぽど暖かい。

 まるでぬるま湯に浸かってるような気分だった。

 

 彼の顔を見る、見る、近くで。

 今の僕は小さくて彼の顔を見るには顔を持ち上げないといけない。けれど、だからこそ僕は彼の顔が見れる。

 

「……?」

 

 不思議そうな顔、そんな顔が可愛くてかっこよかった。

 近づく、近づける。近くにいれる。

 胸を当てる、わざとらしく。僕の胸、宏にぃは結構好きなのはわかってるから。

 こうすれば彼は僕を好きでいてくれるのだろうか?

 こうすれば彼は僕を求めてくれるだろうか?

 

「ねえ、宏にぃ、しよ?」

 

 密着して、僕は宏にぃを誘う。

 鼓動が聞こえる。どくんどくんどくんどくん

 頷いてくれるだろうか、不安で、それを悟られないように強く強く押し付ける。

 どくんどくんどくんどくん

 

「……いいのか?」

 

 こくり、その問いかけがどんな理由なのか分からなかったけれど彼は頷いた、確かに頷いた。

 僕は更に密着する、女の体を女を近づかせる。

 触れ合う熱、熱、温かい

 今はただ彼の体温を感じたかった。

 

 そうすれば

 

 そうしてる合間だけは

 

 なにもかも忘却していられる。

 

 その合間だけは僕は彼を純粋に愛することができる。

 

 宏にぃの腕が、触れる。冷たい、外にいたから、気の所為じゃない。

 そんな手が嫌で温めてあげようと両手でその手を握りしめた。

 熱が、移る、冷たさも、移る。

 

「……伊咲?」

「宏にぃは…………」

 

 言葉に詰まる。

 何を言おうとしていたのか、自分でも分からなかった。

 さっきから、自分の体が自分のものではないように感じた。

 事実、僕の体はもう変わっているのだけど。

 でも、それを不幸だと僕は思ってないけれど。

 

「何でもない、はやく、しよ?」

「……ああ」

 

 …………笑う

 僕は、何をしてるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すぅー、すぅー、と一定のリズムで寝息が僕の耳を通り抜ける。

 崩れないそのリズムは僕のぐちゃぐちゃの心を落ち着かせてくれた。

 目の前の宏にぃは僕との行為に疲れて眠っていた。

 でも、僕はちょっと前まで眠っていたせいで、眠気が来なくて寝ることができず、ただ彼の寝息に耳を傾けていた。

 夜は思考が回る。

 この時間に一日の反省会をするのは男の時から変わっていなかった。

 

 今日は色々ありすぎた。

 家族からの電話……なんて、どうでもいい。

 もう、僕とは関係ない人達でしかない。他人の電話。間違い電話と何ら大差ない。

 

 そんなことより、夜のこと。

 ああ、冷静になればわかる。

 あの時の僕がどれだけネジが外れていたか。

 いや、きっと今もネジは外れてる。僕が正常なら今の関係性なんて儚く崩れているのだろうから。

 僕も、宏にぃもネジを取っているからこの関係は成立する。

 

 だからこそ、彼のネジを締めるような行為に、僕は焦ってしまった。

 あの時、彼は何をしようとしたのか。

 ……考えたくない、知りたくない……

 覆い隠す。その現実に僕が耐えられなくて、逃げるように僕はそれをどこか思考の奥へと放り投げた。

 

 でも、夜という時間は黄昏れるのに丁度がよすぎるんだ。だから、嫌いだ昼も朝も全て嫌い。

 思考の海にいれば投げたものはキャッチボールのように何度も返ってくる。

 僕が受け取らなくても、ずぅっと投げ返してくる、邪魔邪魔邪魔。

 その犯人は僕の理性なのだろうか。

 ならその理性を全て破壊して本能のままでいたかった。

 

 宏にぃは、この関係を壊そうとしてるのだろうか。

 

 きっと、そうだ。

 じゃなきゃあの人達の電話に折り返そうとなんてしない。

 宏にぃは、僕のことを捨てようとしている。

 

 

 なんて、言い方はずるいだろうか。

 

 わがままを言っているのは僕で、僕は居候で、そもそも捨てられるとかそれ以前の問題で。

 僕は彼の所有物になれてない。

 不要物を捨てるのは悪いことか?

 

 そんなの……

 

 今はまだ、彼は僕を近くに置いてくれている。

 それは、宏にぃの優しさだ。僕を傷つけないようにしてくれている。

 紳士で、かっこいい。

 だからこそ、僕を捨てる。

 なんで、こうなってしまったのだろう。

 

 僕が彼を犯したからだろうか?

 僕が彼に謝れないからだろうか?

 女にならなければ、そんなことは考えたくなかった。

 

 正直に話せばきっと楽になれる。この罪悪を脱いで純粋な気持ちで彼を見れるかも知れない。

 でも、でも、できるわけない。

 

「……宏にぃ」

 

 彼は瞳を瞑って、何も言わない。

 小さな寝息だけが聞こえてくる。

 ぽたり、水滴がたれた。

 

「離れたくない、よぉ……」

 

 視界が滲んで彼の服に染みがつく。

 だめ、だ。彼に迷惑かけちゃうから。

 泣くなら、一人で、隠さないと。

 そうじゃないと僕はまた彼に甘えてしまう。だから、これ以上は駄目、それは罪人には許されない。

 宏にぃを視線から外して、僕はただ地面だけを見つめた。

 窓の満月が欠けているような気がした。

 

 これからどうなるのだろうか。

 僕という人間のような何かはこれからどうなってしまうのだろうか。

 わからない。正直どうでもいい。ただ、宏にぃと一緒に、そばにいたかった。

 隣りに彼がいるだけで僕は落ち着ける。僕は生きていける。

 

「そばにいてよ……」

 

 彼は何も言わない。今日は彼は何を思って何を感じたのだろうか。

 わからないわからない。もうなにもわからなかった。

 滲む視界で宏にぃへ視線を向ける。

 すやすやと、寝息をたてる彼の寝顔は案外子供っぽい。

 そんな顔をみたら少し、気分が落ち着いて、こんな彼に自分が何をしたのかを思い出してまた自己嫌悪に陥った。

 彼のそばにいたい。そんな純粋で自分勝手で最悪の理由で僕は彼に最低の事をした。

 頭痛、頭痛がする。

 理性が、鬱陶しいんだ、こんなものなくなってしまえばなんてのは逃げなのだろうか。

 

 僕は、僕は一つ地面に転がったものを手に取る。

 

 肉欲に溺れていたい。

 何も考えないで生きていたい。

 けれど、僕はどうしようもなく人間で理性はずっと残ってる。

 なんでなんでなんで、なんでこんなことになってしまったのだろう。

 僕は宏にぃを愛してるだけなのに、愛してるのに。

 愛してるからこうなってるのに。

 

 なんでこうなった?僕のせい、僕のせい?やめろ、止まれ止まろう止まろうよ。

 考えても意味はない、きっと何の意味もない思考を回すという行為はただの自傷行為でそんなもので僕の罪を晴らそうとするなど許されないことなのだ。

 

 だから

 

 だから

 

 理性を抑えるなら結局肉欲に任せてしまうのが一番楽だ。

 

 それを手のひらに垂らす、僕の手に垂れる。

 

 こうやって、肉欲に任せてれば少しの間は楽になれる。

 これは逃げでしかないけれど、逃げなければ僕の頭はどうにかなってもっとひどいことになってしまいそうだから。

 そう言い訳して僕は宏にいを利用する。

 

 鼻を近づける、匂いがする。

 

 ゴムの匂いと宏にぃの匂い、きゅんと乙女のように体が浅ましく反応する。

 僕の頭の中を宏にぃが埋め尽くす、全部全部全部。

 ああ、安心する。

 理性すら押しのけて僕は宏にぃのことだけを考える。

 何かが拒絶しているような気がして、すぐに消えた。

 

「んん……」

 

 空いた手が本能のままに動く。

 今の服は下は何もないからやりやすい。

 あの服を買ったらこうはいかなくなるのかな。

 でも僕がこれを止めることなんてできる気がしない。

 でもあれ可愛かったから汚したくないな。

 あの服着たら宏にぃは可愛いって言ってくれるかな?

 

 舐める、手のひらに垂れるそれを。

 白濁色のそれを舌を伸ばして優しく掬う。

 

 ぐちゅっという音が口の中でなる。

 

 舌に触れると宏にぃの味がした。優しい味がする。

 それをずっと味わっていたくて、僕はそれを飴のように舌で転がす。

 水音が部屋に響く、手のひらを顔の近くに持ってきて宏にぃに包まれる。

 

 これを、僕の中に入れてしまえば僕は宏にぃの物に成れるだろう

 

 あの日を思い出す。あの日だけあの日だけだ。僕の中に宏にぃが真の意味で入ってくれたのはあの日だけ。

 覚えてる。覚えてるよ。そんなこと大好きだもん。

 僕は宏にぃのこと大好きだもん。

 

 宏にぃの手を取る。僕の愛が彼についてまるでマーキングしてるかのようだ。

 僕は、僕は、僕は

 手を持ち上げて僕はその指を口に加えて舐める。

 宏にぃの汗の味がする。それを全部吸い尽くしたかった。

 少ししたらそれをやめて、別の場所に手を持っていく。

 

 段々と日が入ってくる部屋に水音と僕の声だけが静かに響く。

 

 ああ、なんて、浅ましい。

 

 





 今投稿してる作品と比べてあまりにも温度差があるもんだから風邪をひきそうになる。
 ただ前書きの通りこれを書かないと伊咲ちゃんの思考が他の作品に侵蝕しようとしてきます。

 伊咲ちゃん可愛いね
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