心が死んでるトレーナー   作:影後

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第二話 波紋法

アグネスタキオンの足を軽く治療した隼人はトレーナー室へアグネスタキオンと共に向かっていた。

途中、着替えたいというアグネスタキオンの要望に答え、彼女とマンハッタンカフェの部屋の前で待機していると何故かマンハッタンカフェのお友達に戯れ付かれ、結果的にアグネスタキオンだけでなくマンハッタンカフェとお友達も同行することとなった。

 

「それで、私の足を癒した波紋とか言う!アレはなんなのさ!キリキリ吐きたまえ、トレーナー君!」

 

「タキオンさん、少し静かにしてくれませんか?」

 

トレーナー室のソファに座らせ、簡単な茶菓子を出す。缶入りクッキーだが、素朴な味であり手が止まらなくなく。

 

「アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、飲み物はどうする?」

 

「紅茶なら何でも」「コーヒーでお願いします」

 

「…見事に別れたか、俺はどちらも好きだが…知り合いにコーヒーと紅茶を泥水と言い合う馬鹿なトレーナーがいる。お前達はどうだろうな」

 

そう言いながら、隼人はマンハッタンカフェにコーヒーを。

アグネスタキオンに紅茶を出した。

 

「コーヒーはコスタリカコーヒー、紅茶はダージリンティーだ」

 

「君は紅茶はこだわるのかい?」

 

「生憎だが、コーヒー派だ。紅茶は三大産地のしか取り揃えていない。

コーヒーはコスタリカ、キューバこれは……そのコーヒー好きのトレーナーのせいだな。まったく……」

 

そこにあるべき感情であるはずの微笑みなとはなく、ただなにもない。

感情のない顔が二人に映る。

 

「…さて、マンハッタンカフェ。見ていると良い、アグネスタキオンが騒ぐ理由をな」

 

隼人はそう言うと立ち上がり腕を伸ばした。ありえない、2m程も手が伸びているのだ。両手を広げた人間はその身長に等しいと言うが、今現在の隼人の腕はまるで関節がないように伸びている。

 

「ふぅ…」

 

「……なんですか、ソレ」「私も驚いたねぇ」

 

「ズームパンチという。腕の関節を限界まで外し、皮膚の収縮性を利用しパンチの射程を伸ばす攻撃だ。さらに、関節を外して生じる痛みを波紋で打ち消している」

 

「だから波紋とはなんなのさ!」

 

「そうか……ならば見せてみるべきか」

 

隼人はコーヒーカップをテーブルに置くと両人差し指をコーヒーに挿し、逆さ立ちをする。

 

「マジック?!いや、そんなものでは」

 

「コーヒーが……波打っている」

 

「そうだ、私の人差し指から波紋が出ているだろう。波紋とは特殊な呼吸法により、体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こし、太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す秘法。ふっ」

 

ゆっくりと地面に降り立ち、コーヒーを啜る。

 

「そして、波紋を使うことで肉体の治療や毒素の排出。身体能力の向上をも、可能とする。また、ズームパンチの様に相手を攻撃することもできるが、ソレはウマ娘には必要ない」

 

「凄い……私の知らない技術がこの世にあるなんて!」

 

「しかし、教える事はせんさ。波紋が使えるのは今の所俺一人。別に教えたいとも思わん」

 

「…残念だ、さてカフェ?君はどうするんたい?今の所トレーナー君は私の専属だが……」

 

アグネスタキオンはマンハッタンカフェに何処か不穏な笑顔を向ける。

 

「君のお友達に追いつきたいのだろう?君の体、彼の言う波紋があればどうにかできるんじゃないかい?」

 

「なんです?貴女がそんな事を言いですなんて」

 

「何、私はウマ娘の可能性を信じているのさ!その為にはが多くのデータが必要となる!わかるだろう、カフェ。君もその相手の一人!そして!私は今、より驚くべき存在に出会った!わかるかい?指立て伏せという物は有るが!人差し指だけで逆立ち!更にコーヒーカップの上に立ってみせたんだ!トリックなんてものはない、トレーナー君の扱う波紋法、それは魔術に等しい!私はそれを解き明かしたい!波紋法を解き明かせば、ウマ娘は更に先へと」

 

「…マンハッタンカフェ。アグネスタキオンは何時もこうなのか?」

 

「えぇ、タキオンさんは何時もこうです。それと、タキオンさんの言っていた事と貴男のいう波紋法の効果は本当ですか?」

 

「あぁ、傷を癒すことも、体を治療することもできる。禁じ手だが…いや、言うべきではないな」

 

ただ、淡々と述べる隼人にマンハッタンカフェは少し悩む仕草をした後、告げる。

 

「私とも、トレーナー契約をしてください」

 

「何故?マンハッタンカフェ、君は既に優れたトレーナーが隣にいるようだが」

 

お友達はマンハッタンカフェの後ろで軽く微笑むが、すぐに隼人を指差す。

 

「お友達はいわば並走相手、パートナーです。私は彼女に追いつきたい。その為に、力を貸してください。幻とスーパーカーを手掛けた貴男の力を」

 

アグネスタキオンは未だに喋っている。

自分の世界に入っているようで、周りの姿は見えていない。

そんな姿に呆れながら、隼人は契約書をマンハッタンカフェに見せる。

 

「アグネスタキオンは最後まで面倒をみるつもりだ。元担当から託されたのもある。だが、マンハッタンカフェ。君は違う、君は俺に自分から売り込んできたな?俺の心の炎を燃やせないウマ娘なら、別の誰かを宛てがおう。それは理解しておいてくれ」

 

「…問題ありません。私の身体は弱く、病弱です。しかし、勝ちたいんです。お友達に、その為なら………」

 

「波紋法による治療も行おう、ようこそ。マンハッタンカフェ」

 

「よろしくお願いします。トレーナーさん。あと、カフェで良いです」

 

「なんだい、カフェも担当かい?あと、アグネスタキオンと毎回言うのはやめたまえ。私はタキオンで良いさ、トレーナー君」

 

「そうか、よろしく。カフェ、タキオン」

 

こうして、隼人は新たに二人の担当バを受け持つ事になった。

 

「だが、今日はトレーニングは無しだ。カフェ、明日のトレーニングは一度本気で走ってもらう事になる。その為にだ」

 

そう言うと隼人はカフェの肺と肺の間に小指を刺した。

 

「カフェ?!」

 

「ゲホッ……」

 

隼人の暴挙にタキオンも慌てるか、隼人は言葉を続ける。

 

「お友達とやらよ、安心しろ。さぁ、カフェ…一度肺の中の空気を全て、1cc残らず吐き出すんだ」

 

苦しそうにテーブルに突っ伏し、隼人を睨むように見る。

 

「君の担当だぞ!なんて酷い真似を」

 

タキオンに騒がれつつも、隼人は優雅にコーヒーを飲んでいる。

視線の先ではカフェを心配しながら、隼人を締め殺そうとお友達が迫っている。

 

「落ち着けと言った。しばらく呼吸はできんが……ほぉ、もう立ち上がれるのか」

 

「身体が……身体が異様に軽いんです。何時も、苦しかった身体が、まるで嘘のように」

 

「君の呼吸が肉体を癒したのだ。さてと、すまなかった、痛みもあっただろう。だが、カフェ。あらためて、君は信じてくれるかな?波紋法を、仙道を」

 

「私は科学では考えられない存在が見えています、しかし波紋法や仙道はトリックがあると思っていました。でも違う、私自身がその証明ですから」

 

「……ならば、今俺の背中の上にいるであろう君のお友達を離してはくれんかね。そろそろ、波紋で除霊しなければならん」

 

「みんな、止めて下」

 

だが、カフェが言い終わる前に一体の幽霊が隼人に襲いかかる。

 

「まったく、落ち着きこそが大切だと言うに」

 

隼人の右腕に雷の様な輝きが纏われ、その幽霊に触れた。

 

「山吹色の波紋疾走」

 

「?!」

 

「……ふむ、邪気は消えた。いや、護ったか。まぁ、あくまでもカフェを守護する為の者。お友達よ、俺も自衛だ。許してほしい」

 

お友達は何処か悩んだ様子を見せる。

 

「……メジロマックイーン」

 

?!

 

お友達の態度があからさまに変わる。

 

「やはりか、君の存在が多少なりとも予想できた。かのウマ娘の写真集で手を打とう。それも、数量限定品だ」

 

首をブンブンと千切れんばかりに振るお友達にカフェも驚きつつ、隼人はやはりという顔をする。

 

「あの、お友達の正体をしって」

 

「なに、カフェ。気にすることはない、タキオン。惚けてないで」

 

「いや、だってね……眼の前でこう連続して超常現象が起きたら…ねぇ?」

 

「何、幽霊であろうと波紋の前では無力よ。さて、今日はもう帰るといい。後は自由時間だ。俺も出かける用事があるのでね」

 

「何処へ行くんだい?」

 

「君等の先輩に預けた物を回収するのさ。心はまだ燃えていないが、トレーナーとしては復活してしまったのでね」

 

隼人はそう言うとトレーナー室から歩き去る。

向かうは一人のウマ娘のいる場所、周りにはそのウマ娘を慕う後輩たち。

 

「マルゼンスキー」

 

「バッチグーよ、帰ってきたのね。シュンちゃん」

 

マルゼンスキーは何処か感慨深そうに言葉を溜め、言い放つ。

 

「おかえりなさい、トレーナー!」

 

 

 

 

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