片方靴の依頼人(ホームズシリーズ・プロローグ)赤い靴⑧10,000字   作:源公子

30 / 55
第29話 21世紀イレギュラーズ、作戦決行

「もちろん! 私、友達のアイリーンが死んだ本当の理由が知りたいの。

 ピエロがあんなことしたの今でも信じられない。

 いつもは無口で大人しくてとっても正直な人なの。

 彼が嘘ついた所なんて一度も見たことないわ。

 アイリーンの死体に細工したのは確からしいけど、殺したなんて……

 きっと何か訳があるのよ」

 

「わかった。モリアーティには地主の権限で、わたしを探偵として雇ったと紹介して欲しい。それなら私の質問にも素直に答えてくれるだろう。

 黒兎は、得意の鼻で首を探してくれ。ピエロには隠す時間があまりなかったはずだ。多分、サーカスの敷地の何処かにあると思う」

 

「デモ ワガハイ、 ソイツ ノ ニオイ シラナイゾ? ドウ サガセバ イインダヨ」

 

 黒兎が言うと、ワトソン君が助け舟を出した。

 

「何言ってる。お前、死体のスカートの中に潜って下の毛の色を確認してただろ。あの匂いだよ」

 

「ナンデスッテ、 サンゴ ソンナコト シテタノ。 イイトコ アルト オモッタ ノニ サイテー!」

 兎娘が怒ってしまい、黒兎は大慌て。

 

「ソ、 ソンナ…… モリアーティ カケハ ワガハイ ガ カッタヨナ。 ナントカ シテクレヨー。 シテクレナキャ テツダワ ナイゾ!」

 

 

「うーん……マザー、五代目と人間になった兎娘が結婚したら、子供は人間の子が生まれると言ってたよね。兎の子供が生まれる可能性はないの?」

 

「そうね。両親が子作りした時の似姿で産まれるはずだから、もし二人とも兎の姿の時に子作りしたなら、兎の子が生まれると思うけど」

 

「「ハァ?」」

 マザーの言葉に、兎娘と五代目が、同時に叫んだ。

 

 

「黒兎君のブラックホールが消滅するには、まだ時間があるよね。

 それまでに二人が女の子の兎を産んでくれれば、黒兎君も子孫を残せて問題解決。 兎は多産で成長も早いから間に合うと思う。それでどう?」

 

「ホントカ? ヤッター」

 黒兎は飛び跳ねて喜んでいる。

 

「ちょっと待ってよ。僕、うさぎになるなんて聞いてないよ」

 あわてる五代目を、モリアーティが止めた。

 

「だから、話だけだって。ここは話を合わせて、ね?」

 

 おいモリアーティ、目が笑ってるぞ?

 

 

「六代目が、兎……」

 いかん、ワトソン君が崩壊してる。

 

「だから、話だけ!ほんとにやるわけないでしょ」

 

 マザー、ナイスフォローだ。

 だがモリアーティが言ったとなると、嫌な予感……。

 

 

 

「では各員配置につけ、作戦決行!」

 

「「「「「「「アイ・アイ・サー」」」」」」」

 全員の声が揃った、いいメンバーだ。

 

 

 ◇

 

 

「こっちが科捜研。見取り図によると……こっちかな?」

 

「モウ、ナニ トロトロ シテルノヨ。サンゴノ ホウガ ヤクニタッタワヨ!」

 

「ごめん」

 穴を掘っていた兎娘が、イラついて五代目を叱りつけた。

 

「大丈夫よ。出たところで透明マントを使えば探せるから」

 こりゃ結婚したら尻に叱れるわね……マザーはこっそり思った。

 

 ◇

 

 

「どうだ、匂うか?」

 黒兎のハーネスを引っ張り、ワトソンが言った。

 

「アンマリ……フルイ ニオイ シカ シナイ ナ」

 

 ここはサーカスの敷地内。お墓参りを兼ねて兎の散歩(うさんぽ)に来て、迷い込んだ体で、うろつく二人だった。

 

「ワガハイ ヒトリ デ ヤレル ノニ。 カオ マデ カエル ヒツヨウ ナイダロ」

 

「僕は昨日サーカスで見られてるから、マズイと思ってマザーに頼んで変えてもらったんだ。どんな顔になったのか見てないんだが、そんなに変な顔か?」

 

「ベツニ ヘンジャ ナイケド……」

 

「どのみち兎が一匹で歩いてたら不自然すぎる。それにサーカスには、熊とかもいる。捕まったら、食べられちゃうかもしれんぞ」

 

「ソシタラ ホール デ、 ニゲル」

 

「そこを誰かに見られたらアウトだろ、大騒ぎになっちまうよ。それに連絡入れるのに、兎が携帯電話で喋ってたらまずい。やっぱり誰か人間がいないとダメだ」

 

 そう理由をつけて捜査に参加したワトソン、本音は留守番が嫌だったからなのだ。

 

「メンドクサイ ナー ワカッタヨ」

 鼻をヒクヒク、兎の散歩(うさんぽ)は続く。

 

 

 ◇

 

 

「ただいま、戻りましたー」

 五代目が穴から這い出してきた、兎娘とマザーが続く。

 

 ここは教会の礼拝堂。私とモリアーティとアリス嬢が、ピエロとアイリーンの父親の到着を待っていた。

 

「見つけたか?」

 

「はい、念のため携帯で写真撮ってきました。今、パソコンで拡大します」

 私の言葉に、五代目がパソコン画面を開いてみんなに見える様にした。

 

 

「頭も体も首以外の外傷はなし。頭部は切り口に生体反応があり、首から下の切り口は、生体反応なし、死んでから切られてます。

 初代ワトソンさんの見立て通りでした。

 

 他に新しい傷も、毒物の反応もなし。つまり下半分の死体は、頭部か頸部の損傷で出血死したわけです。頭を殴られたとか、首をナイフで切られたとか。

 後、下半分の首の切り口に、ライオンの毛が二本付いていたとの事です」

 

「他殺か事故か、それを隠すために頭だけ隠したのかもしれん。

 頭部の傷を見ないことには断言できないな。黒兎の鼻に頼るしか無いか」

 

「あとこっちは、DNA検査の結果です。結論から言えば子供の父親はピエロでした」

 

「ええ! だってアイリーンとピエロは姉弟なのよ。まさか近親相姦?」

 アリス嬢が悲鳴をあげた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。