片方靴の依頼人(ホームズシリーズ・プロローグ)赤い靴⑧10,000字   作:源公子

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第41話 犯人判明!

 B・Bの手はなおも書き続けた。

 

「え?『こうなるのは分かってた。なぜ私が、あなたと私の入れ替わりをバラそうとしたかわかる?アリスがチャーリーのこと好きだって私に告白したからなの。取り持ってくれって』

 そ、そうか。アリスさんは姉弟だと信じてたんだものね」

 

『だから、本当のことを告白して、私が妻だとわかれば諦めてくれると思った』

 

「うわーそれで、あの時あんなに本当のことを話すって言い張ったんだ。

 でも墓に行くんなら、あんた一人で行きなさいよ。

 私はパパに頼んで、もう一つの方のお墓の体を生き返らせてもらって、ドックと幸せに暮らすんだから」

 

『結婚は死が二人を分つまで。私たちはもう死んでいる。死んだ者が生きている人間を縛るのは間違っている』

「何いい子ぶってるのよ、あんたはもう待ってる人がいないけど、私にはいるのよ!

 あんたは一年以上ピエロと夫婦でいられたけど、私たち一緒に暮らしたことさえない。不公平じゃないのー」

アイリーンが泣き出した。

 

「姉さん、B・Bの言うことの方が正しいよ。無理がありすぎる」

 ピエロが割って入った。

 

「そこは私が上手く隠すよ、誰にも見つからない所に家を買って……」

 

 ドックの言葉に、ピエロが答えた。

 

「そうやって誤魔化したって限度がある、いつかはバレますよ。

 姉さんは、二人も殺してるんだ。いや、僕の子供を入れて三人か。

 それが生き返ったと分かったら、裁判になる可能性も……」

 

 だんだん修羅場になってきたようだ。

 

 

 

「まあ、こちらは当人たちの話し合いに任せるしかないな。しかし、白人マフィアも違う、中華マフィアも違うとなると、モリアーティと五代目は一体どこに連れ去られたんだ?」

 

「え、モリアーティさんですか? 僕、昨日見ましたよ」 

 

「「「「「「「「「はあ?」」」」」」」」」

ピエロの言葉に全員が驚いた。

 

「僕、模範囚なので、マジックの腕を買われて、時々他の刑務所に慰問でマジックショーを見せに回ってたんです。

 その内口コミで軍の関係にも呼ばれるようになって。

 昨日、陸軍の新設された細菌研究所に慰問に行った時、ちらっとですがモリアーティさんがいるのを見ました。

 どうしてこんな所にいるのかなぁと、不思議に思ったんですけど」

 

 

 ――労せずに、向こうから結果が転がり込んでくる事もあるのだ。

 

 

「あの細菌研究所は、僕がプランニングしてコンピュータを納入したところで、今でもメンテナンスを担当してます。

 データ全部入手できますよ。所長のラロ・シフリンとは付き合いがありますし」

 

 

「「ラロ・シフリンですって」」

 ブリジットさんとエホナラさんが同時に叫んだ。

 

 

「え、お知り合いですか?」ドックが聞くと

 

 

「名前だけ、それも息子さんの方。盲腸で、数学オリンピックに出られなかったのが、ラロ・シフリンJr.って子なの。メンバーの中で一番チビで、30cmのシークレットブーツ履いてるって五代目が言ってた。珍しい名前だから覚えてたの」

 

 ブリジットさんの答えにエホナラさんが続く。

 

「ジャム坊やがこっちに越してきてすぐの頃、子供からドーナッツ取り上げてたいじめっ子に、カッとなって『お前なんか、一生ドーナッツ食べられなくなればいいんだ』って叫んでしまったの。その子それがきっかけで、糖尿病から拒食症になって、育ち盛りに食べられなくて、背が低くなっちゃったって後で聞いた。その子の名前が、ラロ・シフリンJr.」

 

 

「本当ですか! お父さんのラロ・シフリン所長もすごいチビで、やっぱりシークレットシューズ履いてます。2019年メリーランド州のフオートデトリックの陸軍生物兵器研究所が閉鎖されて(*注)、そこから移籍して来た人なんですが、ちょっとマッド・サイエンティストなとこがあるんです。

 親バカで有名で、背が高くなるようにと息子さんにたくさん食べさせ過ぎて、糖尿病にしてしまったと聞いたことがあります。

 

 息子さん、今はスカウトされてホワイト・ハッカーとして軍の仕事をしています。最後に目撃された時、二人の乗ったのは自動運転タクシーでした。

 コンピュータを乗っ取れば、誘拐なんて簡単です。

チビで二人に恨みがある。そんな男が、五代目が急に背が伸びたと知ったら……」

 

 

「決まりだな」私は言った。

 

 

 ◇

 

 

「ここが吸気穴か。マザー、みんなを小さくして通れるようにしてくれ」

 透明マントで身を隠した私は、隣のマザーに頼んだ。

 

 私、マザー、ドック、キョンシー・アイリーン、サリーさん、黒兎・赤ちゃんシンバを背負った兎娘が今回の21世紀、不正規隊《イレギュラーズ》のメンバーだ。残りは戦力外なので留守番になった。

 

 

「驚きました、魔法って便利ですね」

ドックの言葉に、

 

「あなたが基地の見取り図を取り寄せてくれたからです。21世紀の建築にこんな便利な“穴”があるとは知らなかった。黒兎、モリアーティの匂いは見つかったか?」

 

「モリアーティ ハ シナイケド、 カスカニ フィフ ノ ニオイ ガ スル! ソッチ ニ ムカッテル」

 

 サリーさんとドック以外は、穴を通るのは慣れたものだったが、上へ上へと、エレベーター無しの十五階は、流石にきつかった。

 

 

 *******

(*注)フォートデリック陸軍生物兵器研究所1943年設立~2019年7月閉鎖。

 米軍は「科学生物兵器(CB兵器)能力の維持は、他の国からの同種の攻撃に対する抑止力として重要。CB兵器を保持、開発していく」と宣言。日本の陸軍生物兵器と満州第731部隊のリーダー石井四郎は、全ての資料を持ってここに逃げこんだ。1975の北朝鮮での「流行性出血熱」(旧満州の風土病)76年の中央アフリカでの「エボラ出血熱」は同じもので、米軍が新しい細菌兵器の実現のため作ったものだとか、黒い噂が絶えなかった。

 

    

 

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