片方靴の依頼人(ホームズシリーズ・プロローグ)赤い靴⑧10,000字   作:源公子

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第53話 ハッピー(?)ニューイヤー

「お前達、何しにきたんだ。ノックもしないで!」

 マザーにぎっくり腰を直してもらい、やっと椅子に座って私は叫んだ。

 

「えー? だってサプライズなのに、ノックしたら台無しじゃん。独り者の寂しいホームズさんを慰めに来てあげたのに。お客さん帰るまで待ってたんだよー、俺達」

 

「アメリカ カラ ココマデ、 チョクツウ ノ アナヲ ホッタ ノ」

 兎娘のビオラがニッコリ笑う。それで兎姿なのか。

 

 俺達……マザー、モリアーティ、兎娘を抱いた五代目、大人に戻ったシンバの上には、黒兎を抱いた5歳くらいの男の子(誰だ?)。だが、なぜピエロにアリス嬢、首に縫い目あるアイリーンとドック・ホリデイまで居るんだ?

 

「僕、仮釈放になって、結婚したんです。お世話になったホームズさんに報告したくて、連れてきてもらいました。来年赤ん坊も生まれるんです」ピエロがアリス嬢と挨拶した。

 

「ちゃんと体を元通り合わせて、再生しました。一年間だけの約束で、一緒に暮らすことをお父さんと弟さんに許してもらったんです」ドックとアイリーンも挨拶した。

 

「ワタシ モ ママ ニ ナルノ」

 五代目に抱かれた兎娘が、嬉しそうに言った。

 

「そうだよ。二月には珊瑚くんのお嫁さんが生まれるんだ。五匹ぜーんぶ女の子だから一人くらい気の合う女の子がいるよ、きっと」モリアーティがにっこり顔。

 

「五代目……お前、兎になったのか?」

 私が聞くと五代目が真っ赤になった。

 

「だって珊瑚くん、僕等のためにあんなに頑張ってくれたんですよ。……お願いだから初代のワトソンさんには、内緒にしておいてくださいね」

 

 言えるわけないだろうが!

 

「子供が産まれるまでは、ワタシのところで預かるから大丈夫、安心して」

 マザーがにっこり顔……そのほっぺた抓ってやりたい。

 

「ケッコンシキ ニハ ショウタイ スルカラナ、 キテクレヨ」

 この海燕が――。皮剥いで黒いスリッパにしてやろうか。

 

「そうだ、ホームズさんにクリスマスプレゼント。

『ホームズさんはもう二度とぎっくり腰にならない。この願いを二倍叶えよ』

 これでもう大丈夫。良いプレゼントでしょ」

 モリアーティがにっこり顔。

 

「……それはどうも」

 

 喜んで良いのかなんなのか。

 頭を抱えた私の目の前に、ひよいと小さな笑った顔があらわれた。

 

「おじちゃん、『キラキラ星』弾いて。僕、アレ好きなの」

 黒兎と一緒にシンバに乗っていた子だ。誰なんだ?

 

「ジョン・ワトソンJr. ヨ。 トモダチ ナノ。 

 ムスメタチ ガ ウマレタラ ナカヨク ナレソウ」

 兎娘がにっこり笑う。

 

 ジョン・ワトソンJr.! そうか今年は1908年。いや、もう1909年になるのか。

 あの赤ん坊がもう五歳になったんだ。

 

「ねぇホームズおじちゃん、弾いて弾いてー」

 

 袖を掴んで離さない。ふと、初めて会った頃の若いモリアーティを思い出す。

 人付き合いは苦手だ、女も苦手だ、子供はもっと苦手なんだ!

 それなのに――

 

「あ、あとでな……」

 私の夢見た静かな引退生活は、どこへ行ってしまったんだ?

 

「この人数にはテーブルが小さすぎるわね、もっと大きくしましょう。

椅子も十二個いるし、シンバのは長椅子にしましょうね。

 ほらドック、魔法のバスケットを開けて。

 前にご馳走をなんでも出してあげるって言った約束、やっと守れたわ」

 

 バスケットの蓋を開けると、大きくなったテーブルの上に、贅を尽くした十二人分のセッティングされた料理が並んだ。椅子が十一個+長椅子、まさに魔法。

 

「ほら十二時になるよ。カウントダウンしよう。3・2・1ハッピーニューイヤー!

ホームズさんが寂しくないように、これから毎年来るね。この願いを……」

 

 私は大慌てで、モリアーティの口を塞いだ。

 ……あの時、マイクロフトも同じような気持ちだったのだろうか?

 

 誰か助けてくれ----!

 

 

                  END

 




「浮気した母親を父親が撃ち殺した」これはシャーロキアンの間で流布されている定説の一つ。それを使わせてもらいました。(相手は、ホームズの家庭教師のモリアーティだそう)ちなみに安楽椅子探偵、巨漢のネロ・ウルフの父親がマイクロフトだと言う説もあります。

 アイデアのヒントは、実はストラディバリウス。あんな高いもの、ホームズさんが買える訳ない。きっと誰かからもらったに違いない……そこからこの話は生まれました。ラストで軽く笑って終わらせるはずが、どんどんシリアスになってしまい、またもや難航。(ホームズさんが、スッとかけたことなど、一度もありません)六日目に疲れ果て、間違えて1回分2000字を消してしまい、とうとうダウン。一日何もせず休む羽目に。結局「マイクロフト・ホームズの回想」という6600字ほどの短編を1日で書き上げて、やっと何が起きていたのか自分で正確に掴むことができました。(おまけとして、最後に載せておきます)これに沿って、更に書き直すこと五日で完成。2023年1年20日〜2024年2月6日まで、ほぼ一年かけて書き上げたホームズシリーズ、これにて完結です。

 このシリーズが、毎回難航するのは、“終わり”だけ決めて、まず終わりを書いてから、残りを書き出すから。書きたいシーンと、アイデアを一つか二つ決めて、(一作目は、卯年だから、ウサギを出す・ライヘンバッハの滝で善・悪に割れる、以外何も考えてなかった)書きたいところから書いて行き、最後に繋ぐという、シナリオ無しの出たとこ勝負の書き方をしたからです。これぞ宮崎駿方式。80%までは、実に楽しく書ける。そして最後の繋ぎと、突然出てくる大量の必要資料に悲鳴をあげ、挙句に辻褄が合わなくなり、遡っての書き直しが、大量発生。それでも続けたのは、予想もしなかったものが自分の中から湧いてくるのが楽しいから。
 ジギルとハイドのように善・悪に割れるところを、若・老とした為に「ヤング・モリアーティ」というキャラクターが生まれ、五代目のTシャツの柄をアインシュタインの顔にしたせいで(別にゴジラでも良かった)ややこしい数学・宇宙談義の果て、次の作品のブラックホール黒ウサギ妖精「珊瑚」が生まれ、同じようにして、「キョンシー2/2」が生まれる。マイクロフトさんは告げ口屋になるし、全編作者にとってアンビリーバブルでした。てへ。
 ちなみに「人間は“思ってたのと違う”とびっくりするために生きてる」は、大好きな絵本作家、ヨシタケシンスケさんの「メメンとモリ」にある言葉です。(マニアのパロディです、許してください〜)

この作品は、カクヨムのために一年かけて書きました。でも、最後まで読んでくれたのがたった3人。
イイネも☆も要らない。もっとたくさんの人に最後まで読んでほしい。
そう思って、ハーメルンに来ました。カクヨムより読んでもらえたのでしょうか?(まだ3人です)

二次創作と、SSのストックは全て発表しました。また何か書いたら伺わせてもらいます。
ではまたいつかお会いできますように。

お時間あればオマケの「マイクロフト・ホームズの回想」も読んでやってください。
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