「きっと、宇宙で遊べるころにはさ」
宇宙色の瞳を輝かせて、きみが言う。
「今で言う寿命はなくなって。病気も性別もなくなって。距離もほとんど意味がなくなって。でも、貧乏だったらそういうのが手に入らなかったりするのかな?」
「う~ん……ありそうだけどね。だんだん安くなっていくんじゃないかな」
そもそも、個人の資産とか、そういう概念がなくなるかもしれない。いや、個人そのものか?
「ああ、でも寿命がないなら、ゆっくり宇宙を飛びたいなぁ。ぜんぜん変わらない景色を、惑星パズルをしながら、好きな人と過ごすの。ガスっぽい飲み物に、鉱石のアイスをつけてね」
「いいね。音楽はどうしようか」
「わたしは、雨の音みたいなのがいいな」
「ぼくは、懐かしい曲がいいなぁ」
外はしとしとな雨。
世界を知らないきみの白い肌が、窓ガラスをうらめしそうになぞる。
「それでも退屈に感じたら……宇宙ラジオをやろっか。周りの天気は晴れ時々隕石です、みたいな」
「いいね。お便りを送るよ」
「ふふ、ステッカーを転送でプレゼントするね」
きみは少しせきをして、ぼくが差し出した水を飲む。
「ごくごく……ありがと。話せるネタはいっぱいあるよね。時々未開拓な星に降りて、散歩して。未知の宇宙生物さんと意思疎通して、プレゼントを交換して、日記につけておくの」
「ちょっと危険な気はするけど……」
「そのくらいのほうが楽しいでしょ?」
「まあ、そうだね」
ぼくはナイフでリンゴを剥いて、きみはそれをパクッと食べる。
「はむはむ、ありがと。色んな景色を、写真に……うぅん、文字通り目に焼き付けるの。落ち続ける滝、燃える星の輪っか、空を埋め尽くす花、あとはあとは……星をぐるり一周する虹に乗ってみたい!」
「いいね」
ああ、きみはそれを。
ほんの時々、窓から眺めることしか。
きみは微笑んでいる。
「……それで、色々旅をして。疲れたら、
「ああ……それはわかるよ」
どこまで遠くに旅をしても、生まれた場所はある。
帰りたいと思えたなら、いい場所に生まれたんだろう。
「しばらく休んだら、またのんびり旅に出るの。あてのない、日記のページが増えていくだけの……区切りのない旅……」
星のように、何度かまたたいて。
きみはそのまま、眠りについた。
「……おやすみ」
ぼくはきみの手を握らない。
きみを連れていかない。
せめて夢の中だけでも。
きみの中に広がる宇宙を、好きに飛び回れますように。
ぼくは目を閉じる。
真っ暗だ。
宇宙は広がっていない。
でも、きみがぼくにそれを語ってくれることが、とても嬉しい。
まだ飛び立てない地球の隅っこで。
雨をBGMに、眠るきみを見ている。