流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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10.二次試験

「二次試験は料理を作ってもらうわ。

美食ハンターであるあたし、メンチと後ろのブハラが納得する料理を作ってちょうだい」

 

 

 二次試験の会場となる施設には、調理器具が揃ったキッチンが用意されていた。

そして、その真ん中には二次試験の試験官、ブハラとメンチが座っていた。

 

 まず目に入るのはとんでもない巨体のブハラという男。

説明されなくても大食漢なのだろうと確信できる。

 

 そして、ブハラから視線を落とすとメンチという小柄な女性が目に入る。

髪を5方向にまとめ、服装は黒いビキニかブラジャーに鎖かたびらのような網目状のTシャツを羽織っている。

Fカップはある胸を惜しげもなく披露し、ズボンはホットパンツで太ももを露出させている。

 

 

「あれ、どうやってハンターになれたんだ?」

 

 

 キルアはブハラを指してクラピカに耳打ちする。

 

「ハンターになった後で太ったのだろう。でなければ試験は突破できまい」

 

 

 クラピカは冷静に分析する。

 

 

「料理かぁ、難しそうだなー」

 

 

 ゴンが不安げに呟いた。

 

 

「どのレベルを求められるかだよな……(にしても乳でけー)」

 

 

 レオリオがメンチの胸を凝視しながら言った。

 

 

「料理はまだ練習中だ……まずいな」

 

 

 18号は顔をしかめる。

 

 

「僕も自信ないなぁ♠うーん、これは荒れそうだ♦」

 

 

 ヒソカは顎に手をあてて呟いた。

 

 

*

 

 

 ブハラが提示した課題は「豚の丸焼き」だった。

ビスカの森に生息する世界で最も狂暴で巨大な豚を狩り、調理する。

 

 ここまで辿り着いた受験者でも、苦戦したり負傷する者も多かった。

しかし、ヒソカと相対した彼らにとっては大した相手ではなかった。

 

 

「『気円斬』!!」

 

 

 18号は気を円盤上に高速回転させる技、『気円斬』で豚の頭を斬り落とす。

 

 

「血と内臓は抜いておけよ」

 

「了解」

 

 

 そんなこんなで、ブハラの課題「豚の丸焼き」は何の問題もなくクリアできた。

合格者は約半分の70名でブハラが満腹になり終了した。

 

 問題は次、メンチの出した課題だった。

 

 

*

 

 

「あたしが出す課題は「スシ」よ!」

 

(スシ?)(スシって何だ?)(どんな料理だ?)

 

 

 スシとはジャポンという島国の伝統料理だ。

新鮮な魚の刺身を長方形に握った酢飯に乗せ、醤油をつけて食べる。

 

 ハンゾーというジャポン出身者以外、誰も知らない料理。

 

 概要を知るクラピカが“魚と酢飯を合わせた料理”、ということだけをレオリオに伝え

レオリオがそれを大声で拡散したことで、ようやく受験者は動き出す。

 

 しかし、それだけの情報で提出されたスシは惨憺たる有様だった。

 

 焼き魚を酢飯で包んでみたり、魚の切り身を酢飯に混ぜた混ぜご飯だったり。

そんな料理を見たメンチはどんどん機嫌が悪くなっていく。

 

 ようやく、ハンゾーが本物のスシを提出するが、「形は合ってるけど不味い」と一蹴される。

イライラが募るメンチのハードルはかなり高くなっていた。

それに激高したハンゾーがスシの作り方を叫び、他の受験者も正しいスシを提供するが

どれもメンチのハードルを越える味になるわけもなく、メンチは満腹になってしまう。

 

 

「んー、もう食えないわね。じゃ、これで試験終了ってことで」

 

 

 二次試験、合格者ゼロ。

 

 

*

 

 

「……納得いかねぇな」

 

 

255番のプレートをつけた受験者が沈黙を破り、抗議の声をあげる。

 

 

「はぁ? 何よあんた」

 

「俺が目指してるのは賞金首ハンターだぜ。美食ハンターじゃねぇ!

美味い料理作って食ってるだけの奴らに合否を決められてたまるかよ!!」

 

「……へぇ~え、言うじゃない。だったら見せてもらおうじゃない。あんたの実力」

 

 

 言うが早いか、後ろ手に隠し持っていた包丁を255番に投げつける。

255番は突然の攻撃に反応できず、右肩に包丁が深く刺さる。

 

 

「ぐぁ゙っ!? てめぇ、いきなり何を!?」

 

「今のに反応できないようじゃ、賞金首ハンターなんて無理ね。

仮になっても犬死によ。あきらめてお家に帰りなさいな」

 

「ふ……ふざけんじゃねぇ!!」

 

 

 255番がメンチに殴りかかろうとする。

メンチのイライラは最高潮に達し、目が据わっていく。

それを見てブハラも立ち上がる。

 

 しかし、その仲裁に入る者がいた。

 

 

「落ち着け」

 

 

 18号はぶつかりそうになっていたメンチと255番を片手で抑える。

 

 

「「!?」」

 

 

 18号は255番のほうに向くと「抜くぞ」と言って、右肩に刺さった包丁を抜き取る。

ジワッと血が湧き出るが、18号が治癒能力を行使すると傷が塞がっていく。

「後で治療費を請求するからな」と言って、治った右肩をポンポンと叩く。

 

 

(な、なんだこの女……やべぇ)

 

「406番、手を放しなさい」

 

「暴れないと約束できるなら」

 

「暴れないわよ」

 

 

 メンチがそう言うと、18号はメンチから手を離す。

 

 

「あんたも何か言いたいことがありそうね。発言を許可するわ」

 

「そうだな……まず一つ、疑問がある。

ハンターを志すうえで、料理スキルは必要なのか?」

 

「あって困るものじゃないでしょ!」

 

「確かに……だが、必須じゃないはずだ。美食ハンターじゃなければな。

百歩譲って料理スキルが必要だとしても、お前の舌を満足させるほど美味い必要はない」

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 メンチも頭ではまずいと分かっていたが、感情に逆らえなかった。

それを自覚しているからこそ、メンチは何も反論することができない。

 

 

「例えば試験会場にスシに関するヒントが散りばめられていて、それを探し当て

とりあえず形がスシであれば合格……とかなら納得できたんだがな」

 

「……最初はそのつもりだったわよ。でも、ナメた料理ばっかり出てくるし……。

挙句に、あのハゲ忍者が全部バラしちゃうし、だったら味を審査するしかないじゃない」

 

「それでも合格者ゼロはな……納得できる者はいないだろう」

 

「……」

 

「……少々よろしいでしょうか、メンチさん」

 

 

 会場が何とも言えない空気に包まれた時、どこからか現れたサトツが声を挟む。

 

 

「サトツ!? あんた、まだ居たの?」

 

「ええ、少々気になったもので。私としても、全員不合格は妥当ではないと考えます。

ですので……課題内容の変更を提案いたします」

 

「変更? 悪いけど、もう食べられないわよ」

 

「分かってます。ですから、課題は料理ではなく、食材を見つけ出すこと。

基準は任せますが、美味か希少であるほど良しとする。

どれだけ持ってきても構いませんが、毒が含まれるものが一つでもあれば失格。

……どうですか、メンチさん」

 

「――いいわ。それで再試験しましょう。

制限時間は90分よ。これであんたらも文句ないわね?」

 

 

 受験者は次々に頷く。

 

 

「それじゃ、再試験開始!!」

 

 

 メンチの声と共に受験者たちは駆けだしていく。

 

 

*

 

 

「あら、406番。もう獲ってきたの?」

 

「いや、まだだ。さっきのこともあるし、お前にヒントを貰おうと思ってな」

 

「……そういやあんたには借りがあったわね」

 

 

 あの時、18号が仲裁しなければ255番を殺していたかもしれない。

理不尽な試験内容と、受験生殺し。試験官を下ろされても不思議ではない。

そうなれば、ハンターとしての評判は落ちてしまうだろう。

 

 

「これを取ってくれば合格にするってモノは何かないか?

多少無理難題でもいいぞ。たぶん、何とかなる」

 

「はぁ……そうね。じゃあ、あそこに山があるのが見える?」

 

「ああ」

 

 

 メンチが指さす先には山頂が割れて谷のようになっている山がある。

 

 

「マフタツ山って言ってね。あの山頂にはクモワシって希少な鳥が生息してんのよ。

その卵が、あの谷のところに蜘蛛の糸みたいなのにぶら下がってるわ。それを取ってきなさい」

 

「それだけでいいのか?」

 

「……じゃあ、その中でも最高品質のものを取ってきなさい。できるものならね。

ちなみに、卵の殻の模様の密度が高いものが品質が良いとされてる」

 

 

 メンチは言ってみたものの絶対に無理だと思っている。

まず、山までの距離が50kmはある。足が速くとも、90分では行って帰ってくるのが精々。

更に高品質のものを獲ろうと思えば、崖を何度も登り降りして吟味する必要がある。

 

 普通は絶対に無理だ。もちろんメンチでも無理なのだから、まさしく無理難題。

 

 しかし――目の前の女は普通ではなかった。

 

 

「分かった。じゃあ、行ってこよう」

 

 そう言って、18号は猛スピードで空を飛んで山へ向かっていく。

 

 

「はぁ!?」

 

「速っ……時速200kmは出てない?」

 

「いやはや……彼女には本当に驚かされる」

 

 

 18号はあっという間にマフタツ山のクモワシの巣へ辿り着く。

崖の登り降りは必要なかった。18号は空中で静止できるのだ。

じっくり卵を吟味するだけでよかった。

 

 

「簡単な課題だったな」

 

 

 最も模様の密度が高い卵を手に取り、18号はそう呟いた。

 

 

「――終了!! 合格者は42名で二次試験は終了よ!」

 

 

 無事、18号達は合格となった。

18号以外の4人はクラピカの知識やゴンの鼻、キルアの毒見で切り抜けたようだ。

 

 

*

 

 

 その後、42名の受験者たちはハンター協会の飛行船に乗り込む。

この飛行船で、三次試験の会場に向かうのだ。

 

 飛行船内で、3人の試験官が雑談に興じていた。

 

 

「ねぇ、今年は何人ぐらい残ると思う?」

 

「んー、試験内容によるけど、結構残りそうな気がする」

 

「ええ、今年はルーキーがいい」

 

 

 危険な人物として44番のヒソカが挙がるが、主な話題の中心は一人だった。

 

 

「406番、彼女は何者なんでしょうね」

 

「あたしに聞かれても。あたしを片手で抑えたり、空飛んだり……普通じゃないのは確かね」

 

「あの子、念能力者ではないよね?」

 

「ええ……というか、オーラが一切感じられませんでした。その割に色んな力を持っている」

 

 

 サトツは自分が知っている18号の力を話す。

 

 

「治癒能力、瞬間移動、飛行能力……何でもアリすぎ。

念能力なら間違いなくメモリが足りないはずよ」

 

「彼女のせいで他の受験者が少し霞んで見えてしまいますね。

八面六臂の活躍、というわけでもないですが試験官的には目立つ存在です」

 

「このまま帰るつもりだったけど、ちょっと気になってきたなぁ」

 

「そうね……もうちょっと見ていこうかしら」

 

「はい。三次試験はチームワークを試すものと聞いてますので、彼女の真価が問われるのはここからです」

 

 

 夜は更けていく。

そして夜が明け、ついに飛行船は三次試験会場に辿り着いた。

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