「う……どこだ、ここ……」
18号は見覚えのないベッドで目を覚ます。
身体にだるさのような不快な感覚が残っている。
「目が覚めたか、18号」
「イルミ……?」
18号が寝ていたベッドの脇に、椅子に座ったイルミがいた。
「オレもいるよ」
キルアは少し離れたソファーで寝そべっている。
「ここはどこなんだ……?」
「監禁部屋じゃねーかな。ババアが管理してる監禁用の部屋があるって聞いたことあるぜ」
「監禁!?」
18号が飛び起きる。
そのまま、壁を思いっきり殴る。
「……痛ぅ。わたしでも壊せないのか」
「これ、試しの門と同じ素材だよ。しかもかなり分厚い」
イルミが補足する。
「この部屋、監禁が目的じゃないよ。監禁は副次的なもので、主目的は別にある」
「はぁ? どういうことだよ、イルミ」
「キル、そこのクローゼットを開けてみてくれ」
「え? まぁいいけど」
クローゼットを開けると、そこには女性用のコスプレ衣装が揃っていた。
白衣、メイド服、チャイナ服、浴衣、エプロン、etcetc...
「……何これ」
「キル、そこの箪笥も開けてみるといい」
「……嫌な予感がしてきたな」
箪笥を開けると、そこにはいかがわしい道具の数々が揃っていた。
「ななな、何だよこれ!?」
「いわゆる大人のおもちゃってやつだね……これで分かっただろ」
イルミは箪笥の中から精力剤を取り出す。
「母さんはオレ達と18号をくっつけるつもりらしい」
「はぁ!?」
「……あぁくそ、そういうことか……」
18号は何故か息が荒くなっている。心なしか顔や身体が紅潮しているようにも見える。
「18号?」
「盛られたね、媚薬」
「媚薬!?」
18号はベッドに倒れ込む。しかし、身体もベッドも熱がこもるばかりだ。
「さしずめ、セックスしないと出られない部屋ってところか……」
「ふざけんなよあのクソババア……何考えてやがんだ!!」
母親の横暴に思わずキルアが壁を殴る。
「まぁ、18号は母さんから見たら魅力的な女性であることは間違いない。
優しくて、強くて、顔もいい。こんな強行策に出たことも理解はできる」
「だからって!!」
「もちろん、こんなやり方はオレも癇に障る。でも、脱出方法がないんじゃどうしようもない」
そんなことを言っていると、18号がベッドから起き上がる。
そして、服を脱ぎ始めた。
「お、おい!?」
「熱いんだよ、身体が……お子さまは目でも瞑ってろ」
18号はあっという間に下着姿になってしまう。その瞳は熱く潤んでいた。
「うーん……これはまずいな。ヤるしかないのかな」
イルミはそっと18号の顎を指で持ち上げ、見つめ合う。
(正直、オレより強い女とかゴメンだし、顔もそこまで好みじゃないんだけど……。
でも据え膳食わぬは、なんて言葉もあるし……。
コイツと良い関係を築いておくのは、ゾルディック家としても悪くない選択ではある)
「イ、イルミ……本気か?」
「その状態じゃまともに話もできないでしょ。これは治療行為であって、深い意味はない」
「治療行為か……それなら、仕方ない……か?」
イルミは18号を抱き寄せて、耳元で囁く。
「その様子じゃ初めてでしょ。優しくするから、大人しくしてて」
「……分かった」
そのままおっぱじめようとする二人を、キルアが慌てて止める。
「ま、待て! 待てって兄貴、18号!! まだ他に何かあるだろ、方法は!?」
「ないよ。母さんが満足するまで脱出できないんだから。
このまま放っておいて18号が襲ってくるよりは、オレからヤったほうがマシだ」
「だからってこんなとこで……! あっ、そうだ!!
なぁ18号、治癒能力で媚薬の効果消せたりしないか!?」
「「……あ」」
*
「さっきのは忘れろ。いいな?」
「はいはい」
治癒能力で発情状態を脱した18号は、服を着て、ベッドに俯けになりながら足をじたばたさせている。
「で、どうする?」
「さっきよりは頭もまともになったでしょ。18号は何か思いつかないの?」
「……冷静になって考えれば、方法はある」
18号はベッドから立ち上がる。
そして、手を掲げ、高速回転する円盤状の気弾を複数生成する。
「『気円連斬』!」
複数の気円斬が強固かつ分厚い金属をズタズタに切り裂いていく。
そして、切り込みが入って脆くなった箇所を、気を開放させた18号が怒りに任せてぶん殴る。
ドゴォン!! という轟音と衝撃波と共に、壁は崩壊した。
「キキョウ……とか言ったな」
「ひぃっ」
映画「シャイニング」のように壁から顔を出してキキョウを睨みつける18号。
「今回はキルアの顔に免じて許してやるが……次はククルーマウンテンごと消し炭にするからな」
「……ご、ごめんなさい……」
キキョウは土下座して謝罪する。
18号はそれを横目に通りすぎていく。
「18号が優しい人でよかったねー」
イルミがキキョウの肩を叩く。
「頭がたけーよクソババア」
キルアが土下座するキキョウの頭を踏みつけ、18号を追いかける。
「……なんて優しい子たちなの。殺されてもおかしくないことをしたのに」
「……お母様」
「分かっているわカルト。強行策はダメ。
18号さんをお嫁さんに迎える為に何をすればいいか、よく考えましょう」
「はい、お母様」
*
「ここに天空闘技場ってのがあるんだ。そこで戦って勝つとファイトマネーが貰える。
1階はジュース1本分の金だけど、100階を超えると100万ジェニーから1000万ジェニーは稼げるぜ」
「1000万……!」
「ちなみに100階からは個室が与えられるから、割と快適に過ごせる。
それと、100階以降は賭けの対象にもなってる。これもうまく利用すれば荒稼ぎできると思う。
注意事項としては、200階以降はファイトマネーは出ないから気をつけろ」
「なるほど……。ありがとうキルア、早速行ってみよう」
18号は手を振り、キルアに背を向ける。キルアは家の中に戻っていく。
飛んで行こうとしたところ、横から声がかかる。
「待つんじゃ、娘っ子」
「ん?」
振り返ると、そこには金髪の偉丈夫と少し腰の曲がった老人がいた。
「ワシはゼノ。キルアの祖父にあたるものじゃ」
「俺はシルバ。キルアの父だ」
「……どうも」
18号は軽く会釈した。
「キルアとイルミが世話になったようじゃな」
「大したことはしてない」
「試験が穏便に終わったのはキミのおかげだと聞いているが?」
「……言いたいことを言ってみただけだ」
そこまで言って18号はふと思い付き、二人に向き直る。
「だが、お前らがどうしてもと言うなら謝礼を受け取ってもいい」
「ふっ、キルアに聞いた通りの守銭奴だな」
「心ばかりだが、受け取るといい」
18号は手渡された小切手を手に取る。
そこには500万ジェニーと記されていた。
「気前がいいな……貰っておくよ」
「ウチに嫁にくれば500億の財産をくれてやるぞ? 欲しくないか?」
「ご……500億!?」
いきなり桁の違う金額を提示され、18号は思わず前のめりになる。
「親父、これ押せばいけるんじゃないか?」
「いやいや、流石にそこまでチョロくないじゃろ……」
18号は真剣に悩んでいるが、やがて答えを出す。
「魅力的な提案だが……やめておく。わたしは5年後には元の世界に帰るんだ。
この世界でのことはあくまで暇つぶし――他人の人生に深く関わるつもりはない」
「それは残念じゃな……」
「キキョウはまだ諦めていないようだ。キミなら軽くあしらえるだろうが、気をつけることだ」
「そこは旦那のお前が止めておいてくれ……それじゃあな」
そう言って、18号は飛び去って行った。
上空で18号は携帯電話を取り出し、ウボォーギンの番号をプッシュする。
「ウボォーギン、今暇か? どこにいる」
『おぉ18号じゃねえか。まぁ……暇だな。場所は今――』
「そっちのが遠いな……じゃあウボォーギン、今から急いで天空闘技場へ来い」
『天空闘技場? あぁ、金稼ぎに行くのか』
「そうだ。わたしに協力しろ」
『こっからだと距離があるからな。1日はかかるぞ?』
「構わない。わたしは先に行ってるぞ」
18号は天空闘技場に向けてスピードを上げて飛んで行く。
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