流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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18.天空闘技場 -後編-

「……8億4000万ジェニーか。もうすぐだな」

 

 

 18号は通帳を眺めて悦に浸っていた。

ウボォーギンはそんな18号を見て目を細める。

 

 

「10億も貯めてどうするんだ?」

 

「とりあえず、家でも買おうと思ってる」

 

「家? 俺も一緒に住んでいいのか?」

 

「お前は自分の家があるだろ」

 

「いや、あれから生憎ホテル暮らしなんでな」

 

「あっそ。勝手にしろ」

 

 

 18号は立ち上がり、試合に向かうべくドアノブに手をかける。

 

 

「今日はわざと負けるからな」

 

「おう。対戦相手は知ってるか? ガキらしいぜ」

 

「子供……? まさかな」

 

 

*

 

 

『さぁ、今日一番の注目の戦いが始まります!

張りて一発の押し出しでこれまで全勝のゴン選手!!

対するは金的と手数とスピードで、ここまで23戦14勝9敗の美麗の女闘士18号!!』

 

 

 二人がリングに上がると、ワアァァァと歓声があがる。

 

 

「まさか、お前だとはな……ゴン。他の3人も来てるのか?」

 

「ううん、レオリオは受験勉強に専念するってさ。

クラピカは仲間の眼を取り戻すために、マフィアに取り入るって言ってた。

でも、キルアは一緒に来てるよ」

 

「そうか……レオリオとは後で会いに行かないとな」

 

「あ、でも9月にヨークシンでまた集まるみたいだよ」

 

「何? それは一体どういう……」

 

 

 間に立つ審判がレギュレーションを説明し、試合がはじまる。

 

 

「それでは、はじめ!!」

 

 

 18号は素早くゴンの背中に周り、肩を掴んで囁く。

 

 

「悪いがゴン、真剣勝負はできない。友人にお前に大金を賭けさせてる。

わたしは負けないと大損してしまう」

 

「あ……うん。分かった」

 

 

 ゴンは18号の手を振り払うと、距離をとる。

 

 

「子供相手じゃやる気が出ないね。よし、先手は譲ってやるよ坊や。

一撃だけ攻撃を受けてやる。来な」

 

 

『おーっとぉ、18号選手、余裕の先手は譲る宣言!!

これまでのゴン選手の戦いぶりを見ていないのかぁぁ!?』

 

 

「18号さん、オレ試しの門を2まで開けられるようになったんだよ」

 

「ほう、やるじゃないか。それじゃ、遠慮なく吹っ飛ばしてくれ」

 

「うん……行くよ」

 

 

 ゴンは18号に一気に近づき、渾身の張り手で18号をリング外に吹っ飛ばした。

 

 

『あーっとぉ! やはり一撃で決まってしまったぁぁ!!

これでゴン選手は190階も通過、200階へ到達となります!

対照的に18号選手はまたしても180階に降格だぁー!!』

 

 

*

 

 

 試合後、休憩所でキルアと再会した。

 

 

「よっ、18号。随分稼いでるみたいじゃん」

 

「キルアか。お蔭様でな」

 

「キルアも200階到達おめでとう」

 

「ああ、ウイング師匠の話だと200階からは念能力者がほとんどらしい。

気をつけて行こうぜ」

 

「だね」

 

「ウイング?」

 

 

 聞き覚えのない名前に18号が引っかかる。

 

 

「念の師匠だよ。ほとんど我流みたいな念使ってる俺達を見かねて、色々教えてくれてる」

 

「師匠か……ところで、『纏』はいつから使えるようになったんだ?」

 

「3次試験の最後には。でもマスターしたのは最近だよな」

 

「うん。今は練の持続と凝の練習中。あと、『発』……どういう能力にするかも考え中かな」

 

「そうか……頑張れよ。わたしはもう少し稼いだらここから去る」

 

 

 18号は席を立つ。

 

 

「俺らはここで稼いで鍛えて……それから9月にヨークシンに行く」

 

「18号さんはここの後はどうするの?」

 

「わたしも別件でヨークシンには行くから、そこでまた会うこともあるんじゃないか」

 

「そうなんだ……じゃ、またヨークシンで会おうよ」

 

「ああ、またな」

 

 

 18号は手を振って180階に戻っていった。

 

 

*

 

 

「やったな18号。今の試合で10億貯まったぜ」

 

「ああ、ありがとうウボォー」

 

 

 18号は通帳を受け取り、数字を眺めて笑みを浮かべる。

 

 

「まずは物件探しだな。あと、レオリオに一声かけとかないと……」

 

「なぁ、18号……」

 

 

 ウボォーギンがおずおずと声をかける。

 

 

「何だ」

 

「おっぱいを揉ませてくれ」

 

「は?」

 

「おっぱいを、揉ませてくれ」

 

「いや、聞こえなかったわけじゃない……急にどうした」

 

 

 18号は困惑した。

 

 

「あの両腕をバキバキにしてやった大男は、お前の胸を揉んだんだろ」

 

「ああ、まぁそうだが……え?」

 

「俺は一瞬ぐらいしかまともに触ってないのに……ずっとモヤモヤしてたんだ」

 

「お前……たまに気持ち悪くなるよな」

 

 

 18号は大きなため息をつくと、ベッドに腰掛けた。

 

 

「いいよ、それが今回の報酬ってことで。ただし」

 

「金か?」

 

「いや、金はいい……今後、金で身体を要求されたら困る。

金を前にすると意志が曲がりそうで怖い」

 

「チッ」

 

「おい、舌打ちするな。狙ってやがったなお前……。

いいか、こういうのは今回の1回っきりだ。それならいい」

 

「1回だけか……分かった。なら早速、いいか?」

 

「さっさとしろ」

 

 

 むにっ、と下から乳の形を確かめるように持ち上げてみる。

 

 

「触り方がいやらしいな……」

 

「なぁ、脱がせていいか?」

 

「良い訳ないだろ。服の上からで我慢しろ」

 

 

 今度はおっぱいを鷲掴みにして揉みあげる。

 

 

「生きてて良かったぜ……」

 

「そんなにか……? わたしにはよく分からないな」

 

 

 1分ぐらいはそうしていたが、ウボォーギンはなかなか手を離そうとしない。

 

 

「おい、もういいだろ」

 

「約束は1回だよな? つまり、このまま手を離さなければ永遠に揉んでいられるってことだ……!」

 

「馬鹿かお前」

 

 

 18号は瞬間移動でウボォーギンの後ろに移動する。

 

 

「あ」

 

「終わりだ、終わり。荷造りするぞ、手伝え」

 

「……俺、今の感触を一生忘れないぜ」

 

「バーカ」

 

 

*

 

 

 18号は受付でもう来ないことを報告する。

 

 

「そうですか……残念ですね。200階まであと少しだったんですが」

 

「もう少し引き留められるかと思ったが、そうでもないんだな」

 

 

 18号は机にもたれかかって受付嬢と話す。

 

 

「ここは来るもの拒まず、去る者追わずですから。それに、18号様みたいな人もたまに見かけますから」

 

「……?」

 

「ファイトマネー目当てで、190階と180階をグルグルする人のことです」

 

「……バレていたのか」

 

「ええ、それはまぁ。でもまぁ、賭けもかなり盛り上がってましたから、ウチとしては大歓迎でしたよ」

 

「そりゃどうも……。それじゃ、もう行くよ」

 

 

 18号はウボォーギンが待つエレベーターのほうへ歩いて行こうとする。

 

 

「あ、ちなみに……ですけど」

 

「何だ?」

 

「200階行きを決めると――ファイトマネーが2億5000万ジェニー出ます」

 

「!?」

 

 

 18号の足が止まる。

 

 

「それでは、またのお越しをお待ちしております」

 

「待て。もうちょっとだけ試合することにする……わたしは200階まであと何勝だ?」

 

「18号様は先日、190階に到達されましたのであと2連勝ですね」

 

「よし……連続で試合を組め。相手は誰でもいい」

 

「かしこまりました」

 

 

 その後、18号は190階の最強クラスの闘士(18号が何度も負けた相手)に連続で圧勝し。

観客に手を抜いてたことがバレ、「金返せ!」「ふざけんな!」などの罵声を浴びながら天空闘技場を後にした。

もちろんウボォーに限度額いっぱいまで賭けさせ、18号の貯金は14億まで膨れ上がった。

 

 

*

 

 

 予定外の収入も得てホクホクの18号は、天空闘技場を辞した後

まずはレオリオの元に瞬間移動し、家を買うからもうここには住まないことを連絡した。

 

 

「すげぇな天空闘技場、そんなに稼げるのか……」

 

「ああ、おすすめできるよ。今のお前なら200階までならノーリスクだろうしな」

 

「色々落ち着いたら行ってみるかな……」

 

「ヨークシンには来るんだよな?」

 

「ああ、クラピカと約束したからな。なんでも、9月に幻影旅団がヨークシンで何かするらしい」

 

「!?」

 

 

 その言葉にウボォーギンが激しく反応する。

 

 

「うお、どうしたウボォーギン?」

 

「いや、何でもねぇぜ」

 

「そうか?」

 

 

 レオリオは首をひねっている。

 

 

「それじゃ、またヨークシンでな。レオリオ」

 

「ああ、またな。18号」

 

 

 そう言って、18号とウボォーギンはレオリオの家をあとにした。

 

 

*

 

 

「どういうことだ……何で幻影旅団の動きが漏れてる?」

 

「ヒソカがクラピカに漏らしたんだろう。あいつも旅団員なんだろ?」

 

「ああ……ってことは、あいつは裏切者か」

 

「どうかな……あいつは愉快犯だからな。単に旅団を引っかき回したいだけかも」

 

「確かにな……。それで、クラピカってのは?」

 

「試験で一緒に行動してた、わたしの友達だ。

クルタ族っていう怒ると目が緋の色に変わる一族の生き残りらしい。

お前らに仲間を殺されたから、復讐したいって言ってたな」

 

「クルタ族……? あー、あの妙に手強かった奴らかな。復讐ね……」

 

「殺すなよ」

 

「努力するが、約束はできねぇな。殺さなきゃ死ぬとなったら殺すぜ」

 

「……」

 

 

 18号は少し考え込む。クラピカとウボォーギン、この二人の戦いは避けられない。

だが、二人が殺し合い、どちらかが死ぬのは見たくない。

 

 

「クラピカと話をしてくる。ちょっと待ってろ」

 

「お? おう」

 

 

*

 

 

 18号はまずクラピカに電話をかけた。

 

 

『18号か、どうした?』

 

「今、そっちに行っても大丈夫か? 話したいことがある」

 

『電話じゃ駄目なのか?』

 

「駄目だ、大事な話なんだ」

 

『分かった。今なら大丈夫だ。手短にな』

 

「ああ」

 

 

 18号は瞬間移動でクラピカの元へ移動する。

 

 

「それで、どうしたんだ?」

 

 

 クラピカは18号を見つめる。

久々に会ったクラピカは、試験の時持っていた木刀はなく、右手の指に鎖を巻き付けていた。

 

 

「実は、わたしには幻影旅団の友人がいる」

 

「!!」

 

 

 クラピカの眼が驚愕に見開く。

 

 

「流星街に転移した時、そいつに拾ってもらって同棲することになった」

 

「同棲って、それは友人じゃなくて恋人じゃないのか?」

 

「友人だ」

 

「そ、そうか……それで?」

 

「そいつ……図体のでかい男でウボォーギンと言うんだが、そいつは殺さないでほしい」

 

 

 18号は頭を下げた。

 

 

「恐らくそいつはクルタ族の虐殺にも加担している。だが、それでも……頼む」

 

「……大事な友人、なのだな」

 

「ああ――そいつにもクラピカは殺すなと言ってある」

 

 

 クラピカは少し考えて、言葉を発した。

 

 

「わかった。戦うことになっても殺さないと約束する」

 

「……すまない」

 

「だが、命以外の何かを奪うかもしれない。それは構わないか?」

 

「それは……仕方ないだろうな」

 

「よし。話はそれだけか?」

 

「悪かったな、いきなり」

 

「いや、構わないさ。それじゃ、また」

 

 

 クラピカが踵を返そうとするが、それを呼び止める。

 

 

「そうだ……わたしもヨークシンに行くぞ。どういうつもりか知らんが、旅団に呼ばれててな」

 

「!」

 

「ウボォーを裏切るような真似はできないが、クラピカの邪魔もしない。

協力できることがあれば言ってくれ」

 

「分かった、考えておく」

 

「……それじゃあな」

 

 

*

 

 

 18号は瞬間移動でウボォーギンの元に戻った。

 

 

「待たせたな」

 

「心配性だな、オメーはよ。俺がそんなリベンジ野郎に負けると思ってんのか?」

 

「そういうわけじゃない。ただ、この世界で嫌な思いはしたくない」

 

「俺が死んだら嫌か」

 

「……当たり前だろ」

 

 

 ウボォーギンは黙って18号を抱きしめる。

 

 

「おい、こんな往来で……暑苦しいんだよ」

 

「悪い、つい愛おしくなって……」

 

 

 ウボォーギンは名残惜しげに18号から離れる。

 

 

「しかし、18号がそこまで認めるヤツならちょっと戦ってみてぇな」

 

「戦うつもりなら、わたしの目の届くとこでしてくれ。最悪助けられるしな。

そんなことよりほら、とっとと物件探しに行くぞ」

 

「俺らの新しい愛の巣だな」

 

「わたしの家だ。お前はただの居候」

 

 

 そして、9月1日が近づいていく。

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