「ひとまず、マフィアと幻影旅団の動向を確かめに行こう。
奴らを狩るかどうかはそれを見て判断したい」
旅団を狩れる――そう豪語したクラピカに協力することが決まり、
ノストラードファミリーの面々と18号は、車に乗って幻影旅団の気球を追いかけていた。
気球は荒野で着地し、マフィア達はそこで競売の襲撃者を待ち構える。
しばらくすると、崖上から大男――ウボォーギンが降りてきた。
マフィア達は銃弾やライフルをこれでもかと浴びせるが、僅かな傷を負わせるだけで終わる。
最後にはバズーカ砲を命中させるも、火傷を負わせたのみとなり、マフィア達は恐れ逃げていく。
ウボォーギンはそんなマフィアの構成員を蹂躙していく。
「とんでもなく強いな……あの男」
「あれが前に話したウボォーギンだよ」
「そうなのか……」
そのまま観察を続けていると、4人の男がウボォーギンに近づく。
「彼らは……念能力者のようだ。かなり鍛え上げられている」
「まさか、陰獣か? 十老頭直属の……」
ダルツォルネが呟く。
「クラピカから見て、そいつらは勝てそうか?」
「……善戦はするだろうが、ウボォーギンすら殺せないと思う」
「だろうな」
18号とクラピカはそう結論づけた。
実際、ウボォーギンと4人の陰獣は、ウボォーを苦しめはするものの、決定打を与えられない。
ウボォーギンの常軌を逸した膂力と百戦錬磨の対応力で、一人、また一人と数を減らす。
「あんな化け物に勝てるというのか? クラピカ」
「ああ……勝算はある。奴に勝てれば、他の団員を狩る自信にも繋がる。
それに奴相手なら、もし負けても私は死なない。そうだな?」
クラピカは18号に問いかける。
「ああ、もちろん事故で死ぬことはあるだろうが」
「ん? どういうことだ?」
「わたしとあの大男は友達なんだ。で、クラピカは殺すなと約束させた」
「何!? ということはつまり、失敗してもリスクは少ない、ということか……」
ダルツォルネはクラピカの肩を掴む。
「分かった、やってみろ」
「ありがとう、リーダー」
18号はその様子を見て、考えていたことを実行しようと決断する。
「せっかくわたしがいるんだ。あいつら――幻影旅団にナシつけてやろうか?」
「……どういう意味だ?」
「誰にも邪魔されずに1対1で戦いたいんだろ? 下手に手を出せばあいつら追ってくるぞ。
陰獣って奴らがまだいるなら、逃げ切れるかもしれんが……」
「確かに、そのリスクはあるな……頼めるか?」
「ああ。じゃあ、行ってくる」
そう言って、18号は瞬間移動していった。
*
「邪魔するよ」
「18号!? どうした?」
「お前と戦いたい奴がいてな。誰にも邪魔されず、1対1で。前に話した奴だ」
「おう、そうか。俺は別に構わないが……」
18号はマチ達に近づく。
「そいつとわたしは友達でな。ウボォーは殺すなと言い含めてある。
勝っても負けてもお前らに不利益はない」
「ふーん……ま、いいんじゃない?」
「助かるよ。で、だ……話はそれだけじゃない」
「うん?」
マチは首を傾げる。
「そいつは仲間の前で「自分の能力なら旅団を狩れる」と言った。
まだ新人で、念だって覚えたての奴が、だ。どう思う?」
「……相当能力に自信があるってことか」
「加えて、そいつは旅団に深い恨みを持っている。
となれば恐らく、旅団に特化した能力を作り上げたんじゃないか?」
18号はそう結論づけた。
「能力に重い誓約を課しているのかもね。楽な相手ではなさそう」
「わたしは……無策で挑めばウボォーは負けると思う」
「おいおい、信用ねぇな」
ウボォーギンは肩を竦める。
「どうせ殺されないし、勝ち負けはどうでもいいが……そいつのことを放っておくのは危険だろ?」
「でも、あんたの友達なんでしょ?」
「そうだ。死んでほしくない。そこで、ずっと考えていたことがある」
18号はそう言って、今後のクラピカの処遇について説明する。
「どうだ、可能か?」
「……できると思うよ。でも、あんたはそれでいいの?」
「正直言うと、やりたくないが……旅団の利益とクラピカの命、両方守るにはこれしかない」
「そう……分かった。団長にも話しておくよ。ちょっと失礼」
マチは電話を取り出し、クロロに連絡する。
「ウボォー」
「ん? 何だよ」
「クラピカの能力は分からないが……鎖を使うようだ」
「鎖? ってことは操作系か具現化系か」
「何をしてくるか分からない、『凝』を怠るなよ」
「ああ……分かった」
18号はウボォーギンの身体に触れ、治癒能力を行使する。
マフィアや陰獣との戦いで負った傷が癒え、ヒルの卵が体内から除去された。
「お、サンキュー」
「勝てよ、ウボォーギン」
「おう……負けそうになったら応援してくれ。それで俺は勝てる」
「はいはい……離れたとこで見ててやるから頑張りな」
そしてマチが電話から戻ってくる。
「団長もオッケーだってさ」
「よし……なら、30分後に北の荒野で。あっちにも伝えてくる」
18号は瞬間移動でクラピカの元へ向かった。
「じゃあ、ウボォーはそこに向かいな。
あたし達は陰獣がまだいるなら始末して、競売品の場所を吐かせるよ」
*
ウボォーギンとクラピカは、先程戦闘のあった場所から離れた荒野で対峙していた。
「お前がクラピカか」
「まずは礼を言っておこうか。勝負を受けてくれたこと、感謝する。
お前には何もメリットなどないだろうに」
「メリットならあるぜ。お前みたいなリベンジ野郎を負かすのは、俺の楽しみの一つだからな」
ウボォーギンは拳を鳴らしながら臨戦態勢をとる。
「お前に敬意を表して、最初から全力で戦いたい。その為に一つ質問する。
お前は……クルタ族虐殺に関わっているのか?」
「ああ、何人も殺したな。怒らせてから殺せ、とか妙な注文があってやりにくかったがな。
男はもちろん、女も子供もな。目玉をくり抜く作業はちとしんどかったぜ」
そのウボォーギンの言葉に、クラピカが静かな怒りを滾らせる。
その眼は緋の色に染まっている。
「そうか……お前を殺せないのが残念だよ」
「気が合うな。俺もだよ」
そのやり取りを皮切りに、二人が激突する。
18号はそれを少し離れた場所から眺めていた。
(どうなるか……順当に行けば場数を踏んでるウボォーギンだが。
クラピカの能力次第では……)
クラピカは『
その状態で強化された鎖が縦横無尽に動き、ウボォーギンを襲う。
ウボォーギンはクラピカの能力を警戒し、鎖の一つ一つを回避している。
そのせいで、なかなか攻勢に入れずにいる。
(あの鎖――厄介だな。操作系なのか、鎖がグネグネ動きやがる)
ウボォーギンはひとまず、クラピカに支配された場を荒らすべく、能力を発動する。
「『
地面に拳をぶつけ、多量の岩石と砂が舞い上がる。
クラピカは砂塵と岩石を避け、後方に下がる――鎖の行き先も砂塵で分からなくなり、ただ宙を漂う。
その隙をウボォーギンは見逃さない。
舞い上がった砂塵を避けるように低姿勢を取り、アメフトのようにタックルする。
まともに喰らったクラピカは引き倒され、ウボォーギンの馬乗りを許してしまう。
「そのキレイな顔、ぐちゃぐちゃにしてやるよ!!」
ウボォーギンは大きく腕を振りかぶる。
「――『
クラピカの全身を強化された鎖が覆う。
ウボォーギンはそれを『硬』で殴りつけるが、鎖はビクともしない。
ウボォーギンは追撃を諦め、クラピカと距離を取る。
「『
『
使用したオーラの全てを失うという制約がある。
絶対の自信を持つ能力ではあるが、『硬』でノーダメージだった以上
試して壊せなかった場合のリスクを考え、仕切り直すことを選択した。
「18号のバリアを参考にした能力だ。お前でも破れまい」
「ああ、大した能力だぜ……だが、それで護ると攻撃は出来なさそうだな」
「そこは察しの通りだ。堅さを実現するために制約はかなり厳しくしたからな」
ここまでは互角。そして、戦闘は更に熾烈になっていく――。