「俺は負けないぜ。何せ、勝利の女神がついてるからな」
ウボォーギンは地面を削るほど強く蹴り、巨体からは想像できないスピードでクラピカに迫る。
「『
強化された鎖が鞭のようにしなり、地面をえぐる。
「とんでもない威力だな……相当念が籠もってやがる」
「そう見えるか? ならばそれはお前に殺された仲間の怨嗟の念だ」
ウネウネと意志を持つ鎖が再びウボォーギンを襲う。
ウボォーギンはもう一度、砂塵を巻き上げて視界を防ごうとする。
「同じ手は二度も喰わん――『
薬指から放たれた二本目の鎖が、ウボォーの場所を指し示す。
それに『
「くっ!?」
ウボォーギンはすんでのところでそれを回避する。
「馬鹿の一つ覚えだな。芸のない男だ」
「力と筋肉は万能だからな。それを今から証明してやる――『
ウボォーギンの姿が一瞬にして掻き消える。
と思ったらいきなり目の前にウボォーギンが迫っていた。
「――」
リアクションを取る暇もなくウボォーギンの猛攻をまともに受ける。
一撃が明らかに弱くなっているが、塵も積もればで身体が軋んでいく。
『堅』でガードを試みるが、そこでウボォーギンは能力を即座に切り替える。
防御の態勢で脚を止めていたクラピカは、回避行動に移れない。
「『
『堅』を貫通するほどの圧倒的威力を真に受けて、腕の骨が砕ける音がした。
クラピカは派手に吹き飛ばされ、砂煙を巻き上げながら地面を転がっていく。
「手ごたえあり。こりゃ決まったか……」
しかし、数秒後現れたクラピカは、何故か両腕が健在だった。
「回復能力まであんのかよ」
「旅団と戦う以上、継戦能力は必須だ――それより」
「あん?」
「不用意に近づきすぎたな。
ウボォーギンは身体が拘束されていることに気付いた。
「これは……!?」
攻撃時に止めていた『凝』を使うと、ウボォーギンの肉体を鎖が雁字搦めに縛っているのが見えた。
「お前、具現化系か。あの猛攻の最中、『隠』でオーラの鎖を消してやがったな!?」
「『凝』を怠らない百戦錬磨のお前でも、攻撃の最中は流石に解除すると思っていたよ。
『隠』を併用した『
クラピカが中指を引っ張ると、鎖の拘束は圧迫度を増す。
「ぐ……うおおおおおお!!」
ウボォーギンは身体に力を入れ、鎖を引き剥がそうとする。
「お前如きにはこの鎖は千切れん」
「ぬかせ……! こんなもん、すぐに……!!」
大声を上げながら、必死の形相で鎖を引き千切ろうと藻掻くが、鎖はビクともしない。
「負けを認めろ、ウボォーギン」
「誰が、認めるかぁ!!」
*
「負けたか……ウボォー」
戦いの様子を見ていた18号は、ウボォーギンに挽回の手段がないことを察した。
二人の元に赴き、立会人としてクラピカの勝利を告げようとする。
しかし……。
「俺は!! まだ負けてねぇ!!」
というウボォーギンの大声を聞いて、踏みとどまる。
(往生際が悪いな……まだ勝てる手段があるのか? いやどう見てもないだろ……)
しかし、ウボォーギンが諦める様子はない。
――負けそうになったら応援してくれ。それで俺は勝てる。
ふと、戦闘前のそんな言葉を思い出した。
「……そんなんで勝てるわけ……いや、まさか……?」
18号は逡巡する。
今後のことを考えれば、ウボォーギンが勝ったほうが丸く収まる。
クラピカが旅団の討伐を続ければ、どこかで必ず命を落とす。そういう確信めいた予感がある。
クラピカは旅団討伐に関しては仲間の協力を求めないだろう。
それは旅団への恨みは個人的な事情に過ぎないし、他人を巻き込むものではない。
恐らくあの能力であれば、2、3人は狩れる。だが、複数と戦うことになれば、まず勝てない。
それに――自分の隣に立つことを認めた男に、負けてほしくないという思いもある。
「……頑張れ、ウボォー。勝ってくれよ」
18号はそうポツリとこぼした。
ウボォーギンには届かなかっただろうが、本心からそう思って出た言葉だった。
「……っ!?」
その時、18号の身体から力が抜ける。
脱力状態になり、思わず座り込む。
「な、何が……!?」
*
「勝者の権利を行使させてもらう。お前を――蜘蛛から切り離す」
『
しかし、能力を発動させようとしたその時――
「……へへ、受け取ったぜ18号。お前の
ギチギチ、とウボォーを締め付ける鎖の軋む音が聞こえた。
「!?――『
「遅え!!」
ウボォーギンは鎖を引き千切り、クラピカの鎖を回避する。
「馬鹿な!?」
「これが俺の新能力――『
『
18号の身体能力を1分間借りることが出来、ウボォーギンにプラスされる形で強化される。
「っ!! 『
クラピカはウボォーギンと距離を取りつつ、『硬』でも破れない鎖のバリアを展開する。
しかし――
「オレと18号の力が合わされば、その程度!!」
鎖のバリアはあっけなく破壊され、僅かに減衰されたウボォーギンの拳がクラピカの腹に到達する。
「がはっ……!?」
クラピカは思い切りぶっ飛ばされ、岩盤を砕きながらぶつかって気絶してしまう。
「あ、やべ……じゅ、18号!?」
その声に呼応して18号が瞬間移動で現れる。
「やりすぎだ、バカ」
「悪い、テンションあがっちまってよ」
「人の力を勝手に借りるんじゃないよ……」
「いやいや、俺は18号の応援に応えたまでだぜ?」
「応援なんてしてない」
軽口を叩きながら、クラピカに治癒能力を行使する。
「で……そいつの処遇はさっき言ってた通りか」
「ああ。クラピカの記憶と能力を奪う。もう――復讐はさせない」
*
18号とウボォーギンは幻影旅団のアジトに戻ってきた。気絶したクラピカも連れて。
中ではクロロとパクノダ、シャルナークが待っていた。
「戻ったか、ウボォーギン」
「おう。ま、なんてことなかったぜ」
「どこがだ。わたしがいなきゃ負けてたくせに」
18号は気絶したクラピカを床に横たえる。
「ねぇ、本当にいいの? 18号」
パクノダが18号に訊ねる。
「酷いことをしている自覚はあるよ。でも、クラピカは負けた。
旅団に不利益を齎すクラピカをそのまま生かしてはおけないだろ」
「律儀ね……。分かったわ。じゃあ、まず彼の記憶を消すわ。シャル、お願い」
「了解。『
シャルナークはクラピカにアンテナを突き刺す。
「えーっと、クルタ族と虐殺のことを思い出せ、と」
クラピカは顔を歪ませる。
パクノダはクラピカの頭に触れる。
「……ごめんなさい。あなたにとって大事な感情を……」
「パクが謝ることじゃない。クルタ族の件も、こいつのことも、決断したのはオレだ」
クロロがパクノダを庇う。
「ありがとう団長。それじゃ、やるわ……『
パクノダは銃を具現化し、記憶を込めた弾丸を装填する。
そして、クラピカの頭に撃ち込んだ。
「これで、記憶は消えたわ。自分がクルタ族の生き残りだということも、もう分からないはずよ」
「よし。次はオレか。シャルナーク、引き続き頼む」
クロロは『
「はいはい。それじゃ、能力を見せろ、っと」
クラピカはクロロに能力を披露する。それに対しクロロが質問をし、クラピカが答える。
それが終わると、クラピカは『
「これでこいつの能力は盗めた。無力化完了だな」
「ありがとう――と言うのも変な話だな。わたしはクラピカを送り届けてくるよ」
そう言って瞬間移動で18号は消えた。
「んで、競売品はどうなったんだ?」
「陰獣が場所を吐いた。今フィンクス達がそこに向かってフェイクと入れ替えに行ってる」
「そうか。ま、色々あったが大成功ってわけだな」
ウボォーギンは大きく伸びをして、その辺の箱に座り込む。
「まだ終わってないが、そうだな。打ち上げにでも行くか?」
「お、いいねぇ。18号も誘ってやるか」
ウボォーギンは泥酔した18号を想像して、下卑た笑みを浮かべる。
「それより、グリードアイランドが楽しみだな。ウボォーもやらない?」
「何だそれ。お前が興味持つってこたゲームか何かか?」
「そうだよ。念能力者しかプレイできないっていうゲーム。面白そうでしょ?」
「興味は出てきたけど、駄目だな。18号と一緒にできないと――」
そんな話をしていると、18号が戻ってきた。
「一人で勝手にやればいいだろ、ウボォー」
「俺がいないと寂しいくせに、よく言うぜ」
「それはお前のほうだろ……で、何の話だ?」
18号はシャルナークからグリードアイランドの説明を受ける。
「念能力者専用か……。それが本当なら、わたしはプレイできないか」
「グリードアイランドの仕様次第だけど、そうとも限らないよ。一度試してみようよ」
「そうなのか? なら、一緒にやってみるか? 18号」
「そうだね……」
18号は少し考えて、頷いてみせた。
【ウボォーギンの念能力】
①『
制約:放った時に何かを破壊できないと集めたオーラを失う。
②『
脚にオーラを集中し、人間に出せないスピードを実現する。
制約:上半身に回せるオーラが減る。
③『
18号の応援を受けると1分間だけ、身体能力を借りて自分に上乗せて強化できる。
自動で発動する。
制約:対象は18号のみ。18号の心からの応援が必要。
【クラピカの念能力】
『
5本の鎖全てを使って自身を覆う鎖のバリア。『硬』でも破壊できない硬度。
制約:防御中は5つ全ての鎖が使用できない。