流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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引き続きオリジナル設定が出てきますので注意してください。


21.蜘蛛と命の天秤 -後編-

「俺は負けないぜ。何せ、勝利の女神がついてるからな」

 

 

 ウボォーギンは地面を削るほど強く蹴り、巨体からは想像できないスピードでクラピカに迫る。

 

 

「『束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)』」

 

 

 強化された鎖が鞭のようにしなり、地面をえぐる。

 

 

「とんでもない威力だな……相当念が籠もってやがる」

 

「そう見えるか? ならばそれはお前に殺された仲間の怨嗟の念だ」

 

 

 ウネウネと意志を持つ鎖が再びウボォーギンを襲う。

ウボォーギンはもう一度、砂塵を巻き上げて視界を防ごうとする。

 

 

「同じ手は二度も喰わん――『導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)』

 

 

 薬指から放たれた二本目の鎖が、ウボォーの場所を指し示す。

それに『束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)』が追随するように飛んで行く。

 

 

「くっ!?」

 

 

 ウボォーギンはすんでのところでそれを回避する。

 

 

「馬鹿の一つ覚えだな。芸のない男だ」

 

「力と筋肉は万能だからな。それを今から証明してやる――『躍動する大腿四頭筋(ハッソウビート)』」

 

 

 ウボォーギンの姿が一瞬にして掻き消える。

と思ったらいきなり目の前にウボォーギンが迫っていた。

 

 

「――」

 

 

 リアクションを取る暇もなくウボォーギンの猛攻をまともに受ける。

一撃が明らかに弱くなっているが、塵も積もればで身体が軋んでいく。

 

 『堅』でガードを試みるが、そこでウボォーギンは能力を即座に切り替える。

防御の態勢で脚を止めていたクラピカは、回避行動に移れない。

 

 

「『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』!!」

 

 

 『堅』を貫通するほどの圧倒的威力を真に受けて、腕の骨が砕ける音がした。

クラピカは派手に吹き飛ばされ、砂煙を巻き上げながら地面を転がっていく。

 

 

「手ごたえあり。こりゃ決まったか……」

 

 

 しかし、数秒後現れたクラピカは、何故か両腕が健在だった。

 

 

「回復能力まであんのかよ」

 

「旅団と戦う以上、継戦能力は必須だ――それより」

 

「あん?」

 

「不用意に近づきすぎたな。捕獲完了(これで詰み)だ」

 

 

 ウボォーギンは身体が拘束されていることに気付いた。

 

 

「これは……!?」

 

 

 攻撃時に止めていた『凝』を使うと、ウボォーギンの肉体を鎖が雁字搦めに縛っているのが見えた。

 

 

「お前、具現化系か。あの猛攻の最中、『隠』でオーラの鎖を消してやがったな!?」

 

「『凝』を怠らない百戦錬磨のお前でも、攻撃の最中は流石に解除すると思っていたよ。

『隠』を併用した『束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)』の拘束は、それこそ血反吐を吐くほど練習した技だ」

 

 

 クラピカが中指を引っ張ると、鎖の拘束は圧迫度を増す。

 

 

「ぐ……うおおおおおお!!」

 

 

 ウボォーギンは身体に力を入れ、鎖を引き剥がそうとする。

 

 

「お前如きにはこの鎖は千切れん」

 

「ぬかせ……! こんなもん、すぐに……!!」

 

 

 大声を上げながら、必死の形相で鎖を引き千切ろうと藻掻くが、鎖はビクともしない。

 

 

「負けを認めろ、ウボォーギン」

 

「誰が、認めるかぁ!!」

 

 

*

 

 

「負けたか……ウボォー」

 

 

 戦いの様子を見ていた18号は、ウボォーギンに挽回の手段がないことを察した。

二人の元に赴き、立会人としてクラピカの勝利を告げようとする。

しかし……。

 

 

「俺は!! まだ負けてねぇ!!」

 

 

 というウボォーギンの大声を聞いて、踏みとどまる。

 

 

(往生際が悪いな……まだ勝てる手段があるのか? いやどう見てもないだろ……)

 

 

 しかし、ウボォーギンが諦める様子はない。

 

 

――負けそうになったら応援してくれ。それで俺は勝てる。

 

 

 ふと、戦闘前のそんな言葉を思い出した。

 

 

「……そんなんで勝てるわけ……いや、まさか……?」

 

 

 18号は逡巡する。

今後のことを考えれば、ウボォーギンが勝ったほうが丸く収まる。

クラピカが旅団の討伐を続ければ、どこかで必ず命を落とす。そういう確信めいた予感がある。

 

 クラピカは旅団討伐に関しては仲間の協力を求めないだろう。

それは旅団への恨みは個人的な事情に過ぎないし、他人を巻き込むものではない。

恐らくあの能力であれば、2、3人は狩れる。だが、複数と戦うことになれば、まず勝てない。

 

 それに――自分の隣に立つことを認めた男に、負けてほしくないという思いもある。

 

 

「……頑張れ、ウボォー。勝ってくれよ」

 

 

 18号はそうポツリとこぼした。

ウボォーギンには届かなかっただろうが、本心からそう思って出た言葉だった。

 

 

「……っ!?」

 

 

 その時、18号の身体から力が抜ける。

脱力状態になり、思わず座り込む。

 

 

「な、何が……!?」

 

 

*

 

 

「勝者の権利を行使させてもらう。お前を――蜘蛛から切り離す」

 

 

 『律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)』で、ウボォーギンにクラピカの定めた掟の遵守を迫る。

しかし、能力を発動させようとしたその時――

 

 

「……へへ、受け取ったぜ18号。お前の応援(あい)を」

 

 

 ギチギチ、とウボォーを締め付ける鎖の軋む音が聞こえた。

 

 

「!?――『律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)』!!」

 

「遅え!!」

 

 

 ウボォーギンは鎖を引き千切り、クラピカの鎖を回避する。

 

 

「馬鹿な!?」

 

「これが俺の新能力――『約束された勝利の女神(俺の愛する18号)』だ!!」

 

 

 『約束された勝利の女神(俺の愛する18号)』は、18号の心からの応援を受けることで

18号の身体能力を1分間借りることが出来、ウボォーギンにプラスされる形で強化される。

 

 

「っ!! 『護る五指の多重鎖(フルガードジェイル)』!!」

 

 

 クラピカはウボォーギンと距離を取りつつ、『硬』でも破れない鎖のバリアを展開する。

しかし――

 

 

「オレと18号の力が合わされば、その程度!!」

 

 

 鎖のバリアはあっけなく破壊され、僅かに減衰されたウボォーギンの拳がクラピカの腹に到達する。

 

 

「がはっ……!?」

 

 

 クラピカは思い切りぶっ飛ばされ、岩盤を砕きながらぶつかって気絶してしまう。

 

 

「あ、やべ……じゅ、18号!?」

 

 

 その声に呼応して18号が瞬間移動で現れる。

 

 

「やりすぎだ、バカ」

 

「悪い、テンションあがっちまってよ」

 

「人の力を勝手に借りるんじゃないよ……」

 

「いやいや、俺は18号の応援に応えたまでだぜ?」

 

「応援なんてしてない」

 

 

 軽口を叩きながら、クラピカに治癒能力を行使する。

 

 

「で……そいつの処遇はさっき言ってた通りか」

 

「ああ。クラピカの記憶と能力を奪う。もう――復讐はさせない」

 

 

*

 

 

 18号とウボォーギンは幻影旅団のアジトに戻ってきた。気絶したクラピカも連れて。

中ではクロロとパクノダ、シャルナークが待っていた。

 

 

「戻ったか、ウボォーギン」

 

「おう。ま、なんてことなかったぜ」

 

「どこがだ。わたしがいなきゃ負けてたくせに」

 

 

 18号は気絶したクラピカを床に横たえる。

 

 

「ねぇ、本当にいいの? 18号」

 

 

 パクノダが18号に訊ねる。

 

 

「酷いことをしている自覚はあるよ。でも、クラピカは負けた。

旅団に不利益を齎すクラピカをそのまま生かしてはおけないだろ」

 

「律儀ね……。分かったわ。じゃあ、まず彼の記憶を消すわ。シャル、お願い」

 

「了解。『携帯する他人の運命(ブラックボイス)』」

 

 

 シャルナークはクラピカにアンテナを突き刺す。

 

 

「えーっと、クルタ族と虐殺のことを思い出せ、と」

 

 

 クラピカは顔を歪ませる。

パクノダはクラピカの頭に触れる。

 

 

「……ごめんなさい。あなたにとって大事な感情を……」

 

「パクが謝ることじゃない。クルタ族の件も、こいつのことも、決断したのはオレだ」

 

 

 クロロがパクノダを庇う。

 

 

「ありがとう団長。それじゃ、やるわ……『記憶弾(メモリーボム)」

 

 

 パクノダは銃を具現化し、記憶を込めた弾丸を装填する。

そして、クラピカの頭に撃ち込んだ。

 

 

「これで、記憶は消えたわ。自分がクルタ族の生き残りだということも、もう分からないはずよ」

 

「よし。次はオレか。シャルナーク、引き続き頼む」

 

 

 クロロは『盗賊の極意(スキルブック)』を具現化する。

 

 

「はいはい。それじゃ、能力を見せろ、っと」

 

 

 クラピカはクロロに能力を披露する。それに対しクロロが質問をし、クラピカが答える。

それが終わると、クラピカは『盗賊の極意(スキルブック)』の手形に手のひらを乗せる。

 

 

「これでこいつの能力は盗めた。無力化完了だな」

 

「ありがとう――と言うのも変な話だな。わたしはクラピカを送り届けてくるよ」

 

 

 そう言って瞬間移動で18号は消えた。

 

 

「んで、競売品はどうなったんだ?」

 

「陰獣が場所を吐いた。今フィンクス達がそこに向かってフェイクと入れ替えに行ってる」

 

「そうか。ま、色々あったが大成功ってわけだな」

 

 

 ウボォーギンは大きく伸びをして、その辺の箱に座り込む。

 

 

「まだ終わってないが、そうだな。打ち上げにでも行くか?」

 

「お、いいねぇ。18号も誘ってやるか」

 

 

 ウボォーギンは泥酔した18号を想像して、下卑た笑みを浮かべる。

 

 

「それより、グリードアイランドが楽しみだな。ウボォーもやらない?」

 

「何だそれ。お前が興味持つってこたゲームか何かか?」

 

「そうだよ。念能力者しかプレイできないっていうゲーム。面白そうでしょ?」

 

「興味は出てきたけど、駄目だな。18号と一緒にできないと――」

 

 

 そんな話をしていると、18号が戻ってきた。

 

 

「一人で勝手にやればいいだろ、ウボォー」

 

「俺がいないと寂しいくせに、よく言うぜ」

 

「それはお前のほうだろ……で、何の話だ?」

 

 

 18号はシャルナークからグリードアイランドの説明を受ける。

 

 

「念能力者専用か……。それが本当なら、わたしはプレイできないか」

 

「グリードアイランドの仕様次第だけど、そうとも限らないよ。一度試してみようよ」

 

「そうなのか? なら、一緒にやってみるか? 18号」

 

「そうだね……」

 

 

 18号は少し考えて、頷いてみせた。




【ウボォーギンの念能力】

①『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』

制約:放った時に何かを破壊できないと集めたオーラを失う。


②『躍動する大腿四頭筋(ハッソウビート)』

脚にオーラを集中し、人間に出せないスピードを実現する。

制約:上半身に回せるオーラが減る。


③『約束された勝利の女神(俺の愛する18号)』

18号の応援を受けると1分間だけ、身体能力を借りて自分に上乗せて強化できる。
自動で発動する。

制約:対象は18号のみ。18号の心からの応援が必要。


【クラピカの念能力】

『護る五指の多重鎖(フルガードジェイル)』

5本の鎖全てを使って自身を覆う鎖のバリア。『硬』でも破壊できない硬度。

制約:防御中は5つ全ての鎖が使用できない。
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