流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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連続投稿のうちの3/3です。


25.ドッジボールとクリア報酬(後)

 

 

「起きろ、ゴン」

 

 

 聞き覚えのある低い女性の声でゴンは目を覚ました。

 

 

「あれ、18号……? ってことは……」

 

「ああ、何とかなったよ。あいつらのお蔭でお前はギリギリ捕球できた。

ま、その代わりに死にかけたけどな……もう治ったが」

 

 

 ゴンは身体を見回したり、動かして体の調子を確認する。

どこにも異常はないし、なんなら使ったオーラもかなり戻ってきていた。

 

 

「わたしはボールを投げられない。レイザーを倒せるのはお前か、外野の奴らだけだ」

 

「わかった。ありがとう、18号。これならまだやれるよ」

 

「よし。それじゃ、反撃開始だ」

 

 

 18号はボールをゴンに託して、耳元で囁く。

 

 

「思いついた作戦が一つある。まずそれを試すよ。

まず………して………だ」

 

「……それなら間違いなくアウトにできるね。でも……」

 

「納得できないか?」

 

「うん……ちょっとだけ」

 

「ならこう考えな。勝負はさっきので終わった。

わたしから見れば引き分けってとこだが……ゴンの年齢から考えれば勝ちに近い引き分けだな。

で、こっから始まるのは試合だ。ゲームクリアのためのな」

 

「……わかった。やろう、18号」

 

 

 ゴンは受け取ったボールを片手で掴み、投球の態勢をとる。

 

 

「オレはてっきり、またあのジャンケンの能力を使うのだと思っていたが……」

 

 

 レイザーは眉をひそめて18号に問う。

 

 

「必要ないよ」

 

「何?」

 

「お前如きをアウトにするのにそんなのいらないって言ったんだよ、糸目野郎」

 

「……面白い、やってみるといい」

 

 

 そう言ってレイザーは油断なく身構える。

 

 

「いつでもいいよ、18号」

 

「――『太陽拳』!!」

 

 

 カッと激しい光が18号の前方にいるレイザーに直撃する。

 

 

「なっ……」

 

 

 何も見逃すまいと両目を開け、『凝』までしていたのが裏目に出る。

もはやレイザーには白い光以外何も見えない。

 

 当然、ゴンが投げるボールにも反応できない。

脚に当たったことを認識した時にはボールはもう床に落ち、外野に転がっていた。

 

 

『レイザー選手、アウト』

 

「……バック」

 

 

 誰しもが聞きたかった声が18号参戦から数分で聞こえてきた。

その事実に、外野は否が応にも盛り上がる。

 

 

「うおおおおお!?」

「あっけねーなおい……」

「あれ、屋内でも使えるのズルくない?」

 

 

 ザワザワと騒がしい外野を背に、ようやくレイザーの視界が回復する。

 

 

「……やられたね。だが、同じ手は二度食わないよ」

 

 

 レイザーは片目を閉じて太陽拳に備える。

 

 

「これで死角ができたね。これが狙いなんでしょ?」

 

「……ん? ああ、そうだな」

 

「……?」

 

 

 18号の生返事にゴンは首を傾げる。

 

 

「もう一度やるぞ、ゴン」

 

「え? 作戦は?」

 

「大体さっきと同じだよ。それで勝てる」

 

「……わ、わかった」

 

 

 言われるがまま、ボールを投げる態勢をとるゴン。

 

 

「同じ手は喰わないと言ったはずだが」

 

「通用するよ。手も足も出ずにお前は負ける」

 

「……おい、まさか」

 

「行くぞ――『太陽拳』!!」

 

 

 再び眩しい光が18号より前方の空間を包む。

レイザーは光が収まるのを待って、もう片方の目を開ける。

 

 ――しかし。

 

 

「『太陽拳』」

 

 

 禁断の『太陽拳』二度打ち。

当然、レイザーの両目はやられてしまう。もう何も見えない。

 

 

「さぁやれ、ゴン」

 

「えっ……いや、あのさ18号……」

 

「もたもたするな。奴の視力が回復してしまう」

 

「あのさ……流石に卑怯すぎない??」

 

 

 レイザーの視力がわずかに回復する。

 

 

「『太陽拳』」

 

 

 三度打ち。

 

 

「卑怯ってお前……方法にこだわってる場合じゃないだろ」

 

「それは分かるけど……でも流石にこれは」

 

「……ちっ。分かったよ。だが、わたしが考えた策はこれだけだぞ」

 

「大丈夫。オレも勝てそうな作戦が一つあるんだ」

 

 

 そう言ってゴンは18号の耳元で囁く。

 

 

「……なるほど。それならうまくいきそうだ。二度目は通じないだろうが」

 

「でしょ? それじゃ、頼むよ18号」

 

「ああ」

 

 

 すると、18号はボールをゴンの目の前で両手で掴む。

そして、ゴンは拳にオーラを集中させる。

 

 

「おや、さっきはジャンケン能力は使わないと言っていたが?」

 

「そんなこと言ったか? 悪いな、忘れてくれ」

 

「……」

 

 

 レイザーは黙って身構える。

 

 

「最初はグー……ジャン、ケン――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“チー”!!」

 

「!?」

 

 

 ゴンがそう叫ぶと、ゴンが出した「チョキ」の手のようにオーラが二又に分かれ、

レイザーを挟みこみ、蛇のようにぐるぐると巻きついていく。

 

 今回も「グー」でボールが飛んでくると思ったレイザーは反応が遅れ、しっかりと拘束されてしまう。

それを見て18号はボールを外野のウボォーギンに素早くパスする。

 

 

「ウボォー!!」

 

「おう!」

 

 

 ボールを受け取ったウボォーギンは無防備なレイザーの背中にボールを叩きつける。

 

 

『レイザー選手、アウト』

 

「……バック!」

 

 

 これでレイザーは後がなくなった。

次レイザーをアウトに出来ればゴンチームの勝ちになる。

 

 

「……やられたな。まさかチョキが拘束技だとは」

 

 

 レイザーが悔しそうに呟く。

 

 

「オーラを刃に変化させて斬る技と迷ったんだけど、グーと威力が違いすぎて使わない気がしたんだよね」

 

「それでチョキのイメージから「挟む」技というわけか。なかなか厄介な能力だ。

しかもこれは変化形も使ってはいるが、拘束力を高めるために強化系が殆どのリソースを担っている」

 

「へへ……まぁね。レイザー、これで形勢逆転だね」

 

 

 跳ね返って外野に落ちたボールをウボォーギンが18号にパスする。

しかし、18号はそのボールをあろうことかレイザーへ放り投げる。

 

 

「どういうつもりだ?」

 

「お前もわたしに挑まずに終わるのは消化不良だろ?」

 

「オレの球を1人で受け切れると?」

 

「当たり前だ。それでお前を完璧に負かして、完璧に勝つ」

 

 

 18号はくいくいっと手招きをして挑発する。

 

 

「この狭いコート内でオレの球を1人で受けきれた奴はいない」

 

「早くしろ」

 

「……後悔するなよ」

 

 

 レイザーはボールを中空に放り投げ、そのまま自分も飛び上がる。

そして、バレーのスパイクで18号目掛けてボールが槍のように飛んでいく。

 

 18号は腹と腕でしっかりとボールを受け止める。

50㎝ほど後ろに押されてしまうが、そこでピタリと止まる。

 

 

「……流石だな」

 

「それほどでも。さて……最後の攻撃だ。どうする? ゴン」

 

「別に作戦でも何でもないんだけどさ……オレ、あいつをぶっ飛ばしたい」

 

「ぶっ飛ばしたい、か……確かにレイザーは無傷だしな」

 

「うん。何とかならないかな?」

 

「そうだな……。うーん……」

 

 

 18号はしばらく考え込む。

 

 

「それじゃ――こういうのはどうだ?」

 

 

 18号がゴンに囁く。

 

 

「いいかも……それ」

 

「だろ? なぁレイザー、お前も勝つなら完璧に勝ちたいよな?」

 

「……なに?」

 

「ゴンの全力をお前はレシーブで無力化したが、受け止めてはいないよな。

次はお前もゴンの全力を受け止めてみろ。受けきれたらこっちの負けでいい」

 

「ほう……」

 

「シンプルで分かりやすいだろ? あぁ、安心しろ。

わたしが相手だとゴンは100%の力は出せない。精々80~90%ぐらいだ。

それなら受けきれる気もするだろ?」

 

「いいだろう。もちろん、『太陽拳』や『ジャンケンチー』は使わない、真っ向勝負と考えていいんだな?」

 

「もちろん」

 

 

 その答えを聞いて、レイザーはコートの前方側で『堅』を維持した状態で待機する。

 

 

「オーラの攻防力移動で凌ぐつもりか」

 

 

 ウボォーギンがレイザーに声をかける。

 

 

「そんなところだ。インパクトの瞬間は腹に、その後は脚にオーラを集めればコート内で受けきれるだろう」

 

「だったら、もっとライン際ギリギリに行ったらどうだ?

それならより可能性は高いだろ」

 

「ふっ……大した自信だな。まぁいいだろう」

 

 

 そう言って、レイザーはコートの真ん中、ライン際ギリギリに立つ。

 

 

「行くよ」

 

「ん、いつでもいいよ」

 

 

 ゴンが拳にオーラを集めはじめる。

女性である18号に遠慮しているのか、これまでに比べればやや控えめ。

だが、まともに受け止めればアウトにもなり得るオーラ量だ。

 

 

 

 

 

「さいしょは……グー」

 

 

 

 

 

「ジャン……ケン……」

 

 

 

 

 

 

 その時、18号がボールを支えていた片方の手を外し、ゴンの肩に触れる。

そして――二人の姿が掻き消える。

 

 突然の事態に二人の姿を探すレイザーが、最後に目下に目を向ける。

 

 

 

 そこに二人はいた。

 

 

 

 

グー!!!!

 

 

 

 

 流石に『堅』で耐えきれるわけもなく、レイザーの足は早々に地面から離れそのまま壁へ激突していったのだった。

 

 

 

『レイザー選手、アウト! よってこの試合、ゴンチームの勝利です!!」

 

 

 

 

 

 その後、重傷を負ったレイザーを治療し、その目覚めと共に『一坪の海外線』イベントは終了した。

『一坪の海岸線』はその場で2枚複製し、ゴンとゴレイヌとウボォーギンに分けられた。

 

 

「さて、約束通りカードは譲渡しよう。その代わり……」

 

「報酬は18号が独り占め、だろ? 分かってるよ」

 

 

 相変わらず守銭奴だな、とキルアがぼそっと呟く。

 

 

「90種もあるならこれでクリアできちゃうかもね」

 

 

 言いながら、ゴンは(ブック)を唱える。

 

 

「で、どのカードが足りねーんだ?」

 

「えっとね……」

 

 

 ゴンは(ブック)のページをめくりながら、足りないカードをリストアップしていく。

ウボォーギンもまた(ブック)をめくって、譲渡するカードを取り出す。

 

 

「……これで最後だね」

 

「99種そろったか……ゲームクリア?」

 

 

 ゴンはウボォーギンから最後のカードを受け取ると、(ブック)の中に収める。

その時、どこからかアナウンスが聞こえてきた。

 

 

『プレイヤーの皆さまにお知らせします。たった今あるプレイヤーが99種の指定ポケットカードを揃えました。

それを記念しまして今から10分後に全プレイヤー参加の指定ポケットカードを題材としたクイズ大会を開催いたします。

最も正解率の高いプレイヤーにNo.000『支配者の祝福』が贈呈されます』

 

 

「最後はクイズかよ。奪った俺らは無理だなこりゃ」

 

「ゴン、頼む」

 

「う、うん。でもオレもたぶん7割ぐらいしか答えられないかも」

 

 

 ゴンが自信なさげに返しながら、改めてバインダーを眺めてイベントを振り返っていく。

 

 

「ツェズゲラがたぶん自力で一番集めてるっぽいし、割と厳しいな……ん?」

 

 

 キルアがプレイヤーリストを確認すると、ツェズゲラは現在G.I.にいないようだった。

 

 

「何かあったのかしらね? ただの用事で外に出てるだけ?」

 

「さぁな。ともかくこれなら勝機あるぜ。負けたほうが罰ゲームだからな、ゴン!」

 

「その勝負、乗った!」

 

 

 ゴンとキルアはわいわいと騒ぎながら、クイズ大会に臨む。

 

 

「わたしは帰るよ。報酬はまた振り込んどいてくれ」

 

「お、じゃあオレも帰るわ。どうせ無理だしな。離脱(リーブ)!」

 

 

 こうして、18号とウボォーギンはグリードアイランドをクリアへ導き、報酬500億を手にしたのだった。

 

 

 

 

 後日。

18号の携帯が鳴る。発信者はゴン=フリークス。

 

 

「ゴンか。どうした?」

 

「あっ、18号? あのさ、G.I.の報酬のことなんだけど……」

 

「ああ、500億のことか」

 

「うん、それなんだけど……色々あって、50億ぐらいになりそうなんだ」

 

「……は?」

 

「G.I.を集めてたバッテラさんは、婚約者の病気を『大天使の息吹』で治したかったみたいなんだけど、

オレ達がクリアする数日前に亡くなったらしくてさ……」

 

「……」

 

「それで、500億は違約金って形で全プレイヤーに分配されることになったんだ。

ゲームクリアしたオレと、プレイヤーの募集に協力したツェズゲラさんが50億。

残りの400億はカードの収集状況に応じて1億から10億くらいを残りのプレイヤーに払うみたい」

 

「……そうか……」

 

「もちろん、その50億は18号に振り込んでおくよ。じゃ、説明はしたから……またね18号」

 

 

 そう言い残して通話は切れた。

 

 

「……はぁ」

 

 

 18号は盛大にため息をついてソファにどさっと座り込む。

時折「1/10……50億……」と呟いたり、「落ち込むようなことじゃない」と自分に言い聞かせたりしていた。

 

 

「18号よぉ~、あの約束覚えてるよな?」

 

「……」

 

 

 ウボォーギンが18号の隣に座り、何も知らず無神経に話しかける。

 

 

「デートの約束したよな? とりあえず今度の日曜あたりで考えてんだが」

 

「……うるさい」

 

「あ? 何で不機嫌なんだよ。もしかして生r――おごっ!?」

 

 

 最後まで言い終わる前にウボォーギンのみぞおちに18号の裏拳が叩き込まれる。

 

 

「もう寝るか……お前はそこで朝まで寝てろ」

 

「……ひ、ひでぇ……」

 

 

 そのまま朝までウボォーギンは痛みで寝ることはできなかった……。

 

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