15話まで完成してるので6月中は毎日投稿できると思います。
「ここが俺達の愛の巣だぜ、18号!!」
「はいはい……。へぇ、男やもめにしては片付いてるんだね」
「意外に生活面はきっちりしてるんだぜ、俺は」
ウボォーギンは胸を張る。
ウボォーギンの部屋は20階建てのマンションの15階に位置する。
1LDKなので偶然だが同棲にも適している。
たまに旅団の仲間が遊びに来るのでこの部屋にしたのだが、その時の判断は正しかったと確信した。
「さすがに個室はないか……寝室はどこだ?」
「ああ、案内するぜ」
案内されたリビングの隣の寝室には、キングサイズのベッドが中央に鎮座している。
「……ベッドは一つだけか」
「そりゃ一人暮らしだからな。まぁ別に問題ないだろ」
「そうだな。わたしはこれを使う、お前はソファで寝ろ」
18号の横暴極まりない発言に流石のウボォーギンも反論せざるを得ない。
「そりゃないぜ、18号。家主の俺の言うことも少しは聞いてくれや」
「チッ……じゃあどうするんだ。私にソファで寝ろと?」
「一緒に寝れば――」
言い終わらないうちに18号の肘打ちが脇腹に炸裂する。
「ふざけるなよ……わたしに娼婦の真似事でもしろってのかい」
「ってぇ……別にそこまで言ってねぇだろ。嫌がる相手に別に手ェ出したりしねぇよ」
「……」
「同じベッドで寝るだけだ。いいだろ、それぐらい」
「嫌だ。お前、絶対寝たフリして抱きついてくるだろ。魂胆見え見えなんだよ、馬鹿が」
「……」
「……」
気まずい沈黙が続いた。
「仕方ない……同棲の話はナシだ。じゃあな」
「分かった!! 明日ベッド買ってきてやる!! だから今夜だけ我慢してくれ!! 頼む!!」
ウボォーギンは頭を下げて手をすり合わせて18号に懇願する。
その情けなさすぎる姿を見て、少し後ずさる。
「必死すぎるだろお前……。仕方ない、今夜だけだからな」
*
そんなこんなで二人の同棲生活が始まった。
同棲と言っても18号は何もしない。
ずっと家でゲームしたり、ウボォーギンから貰った小遣いで買い物したりしていた。
家事はすべてウボォーギンがやっていた――と言っても食事は外食か出来合いの惣菜だし、
洗濯は近くにコインランドリーがあったから、簡単な掃除ぐらいしかしていないが。
「ウボォー早くしろ。ランクマッチもう始まるぞ」
「おう、今行くぜ」
旅団の仕事がなく、二人が揃っている日はもっぱらオンラインの対戦ゲームで遊んでいた。
ウボォーギンとしては外でデートしたかったのだが、この二人はとにかく目立つし、
二人で出歩くとどうしても恋人同士だと思われてしまうことが多かった。
それを18号が嫌がり、家で何かするとなればゲームぐらいしか娯楽はなかった。
「目が疲れてきたな……そろそろ寝るか」
「ああ」
「18号。今日は一緒に寝てくれるんだよな?」
「……ああ」
初日の夜だけは同じベッドで寝ることにした。
が、案の定ウボォーギンの寝相は悪く、18号が穏やかに眠れる状態ではなかった。
翌日からベッドが用意され、もう添い寝することはないだろうと思っていた。
しかし、18号が家事を何もしないことに加え、それなりに高額な小遣いを要求したり、
気になった娯楽品や嗜好品を、小遣いとは別でウボォーギンに買わせようとしたりしていたために
流石のウボォーギンも「何もしないなら対価を出すべきだ」と言い出した。
その対価が一週間に一度の添い寝だった。
18号はもちろん激しく反対したが、「じゃあゲームは全て売り払う」「小遣いも減らす」と言われたので渋々了承した。
だが、ウボォーギンの寝相は前述した通り最悪だ。
なので18号は屁理屈を言った。
「添い寝はしてやる。だが横じゃなく縦にしろ」
「縦……? 俺の上で寝るってことかよ」
「そうだ。もちろんお前の肉布団じゃ熟睡できないからお前の上に布団を敷く……つまり、こうだ」
掛け布団
↓
18号
↓
布団
↓
ウボォーギン
↓
ベッド
ウボォーギンの寝相は腕やら足がよく動くが、身体が斜めになったり回転したりはしない。
つまり床はそれなりに安定している。これなら熟睡できるだろうというわけだ。
「なんかアレだが……まぁいいぜ、それでも」
「よし。なら、それで契約成立だな」
*
ウボォーギンは18号との同棲生活を送る上でチャレンジしていることがあった。
それはスキンシップやボディタッチがどこまで許されるのか、その見極めである。
胸や尻は殺されるかもしれないので触ったこともない。
髪の毛や顔、腰は触ると俺が悶絶するレベルのパンチを腹に喰らった。
肩を組むのは即振り払われたが、強い拒否はない。
腕や手も理由があれば問題ないようだ。
それと、偶然に触れてしまうぶんには特に怒ったりはしない。
例えそれが胸や尻であっても、だ。
偶然を装うと馬乗りになってボコボコにされたうえに、頼んでないのに治療され治療費を請求された。
そして今日は週に一度の添い寝の日だ。
18号の熟睡のために微動だにできないのは辛いが、ひとつ楽しみがあった。
18号は眠りが深い。寝息を立てはじめたらなかなか起きないのだ。
この時、18号の身体は触り放題になる。ウボォーギンはこの時間のことを密かにフィーバータイムと呼んでいた。
とは言え、万が一起きたら……と考えると胸や尻は触れないでいた。
なので、楽しみのは主に普段気軽に触れない髪の毛や耳、腰まわり程度だ。
(しかし、この状況……何かに似てるんだよな……)
ボディタッチをすると拒否されたり、殴られる。
そして、自分の布団の上で寝る。
(――まるでネコだな……こいつ)
問題はそのネコが自分より遥かに強く、機嫌を損ねて出て行かれるならまだマシで
うっかり加減を忘れて殺されかねない、ということだが……。
(ネコ耳とかつけてくれねぇかな……絶対似合うだろ)
*
ある日の朝のことだ。
「ちょっくら買い出しに行ってくる。留守番しといてくれや」
そう言ってウボォーギンが出掛けた10分後、インターホンが鳴る。
「宅急便か? ……もしもし」
『あれ? ねぇマチ、女の人が出たんだけど、部屋番号間違った?』
『いや、251号室で間違いないよ……そこはウボォーギンの部屋だよね?』
画面には二人の女が映っていた。
宅急便ではなさそうだ。もちろん見覚えはない。
「そうだが……お前らはウボォーの知り合いか?」
『うわ、女の人と同棲したって話マジだったんだ?』
『今、ウボォーは?』
「買い出しに行ってる。何か用事か?」
『えっと、仕事の連絡に来たんです。電話では分かりにくい案件で』
『悪いけど開けてくれる? 出来れば部屋で待ちたいんだけど』
「……わかった。上がってこい」
本当は知らない人間など部屋にあげたくはないが、ウボォーの身銭で暮らしている身だ。
そこまで分別のない人間ではないつもりだ。
それに、女二人なら何かあってもどうにかできるだろう。
仮に念能力者でも……恐らくは。
「来ましたよー。カギ開けてくださーい」
「……今開ける」
ドアを開けるとさきほどインターホン越しで見た二人の女がいた。
一人は派手な桃色の髪をした細身の女で、もう一人は黒髪でメガネをかけた地味な女だった。
「失礼しまーす……わっ、すごい美人さんだよマチ」
「悪いね、お邪魔するよ」
ウボォーギンから奴がどういう仕事をしているかは知っている。
「幻影旅団」という犯罪者集団に所属していて、盗賊を自称しているが団長の気分次第で何でもやる。
それこそ目を覆いたくなるような残虐行為にも平気で手を染めているらしい。
団員は全員念能力者で、戦闘担当は全員ウボォーギンとはタイプが違うが同じぐらい強いらしい。
18号は念能力者はウボォーギンしか知らない。
強化系は基本的には肉体強化に走るらしく、ウボォーギンはその典型と言っていいタイプ。
正直、元の世界の戦士とあまり変わらないので、“念能力者は脅威”と言われてもピンと来ていなかった。
念能力について深く知るために、この二人はうってつけかもしれない。
そう考えて、まずは二人の正体を確かめるべく質問する。
「――お前ら、幻影旅団とかいうやつのメンバーか?」
「「!!」」
その瞬間、見えない何かが18号を拘束していた。