18号がこの世界に転移してから5年の月日が過ぎた。
ヨークシンのとある居酒屋で、5人の男女が個室で思い出話に花を咲かせていた。
ゴン
「暗黒大陸は大変だったね。ヤバいところだとは聞いてたけど、あそこまでとは思わなかったよ」
レオリオ
「ゴンがそこまで言うってよっぽどだな」
キルア
「18号とメルエムが居なかったらすぐにでも帰ってたぜ。人間が生きていける環境じゃねーってアレ」
ウボォーギン
「オレの『
18号
「まぁいい暇つぶしにはなったね。でも、あれは辟易したな……あの無限湧きする球体のヤツ」
キルア
「ブリオンか。あれはやばかったな……まさかの植物だぜ? 根を絶たないといくらでも出てくるんだもん」
ゴン
「あれは18号だけじゃどうにもならなかったね。メルエムとネテロ会長がいて、どうにかなったけど」
ウボォーギン
「いずれにしろもう行きたくはねぇな。生きて帰ってこれたとして、数多の『リスク』を持ち帰ってくるのが関の山だろ」
レオリオ
「ところで、さっきから話に出てくるメルエムってのは一体誰だ?」
18号
「キメラアントって暗黒大陸出身の生物がこっちに流れてきてな。
そいつが人間と混じって生まれた蟻の王、それがメルエムだ。
東ゴルトーの騒動知ってるだろ? それをやったのがキメラアントだ」
レオリオ
「それがどうしてお前らと一緒に暗黒大陸探検してんだよ……」
18号
「私が倒して言うこと聞かせたんだよ」
ウボォーギン
「見たかったな、お前とメルエムの戦い。余波だけは遠くからでも感じたけどよ」
18号
「あっそ」
ゴン
「メルエムはどうなったの?」
18号
「コムギって女と軍儀やってるはずだよ。生きてるけど、無力化してるから問題ない」
キルア
「アイツも大概おかしい強さだったな。普通に俺の全速よりはえーし」
ゴン
「でも、あれぐらいじゃないと暗黒大陸の『リスク』は跳ね除けられないよね。俺もいつかは……」
キルア
「お前、まだ行くつもりかよ?」
ゴン
「だって、まだ暗黒大陸の10%も探検できてないじゃん。ハンターたるもの、未知は少しでも減らしたいよ」
18号
「ブレないね、あんたは……」
ウボォーギン
「お前が言うなよ。この5年、アホみたいに稼いだ金の亡者がよ」
レオリオ
「なに! いくら稼いだんだよ、18号!!」
18号
「身を乗り出すな。まぁ、ざっと1000億ぐらいかな」
レオリオ
「いっ……お、俺にもちょっと分けてくれねーか? 1%でいいからよ」
18号
「1%って10億じゃないか。やだよ」
ゴン
「でもそんなにお金稼いでどうするの? もう今夜の0時には元の世界に帰っちゃうんだよね?」
18号
「元の世界に持って帰れるかもしれないだろ? 紙幣じゃダメだろうから宝石類にして持ってきたけど」
キルア
「でけーキャリーケースだなと思ったらそれかよ。無理だったらどうすんだよ?」
18号
「無理だったらお前らで適当に山分けでもしてくれ。それとウボォー、お前にはこれをやる」
ウボォーギン
「うん? ってこれは……ハンター
18号
「わたしがこの世界に居たって証明だ。色々世話になったからな、お前にくれてやる。
売るなり家宝にするなり好きにしな」
ウボォーギン
「18号……! うおおおおおおっ!! 愛してるぜぇ!!」
18号
「抱き着くな、鬱陶しい……」
ゴン
「……二人って結局付き合ってたの?」
18号
「いや、ただの腐れ縁」
ウボォーギン
「エロいことしてないだけで普通に付き合ってただろ」
18号
「は? 死ね」
ウボォーギン
「くそ、最後まで片思いのままかよ……無理矢理襲っとけば良かったぜ」
18号
「んなことしたら、今頃は土の下だな。悪いけど、お前はわたしの好みじゃないんだ」
キルア
「じゃあオレやゴンは?」
18号
「ガキすぎ」
レオリオ
「……オレは?」
18号
「ヒゲが不快だけど、まぁ医者になれたら考えてもいい」
レオリオ
「金目当てかよ……」
ゴン
「あはは……最後まで18号は変わんないね」
ウボォーギン
「っと、そうこうしてたらもうすぐ0時だ。出ようぜ」
レオリオ
「もうそんな時間か……」
18号
「……行くか」
*
11時55分。
5人は18号とウボォーギンが購入した一軒家に集まっていた。
「わたしの私物をどうするかはウボォー、お前に任せるよ。潔く売っ払ってもいいし、女々しく守り続けてもいい」
「おう。……しかしお前、そんなにしてると成金だな」
18号は買い集めた宝石、時計、アクセサリーの類を体中に装着していた。
動くたびにジャラジャラと音を立てて、ものすごく動きにくい。
「仕方ないだろ。身につけてないと持ってけないかもしれないし……」
「いっそのこと飲み込んじまえば確実なんじゃねーの?」
キルアが面白がってそんなことを言うが18号は首を振って否定する。
「そこまでして持っていけなかったら悲惨だろ。これでいい」
カチリ、と時計の長針が一つ進む。
「本当にいなくなっちゃうの? 正直、信じられないんだけど」
ゴンがぽつりとこぼす。
「この前、夢にわたしをこっちに寄越した神が今日の0時で終わりだって言って来たんだ。
って言葉で説明しても納得できないだろうけどね。まぁ時が来れば分かる」
18号が説明する間にも時は進む。別れの時が迫ると感じ、まずレオリオが18号の前に立つ。
「18号、色々世話んなったな。つっても、俺とはハンター試験ぐらいまでだったが……」
レオリオが手を差し出すと、18号は応じて握手を交わす。
「こっちも世話になったよ。あんた以外に拾われてたらどうなってたか……。いい医者になりなよ、レオリオ」
「ああ……! お前も元気でな」
続いてキルアが前に出る。
「別れの挨拶ってガラでもないしさ、質問いい? 18号の居た世界ってどんな世界なの?」
「わたしの世界か……わたしより強い奴が何人もいる、とだけ。ただの人間はそうでもないけど、別の星の人間やその子供とかね」
「はぁ~? お前より強いって、それもう人間やめてるだろ……。人造人間ってことで納得させてたのに」
「でも強いだけだ。念能力みたいなのはないし、こっちの人間が一方的に負けるってこともないだろ」
「ガチれば惑星壊せる奴に勝てるかよ。てか、そんな世界にホントに帰りたいわけ?」
「17号……たった1人の肉親がいるからな。もしかして引き留めのつもりか、今の」
「ちげーし。じゃあな、18号。向こうで死ぬなよ」
「お前もな」
続いてゴンが前に立つ。
「カイトのこと、助けてくれてありがとう。あのまま殺されてたら、オレおかしくなってたかもしれない」
「そうだね、あんたはちょっとまっすぐすぎるとこがあるからな。今度は一緒に戦えるぐらい強くなりな」
「うん。それと、クラピカのことも。命は助かったわけだしね」
「あれはわたしのエゴでやったことだよ。罪滅ぼしじゃないけど、残ったわたしの金はあいつにも分けてやってくれ」
「わかった。18号、向こうの世界で幸せになってね」
「ああ。ゴン、いいハンターになりなよ」
「うん!」
ゴンと握手を交わすと、最後にウボォーギンが前に立つ。
「……本当に行っちまうのか」
「ああ。ちょっとだけ名残惜しいけど、ここはわたしの居るべき世界じゃないからな」
「くそ……マジで惚れてたんだがな。今頃は結婚して子育てしてる予定だったのに、どこで間違えたんだ……?」
「気色悪いことを言うな……誰がお前のガキなんぞ育てるか」
「いや、きっとお前と結ばれる世界線もあるはずだ……! オレはそう信じるぜ」
「勝手にしろ……それが最後の言葉でいいのか? もう0時になるけど」
「なにっ」
カチッ、と音がして時計の短針と長針が重なる。
すると18号の身体が手足の先端から徐々に透明になって存在が薄まっていく。
「ゆっくり消えていくみたいだな。まだロスタイムがあるみたいだが……」
「18号……! 愛してるぜ!! オレはお前のこと、絶対に忘れねぇ。だからお前も――」
「それはたぶん無理だな。夢で神が『記憶は消す』って言ってたし」
「マジかよ! クソ……」
「そんなわけだ。忘れろとは言わないが、別の女を見つけることだね。もうオッサンだし、急いだほうがいいよ」
「お前以外の女なんて考えられねぇな。妥協するぐらいなら、このまま独身でいいぜ」
「あっそ……好きにしな」
18号の腕と脚はすでに完全に透明になっている。話していられる時間は少ない。
「じゃあな、ウボォー。お前のことは嫌いじゃなかったよ」
「――18号っ!!」
ウボォーギンは叫んで、18号を抱きしめる。
「最後まで鬱陶しいな、お前は……しょうもない死に方するなよ」
「ああ……最後に餞別をもらってもいいか?」
「餞別? ――んんっ」
ウボォーギンは18号と向き合ったかと思うと、その唇を奪う。
「やりやがった……!」
「やるな、ウボォーのおっさん」
「しかもあれ、深いやつじゃ……」
ゴンが指摘する通り、舌を絡ませる(一方的に)ディープキスだ。
18号は眉根を寄せて抵抗しているが、されるがままになっている。
いい加減にしろ、と渾身の力で殴ってみるが、透過されてウボォーには当たらない。
「……ぷはっ、お前……狙ってたな。初めてだったんだぞ……」
「これぐらいは貰っておかねーとな。お前がこの先、誰かと付き合うとしてもファーストキスはこのオレだ。
お前が記憶を失うとしても、この事実は変わらねえ」
「やれやれ……お前がそれでいいならもういいよ。今までありがとう、ウボォー。さよならだ」
「こちらこそ、お前がいなきゃ今頃どっかで死んでたと思う。だから……感謝するぜ、お前と出会えたこれまでの全てに!!!」
「それ、別の奴の台詞の気がするぞ……」
もう触れることはできないが、18号とウボォーギンは握手ではなく拳と拳を合わせる。
「もう二度と会うことはないだろうが、あえてこう言わせてくれ――またな」
「ああ……次会うことがあったら、思い切りぶん殴ってやるから覚悟しときな」
遂に毛の先まで透明になると、今度は足先から完全に消えていく。
「「「「18号!」」」」
18号は黙って背を向け、片手をあげて応える。
次の瞬間には18号の姿は完全に消えていた。まるでそんな人間はいなかったかのように。
そして、地面には18号が身につけていた装飾品の数々が散らばっていた。
「「「「やっぱり駄目だったか……」」」」
*
目を開けると、そこにはついさっき会った『神』の姿があった。
既に、18号にハンター達のいる世界の記憶はない。
「18号さん、お待たせしました。すべて元通りにできましたので、地球に戻って頂けます」
「ん、もう終わったのか。5年かかるとか言ってなかったか?」
「はい。あなたは5年間、別の世界で過ごしていたんですよ。記憶は消したので覚えていないでしょうが……」
「ふーん……まぁどうでもいいな。早く戻してくれない?」
「はい、もちろん。それでは――」
*
18号は地球に戻る。神様の神殿と呼ばれるところから、地上へ帰ろうとしたところだ。
かつてはここで体内の爆弾が誤作動を起こし、死んでしまったが……もうそんなことは起こらない。
「なぜ急に空が暗く……!?」
突然、空が暗くなったことに驚いた18号が辺りを見回す。すると、神殿のほうで巨大な龍が現れたのが見える。
「な、何だ!? あれは……」
18号は急いで神殿へ舞い戻る。
すると誰かよく分からない
「セルに殺された人たちを生き返らせてください!」
(そんなことできるわけが……)と内心思っていると、目の前で胸に穴の空いた少年――
確か、名前はトランクスだったか?――が身を起こし生き返った。
(本当に生き返った。ということは、17号も生き返ったのか?)
自分はセルから吐き出されて死んだが、17号は吸収されたまま死んだ。
セルに殺されたという判定になっていても不思議じゃない。
(……後で確かめないとな。別に心配とかじゃないけど)
願いは叶えられたが、龍はまだそこにいる。どうやら願いはもう一つ叶えられるらしい。
孫悟空を生き返らせてくれ、と誰かが願うが既に一度死んで生き返った人間はダメのようだった。
その後、連中が誰か――どうやら孫悟空らしい――と話しているのが聞こえ、どうも生き返りを拒否したようだ。
結局、ふたつめの願いをどうするかで話し合っていたが、答えは出ないまま。
しかし、そこで
「シェ、神龍!! 人造人間の17号と18号をもとの人間に戻してやってくれないか!!」
「!!」
『それはできない。ふたりの人造人間はわたしの力を大きく超えている』
しかし、その願いは神龍によって却下されてしまう。
18号としては勝手に改造されたことは不快極まりないが、この身体自体は気に入っていた。
この世界において、戦える力があって困ることはないからだ。
(だけど、あのおっさんはどうして……)
答えは明白な気がするが、だとしても入れ込み過ぎに思える。
セルに吸収される前も、爆破スイッチを目の前で破壊していた。わたしを壊しておけば、セルが完全体になることもなかったろうに。
そういえば……あのおっさんには、前にちょっとした挨拶のつもりで頬にキスをしたことがある。
(まさか、それで? まぁ、あのナリじゃ女にモテたことなんかないだろうしな。哀れな奴……)
そして、再びクリリンが神龍へ願った。
「じゃあ……せ、せめてあの二人の身体の中にある爆破装置を取り除いてやってくれないか!?」
『それならば可能だ……よし、ふたりの爆破装置はたった今取り除いたぞ。では、さらばだ……』
今度は叶った。
18号は、自分の身体の中から何かが消えたことを感じる。
(恩を売ったつもりか、あのハゲ。そんなのでお前に靡くと思うなよ……)
「それにしてもクリリン……なぜ17号の爆弾まで取ってやったんだ?」
「あ、うん……確かにオレ、18号のこと好きだけど……18号にはさ、17号がお似合いだろ? だから……」
(はぁ? 何言ってるんだ、こいつ……)
あまりにも馬鹿げた発言に腹が立ってくる。
こいつは下心とかじゃなく、ただの善意で貴重な願いをわたし達に使ったのだ。
(お人よしすぎる。そんな簡単に身を引きやがって、そんなんだからモテないんだよ……)
哀れに思った18号は、ひとまずクリリンの勘違いを正してやつ必要があると思い、彼らの前に姿を現す。
「バーカ! 17号とわたしはふたごの姉弟だ!」
驚いた顔で18号を見るクリリンに向けて、更に言葉を放つ。
「だからってその気になるなよ。爆弾のことだって感謝なんかしてないからな!! タコ!!」
正直言ってこのクリリンという男は18号の好みではない。
(弱いし、チビだし、おっさんだし、良いところなんて一つも……)
優しいところは評価できるが、それだけだ。
女に優しい男なら、世の中にゴロゴロいる。そんなのは当たり前のことだ。
(でもまぁ……恩はある。話ぐらいは聞いてやってもいい……あいつみたいにな)
ふと頭に何かが過ぎったが、18号は何も思い出すことはない。
ただ、クリリンと強さ以外は真逆の奴がいた気がするだけだ。
「――またな」
【FIN】
ここまで読んでくださった方、評価して頂いた方、感想を書いてくださった方へ心より感謝を申し上げます。
どうにか、想定通りの終わり方で書き切れてほっとしています。
なぜ18号×ウボォーギンなのか、何か思いついたからとしか言えませんが……。
18号とクリリンの夫婦が好きなのでくっつかせるつもりはありませんでした。
とりあえず助けられそうなキャラは助ける、がコンセプトでしたが
人の死なないHUNTER×HUNTERって面白くないので書きながら色々と台無し感はありました。
ちなみに、作中で描写されてませんがポックルやポンズは普通に死んでます。
ポックルは死なないとキメラアントに念が伝わらないので仕方ない。
あと、そのせいで18号に瞬間移動や治癒能力などを使えるようにしましたが流石にやりすぎたなと反省しています。
主人公はちょっと苦戦するぐらいが好きなので、最強すぎると逆に戦闘シーンが書きにくい……。
最後に現行作品と過去作品を紹介させてください。
【秀尽学園の非常勤講師、ベレス】
https://syosetu.org/novel/368536/
ペルソナ5×ファイアーエムブレム風花雪月のクロスオーバーものです。
【エドの引き鉄 -EDO no TRIGGER-】
http://chronoyaruo.blog.fc2.com/blog-entry-273.html
こちらはやる夫スレですが、鋼の錬金術師のエドが主人公のクロノトリガー原作作品となってます。
ご興味あればぜひご一読頂ければ幸いです!
では、重ね重ねになりますがここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!!