流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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昨日障害でアクセスできなかったので2話投稿してます。こちらは1話目です。


4.幻影旅団と別れ

(何だこれは……見えないが糸のようなもので拘束されている)

 

「ちょ、マチ何してんの!?」

 

「シズク、ウボォーがこいつに旅団の情報を喋った可能性がある。どこまで知ってるか尋問する」

 

「えぇ……」

 

 

 18号の目にはオーラは見えている。今も二人のオーラははっきりと分かる。

だが自身を拘束している糸はどれだけ目を凝らしても見えなかった。

18号は知るよしもないがマチは糸を『隠』というオーラを透明にする技術で見えなくしている。

『隠』は『凝』という目にオーラを集める技術を使わないと看破できない。

 

 

(これも念能力なら、結構やばい状況かもな……)

 

 

 見えない糸は簡単に千切れそうにない。

全力でやれば引き千切れるかもしれないが、既に深く肉に食い込んでいる。

上手くやらないと大怪我を負うだろう。治癒能力があるとは言え怪我は嫌だな、と18号は思った。

 

 

「素直に質問に答えな。幻影旅団のことはウボォーから?」

 

「ああ、初対面の時に団員だって自慢げに言ってた」

 

 

 質問に答えるだけで拘束を解いてくれるなら……と18号は素直に答える。

 

 

「……あまり言いふらすなって団長言ってたよね?」

 

「まぁ、ウボォーだからそれは仕方ない。で、他には何を知ってる?」

 

 

 マチと呼ばれた女は糸を引っ張り、圧を強める。

 

 

「主な仕事は盗みだけど、団長の気分次第で何でもやるって。殺人はもちろん、虐殺も」

 

「ここまでは調べれば分かる内容だね」

 

「他には?」

 

 

 まずい状況だと頭では分かっているが、危機感はない。

慎重に言葉を選ばなければ攻撃される可能性があるが、ぶっちゃけどうとでもなる。

そう思っているから、素直にすべてを白状する。

 

 

「あとは団員は全員念能力者ってことと、一部の団員の能力の概要ぐらいだな」

 

「うわぁ……アウトじゃん」

 

「仕方ない……パク姉呼んで記憶を消してもらおう」

 

 

(記憶を操る能力者もいるのか。しかし、記憶を消されるのは困るな)

 

 

 記憶を保持したまま、なるべく穏便に済ませたい。

18号は基本的に事を荒立てたくはない。面倒だから。

その為にはどうすればいいか、何を言えばいいか考える。

 

 

「おい……わたしは旅団のことを言いふらすつもりはないぞ」

 

「黙りな。口では何とでも言えるでしょ」

 

「ごめんね、もうちょっと我慢してください」

 

 

(説得は無理か……。仕方ない)

 

 

 

 

(パク姉、出ないな……)

 

 マチは18号を拘束し、注視しながら携帯電話に耳を当てるが、コール音ばかりで応答はない。

自室で風呂でも入っているのだろうか。一旦切って掛け直すべきか……。

そう迷っていると唐突に応答があった。

 

 

『もしもし、どうしたのマチ』

 

「あ、パク姉? 今ウボォーのマンションに来てるんだけど――」

 

 

 パク姉――パクノダへ状況を説明しようとしたその時。

マチとシズクは途轍もない力の奔流をゼロ距離でまともに喰らった。

 

 18号が『気』――正確に言えば体内の永久エネルギーだが――を開放したのだ。

時間にして10秒もないが18号としては全力に近いものを出した。

 

 マチとシズクは冷や汗がどっと噴き出したのを感じた。

完全に油断していた。ウボォーの恋人と思われるこの女のことを一般人だと思い込んでいた。

オーラが感じられなかったからだ。少なくとも念能力者ではないと。

 

 しかし、冷静に考えればそれはおかしい。

人間であれば強弱はあるがオーラは必ずある。ないはずがないのだ。

だったらこの女は一体――?

 

 

『マチ? どうしたの? 何かあったの?』

 

「ごめんパク姉、あとで掛け直す」

 

『えっ!? ちょっと――』

 

 

 携帯の電源を切り、警戒を最大限に引き上げる。

相手を拘束しているのだから、主導権はこちらにあるはずだが、とてもそんな風には思えない。

先程のオーラではない、何か別の力の奔流の大きさを思えば、念糸の拘束など1秒後に解かれても不思議ではない。

刺激するようなことは言えない。慎重に相手の言葉を待った。

 

 

「分かっているだろうが、私はこんな拘束なんかいつでも破ることができる。

だが、あえてそうしないで拘束されたままでいるのはどうしてだと思う?」

 

「……どうして、ですか?」

 

 

 シズクがおずおずと言葉を返す。

 

 

「お前らがウボォーの仲間だからだ」

 

「……どういうこと?」

 

「今のわたしはウボォーに養われている身だからな……。特に仕事に関しては口出しできる立場じゃない。

お前らがただの友達なら、少々痛い目に遭わせてやってもよかったが……」

 

「……なるほど。だから、“言いふらすつもりはない”んですね?」

 

 

 シズクは得心がいった。

つまりこの女は、旅団の情報を言いふらすことがウボォーの、ひいては自身の不利益に繋がると思っている。

仕事に支障をきたすことはできない。例えその仕事が犯罪だとしても。

 

 

「そうだ。それに、なるべく敵は作りたくないんだ。特に念能力者はな。

私は念を習得できない。オーラは辛うじて見えるが、隠されると無理のようだしな」

 

「念を習得できない?」

 

「……ねぇ、あんた何者?」

 

 

 マチが当然の疑問を呈すと同時に、玄関のドアが勢い良く開かれる。

 

 

「18号、何かあったのかッ!?」

 

「あ、帰ってきた」

 

「詳しいことはその馬鹿に聞いてくれ。大体のことは話してある。

で、納得したら拘束は解けよ」

 

 

 

 

「異世界から来た、ね」

 

「私は人造人間ってとこが気になったな。そんなのこっちじゃ聞いたことないし」

 

「……」

 

「おいおい、それよりもっと驚くことがあるだろ? 18号が俺より強いってとことかよぉ」

 

「それは、さっきの「気」を間近で感じれば何となく分かったから」

 

「あ、死んだって思ったもんね。まともに戦ったら誰も勝てないんじゃない?」

 

「だろうな。クロロなら先手取ってハメられたらワンチャン……ってとこか」

 

 

 能力によっては、万が一先手を取れたら勝てる可能性はある。

18号も、後手にまわったら勝てない状況に陥ることはあり得る。

 

 

「……とりあえず18号のことは分かった。とりあえず信用することにする。

あたしのカンも危険性はないって告げてるし……何より、ここまで実力差があると――」

 

「信用するしかないよね。その気になれば一人で旅団滅ぼせるだろうし」

 

「18号は金のことしか頭にない女だぞ。無益な殺しはしない」

 

「有益なら殺すみたいな言い方はやめろ、ウボォー」

 

「無意味な殺しはしないのは、あたし達も同じだけどね。世間のイメージはどうだか知らないけど」

 

「あのー、ところでこれは興味本位での質問なんだけど……」

 

 

 デリケートな質問なだけに、シズクは少し言葉を詰まらせる。

しかし、意を決して二人にぶつけることにした。

 

 

「二人は恋人なの?」

 

「違う」「そうだぜ」

 

「18号は違うって言ってるけど?」

 

「照れてるだけだ」

 

「黙れハゲ。前払いで治療費を請求するぞ」

 

「冗談だよ、あとハゲてねぇし」

 

「18号さんはウボォーのことどう思ってるの?」

 

「金蔓」

 

 

 18号は即答する。

 

 

「ウボォーは?」

 

「惚れてる。付き合いたいしヤりたいと思ってるが、無理矢理手籠めにしようとは思ってない。

18号の意思を尊重したいから、何とか振り向かせようと頑張ってるところだ」

 

「無駄な努力だけどな」

 

 

 18号は辛辣な反応を返すが、ウボォーギンはどこ吹く風だ。

 

 

「うわぁ……ガチ恋じゃん」

 

「珍しいねウボォー、あんたがそこまで入れ込むなんて」

 

「へ、まぁな。ところでお前ら何しに来たんだ?

まさか18号を物見遊山しにきたわけじゃないだろ」

 

「あー、そうそう。次のターゲットが決まったから知らせに来たんだよ。

シャルが立てた作戦、結構複雑だから口頭じゃ理解できないと思ってさ」

 

「そうか、じゃ早速聞かせてくれや」

 

「んー、部外者がいるのは……」

 

 

 マチがチラッと18号のほうを見る。

 

 

「別に身内みたいなもんだし、問題ないだろ」

 

「“信用するしかない”でしょ、マチ」

 

「そうだね……仕方ないか。じゃ、説明するよ」

 

 

 

 

「――よし、完全に理解したぜ」

 

「絶対に理解してないでしょ。あとでシャルに分からないとこあったら聞いときな。

あいつのほうが説明はうまいし」

 

「おう、そうする」

 

 

 ウボォーギンは作戦概要が書かれた紙を眺めてうんうんと唸っている。

ちなみに18号は説明中、ずっとゲームをしていた。

恐らく興味もないので碌に話は聞いてないだろう。

 

 

「ところで、18号さんは旅団に入る気はない?」

 

「ないな」

 

 

 18号は即答した。

 

 

「うーん、残念」

 

 

 シズクは肩を落とす。

 

 

「報酬が貰えるなら協力してやってもいいが、絶対に殺しはしないぞ」

 

「それは何で?」

 

「恨みを買いたくない。面倒事は嫌いなんだ」

 

「うーん、旅団に関わる時点で多少の恨みは買うと思うけど」

 

「じゃあ協力も無しだな。まぁ、旅団やウボォーの不利益になることはしないよ。

ウボォーの全財産を賭けてもいい」

 

「何で俺の全財産なんだよ、おかしいだろ」

 

 

 18号の冗談か本気か分からないボケに、咄嗟にツッコミを入れるウボォーギン。

そんなベテラン漫才師のような息の合った会話に、マチはふっと笑みをこぼした。

 

 

「分かったよ18号。とりあえずそのスタンスでいい。ウボォーをよろしく頼むよ」

 

「私からもお願いします、18号さん」

 

「ああ、分かった分かった」

 

「よろしくって、俺が一方的に世話焼いてるんだが……」

 

 

 ウボォーギンは独りごちる。

 

 

「それじゃ、あたし達は帰るよ。ウボォー、またな」

 

「おう」

 

「18号さん、また遊びに来てもいいですか?」

 

「好きにしろ」

 

 

 バタン、とドアが閉じられる。

 

 

「さて、それじゃ昼飯にするか」

 

「ん……。今日はなんだ?」

 

「昨日のカレーの残りだよ。トンカツも買っておいたからカツカレーだな」

 

「カツカレーね。じゃ、わたしはゲームの続きでもするかな」

 

 

 ドアの外ではオーラを消す技術『絶』で気配を消し、マチとシズクが耳を聳てていた。

 

 

「会話が夫婦のそれなんだよね……まぁ18号さんは何もしてないけど」

 

「あたしの見た感じ、完全に脈なしってわけでもなさそうだけど……。

ウボォーは相当努力しないと駄目だろうね」

 

「でも何か幸せそうだったよね。意外と尽くすタイプなのかな?」

 

「どっちかと言うと女に奉仕させるタイプだったはずだけど……人は変わるもんだね」

 

 

 

 

 同棲生活が始まって3か月経った頃。

その時は突然訪れた。

 

 

「悪いな18号、この部屋引き払うことになった」

 

「……は?」

 

「仕事でちとしくじってな。今、ある組織に命を狙われてる」

 

「そんなの、返り討ちにすればいいだろ」

 

「そうしたいのは山々だが、いかんせん数が多くてな。キリがない」

 

「……それで?」

 

「まだこの部屋のことはバレてないが、いずれバレる。

そうなれば少なからずお前にも火の粉が降りかかる。そういうの嫌だろ、お前」

 

「ふん……」

 

「俺はコルトピが念で作った建物を寝床にする。

24時間で消えるし、でかいベッドもないが、まぁ仕方ねぇ。

そんなとこでお前は寝たくないだろうし、俺もんなとこで寝させたくねぇ」

 

「……別の部屋を用意するというのは?」

 

「それも考えたが、少なくとも俺は一緒には住めないぞ。

ほとぼりが冷めるか、敵組織を壊滅させるかするまではな。

お前、一人で暮らしていけるのかよ? 無理だろ」

 

「じゃあ……わたしはどうすればいいんだ」

 

「とりあえず当座を凌げるだけの金は渡しておく。

それでホテルに泊まるなりしてくれ。

携帯は持っとけよ。問題が解決したらまた連絡する」

 

 

 そう言ってウボォーギンは100万ジェニーを机の上に置いた。

 

 

「100万か……ホテルによってはすぐなくなるな」

 

「正直それ以上は渡せねぇ。生活費としての限度額だ。

悪いがなくなったら自力で何とかしてくれ」

 

「……言われなくてもそうするさ」

 

「それと、部屋の後処理はマチとシズクがやってくれるそうだ。

必要なもんあるなら早めに持ってっとけよ」

 

「……ああ」

 

「すまねぇな、俺がドジっちまったばっかりに。

俺も18号とは離れたかねぇけど、仕方ない」

 

「俺も、ってのは何だ。わたしは別に――」

 

「嘘つけ。お前、今すごい顔してるぞ」

 

 

 指摘され、18号は苦虫を噛み潰したような顔をした。

思っていた以上にこの同棲生活が気に入っていたということか。

ウボォーギンのことは異性としては対象外だとしても、人間としてははっきり好意がある。

 

 

(こいつのことは金蔓としか思ってないつもりだったが……)

 

「そろそろ行かねぇと……あと3日ぐらいはここで寝泊りしても平気だが、どうする?」

 

「いや、荷物をまとめたらすぐに出ていくよ。変なやつらに部屋を荒らされる前にな」

 

「そうか……それじゃ、俺はもう行くぜ。しばらくお別れだな」

 

 

 そう言ってウボォーギンは身支度を整えていく。

 

 

「ウボォー」

 

「ん?」

 

 

 頬に柔らかい感触がして、すぐに離れていく。

 

 

「またな」

 

「……ッ! 18号!!」

 

 

 振り返り、己を支配する感情のまま18号を抱きしめた。

 

 

「必ず連絡する。待っててくれ」

 

「……ああ」

 

「金がなくなっても変な男と付き合うなよ。面倒なことになる」

 

「変じゃなかったらいいのか」

 

「信用できそうな奴ならな」

 

「ふん……ほら、もう行け。暑苦しいんだよ」

 

「おう……」

 

 

 ウボォーギンは断腸の思いで18号から身体を離す。

 

 

「……なぁ、今はどう思ってるんだ? 俺のこと……」

 

「そりゃ金蔓――おい、そんな顔するな。まぁ、そうだな……友達だと思ってるよ」

 

 

 18号は友達という響きに戸惑いを覚え、薄く笑みをうかべる。

そう言えばそんなもの前の世界でもいなかったかもしれない。

強いて言えば16号ぐらいだろうか。

 

 

「友達か……一歩前進てとこか」

 

「その先なんかないけどな」

 

「夢ぐらい見させろよ。それじゃ、今度こそ行くぜ」

 

「ああ」

 

 

 ウボォーギンは一度だけ振り返ると、片手を振りながらドアを開け、出て行った。

バタンとドアが閉じられると、そこには所在なさげに佇む18号だけが残された。

 

 

「まずは荷物をまとめて……ホテルでも探すか……」

 

 

 そう呟きながらも、なかなか行動に移せずにいた。

 

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