流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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2話投稿の2話目です。


5.医師志望の男

「腹減ったな……」

 

 一人の生活になって1か月が経った。

 

 当初は安いホテルに長く泊まって、ウボォーギンからの連絡を待つつもりだったが

あまりのサービスの悪さに、キャンセル料を払ってまで途中でチェックアウトしてしまった。

 

 だったら最高級のホテルはどうなんだ、と思い1日だけ泊まってみた。

素晴らしいサービス、接客、食事、娯楽施設の数々……最高だった。

ウボォーギンから貰った金は10日ほどで底をついた。

 

 

 そこからは路上生活だ。落差に眩暈がしたが自業自得だ。我慢するほかない。

幸い18号は美人なので、身の程を弁えない男が次々ナンパしてくる。

「食事を奢ってくれるなら話だけなら聞いてやる」といって食事を済ませ

いかがわしい雰囲気を出して来たら男を気絶させ、朝になったら逃げる、これを繰り返した。

 

 ちなみに、ウボォーギンの時のように男の部屋に転がり込むのはやめておいた。

相手が何かしてきた時、一般人なら相手を殺しかねないし、念能力者なら自分が危険だ。

 

 あとは、街で事故が起こり怪我をした者がいたら、治癒能力で治してやって

治療代として財布から金を勝手に抜き取ったりもした。

(これって犯罪とかにはならないよな……?)などと思いながら。

 

 

 しかしそんな生活も長くは続かない。

ナンパしてくる男は目に見えて減っていった。

恐らく、食事だけして逃げる(しかも暴力を振るう)女がいるという風評が広がっているのだろう。

辻治療も拒否されてできないことが多くなった。

最近は財布の中身を全部貰うことが多かったのが良くなかったのかもしれない。

 

 今週に関しては成果はほぼゼロだった。

辻治療で稼いだ(?)金も底を尽きかけている。

プライドを捨てて炊き出しの食事を貰ってみたが腹は膨れない。

 

 

(早く連絡寄越せよ、ウボォー……何やってんだか)

 

 

 ウボォーギンから連絡は来ない。

まだ“ある組織”とやらに命を狙われているのだろうか。

 

 ほとぼりが冷めるか組織を壊滅させたら、と言っていたが

壊滅させるなら旅団の協力がないと厳しいだろう。

どうもウボォーギンの個人的なミスが原因のようだし、利益のない抗争はしないなら協力は望めない。

ほとぼりが冷めるのを待つつもりなら、まだまだ時間はかかるかもしれない。

 

 会いに行くか、という言葉が浮かんでは消える。

まだ使ったことはないが、“あの技”なら今すぐに会いに行くことはできる。

だが、それは何だか負けた気がする。色んな意味で。

 

 

 ポツ、ポツ。

 

 

(チッ、雨が降ってきやがった)

 

 

 屋根を探して走っているうちに、雨は激しくなってくる。

 

 

(びしょ濡れ……最悪)

 

 

 シャッターの降りた店の軒先に腰を下ろす。

くしゅん、とくしゃみを鳴らす。

 

 

(風邪引いてないだろうな……)

 

 

 人造人間になってから病気の類にはなってないが、どうなのだろう。

治癒能力でどうにかなればいいが……。

 

 その時、頭上から声がした。

 

 

「お姉さん、どうした? 顔色悪いぜ」

 

 

 18号を顔をあげる。

そこには紺のスーツを着た就活生風の男が立っていた。

ファッションだろうか、小さく丸いサングラスをかけている。

 

 金は持ってなさそうだ。18号は落胆した。

 

 

「失せな」

 

 

 と突き放すが、身体がブルリと震えてしまう。

 

 

「震えてんじゃねーか。風邪引きはじめてるぞ。早いとこあったかいとこに――」

 

「うるさい、失せなって言って……」

 

 

 グゥゥゥ、とお腹が鳴る。

 

 

「……チッ」

 

「なぁお前さん、いつから食べてない?」

 

「……丸一日ぐらいかな」

 

「そうか……。よし、分かった。こんな美人を放っておいたら男が廃るってもんだ。

とりあえず俺の部屋でメシを食え! それと服はすぐ着替えたほうがいいな」

 

 

 そう言って、男は18号の手を取り雨の中歩いていく。

 

 

「お、おい」

 

「傘はあんたが使え、俺は大丈夫だ。こう見えて鍛えてる」

 

「そうじゃなくて……まぁいいか」

 

 

 

 

 案内された家はそこそこ立派な一軒家だった。

てっきりボロアパートを想像していたので面食らった。

 

「へっ、意外にでかい家で驚いたか? これは去年死んだ祖父母の家だ。

俺の受験勉強用に叔父さんに貸してもらってる」

 

「受験? 就活生かと思ったが、受験生なのか」

 

「こう見えてまだ19歳だぜ。そんなに老けて見えるかね、俺」

 

 

 家の中は一軒家だけあってウボォーギンのマンションより広い。

祖父母の家と言っていたから、個室もいくつかあるのだろう。

 

 

(とりあえず、今夜はありがたく世話になるとして……問題はその後だな)

 

 

 18号は玄関に入って靴を脱ぐと、その場で服を脱ぎ始める。

 

 

「お、おい!? 脱衣所で脱げよ!!」

 

「びちゃびちゃで気持ち悪いんだよ。殴られたくなかったら後ろ向いてな」

 

 

 男はそう言われ、急いで後ろを向いた。

あっという間に下着姿になり、リュックに入っているまだ無事な服を取り出す。

服を着る前に、男のほうを見るとまだ律儀に後ろを向いていた。

その様子を確認して、服を着た。

 

 

「おい、もういいぞ。洗濯機はどこだ?」

 

「あ、ああ……乾燥機付きのが奥の脱衣所にあるぞ」

 

「よし、借りるぞ」

 

 

 濡れた服を洗濯機に放り込んでリビングに戻ると、男がエプロンを着けて立っていた。

 

 

「とりあえずメシ作るから、あんたはそこでテレビでも見て待ってろ」

 

「ふーん、料理作れるんだな」

 

「レシピ通りに作れるだけだがな。自炊のほうが節約になるし」

 

 

 テレビを見たり、リビングのものを物色したりしていると良い匂いが漂ってきた。

こっそりキッチンを覗くと、慣れた料理なのか手際よく調理を進める男の姿があった。

 

 

(もう美味そうだ……そういやウボォーは簡単な料理しか出来なかったっけ。

こいつ、結構生活力が高いな?)

 

 

 出来上がった料理に舌鼓を打つ。美味い……!

これに比べればウボォーの男料理はカスだ、と18号は思った。

 

 

「なぁ、まだ名前聞いてなかったよな」

 

「おっと、そうだったな……。俺はレオリオ。レオリオ=パラディナイトだ」

 

 

 

 

 レオリオは医師を志望する受験生だった。

何でも、友人を流行病で亡くしたらしく、しかも治療費を払えば助かっていたそうだ。

それがきっかけとなり、治療費が満足に払えない人々にも無償で治療する医者になりたいらしい。

 

 そのためには金がいる。

色々と金策してはいるが、大学の受験費用と入学金の確保が精一杯だ。

将来を見据え、金を工面するために、大学以外にも受験を考えている試験があるらしい。

 

 

 その後、18号側も自己紹介をする。

「異世界から来た!?」「人造人間!?」「治癒能力!? それくれよ!!」などの予想通りの反応が返ってきた。

 

 

「なぁ、レオリオ」

 

「うん、どうした?」

 

「お前さえ良ければこの家に暫く住まわせてほしい」

 

「なっ!?」

 

 

 レオリオの目が驚愕で見開かれる。仄かに顔も赤くなっている。

 

 

「金がないんだ……。帰るところもない。また路上生活に戻るのは嫌だ。

寝床と食事を提供してくれるだけでいい。出来そうな家事は手伝う。だから――」

 

「わ、分かった。分かったよ。ここに住んでもらっていい。

たださっきみたいなのはやめてくれ。俺も男だ。理性を保つのが大変だ」

 

「そうだな、気をつける」

 

 

 そう言ってみせるがレオリオに18号に手を出す度胸はない。

私の力はまだ見せてないが、見せなくても出してくることはない。

念能力者でもないし、信用できる男だと18号は感じている。

これならウボォーも納得するだろう。

 

 

 

 

 ――レオリオの家で過ごして一週間が経った。

レオリオはセクハラをすることは一切なかった。鋼の理性で耐えているようだ。

 

 家事は一通りできるようになった。

たまにレオリオが、18号がやった掃除の後や処理された洗濯ものを見て、顔をしかめていたりするが。

 

 今は料理を教えてもらっている。

 

 

「おい、切り方なんてどうでもいいだろ?」

 

「料理にどうでもいいことなんか一つもねーよ。ちゃんと理由があるんだよ、いいか?」

 

 

 そうこうしているとインターホンが鳴った。

 

 

「誰だ?」

 

 

 レオリオがカギを開けた瞬間、ドアは勢い良く開かれる。

 

 

「邪魔するぜ」

 

「うわっ、何だあんた!? ま、まさか強盗――」

 

 

 レオリオを無視して大柄の男はズンズンとリビングへ向かう。

そして、キッチンで見知った女を認め、笑みを浮かべた。

 

 

「何だお前、料理なんかやってんのか」

 

「――ウボォー? お前、どうしてここに?」

 

「え、何お前ら……知り合い?」

 

 

 レオリオはあまりにも不釣り合いな二人に困惑していた。




書いたあとに2次試験でレオリオが「料理なんて作ったことねーぜ」って言ってるのに気付きました。
「(レシピなしで)料理なんて作ったことねーぜ」だったということにしてください。
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