流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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8.一次試験

「――ハンター試験を開始いたします」

 

 

 試験官はハンター試験の危険性を説明する。

が、棄権する者はなく、先程負傷した1名を除く405名全員の参加が確認された。

 

 一次試験は二次試験会場までついてくること。

サトツと名乗った試験官はそう言い、足早に通路を歩いていく。

 

 歩くと言っても競歩のそれよりペースは早く、やがて 受験者はマラソンのように走り出すことになる。

 

 

「持久力を試す試験か」

 

「良かったなレオリオ。修行しておいて」

 

「確かに、あの頃のままじゃキツかっただろうな」

 

「レオリオ修行してたの?」

 

 

 ゴンが軽快に走りながら質問する。

 

 

「ん?ああ……走り込みに戦闘訓練、あと念だな」

 

「「念?」」

 

 

 ゴンとクラピカの声が重なる。

 

 

「ああ、念っつーのはな……」

 

 

*

 

 

「体内のオーラを操る技術、『念』か」

 

「プロハンターは例外なく習得しているらしい。本来は秘匿されてるらしいが」

 

 

 18号が捕捉説明する。

 

 

「秘匿されてるのに、オレ達に教えちゃっていいの?」

 

「まだハンターじゃないしな。隠すのも何か悪いし。

それに教えてもオーラを捉えられなきゃ何も出来ないし、問題ないって」

 

「それもそっか」

 

 

 走りながら雑談に興じる4人。

その後ろから銀髪の少年がスケートボードに乗りながら近づいてくる。

 

 

「面白そうな話してるじゃん。その“圧”、『念』って言うのか」

 

「初めまして! オレ、ゴン! キミは?」

 

「オレはキルア。お前、何歳? オレ12だけど」

 

「オレも12歳だよ! ねぇ、キルアは『念』のこと知ってたの?」

 

「知ってたわけじゃないけど、両親や兄貴が使えるっぽいんだよね」

 

「家族が念能力者なのか?」

 

 

 クラピカが質問する。

 

 

「ああ、ゾルディックって知ってる?」

 

「ゾルディック……まさか、暗殺一家のゾルディックか!?」

 

「それそれ。そこの三男ね、オレ。家出してハンター試験受けにきたってわけ」

 

「ってことは、家業を継ぐ気はないの?」

 

 

 次はゴンが質問する。

 

 

「そうなるかな。暗殺とか殺し屋なんて闇で生きてくこと確定じゃん?

俺はもっと自由に生きていきたいんだよね」

 

「そっか。いいと思う! 俺は親父がハンターでさ――」

 

 

 ゴンとキルアは同い年ということもあって、話が弾んでいるようだ。

 

 

「しかし、いつまで走ればいいんだ?」

 

「さぁな……無理に前に行かず、ペースを保ってついていくしかない」

 

 

*

 

 

 その後、通路は長い階段に変わる。

ここまでで1名脱落し、この階段の途中で36人脱落。

 

 通路と合わせておよそ100km走ったところ、ようやく出口が見えた。

 

 階段を抜けた先には、別名「詐欺師のねぐら」と呼ばれるヌメーレ湿原が広がっていた。

人間を騙して喰らう、狡猾な動植物が生息しているらしい。

 

 早速その洗礼としてサトツを偽試験官呼ばわりする魔獣が現れたが、ヒソカによって殺された。

 

 そして再びマラソンが始まる。今度は凶悪な動植物たちを躱しながら……。

 

 

「霧が濃いな……」

 

「ああ、目の前ですら霞んで見える。はぐれないようにしろよ、18号」

 

「お前がな」

 

 

 やがて、霧に乗じて湿原の動植物たちが牙を剥き始める。

4人は難なく回避していくが、他の受験者は少しずつ削られていく。

 

 霧は先へ進むごとに濃くなり、もはや自分がどこにいるかすら分からなくなって――

 

 

「レオリオ! どこだ……!?」

 

 

 18号はレオリオ達とはぐれてしまっていた。

 

 

*

 

 

 ヒソカの襲撃は霧が少し薄い場所に出た時、突如はじまった。

ヒソカは『念』で強化されたトランプを受験者に投げつけ、受験者は次々負傷していく。

 

 

「くっ!」

 

 

 クラピカは木刀で素早くトランプを叩き落としていく。

 

 

「てめー、何しやがる!!」

 

 

 レオリオは修行の甲斐あって、すんでのところでトランプを回避する。

 

 

「くくく♦試験官ごっこ♥」

 

 

「レオリオ!! クラピカ!!」

 

 

 ゴンがレオリオの声を聞きつけ駆けつける。

 

 

「キミも来たか♠なかなかいい役者が揃ったね♦」

 

「試験官ごっこだと……今ので何人殺しやがった、ヒソカ!」

 

「さて♣手加減したからね♥即死はしてないんじゃないかな♠」

 

 

 この程度の攻撃を躱せないなら不合格ってことで♥――ヒソカの攻撃は続く。

ゴン、クラピカ、レオリオの3人はギリギリ躱し、防ぐことが出来ているが

他の受験者の殆どは躱せず、どこかしらに深い傷を負っていた。

 

 

「おい、もういいだろ……!」

 

「そうだね♦試験官ごっこはこれでお死舞♥」

 

「では、私達は合格ということか?」

 

 

 クラピカが身構えながら問いただす。

 

 

「もちろん♠ただ、まだやりたいことがあるんだ♥」

 

「やりたいこと?」

 

 

 ゴンがその真意を訊ねるが、ヒソカは答えず3人に近づく。

3人はヒソカに意識を集中していた。まばたきすらしていなかった。

 

 それでも、本気を出したヒソカのスピードには反応すらできなかった。

ガリッと地面を削るような音が聞こえたと思ったら、ヒソカは既にクラピカの懐まで迫っていた。

 

 クラピカは初めて自身の骨が折れる音を聞いた。

胸骨のあたりにヒソカの拳がめりこんだことに気付いたのは、倒れてからだった。

 

 

「クラピ」

 

 

 カ、という前にゴンの意識は刈り取られた。

ゴンの顎にヒソカのアッパーカットが炸裂したのだ。

 

 

「クラピカ!! ゴン!!」

 

 

 レオリオは叫ぶ。あわよくば、この声が18号に届くことを願って。

 

 

「僕、本気の“彼女”と戦いたいんだよね♠君たちはそのための釣り餌♥」

 

「18号のことか……」

 

 

 レオリオは二人が成す術なくやられたことの焦りと怒りを必死に抑える。

深呼吸し、『練』の状態を維持し、戦闘態勢に入る。

 

 

「キミは使えるんだったね♦いいよ、先手は譲ろう♥いい準備体操になりそうだ♠」

 

「舐めるなよ、ヒソカ……! 18号との修行の成果、見せてやるよ!!」

 

 

*

 

 

「おい、お前……キルアとかいったか?」

 

「あ、金髪の……何か変な名前の人」

 

「……18号だ」

 

「あ、それそれ……で、どしたの?」

 

 

 キルアはスケートボードから降りて18号に向き直る。

 

 

「お前、ゴンと一緒じゃなかったのか」

 

「そっちこそ、レオリオはどうしたんだよ」

 

「……はぐれた」

 

 

 18号の表情には若干の焦りが見てとれた。

 

 

「別に放っておけばいいんじゃねーの? レオリオは『念』使えるんでしょ。

不合格にはなっても死にはしなさそうだけど?」

 

「いや、あの奇術師……ヒソカ相手だと流石にまずい」

 

「ヒソカか……あいつ、そんなにやばいの?」

 

 

 キルアは既にそれなりの力と技術を身につけているせいか、ヒソカがどれほど強いのか計りかねていた。

 

 

「腕に覚えがあるみたいだが、お前もヒソカが本気なら反撃も出来ずに死ぬぞ」

 

「……マジ?」

 

 

 18号は黙って頷いた。

 

 

「まずいな……ゴンの奴、悲鳴が聞こえたほうへ行っちまったけど……」

 

「そこにヒソカがいるならまずいな……方向は分かるか?」

 

「この霧だぜ? もう分かんないよ」

 

 

 霧は晴れる気配がなく、1メートル前も見えないほどだ。

このまま闇雲に探しても、いたずらに時間を浪費するだけだろう。

 

 

「仕方ない……キルア、私の腕に触れてろ」

 

「は? 何するつもりだよ」

 

 

 訝しみながらキルアは18号の腕に触れる。

 

 

「瞬間移動だ」

 

「しゅんか……はぁ!?」

 

 

 18号とキルアはその場から掻き消えた。

 

 

*

 

 

「ぐぇっ」

 

 

 ヒソカの膝蹴りが腹を直撃し、レオリオは倒れ込み胃液を吐き散らす。

 

 

「ここまでかな♦なかなかガッツがあるねキミ♥レオリオとか言ったっけ♣」

 

 

 ヒソカは服をはたきながら、レオリオを講評する。

その身体には汚れはあれど、ダメージはない。

 

 

「うーん来ないな♠彼女、結構情深いタイプだと思ったんだけど♦」

 

 

 ヒソカは首を捻りながら、レオリオの背中側の襟を掴み、首を持ち上げる。

 

 

「離、せ……」

 

「うん、それ無理♥仕方ないからキミにはもう少し傷ついてもらおう♣」

 

 

 ヒソカは念で強化したトランプを取り出し、振りかぶる。

もはや『纏』すら維持できていないレオリオに防ぐ術はない。

 

 その時、ヒソカのこめかみに何かが飛来し、僅かな傷がつく。

それはゴンの釣り竿の先についた小さな錘だった。

ヒソカはゴンが目覚めていたことに気付き、視線をゴンに向ける。

 

 ――それが致命的な隙になった。

 

 

「☠」

 

 

 ヒソカは何かが突然近くに現れたことには気付けた。

突如半身に衝撃が走り、そのまま50メートルほど吹き飛ばされる。

 

 瞬間移動で、レオリオの傍に飛んできた18号の中段蹴りが炸裂したのだ。

 

 ヒソカが咄嗟に利き腕を『凝』で守れたのは奇跡と言っていいだろう。

狙ってやったわけではない。本能によるものだ。

 

 

「フフ……アハハハハ!!」

 

 

 ヒソカは喜びを爆発させ哄笑する。

 

 

「無事か? レオリオ。随分痛めつけられたな」

 

「……遅えよ、18号」

 

「悪い。悪いついでに治療はちょっと待て」

 

「は!? 怪我人放ってどうすんだよ」

 

 

 キルアが18号を呼び止める。

 

 

「ヒソカに釘を刺しにいく」

 

 

*

 

 

 ヒソカは立ち上がった状態で18号を待ち構えていた。

 

 

「待っていたよ、18号♥」

 

「レオリオ達が世話になったみたいだな」

 

「彼、かなりタフだね♠つい熱くなっちゃったよ♦」

 

「殺さなかったことは褒めてやるよ、ヒソカ……だが」

 

 

 18号はヒソカを睨みつける。

 

 

「正当な理由なく、私の知己に手を出したら……お前を殺す」

 

「それは逆効果だよ♣今度こそ僕は君の本気を引き出すために、彼らを殺してしまう♥」

 

「……変態め」

 

「褒め言葉として受け取っておこう♦」

 

「だったら、お前とは二度と本気では戦わない。お前程度、流す程度でも勝てるしな」

 

 

 18号が不敵な笑みを浮かべる。

 

 その挑発に、ヒソカの笑みは崩れ、ピキピキと青筋が浮かび始める。

 

 

「マチから聞いたよ♠キミ、念が使えないんだろ?♣なのに、流す程度で勝てる?♦」

 

「ああ」

 

「ふふ……♦なら、教えてあげるよ♥念能力者の恐ろしさを♠」

 

「やってみろ、遊んでやるよ」

 

 

 霧の中――念が使えない人造人間と、最高峰の念能力者の闘いが始まる。

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