流星街に舞い降りた人造人間   作:女主人公スキー

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9.霧中の決闘

「――威勢がいいけど、もう勝負は決まってる♦」

 

「何?」

 

 

 ヒソカには準備する時間があった。

ほんの1、2分に過ぎないがヒソカにとっては罠を張るには十分な時間だ。

 

 戦闘態勢を取ろうとした18号だが、手と足が十全に動かないことに気付いた。

 

 ――拘束されている。

 

 

「僕の『伸縮自在の愛(バンジーガム)』はゴムとガム、両方の性質を併せ持つ♥」

 

「……」

 

「『隠』で隠したら見えないなんて、僕にとってはカモみたいなものだ♠」

 

「……おい」

 

「僕の『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を剥がせた者はいない♣キミはもう詰んでいる♦」

 

「やるなら早くしろ、口だけ野郎」

 

 

 ヒソカは無防備な18号の顔、腹に『凝』で攻撃力を高めた拳を叩き込む。

鈍い音が響く中、バツン、という何かが引き千切れるような音が聞こえた。

 

 

「!?まさか☠」

 

 

 18号は黙って自由になった右拳をヒソカの横っ面に叩き込む。

ヒソカは今度こそ何もできずに吹っ飛んでいく。

 

 

「なぁ、ヒソカ」

 

 

 18号はゆっくりと吹っ飛ばされたヒソカへと近づいていく。

 

 

「早く教えてくれよ」

 

 

 倒れ伏したヒソカを見下ろす。

 

 

「念能力者の恐ろしさってやつをさ」

 

 

 ヒソカはプッ、と血と折れた歯を吐き出すと、両腕を18号に向ける。

 

 

「だったら――これはどうかな♠」

 

「!?」

 

 

 次の瞬間、18号の視界は闇に包まれた。

 

 

「『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を顔面に貼り付けたよ♥

そして、内側は薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)で真っ黒だ♠」

 

 

 確かに、何も見えない。なんなら、耳まで覆われているため音も聞こえづらい。

鼻と口も塞がれ、呼吸も少しやりにくい。

 

 

「今度こそ、僕の勝ちだ♣」

 

「……」

 

 

 18号は片膝をつき、地面に手をつく。

残された触感だけではヒソカの位置を把握することは不可能だ。

 

 

「最後は『硬』で決める♦死ぬなよ、18号♥」

 

 

 右足にオーラを集め、『硬』の蹴りで18号の顎を蹴り上げる――

その寸前、ヒソカは地面に書かれた文字に気付いた。

 

 『 む い み 』

 

 そこには、18号が最近レオリオに教わったこの世界の文字で、そう書かれていた。

 

 

「あ☠」

 

 

 ヒソカ渾身の蹴りは空振りに終わる。

18号の姿がそこから掻き消えたからだ。

 

 ――瞬間移動だ。

孫悟空の技である瞬間移動は“場所指定”ではなく“人物指定”で移動する。

つまり、ヒソカを指定して瞬間移動すれば、目の前にヒソカはいるのだ。

 

 18号は迷いなく蹴りを入れる。ヒソカが吹っ飛ぶ。

すぐに瞬間移動。今度は身体のどこかへパンチを叩き込む。

 

 瞬間移動、蹴る。瞬間移動、肘打ち。瞬間移動――

 

 何度か繰り返したところで、ヒソカは意識を失った。

気絶したことで、18号の顔を覆っていた『伸縮自在の愛(バンジーガム)』も消える。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 18号は闘いが終わったことに安堵し、息を吐く。

 

 

(強いな……攻撃は余裕で耐えられる程度だったが、厄介さは伝わった。

というか、瞬間移動がなかったら勝てなかったかもしれん、死にはしないだろうが)

 

 

 今の18号は神から技のギフトを貰っているため、本来の18号ではない。

本来の18号のままでこの世界に来ていたら、ヒソカには勝てなかったかもしれない。

それも、後手に回ればの話だが。

 

 やはり、念能力者は危険だ。その考えを改めて強く持つ。

 

 

(そういう意味では、感謝するべきかもな――)

 

 

 

 

 18号は気絶したヒソカと共に、瞬間移動でレオリオ達の元に戻ってきた。

 

 

「18号さん!」

 

 

 ゴンは18号に気付いて声をあげる。

 

 

「うわ、ヒソカがボッコボコにやられてる……」

 

 

 キルアはヒソカの負傷状態と、それをやった18号に引いていた。

 

 

「勝ったのか……あのヒソカに」

 

 

 クラピカは驚愕に目を見開く。

 

 

「ああ」

 

 

 18号はさらっと答える。

 

 

「さて、治療を始めようか。まずはレオリオから――」

 

 

 

 

 その後、18号はヒソカと戦った3人と、受験者たちを治療した。

 

 

「クラピカ、そいつらの番号を控えておけよ。あとで治療費を請求する」

 

「あ、ああ……(何で私が?)」

 

「がめつ」

 

 

 キルアがぼそっと呟く。

 

 

「当然の権利だろ。しかし、流石に疲れたな……」

 

 

 治癒能力は使用すると若干の疲労感がある。

それを20人分使ったことで、だるさを感じる18号。

 

 

「ねぇ、18号さん。ヒソカはどうするの?」

 

「当然治療するさ。すべての負傷者はわたしの金蔓だ」

 

「すごいこと言ってるぞこの女」

 

「こいつはずっとこうだぜ……俺も修行中何度巻き上げられたか……」

 

 

 レオリオは修行中のことを思い出して遠い目をしている。

 

 

「しかし、治療しちゃっていいのか? このまま放置して死なしたほうが世の為なんじゃねーの?」

 

「何も言い返せないが……今回は助けることにする。次はない」

 

 

 そう言って、18号はヒソカを治療していく。

1分ほどでヒソカの傷は綺麗さっぱりなくなった。

が、意識はまだ戻らないようだ。

 

 

「さて……先頭集団とは完全にはぐれてしまったわけだが」

 

 

 クラピカが思い出したように言った。

 

 

「今から追いつけるかな?」

 

「厳しいと思うぜ。まだ霧もあるし……」

 

「くそ、今回は不合格か……」

 

 

 レオリオは地面に拳を打ちつける。

 

 

「いや、あの試験官のオーラは覚えている。瞬間移動で飛んでいけるはずだ。」

 

「マジ?」

 

「流石だな……」

 

「ありがとう、18号さん!」

 

「そういうことは早く言えっての!!」

 

「ズルっぽいから使いたくなかったんだよ。

ほらお前ら、わたしの身体に触れろ。変なとこ触るなよ」

 

 

 それぞれ、18号の肩と両腕に触れる。

 

 

「なぁ、ヒソカも連れてくとか言わないよな?」

 

「置いてくに決まってるだろ。そこまでお人よしじゃない」

 

 

 そう言って、18号は瞬間移動を発動させた。

 

 

 

 

「あと30分……」

 

 

 サトツがそう呟いた時、突如自分の目の前に5人の受験者が現れた。

18号、レオリオ、ゴン、クラピカ、キルアだ。

 

 

「なんと!?」

 

 

 サトツが驚きの声をあげる。

何度か試験官をやったが、瞬間移動する受験者など初めてのことだ。

 

 

「あと30分か、余裕で間に合ったな」

 

「わたしはちょっと休憩するぞ」

 

「おう、お疲れ……30分だけだが、のんびりしてようぜ」

 

 

 それぞれ、思い思いに束の間の休憩時間を味わう。

そして25分が過ぎ、リミットが近づいてくる。

 

 

「ヒソカ、来ないな」

 

「気絶していたからな。流石にこのまま失格だろう」

 

 

 そう思っていると、茂みの中からヒソカが姿を現した。

 

 

「ヒソカ!!」

 

「やぁ♥何とか間に合ったよ♦」

 

「馬鹿な、一体どうやって!?」

 

「くくく♠奇術師に不可能はない♣」

 

「わたしには負けただろ」

 

 

 18号はヒソカの前に立つ。

 

 

「そうだね♦悔しいけど完敗だよ♥僕の怪我を治してくれたのはキミかな♠」

 

「ああ、そうだ。後で治療費を請求させてもらうぞ」

 

「もちろん、言い値で払わせてもらうよ♠いくらだい?♥」

 

「そうだな……」

 

 

 18号は考え込む。

金にがめついと言われる18号だが、治療費に関しては良心的だ。

ウボォーギン相手でも、初回以外は10万ジェニー程度で抑えている。

貯金に勤しむレオリオには、お小遣い程度しか請求していない。

一般人に対しても、財布にある分以上は請求したことはない。

 

 

「――100万ジェニーだ」

 

((((やっす))))

 

 

 18号は相場が分からなくなっていた。

 

 

「おい、18号!! それじゃ安すぎるぜ。もっと吹っ掛けていい!」

 

「そうなのか? じゃあ……」

 

 

 18号は少し考えて改めて値段を提示する。

 

 

「3倍の300万ジェニーだ」

 

((((いやだからやっす))))

 

「くくく♠わかった、後できっちり払わせてもらうよ♥」

 

「300万か……何買おうかな」

 

「あいつ、絶対後で後悔するぞ……」

 

 

 その時、ジリリリとアラームが鳴る。

 

 

「皆さん、お疲れ様でした。ここ、ビスカ森林公園が二次試験会場になります」

 

 

 サトツは辺りを見回す。

およそ150人の受験者が残っていた。

 

 

(豊作ですね、今年は……それだけに惜しい。

二次試験の担当がブハラとメンチでは……)

 

 

 10名以下……いや、合格者ゼロもあり得る――とサトツは独りごちた。

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