The Magic Order 0   作:晴本吉陽

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1.少年たち
0.偉大なる力


2013年 6月 金山(かなやま)県 湘堂市 七本松小学校

「ぐっ…ぅ」

 1人の少年が血まみれになりながら、目の前の拳銃へ這いずり、手を伸ばす。

(…みんな殺された…佐ノ介も…泰平も…竜雄も…)

 少年は拳銃を握りしめ、立ち上がろうと力を入れる。そんな彼の右手を、彼の仲間達を皆殺しにした4人の大人達の特に大柄な、スパイダーと名乗る男が力任せに踏みつけた。

 少年の悲鳴が上がったかと思うと、たちまちスパイダー以外の3人の大人たちが姿を現した。

「このガキ…まだ生きてるよォ。しかもまだやる気だし…」

 そう引き気味にボヤいたのは、4人の大人の中でも小柄な、ライターと呼ばれる男だった。腰の引けたライターを叱責するように彼の隣に立っていた勝気で目つきのキツい女、フォルダーがライターの腰を叩くと、ゆっくり少年の頭へと近づき、ゆっくりハイヒールを彼の後頭部へ押し込むのだった。

「ハッ。見上げたガキじゃないの。でもこんな無様な状況じゃ、そんなの気持ち悪いだけね。あぁ不愉快」

 フォルダーが改めて踏みつける足を強くする。少年のうめき声が漏れ始める。そんな様子を見て、4人目がフォルダーの肩を持って踏み付けをやめさせた。

「…」

 4人目、この4人のリーダーであるこの男、クライエントは無言で少年を見下ろした後、ゆっくりとしゃがみこんで少年に話しかけた。

「おい、重村数馬。魔法の力が欲しいか?」

 少年こと重村数馬はゆっくりと顔を上げ、クライエントをにらみつける。

「魔法…?オメェらが使ったこの力か?」

「そう、偉大なる力だ。お前もここで私に屈服すればこの力を授けてやる」

 クライエントの言葉に、数馬はハッと笑い飛ばす。

「偉大なる力?他人を傷つけるだけの力が偉大なわけがねぇだろうが」

「…なんだと?」

「そんな力なら願い下げだ。今さらダチ共を奪った連中に命乞いなんてできるか。悪ふざけは顔だけにしとけよ…!」

 ニヤリと不敵に笑う数馬に対し、クライエントは大きなため息をついた。彼の最も望まない答えが返ってきたからである。

「…なるほど。『出ない』わけだ。しょうがない。スパイダー!片付けろ」

「チッ…」

 クライエントがスパイダーに命令する。数馬は次の瞬間自分の身に何が起こるかを察し、軽く舌打ちをした。友人達と同じように、こんな連中に殺されるのがシャクだったのである。

「死ね、クソガキ」

 スパイダーが数馬の首元を掴み、そう呟く。

 数馬の体を軽々と後ろへ投げ捨てる。

 次の瞬間、想像を絶する激痛が数馬の体に走ったかと思うと、その痛む体ごとどんどんと原子レベルまで分解されていくのが目に見えた。

 自分の体がチリになっていく。

 あっという間に地球上から重村数馬という存在はいなくなり地球の原子のひとつとなっていった。

「一丁あがりぃ」

 スパイダーはひと仕事終えたと言わんばかりに右手を振って溜め息をつく。そして改めてクライエントの方へ向き直った。

「歯応えも手応えもありゃしねぇ。所詮小学生じゃねえか。本当にこいつらかよ、クライエント?」

「あぁ。前見ただろう。こいつらで間違いない。だが…『この世界』もハズレだとはな」

 スパイダーの言葉にクライエントは呟く。そんなクライエントを尻目に、スパイダーは八つ当たり気味にライターに声をかけ、軽くどつく。

「おぉいライター?テメェがしくじったんじゃねぇのか?」

「勘弁してくれよォ…俺しくじりようねぇもん」

「はぁっ、バカバカしい。責任のなすりつけ合いなんてしてる場合じゃないわさ。クライエント、諦めんの?」

 フォルダーが鋭く目でクライエントに尋ねる。クライエントは一切怯まずにバカ言え、とフォルダーを一蹴して語り始めた。

「私達の計画は何があっても成し遂げなければならない。そのためにはヤツらが必要だ。だがこうなっては仕方ない。ひとまずこいつらを再生してひと通り元に戻したあと、12月に『GSST世界』から奴らの身内もろとも連れて入れ替える」

 クライエントの言葉に思わず3人は絶句したようだった。

 しばらくの沈黙が流れた後、スパイダーが口を開いた。

「それは色々難しいんじゃなかったのか…?本当にできるのか?」

「やるしかない。やるさ、必ず」

 クライエントが力強く訴え、拳を突き出す。他の3人もゆっくりとその拳を突き出した。

「俺たちの世界のために」

 4人は小さくそうつぶやいた。

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございました

次回もお楽しみいただけると幸いです

今後もこのシリーズをよろしくお願いします
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