自分の経験から外れる事を書くのは本当に難しいですね。
一線を越えた代償によって、スマホを返して貰った僕は、早速、仕事先を探した。今度はリサイクルショップで働く事になった。コンビニを3年程働いた経験からなのか、直ぐに採用が決まった。もしかしたら、人手が足りなかっただけかもしれないが。
そして、今日が初出勤である。
「ねぇ、やっぱり働かなくていいんじゃない?ずっとあたしと気持ちのいい事しよ?」
「ダメだよ。約束したじゃないか...。」
採用が決まってから、ずっとこの調子だ。どうにかして引き留めようとする。
「じゃあ、行ってくるね。」
「待って。」
「何?」
「ちゃんと、帰って来るんだよね?じゃないとあたし...」
なぜ、濁すのだろう。先が怖い。
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今度のバイト先は、電車で4駅分移動した先にある。このリサイクルショップはちょっと、寂れた所にあった。そこまで忙しくなさそうだ。
「こ、こんにちは、今日からここで働く事になりました、松田と申します。店長に橋本さんに教えて貰えって言われましたがどなたですか?」
「あー、そっか!私が橋本でーす。よろしくー。リサイクルショップで働くのは初めて?」
そう挨拶を返してくれたのは少しタバコ臭い20代後半くらいの女性だった。髪を染めており、ちょっと気は強そうだが、優しそうな印象だった。前の所とは本当に大違いだ。
「そうですね。い、今までずっとコンビニでバイトしてました。ハハハ...」
「そんなにかたくなんないでよ、そっか、コンビニかぁ、じゃあ接客とかは大丈夫そうだね。それに仕事の内容とかもそんなに変わらないし、むしろ、こっちの方が楽なんじゃない?よく分かんないけど!」
「そ、そうなんですね...。でも、やっぱり違う所はあるはずですし、それを教えて欲しいですね。」
「うんうん、いいよ。ゆっくり教えてあげる。どうせ、お客さんそんなに来ないしね。ほら、わかるでしょ?あははは。」
僕は、橋本さんに連れられて店内清掃、レジ対応、商品の整理を教えて貰った。値付け業務はまた今度との事だ。
「どう?いけそう?」
「はい、いけそうです。」
「そっかそっか。そりゃ良かった。あ、もしわかんない事あったら聞いてな。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「いいって、いいって。こっちも、仲間いなくて暇だったから嬉しいよ。」
結構僕とはタイプの違う人なのに、話しやすい人だと思った。この人となら人間関係で悩む事は無さそうで安心した。
「松田くん、だっけ?いくつなの?」
「今年で23です。」
「あ、そうなんだ?てっきり、もっと若いかと思ったよ。そっか、じゃあ、私の四つ下かー。」
橋本さんは結構踏み込むタイプなのかもしれない。相当話し相手が欲しかったんだろう。ちょっと苦手になった。
「へーじゃあ、どっから来てるの?」
「上川です。」
「へー、じゃあそこそこの遠さじゃん。ま、ここ交通費出してくれるしいっか。」
「てか、上川かぁ。あそこってまあまあ、治安悪くね?」
「そう...ですね。僕、上川のコンビニで働いてたんです。」
「マジ?大変だったっしょ?どんなだった?」
苦手かもと思ったのも束の間、あっという間に打ち解けられたのだ。偏に、橋本さんのおかげだろう。話を引き出すのが上手だと思う。話をするのが純粋に楽しめるのはなんだか久しぶりな気がした。
新たな出会いに喜んでいると初めてのお客さんがきたのだ。
「あ、お客さんだ。松田くんちょっとやってみてよ。」
「あ、はいわかりました。」
「いらっしゃいませ。」
「これをくれ。」
「かしこまりました。 こちら、一点で600円です。」
「じゃあこれで。」
「かしこまりました。丁度頂きます。ありがとうございました。」
「...君、礼儀正しいな。」
「!ありがとうございます!」
「松田くん、やるじゃーん。」
「ははは、これでも結構怒られてたんですけどね...」
「マジ?やっぱ、上川やばいね。」
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初日の仕事は、一瞬にして過ぎ去った。初日にしては長めに入ってたのだが。橋本さんとの話が楽しくて、あっという間だった。
「ははは、あ、僕はこれで上がりです。お疲れ様でした。」
「あ、そうなんだ。お疲れー。次、いつ入ってんの?」
「明日です。」
「お、マジ?私もなんだよね。明日も、よろしくー。」
「はい、それじゃあ。」
この感じなら続けられそうだ。それに、もう少し彼女とお話をしてみたいな。
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僕は日が暮れ始め、涼しい風が吹き始めた頃に家に着いた。
「ただいま...うわ!」
「おかえり...おにーちゃん。ぎゅってして?」
優希が玄関で、暗い中、虚ろな目でへたり込んでいた。まるで、力を失ってその場で座りこんだように。
「きゅう、なんで。とりあえず電気つけなよ。ってもしかして、ずっとここにいたの?」
「だって...おにーちゃんいないから何もやる気起きなくて...ね?
ぎゅってして?」
「わかったよ...。」
何故だろうか?橋本さんとの落差を感じる...。これでも、妹で婚約者...?なんか変だな...。
「早く。」
「あーごめんごめん。」
「あー、7時間5分21秒ぶりのおにーちゃん...。」
もしかして、ずっと玄関で時間だけ数えてたのかな?
「...臭い。」
あーあ。