鳥って可愛いですよね。ただ、括約筋がないそうです。ええ、垂れ流しです。
「じゃあ、行ってくるね。」
「...いってらっしゃい。おにーちゃん。」
おにーちゃは今日も仕事。あたしも、昨日と同じようにお見送り。
昨日、あたしは、久しぶりにおにーちゃんいなくなって絶望して動けなかった。そんな事しておにーちゃんに目を離したら、早速害虫がおにーちゃんに近づいて来ちゃった。アレは、絶対、おにーちゃんの匂いじゃない。あんな臭くないもん。でも、全くマーキングつけなかったあたしも悪いよね。マーキングがついてなくて、おにーちゃんみたいにかわいい子がいたら、誰でも近づきたくなっちゃうもん。けど、おにーちゃんも悪いと思う。あたしがいるのに、他の子を簡単に近づけちゃうのかな?自覚が足りないのかな?それとも、あたしの魅力が足りないのかな?おにーちゃんは、帰ってきたら「分からせる」として、おにーちゃんに色目かけた子を始末しなきゃ。まずはどんな子か知らなきゃね。
あたしは、床を這ってた可愛くない子を見つけた。
「ねぇ、おにーちゃんの後を着いてって。それで、監視してね。わかったら、さっさと行って!」
かわいくない子は、バタバタと不快な音を立てて飛んでった。
かわいくない虫の偵察は、かわいくない虫を使ってすればいいの。あたしったら、天才。
ーーー ーーー ーーー
あのかわいくない子は、ちゃんとおにーちゃんについていけたらしい。別にこのままでも、虫は情報を持ち帰られるけど、そんな事してられない。今日、かわいいおにーちゃんが連れ去られるかもしれないからだ。じゃあどうするかって?それは、虫を介しておにーちゃんの様子を覗かないといけない。これは、あんまり気分はよくないけどやるしかない。
ちなみに、これすると虫は死んじゃうの。別にいいよね。あたしの役に立てるし。
〜〜〜
「おー、松田くん。昨日ぶりー。」
「あ、おはようございます。橋本さん。」
「おはようございます?今昼だよ?こんにちはじゃね?」
「あー、なんというか、前職の癖みたいなものでして...」
「コンビニじゃ、いつでもおはようございますなんだー。へー。」
〜〜〜
バァン!!
「コイツかぁ!!!あたしのおにーちゃんに近づいたのは!!!なんで、こんな子なの?あたしよりぜんっぜん、可愛くないじゃん!なんで?もういい、さっさと...いけないいけない。この子がどうやっておにーちゃんを誑かしたか見ないと...。」
そう、冷静にならないと、こう言う事繰り返しちゃう。
〜〜〜
「そうだ、私今から休憩なんだよねー。ちょっと1人になっちゃうけど大丈夫?」
「大丈夫です。多分。あの、もし何かあった時に聞きに行きたいので、どこにいるかだけ、教えてもらえたら...」
「あー。裏口で、タバコ吸ってるから。」
「わかりました。お疲れ様です。」
「ういー。」
〜〜〜
「そう、あの葉っぱが焼けたみたいな臭いがタバコなんだ。タバコって悪いものなんだよね?じゃあ、このハシモトって奴は悪い子だよね?ああ、こんなのがおにーちゃんの近くにいたら、おにーちゃんまで腐っちゃう。帰ってきたら、その事も一緒に分からせないと。あ、でも、今からおにーちゃん1人なんだよね。たいへん!見守ってあげなきゃ。もしなんかあったら、助けにいったら、あたしにゾッコンになってくれるよね!」
やーん。おにーちゃん、かわいい。あ、誰かきた。あー振り向いたおにーちゃんもかわいい!
〜〜ブチッ!
「え?潰された?」
「いらっしゃいませー。」
ブチッ!
「え?」
橋本さんが居なくなって、早速お客さんが来た。深く帽子をかぶって、マスクをつけた、いかにも怪しい客だった。その人は、店に入ってくると突然、何かを踏みつけるような動作をした。目の前の奇行に僕は驚いてしまった。でも、お客さんは何事もなかったかのようにカウンターの僕の所にきた。
そして、帽子とマスクを外した。そこには、見覚えのある端正な顔があった。
「ね、ボクの事覚えてる?」
「え、え、すずめちゃん!?どうして、ここに...」
「良かった。覚えてくれてるね!」
「そりゃもちろん...でもどうして...」
そこには、僕が応援していたアイドルの金糸すずめの姿があった。
大学が嫌になって、どこかに遠出した時に出会ったアイドルだ。出会った当初は、全然人気が無かったが、今じゃ名の知れたアイドルだ。
でも、どうしてそんな子が一ファンに会いにくるんだろう。
「あはは、どうしてばっかりだなぁ。いいよ、その辺はおいおい話してあげるよ。そうだ、今からどっかで2人っきりでゆっくり話せる所に行かない?」
「いや...うれしいですけど、今仕事中ですし...そもそも、アイドルがファンに会いに行くのはどうかと思いますよ...。」
「...いつまで?」
「へ?」
「ボクは、いつまで君の事を待てばいいかな?」
あんなに輝いて見えたのに、今は地の底の暗闇を幻視してしまうほど雰囲気が変わった。それに、この人とはそんなに交流はない。所詮はアイドルとファンの関係だ。なのに、今はただのアイドルとファンの会話とは思えない。何かのドッキリだろうか?
そんな心情が僕の顔に出ていたのか、彼女はこんな事を言い出した。
「一応、言っとくとドッキリとかじゃないよ?本気さ。で、ボクはいつまで待てばいいかな?」
「と、とりあえず、バイト終わりまで待ってくれますか?」
「...........いいよ。それまで待ってあげる。あ、そうそう。連絡先、交換しよっか。それくらいは今でも出来るよね?」
「はい...」
僕は一体何に巻き込まれているのだろう。
アイドルって言ったら、私は推しの子のopしか出てきません。