もののけは君が好き!   作:ジャンクフーズ

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冗談ですって。飽きるまでよろしく!



籠鳥は愛を乞う1

 

ボクは、生まれた時から人に愛される為に生まれてきた。体毛の色はとても目立つ鮮やかな黄色で観るもの全てを魅了し、ボクが鳴けば人々は立ち止まって、耳を傾けた。そんなボク自体には名前は無かったけど、ボクらのような愛らしい鳥を、人々は「金糸雀(カナリア)」って呼んでいた。

ボクは雛鳥の時から兄弟と共に人に育てられてた。店主と呼ばれていた男だった。この男は、ボクらを立派に育てて、この愛らしさに魅かれて欲しがっている人に売る事で生活をしていた。

この時代、裕福な家ではボクらを飼うという事が流行だったんだ。一種のステータスだったのか今では分からない。

そんな流行りを一つの商機と捉えたこの男は、大金をはたいてボクらを使った「カナリア商」を始めた。そして、その商売は成功し、カナリアの今でいうブリーダーも兼ね、カナリアはもちろん、鳥籠や、餌の販売なども手掛け、街で一番の「カナリア専門店」と呼ばれる程大きくなった。

そんな彼は、いつもボク達に向かってこう言っていた。

 

「立派に育って、高値で売れてくれよ。あんたらにうちの生活がかかってんだ。」

 

この男には育てられた恩はあるが、正直そこまで好きじゃなかった。だから、ボクはさっさと買い手が現れる事を願っていた。同時に、すぐに現れるだろうと思っていた。何故なら、店はいつも買い手でいっぱいだったんだ。

 

「お父様?この子かわいいですわ。買ってくださる?」

「ああ、いいとも。いつも頑張っているからな。これからも励むんだぞ。」

「これを、彼女にプレゼントしよう!きっと喜んでくれるはずだ。」

「あそこの奥様、この綺麗な小鳥を飼っていましたわ。あなた、飼ってもいいかしら?ほら、可愛いと思わない?」

 

身なりのいい人が、毎日のように現れた。その人達はボク達を見るといつも笑顔だった。この調子なら、いつかは選ばれるはず。

しかし、ボクは一向に買い手が現れなかった。兄弟はどんどん、あのキラキラした人達に笑顔で迎えられて、店に出て行くのに。それでも、僕は憧れのカナリアだ。だから大丈夫だ。そう思っていた。

 

流行というものはどこかの誰かが作り、時間がくれば人々はそれに飽き、廃れていく。そして、またどこかで新しい流行が作られる。

そう、カナリアが、人々の憧れである時代が過ぎ去った。

徐々に、店に訪れる人は減り、ドアを開ける音すら聞こえなくなった。

店主と呼ばれた男も流行の衰退を止める事は出来なかった。

 

「クソ!これじゃ生活なんてできやしねぇ!はぁ...そろそろ潮時か。店仕舞いする前に売れ残ったコイツらを安値でもいいから引き取ってくれる所を探さなきゃなぁ。」

 

この男は金儲けの為にこの商売をしているのだ。ボクらの事をなんて考えず、どこまでも利益の事しか考えてなかった。

男は方方を駆けて、ボク達に受け入れ先を見つけたのだった。

これで、ボクもあの兄弟達と同じように愛されて過ごす、光に満ち溢れた余生が待っている。そう幻想を抱いていたが、現実は違った。

そこは、光に満ち溢れた場所ではなく、地の底だった。

「炭鉱」だった。ボクは、暗く、澱んだ、炭鉱に連れて行かれた。

 

炭鉱の仕事には沢山の危険があるんだ。有毒ガス、それに引火する事で起きる爆発、崩落して生き埋め、水害で窒息死と死と隣り合わせだった。

 

じゃあ、何故、ボク達カナリアが必要だったか。それはガスを検知する為に使われたからだ。ガスは、たくさん吸うと息が詰まって死んでしまうんだ。裏を返せば、少量ならそこまで害はない。つまり、ガスが出てる事に気づいてすぐに離れれば大丈夫という事だ。しかし、厄介な事に分かりやすく色はついてないし、臭いがあるというわけじゃない。だから気づくのはほぼ困難だった。この時代、ガス検知機なんて便利な物はない。そこでカナリアだった。カナリアの致死量は人間のそれよりも遥かに少なく、かつ、どこでも綺麗に鳴き続けるカナリアは検知機代わりに使われた。どう、判断するか。それは、カナリアの声が聞こえなくなったかどうかだ。

 

この事実については後に知った事だ。連れて行かれたときはそんな事なんて分からず、ボクも、光は電球くらいしかない暗闇の中で鳴き続けた。振り向いてもらう為に。愛される為に。こんな所でも人はいた。だから、ボクが愛されて過ごすのはここだと思った。

けど、愛される事は最期までなかった。

ここで働いている人には響かなかった。余裕が無いからだ。

甘い言葉に騙されて、借金まみれにされ、奴隷の様に働かされている、哀れな人達しかいなかった。一瞥はくれても、可愛がる事はなかった。どこまでいってもガスが出てるかどうかの道具扱いだった。

ボクはめげなかった。ずっと、綺麗な声で鳴き続けた。来る日も来る日も。多分、みんなの憧れだった頃のプライドがそうさせたんだと思う。

 

そして、最期が訪れた。ボクは、いつも通り鳴いていた。突然、視界が歪み、声が出せなくなった。

 

「まずい、炭鉱ガスだ!逃げろ!」

 

鉱夫達は、すぐさま逃げようとした。ボクを置いて。しかし、鉱夫達も逃げれなかった。何故なら、ガスに引火したからだ。

 

ボォォォォォン!!!

 

瞬く間に爆発し、その場にいた者は誰一人として助からなかった。

 

ボクは愛される為に生まれたのに、愛される事なく死んでしまった。暗い、暗い地の底で。

 

 




カナリアの原種って知ってますか?実は、結構地味な色をしているようです。それに全然鳴かないそうです。私達の知っているカナリアは品種改良をされた末の姿ですって。人間のエゴって奴です。
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