もののけは君が好き!   作:ジャンクフーズ

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上位種族っていいですよね(圧


存在しない「妹」

 

「松田さん、出てください。貴方の容疑は晴れました。外で“妹”さんが待っていますよ。」

 

おかしい、僕に妹はいないはずだ。ここから出られると知った喜びよりも、いないはずの妹が待っているという困惑の方が勝ってしまう。それに、なぜお咎めなしになったんだ?

 

「え、僕n「早く出て下さい。こっちです。」

 

半ば強引に、留置所の冷たい部屋から出された僕は、警官と共に警察署内を歩いた。捕まった罪人が堂々と牢を抜けて、歩いているのだ。しかし、誰もこの事に文句を言って来ない。皆、警官に連れられて歩いている僕を見ても、道端の石を見ている様だった。おかしい、僕は暴行を加えた犯罪者のはずだ。つまり、ここにいる人達が納得しているということだ。まるで意味がわからない。何か、更なる面倒事に巻き込まれたのだろうか?

そうこうしているうちに、警察署の前の道路まできた。天気は、傘を刺すまでではない、小雨が降っているものの、雲一つない、快晴という2つの相反する天気が混在する変な天気だった。

 

「松田さん、貴方は自由です。家に帰って貰っても構いません。それでは。」

「え、あ、はい...」

 

どこか、突き放した様に言い放った警官は、何かに追い払われるかの如く、足早に警察署の中へ帰っていった。これでいいのだろうか?

どこか変だと思いながら、帰路を向くと、そこには見慣れない、可愛らしい女性が、微笑みながら、こっちに走り寄ってくる。大学生くらいだろうか?

 

「やっと...見つけたぁ」

 

親しげだが、どこか危うい様子だった。これが“妹”なのか?それにしては、僕とは似ても似つかない容姿だ。

可愛らしい明るい茶色のショートヘアに、二重瞼に大きな目。整った鼻筋に、可愛らしい唇。シルエットも完璧と言っていいだろう。いわゆる「可愛い系」の女性が求める完成系が立っていると感じた。

おかしい。僕と全然違うじゃないか。これから何か良くない何か大きな事に巻き込まれるに違いない。そうに決まってる。

 

「おにーちゃん!帰ろ?」

 

“妹”は可愛いとは感じるが、どこか作られた様な声で僕に話しかけてきた。

 

「...貴女は、だ、誰ですか?」

「何言ってるの?あたしはきゅうだよ。きゅう。松田浩介の妹。おにーちゃん、寝ぼけてるの?」

 

何故、実家で飼ってたうさぎの名を名乗るんだ?

 

「き、きゅう!?いや、僕は、一人っ子のはずだ。」

「何言ってるの?一緒に住んでたじゃん!」

「そんなはずはない。だって君みたいな「兄妹だって言ってるでしょ!!」

 ダァァァァン!!!

 

僕の声に被せる様に大声を出すと、一度地団駄を踏んだ。銃声の様な音がした。僕は驚きのあまり、尻餅をついてしまった。僕は、踏みつけをした脚元を見た。そこには、道路の舗装が鉄球が高い所から落とされたかの様に割れていた。僕よりも華奢な体なのにどこにそんな力があるのだろうか。次に、僕の顔を微笑みながら見ていた彼女の顔を見た。可愛らしく笑ってた顔は、感情がストンと抜け落ちてた。整った顔も今では人間みのない、作り物の様だった。

 

「ひっ、ひぃぃ!」

 

僕は、恐怖のあまり後退りした。何故、警察署の前なのに、警察官は来ないんだ?何故、誰も助けてくれないのか?何故、こうも立て続けに理不尽な事が降りかかって来る?

 

「どこに行くの?」

「ひっ..あ、ああ...」

「また、あたしを置いていなくなるの?」

 

同じ人物が出したとは思えない底冷えした声だった。彼女の言う、「身に覚えのない事」と合わせて、さらに、恐怖が強くなった。更に離れようと後退りをしようとしたが、体が金縛りにあったかの様に動けなくなった。身動きが取れなくなった自分に対して、目の前のナニカはゆっくりと歩きながらこちらに近づく。

 

「いつも、あたしを可愛がってくれてたのに、突然いなくなっちゃうんだもん。待っても待っても戻ってこないから、寂しくて、寂しくて死にそうだった。だから、探しにきたの。やっと見つけたと思ったら、よくわかんない変な奴らに「会う事は出来ない。」とか言って、邪魔ばかりされるし、おにーちゃんに会えたと思ったら、おにーちゃんは全然わかってくれない!!なんで?なんで?わかってくれないの!?」

 

捲し立てて来るが、全然理解出来ない。ただ、明らかに普通ではない事だけはわかった。

遂に、化け物は僕の所に着いた。まるで、小さな愛玩動物を愛でるかの如く、驚かさない様にしゃがんで、怯えない様に目線を合わせ、ゆっくりと、僕の顔を両手で掴かみ、壊れない様に、撫でた。すると、あんなに能面だった顔は、裂ける様に笑った。

 

「やっと、やっと、久しぶりに、触れたぁ。おにーちゃんはかわいい。あたしにいつも言ってくれてたよね?うん、やっぱり、おにーちゃんはかわいい!」

「え?え?」

 

今起きている事についていけなかった。

笑ったかと思うと、今度は怒り出した。

 

「でも、突然居なくなった事も、あたし達が、兄妹で離れちゃいけない事を理解しない事も、また、どっかに居なくなろうとした事は、ぜんっぜんかわいくない!!!」

「ひっ、ご、ごめんなさい!」

「おにーちゃんにも“お願い”しなきゃいけないのかな?おにーちゃんにはそんな事しなくてもいいと思ってたのに!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください!」

「でも、大丈夫。あたし、わかったよ。これからは、一緒に暮らすんだから。おにーちゃんが分かってなくても、あたしが“お願い”...ううん、“躾けて”あげる。家族がわかってなかったら“躾ける”だよね?」

 

あたかも、物分かりの悪い動物かのように接して来る事に違和感を覚える。まるで、彼女が人よりも上の存在だと振舞っているかのようだ。

 

「ほら、あたしの目を見て。」

 

「ぜったいに、目をそらさないで。」

 

彼女の目が妖しく光ったのを見て、僕は気絶してしまった。

 




うさぎって感情表現の為にスタンピングという地団駄を踏む様な行為を取るそうですよ。
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