女の子が狂ってる場面いいっすよね?ね(圧)
化け兎についた火は、天を焦がしながら化け兎ごと山にある物を喰らい尽くした。このままずっと燃え広がるのかと思いきや、示し合わせたかのように火が消えていった。後に残ったものは焦土と化した山だった。山に住まう、あらゆる生き物は悉く火に巻かれて炭となり絶命した。化け兎を除いて。
化け兎は、怪鳥によって受けたダメージで生死を彷徨った。何か間違ったら消滅していたかもしれない。もしかしたら死んだかもしれない。しかし、その化け物の執着によってそうはならなかった。
キュゥゥゥゥゥ....
『...どこ?どこなの?...あたしの、あたしの、かわいいおにーちゃん...』
執着によって起き上がった化け物は、錯乱しているのか、執着の対象を求め出した。化け物は身を起こした。
『探しに行かなきゃ...かわいい、かわいい、あたしのおにーちゃん、きっと寂しがってる。安心させなきゃ...』
化け物は、兄であり、最愛の人にとって自分が一番であり、自分の姿を見せる事が一番であると信じて疑わなかった。しかし、今の姿は、焼け焦げ、所々爛れている化け物の姿だった。そんな自分の現状など気にせず、
ただ、愛しの彼が待つであろう、リサイクルショップへ向かって跳んだ。
『待っててね...今行くから...。』
傷が癒えるのを待たずに、会いたい一心で走り出した。焼け焦げたその身からは煤が落ち、あたりに毛が焼けたような臭いを漂わせながら、生き残った街中を走った。誰かに見られたかもしれないが、気にしなかった。化け兎にとっては、兄が最も重要な事だ。それに比べたら全て瑣末な事だ。
駆けた。一陣の風の如く。欠けた部分を埋めるために。
だが、それを前に風は止まった。
街が焼け焦げていたのだ。
足元には、逃げきれなかった人だった物が転がっていた。
惨状を前に、怪物の頭の中にあった可能性が頭を占め始めた。その可能性は今まで意識的にか、無意識的にか、目を背けてきた。心が壊れてしまうからだ。
それは、火に巻き込まれて、もうこの世にいない可能性だ。
『あ、あああああ、どこ?どこ?どこなの?どこ行ったの?...ああ、』
化け物は、おかしくなった。
ギュゥオオオオオオン!!!!
『アアアアアアアアアアアアア!!!』
化け物は狂ったように、兄を探し始めた。可能性を覆したくて、壊れかけた心を元に戻したくて、探し回った。
「おいおい、インプレッションが今までにない事になってるぞ!すげー!」
この男は、怪物達が争っている時、ギリギリ安全な場所で動画を撮っていた。まさにこの出来事を眺めるにはとっておきの特等席だ。
最近は、注目されるだけで金が稼げる世の中だ。そうやって金を稼いで生計を立てようとする人間もいた。男もその内の1人だった。男はいつも、他の投稿のお溢れを貰っていた。しかし、この非現実的で刺激的な出来事のおかげでそんな事しなくて済みそうだと男は喜んでいた。
しかし、これは対岸の火事ではなかったようだ。
空から何かが降ってきた。
ドスン!!
「うお、なんだ?」
振り向いたそこには、醜い化け物の姿があった。
ギュワァァァ...
『おにーちゃんじゃないぃぃ!!!!どこ行ったぁぁ!!』
「うわぁぁぁぁ!!!ごめんなさいごめんなさい!わぁあああ!」
男はその恐ろしさに逃げ出した。商売道具のスマホを放り出して。
狂った化け物は、めちゃくちゃに探し回った。人を見つけては兄かどうかを確かめ、違ったらまた別の所に行く。そうやって、意図せず人々に恐怖を振り撒いて行った。
そうして、狂った化け物が走って居ると、見覚えのある物が道に横たわっていた。
化け物は、これを兄の同僚だと思い出した。見た所もう死んでいるようだ。しかし、近くに兄の死体は無かった。
『は、はははははははは!生きてる!生きてるんだ!おにーちゃんは生きてるんだ!』
狂った化け物は喜んだ。兄が死んでいる可能性を覆すかもしれない証拠を見つけたからだ。もしかしたら、また違う所で死んでるかもしれないのに、そんな事は一切考えなかった。否、考えたくなかったのだ。
『おにーちゃん、やっぱりどこかにいるのね!どこに居ても探してあげるから!!待ってておにーちゃん!!!あはははは!!!』
生きている可能性を見出して、落ち着いた化け物はある事に気が付いた。
『もしかして、もう帰ってるかも!!あーん、可哀想なおにーちゃん。怖い事があって、家に帰ったのに、あたしがいないなんて!ごめんね!今帰るから!』
化け物は、2人の愛の巣へと駆けた。
ーーー ーーー ーーー
日が暮れ、あたりが暗くなった頃。
誰もいない暗い部屋に飛び込むように入ってきた女がいた。
「おにーちゃん!ただいま!ごめんね!何も言わずにどっかに言っちゃって!」
部屋からは何も返答は来なかった。
「おにーちゃん?」
部屋中を探した。特製のオムライスを振る舞ったテーブル、一緒に寝てるベッド、風呂場、トイレ...どこにも居なかった。
「おにーちゃん...どこ?どこなの?もしかして、死んじゃったの?あ、ああああ...」
絶望して女は立つ事が出来ずにへたり込んだ。
すると、暗い部屋にあったスマホが光った。
このスマホは、兄を監視する為に用立てたが、これを使うくらいなら、虫を使った方がいいと思って放置していた物だ。
女は縋るようにそれを見ると、兄からメッセージが届いていた。
これを見た女は狂ったように喜んだ。
「生きてる、生きてる生きてる生きてる!まだ、帰ってなかっただけなんだ!あははははははは!」
スマホを開いて、兄の状況を知りたかった。しかし、そこには驚愕の事が書かれていた。
“きゅう?今日帰るの遅くなるよ。すずめちゃんを家に送ったら帰るよ。”
「は?」
自分を襲った恋敵の家に、自分の愛しの兄がいると言う。
「まさか、あの女...あたしの、あたしのおにーちゃんを連れ去ったの?そんな...あぁぁぁ...おにーちゃん....」
女は、絶望した。
化け兎のイメージは大体ウルクスス。