寂しかったかい?そうかい、そうかい。え?そんな事ない?どうして?
(ハイライトオフ)
すずめちゃんの自宅は、大きなマンションだった。
「ジャーン!浩介!見てよ!これがボクのおうちー!すごいでしょ?」
「お、おい!あんまり大きな声を出さないでくれ...頼むから...。」
「えー?すごいって言うまで騒ぐよ!わーーーーー!」
「すごい!すごいから!お願い...」
お泊まりする子どもくらいはしゃいでいた。この推しの姿を見て、100年の恋は冷めないが...1年分くらいは冷めた気がする。これはこれでいいけど...。僕は、この光景を誰も見てない事を祈った。
「じゃ、いこ?」
「いや、ここまででいいでしょ?」
「いこ?」
「もう、大丈b
「いこ!」
「わかったから...ちょっと家族にメールを送らせてくれ。」
「......いいよ。」
マンションは車の鍵の様な物をかざさなければ入れなかった。厳重な入り口を通るとそこは綺麗なエントランスがあった。別世界にきた気分だった。素人目でも、このマンションのグレードが高い事がわかった。
エレベーターで少し乗って、表示が「10」になった時に停止した。ここが現役アイドルの済む階層らしい。
「さ、着いたよ。さ、ボクの手を取って。エスコートしてあげるよ!」
「はいはい...。」
僕は、子どもの遊びに付き合う気分ですずめちゃんの手を握った。
しかし、握り返された力は子どもの力じゃなかった。
ガシッぎゅうぅぅぅぅ
「ちょっと痛いかな...」
「あ、ごめんごめん!ついやっちゃった。てへっ。」
現役アイドルの渾身のスマイルで誤魔化そうとした。しかし、握られた手は緩めたりはしてくれなかった。
ちょっと長い廊下を歩いた。内装を見ているとこんな所を借りられる人はどんな事をしているのかとても気になった。すずめちゃんも人気のアイドルではあるが、正直ここに住める程なのかと驚いた。
すずめちゃんは廊下の一番端っこの部屋の扉の前で止まった。ここがすずめちゃんの部屋らしい。
すずめちゃんは、エントランスに入る時に使った鍵で開けた。
「さ、どうぞ。」
「おお...」
中は、女の子らしいがちょっと眩しかった。多種多様な照明がたくさんあった。なんでこんな光り物が多いかは分からないがおしゃれだと思った。家具はふかふかした物がいっぱいだった。何かの巣みたいだ。
窓からは、街のが小さく見えていた。一度、観光名所になっているタワーに登った事があるが、それとはまた違った良さがあった。
下を覗こうとしたが、怖くて覗けなかった。落ちたら、助からないだろう。
「どう?気に入った?」
「?いい所住んでるね。」
「でしょ?お金はあるからね。」
「そうなんだ。...その申し訳ないけど、交通費だけ貰ってもいい?そろそろ帰りたいし。」
「帰りたいの?そんなに?はぁ....うーん、じゃあ、こうしよう。ボクとおしゃべりしない?それで、ボクが満足したら、帰してあげる。これでどう?」
「うーん?まあ、わかったけど、あんまり長くしないでくれよ。」
「うーんどうかな?お茶入れてあげよう。そこ座っててよ。」
勧められたのはソファだった。よくわからないけど、高そうではある。それに心なしか、いい匂いがする。これが女の子の部屋の匂いって奴なんだろうか?....僕、なんか気持ち悪いな。
そう、自己嫌悪に陥っていると、飲み物を持ってきたすずめちゃんがきた。持ってきたのは冷たい麦茶だった。渇いた喉にはより美味しく感じられた。すると、すずめちゃんが話を始めた。
「...今日、浩介を見つけて本当に安心したよ。」
どうやら、今までは、気丈に振る舞っていただけらしい。それもそうだ。今日は怪物が現れて街が焼けるなんて言うありえない事が起きたのだから。
「すずめちゃんもね。お互い、生き残れたね。」
「そういえば、なんであそこで座り込んでたの?」
「...実は....一緒に逃げていた同僚が亡くなったんだ。」
「そうなんだ...。どんな人だったの?」
「気さくな人だったよ。実は昨日会ったばっかりなんだけど、とても良くしてくれたんだ。」
「残念だったね。それでも、あんな所にいたら危ないよ。ボクが来なかったら、ずっとあそこにいたのかい?」
「かもね...。」
「....ほら、お互い生き残れた事に喜ぼう?ね?」
「そうだね。...そういや、今日会いにきたよね?なんか用事でもあったの?」
「そうだね。良かった。君から、切り出してくれたね。」
彼女はゆっくりと僕に振り向いた。振り向いて、しなだれかかって来た。
そして、スマホの画面を見せてきた。そこは彼女のSNSのアカウントだった。
「君、どうしてボクへのフォロー外したの?」
彼女は、夫に浮気を問い詰める様にそう話した。
フォローが外されただけで、僕の所に来たとでも言うのか?そういえば、今日店で会った時もなんかおかしかった。橋本さんも死ぬ前におかしいって言っていたはずだ。
そこで僕は、彼女の異常性を思い出した。
そう思い始めると、目の前の少女が怖く感じ始めた。
「実は、彼女に消されたんだ...。」
「...そっか。そうだよね。君がそんな事しないもんね。やっぱり、あの女が悪いんだ。」
「...え?もしかして、きゅうの事を...うっ...」
何故か瞼が重たくなった。
「ちょっと、強すぎたかな?ま、いいや。後でいっぱい聞けるし。」
「これでボクの物だ。」
僕の意識は途切れた。
すずめちゃんは催眠とか出来ないので、睡眠薬を使ったりします。