映画ってなんか好きな物ありますか?
朝ごはん食べた後、帰ろうとしたら、すずめちゃんは焦ったように駆け寄ってきた。
「待って!ちょっと待って!えっと、あっと、そのー...。」
「どうしたの?」
「あ、お風呂!お風呂入らない?だ、だって君、昨日お風呂入ってないだろう?なんかこう、ベタベタしない?ね?
「あ、そうか、そういえば入ってないな。でもまあ、帰ってから入るよ。すずめちゃんに悪いし。」
「い、いや、ダメだよ!だ、だって、君!あれ!えぇっと、臭い!君ちょっと臭いよ!」
「え、臭い?本当に?そっか、じゃあ入っていいかな?」
「もっちろん!君なら、遠慮なく1時間でも2時間でもいていいよ!」
「あ、でも替えの服持ってないや。」
「え、あ...」
「服といえば、すずめちゃん、上着返して。」
「え、い、いや!これはボクのだぞ!」
この子は錯乱しているのか、とんでもない事をぬかしてきた。ついさっきまで完璧に忘れていたが、その上着は、すずめちゃんが目立つって理由で貸した物だ。そのままでもいいかなとも思ったけどダメだ。「裸の大将」みたいな格好なのだ。これで1人で帰る勇気はない。ここはしっかり返して貰わないと。
「いやいや、それは僕の物だよ。昨日貸した上着でしょ?」
「う、ぐ、う、ああああああ....」
すずめちゃんは泣いてしまった。本気で泣かれた気がする。
仕方なく、一緒にテレビを見る事になった。すずめちゃんは腕にしがみついていた。服は返して貰えなかったが、代わりに何故かサイズがピッタリな上着を貰った。僕は、この子に弱過ぎるとつくづく思う。
テレビはニュースが流れていた。
“昨日の夕方、丸場津市にて大規模な爆発事故が発生しました。この事故による死者は...”
昨日の事件は朝イチのニュースになっていた。ニュースで流されている映像を見るだけであの時受けた熱風を思い出された。忘れようとはしていなかったが、出来るだけ考えないようにしていた。あの時、火だるまになった人や怪我をした人の呻き声、そして、僕を引っ張ってくれた橋本さん...。彼女は、あんな所で死んでいい人ではなかった。どうして...。
「浩介?大丈夫?君、顔色悪いよ?」
「あぁ、ごめんごめん...。すずめちゃん、元気だね...。」
「...その、薄情かもしれないけど、ボクは君が生きていたから、全然そんなに悲しくないんだ。でも、君は、知り合いが亡くなったんだよね。もしかして、ボク無神経だったかな?ごめんね。」
「いや、いいんだ。僕の方こそごめん。気を使わせたね。」
「「...........」」
さっきまでの空気はどこかに行ってしまった。部屋にはテレビの音しか聞こえなくなった。
“...また、この事故で嘘の情報が流れているとの事で、皆様は十分気をつけてください。”
「...そうだ!他のチャンネル見よ!」
「そうだね。こう、頭を使わない感じのがいいかな。」
「そうだねー...この時間だと...」
すずめちゃんはチャンネルをコロコロ変えた。番組表から見るタイプではないらしい。
目まぐるしく変わるチャンネルは朝だからか、ニュースが多かった。その他にも、釣りだとか、テレビショッピングとかばっかだった。
どれもどうも興味が惹かれなかった。
「うーん、面白そうなのやってなかったね。どうしよっか?」
「じゃあ、ここでお開きn
「え...」
すずめちゃんは、雨の中で捨てられた子犬のような顔をしてこっちを見てきた。しかし、いい加減帰らなきゃいけない。ここは心を鬼にして言おう。と思ったけど、それで失敗してるから、方向性を変えよう。
「ごめん、本当に帰してくれ...。別に今帰ってもまた会えるって。」
「そんなの、いつ?いつなの?いつまで待てばいいの?」
「それは...って、会う機会なんて今後いっぱいあるだろう?「ふるーつぽんち!」のライブもあるし、それが無くても連絡すれば普通に会えるさ。」
「....じゃ、じゃあ、最後にボクと一緒に映画見てくれる?一本だけ。一本だけだから。ね?いいでしょ?」
彼女は上目遣いで、僕にお願いしてきた。かわいい。
まぁ、一本だけならいいと思い、僕は了承した。
「えへ、ありがとう。じゃあ、取ってくるね。」
彼女は笑顔になって、僕の腕から離れた。すると、テレビの下の棚を引いた。棚の中には、DVD がたくさん収まっていた。数年前に話題になった物から、白黒の時代の物を収録した物まで取り揃えていた。
「サブスクとかで見ないんだ?」
「うん、なんとなく。」
そうして、彼女が引っ張り出してきた物は、
「「黄金の中で愛を叫ぶ」?結構古い映画だね。」
「そうだけど、ボクはこれが一番お気に入りなんだ。」
「そうなんだ。でも、恋愛映画なんて見た事ないなー。」
「そうなんだ。でも大丈夫だよ。きっと気に入いるさ。」
そうして、彼女はDVDをプレイヤーに入れた。
架空の映画のタイトルは友人に考えて貰いました。