降谷さんの災難   作:千里亭希遊

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6.転生者の疾走。

----------------------------------- side:Furuya

 

 ──……血と硝煙の(にお)い。

 

 ああそうだ、たとえ使い古された表現でもそうとしか言いようもない、ただただ不快なそれ。

 作り出したのは他ならぬ、僕自身だ。

 

そういうの(・・・・・)を全部片づけてみな』

 

 ああ、やってやったよ。

 物理的にも情報の上でも徹底的に。

 

 たとえ数匹がこの場を逃れようとも、もうこの薄暗い社会で生きてはいけまい。

 

 

 

 ……うまく煙にまいたつもりだったのに結局ここまで着いてきた背中の愚か者は、少しは過去に折り合いをつけたのだろうか。

 

 

 

「無事だろうな?」

「当然です」

 

 即座に返って来る声に安心などして気を抜くわけにはいかない。

 

「さて2222、帰るまでが遠足だ」

「承知しました」

 

 そして方向もタイミングも示し合わせることなく同時に逆方向へと走り出すこの『協力者』に、何とも形容しがたい所感をおぼえる。

 

 今でこそ、その道で恐れられるまでになったらしいとはいえ、元々の彼女を知っている身としては複雑と言わざるを得ない。

 

 ただゾロ目数字の羅列のみで互いを呼び、どこの者か杳として知れぬ異常者集団(フラグメント)

 それが公安の『協力者』たちだとは僕も思っていなかった。

 

 彼女を『協力者』に推したのは僕(とヒロ)だが、まさかここまでになるなど誰が想像できよう。

 

 

 

 ──……これで本当に良かったのか?

 

 

 

『いいかどうかなんて、いつまでも分からないさ。だから、ずっと探し続ける』

 

 聞いた覚えのない誰かのセリフが頭の隅で響いた気がした。

 

----------------------------------- 3 month ago

 

「……2222、米花公園噴水前ベンチ、12時30分」

 

 大学構内ですれ違い様にそんなことを囁かれた。

 思わず振り返りそうになったのだけれど、2222と呼ばれたからには相手がどこの人間なのかは絞られるから、そのまま歩く。多分振り返るのは得策じゃない。

 時間はだいたい私が昼休憩を取るころなんだけれど……日頃の素行は把握されているのかもしれない。

 

 お昼になって、言われた通りに米花公園に向かい、噴水前のベンチに座る。

 こんな伝えかたってことは多分大っぴらな接触は避けるってことだろうから、ここでお昼ご飯を摂っているだけ、の態でお弁当を広げます。その間に関係のない誰かが偶然座ってるだけとかを装えれば。

 

 お弁当をつついていると少し離れた端に座る人物が一人。

 こちら側にビジネスバッグを置いてぼんやり空を見上げた彼は、鞄でパーソナルスペースを主張しているように見える。

 整った黒のマッシュルームヘアに、白いワイシャツと紺のスラックスに黒の革靴。サラリーマンが公園で昼休憩を、というふうには見える。噴水に面した他のベンチは埋まってたから不自然でもない。

 でもこの人じゃなかったらどうしよう。

 

「君はまだゾロ目の理由を知らないだろう?」

 

 とても小さな声だったからもしどこかに『耳』があったとしても拾われないだろう。

 単刀直入、な感じで彼との会話はいきなり始まった。

 

「はい。何か意味があったんですか」

 

 頷くとかの挙動はとらず、あくまで小さな声で返す。

 

「『特殊』な協力者に当てられる番号だよ。順々に割り振られる番号じゃなくて、無二の能力がある人間のために取っておかれる。それでもだいたいが裏方的性能に特化しているから、中でも君は珍しいんだけどね」

「特殊、無二、ですか」

「多くは『ギフテッド』。心当たりがあるんじゃないかい?」

 

 私はフフッと他に分からない程度に笑うにとどめる。確か詳細は裏理事官にだけ(・・)明かしてあるって諸伏さんが仰ってたから。

 もしかしたら、普通伝えられないはずの番号が明かされたのはこのへんが理由なのかもしれない。

 

「僕は0000、篠川(しのかわ)大輔(だいすけ)。コードネームはウルフ01(ワン)。君の教育係だよ、木暮(こぐれ)愛莉(あいり)さん。君はこれからウルフ04(フォー)だ。よろしくね」

 

『木暮』でお呼びになったということは篠川さんというのも偽名なのでしょう。

 篠川さんの番号をはじめ色々な驚きを抑えつつ、ぱくりとかぼちゃの煮つけを口にします。

 食べながらなんて恐らく上司(先輩?)にあたるであろう人と話すには普通は不適だろうけれど、ここはただ食べているだけなのを装う必要があるらしき場面です。

「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

 

 これはすごくありがたいことです。早く色々お役に立てるようになりたい。

 

 多分、『公安の協力者』って言ってるからには、降谷さんだけにくっついていられるような立場じゃなくて、時には他でも動くべきものなのでしょう。

 多分あんなに偽造証明書の大盤振る舞いをしていただけたのも、そのへんあってのことな気がします。

 

「随分受け入れるのが早いね」

「自分の未熟さを痛感していまして。とてもありがたいのですよ」

「仕事熱心なことだねえ」

「この国には恩人がいっぱいいるのです。だから何に代えても護りたい」

「ふうん、そっか」

 

 きっとこれはそっけない相槌ではありません。声音が穏やかな笑いを含んでいる。

 

「多分君のその恩人の一人がさ……我々はハウンド01(ワン)と呼んでいるんだけど、そろそろ次の潜入を開始する。彼が配属された時にはある程度想定されていた仕事だ。だから、君はきっと、もっともっと成長しなければいけない。……もちろんハウンド01(ワン)の件以外にも君に『協力』してもらいたい案件がちらほらあるようだからね」

「精進いたします」

「うん。よろしくね」

 

 ふふっと彼は笑ったような気がした。きっと見た目には分からない程度に。

 

「……潜入先は中国マフィア崩れの厄介な奴らでね。恐らく君も関わっていた」

 

 より声を潜めて彼は言った。

 

「……なるほど」

 

 かつての私の取り引き相手は口を割ったのだろうか。その上司らしき『兄貴』は死んでしまった。

 けれどもしあの人が黙秘を続けていても、公安のことだから他にも情報を掴めているのかもしれない。

 

『兄貴』が死んでしまったおかげで私の『欲張り』は無駄になってしまったけれど、最初から必要なかった可能性すらありそうだ。

 

 ……けれど、その『兄貴』を殺害したらしき『もう一人』がいたというのがずっと引っかかっている。

 

「ハウンド01(ワン)は自分でできないことなんてほとんどないから、もしかしたら君の出番がそもそもない、なんてことがあるかもしれないけれど」

 

 またウルフ01(ワン)さんの声が笑っている気がしました。気さくなかたなのかもしれませんね。

 

「情報に強い人間が皆サイバーなほうに引き抜かれたそうでね、公安(ウチ)じゃ少ないからさ、君みたいな身体を張る系の人間がいるのを強みにして、上が、ハウンド01(ワン)には特に情報技術も伸ばしてもらおうと思ってるみたいだ」

 

 そういえば『バーボン』は有能な『探り屋』でしたね。そのへんもあってのことだったのかな。

『も』って言われてるのが超人降谷さんらしいですね。

 

「私は……身体を張る場面において、使えると思っていただけているんですね。彼に必要があるかはともかく」

 

 またふっと彼は笑った。

 

「ハウンド01(ワン)がいくら優秀でも、人間である限りは独りでできないことは必ずある。同時に違う場所にいたりはできないだろう?」

 

 そういう怪奇現象並のことはさすがにできないと思いたいですね。けれど私自身が怪奇現象だからこの世界では安易に断言してはいけない気がする。

 なので私は無言でぱくぱくお弁当を食べるに留める。

 

「今はこういうお知らせをしにきただけ。見知らぬIDからの着信とか友人申請が来てるだろうから承認しておいてね」

「承知しました」

 

 しかしふと思う。

 

「我々みたいなのもこういうツールって使うんですね」

「こういうのにこそ我々みたいなのが潜り込んでいるからさ。セキュリティはばっちり、なんだけど、まあ、ヤバい連絡については受信次第消すか、通話でしかやらない」

「なるほど」

 

 サーバー等々ITインフラ関係に協力者がいそうなのを、映画で見た気がしますね。

 

「あとそのスマホ、盗聴器探知機能も入ってるから、ヤバい話する時は一応前もって探すこともできるよ」

 

 私はふっと笑う。

 

「きっと技術屋さんにも我々みたいなのがいるんですね」

 

 どこもかしこもに居そう。まあ番号が四桁になるくらいだしなあ……。ゾロ目に関しては飛んでる場合がありそうにしても。

 ウルフ01(ワン)さんはふっと笑っただけでした。

 

 のちのち、コードネームにまでさんをつけるなって笑われました。たった二音でも手間を省くのにこしたことはないのかもしれない。

 

 ウルフ01(ワン)は本当に色々教えてくれました。

 各種社員証等々に関してどういう謂れで手元にあるのかとか、変装のしかたとか。

 

 ……変装技術に関してはやはり黒羽さんが関わっている気がします。もしかしたら篠川さんも師事したことがあるんじゃないでしょうか。あるいは……。

 ううん、きっと随一のスペシャリストは黒羽さんですものね。

 

『どろぼう』として警察や探偵から目の敵にされる某怪盗さんですが、それでも警察に彼の教授を受けた部分がありそうなのにはなんだか、少し不満というかなんというか……。まあお互いに正体を知らないのでしょうけれども。

 役作りをと乞われて弟子を取ったらたまたま、女優俳優だけでなく犯罪者や協力者になっていったという、びっくりする結果が待っていただけなんだろうな。

 

 そして新聞記事をたどれば、黒羽盗一さんは既に亡くなっていました。

 

 私が『思い出した』のは一昨年のことで、彼が『事故』で亡くなったのはその更に前年です。

 過ぎた過去には手を出せない。間に合っていたとして私が彼の爆殺に関われたかは不明ですが。

 

 誰も彼もを助けられたらなんて手に余る傲慢なのだろうけど、もし生存しておられたら、この事件だらけな世の中も少しは変われた気がする。

 原作で死んでしまう人々はきっとどこかしらで抑止力になれていた。

 

 現在幸いにも関りを持てている警察学校組の人々だけじゃなくて、助けられる命は助けたい。

 毎日そこここで発生する事件のすべてなどとても記憶力が及びませんが、目を引く人物の件は、私のあやふやな前世の記憶にも残っている。

 私が手に抱えられるものは限られているけれど、その範囲だけでも、目にした範囲だけでも、手を尽くしたい。

 

 閑話休題(ひとまず)

 

 変装は上達に時間がかかりそうです。私は果たしてマスクを使うものまで習得できるだろうか。

 今のところメイク次第でまるで別人になるっていう部分を教えてもらっています。いつもファンデと口紅くらいしかつけてませんから、本当に様変わりですねこれ。

 

「元が綺麗だからちょっとやりづらいな。早いとこマスクの扱い覚えないとね」

 

 ウルフ01(ワン)が眉間に皺を寄せていました。

 

「そういうものですか」

 

 綺麗とか言われるのは未だに少し気後れしますが、『その容姿で酒が飲めるようになってまで自覚ないの?』との降谷さんの叱責が頭に残っているのと、ウルフ01(ワン)は単に事実を淡々と口にしただけに見えます。

 慣れないとな。頬が引きつりそうだ。

 

 更にびっくりしたのは警察手帳に関することでした。

 

 一課のプレートには『強行犯捜査3-9係 強盗犯捜査2-10係』とありました。

 やっぱりwiki通りとかいう単純な事ではないのでしょう。 

 ……そしてプレート見たってことはつまり堂々と案内されました。

 

 なんと、ちゃんと席まであったのですよ。

 おかしくない程度に書類やら書籍やらが載ってはいてもあまり使われている感がない机が五つ、隅っこに固まっている。今も誰もいない。

 

 私みたいなメンバーばかりだと怪しすぎますが、6係にはきちんとした刑事さんたちも所属していらっしゃるようでした。正規な彼らの机は我々みたいな隅っこではなく他の係と同様綺麗に内のほうに並んでいます。

 

 今年二十三の若造が警部補なんてモノになってるのも、昇進が絶対にないからみたいだ。

 形だけだからもちろん実際その階級にないわけだけど、恐らくこの先を見越してのことなのでしょう。

 ある程度の階級が無いと、とぼけた振る舞いはともかく優秀っぽそうな立ち回りをやりづらいでしょうし、定年まで巡査とかだと大きな顔して出張れないことでしょう。活動の幅を広げるためというわけです。

 

 やはり警察手帳の出番が他の偽造証明書に比べて断然に多そうな気がします。

 こうしてほぼ公式が名乗ることを認めてくれてる安心感に加えて、なんらかで身体を張る必要がある場面といったら一番ぴったりそうではありますし。

 

 刑法等々必要そうな知識をおさらいして完璧にしたいと思います。

 私、『絶対記憶保持者(サイメシア)』には遠く及ばないとはいえ、記憶力は結構良いのです。キリッ。

 体術系もますます頑張るぞおお!

 

 しかし人員が不足しているらしき情報系に関しては、私も全然手を付けられていません。

 まあ降谷さんがきっとすぐに技術をモノになさるだろうし、私が急ぐべきは他を磨くことでしょう。

 ……そのうちハロー探偵事務所の情報専門のかたにかかわりが持てればいいなあ。

 歌舞伎町の皆さんに対してはこう打算ありで接近しちゃってますが、関り自体は誠実に行いたいものですね。

 

 そうこうしている間に降谷さんは潜入に成功したみたいでした。

 稀にお会いできても時折様子が陰っておられた気がするのは、裏社会のおどろおどろしい部分に触れてしまった日だったのかもしれません。まあ隠されてしまうのですが。

 

 私には潜入自体隠していらっしゃったのだけれど、そこは篠川さんから伝わってきました。そんなの何で把握出来てるんだろう……上が教えてくれるのかなぁ。

 

「元は『光阴(グァンイン)』って中国マフィア。三十八年程前に、後継者争いに敗けた一派が日本に逃げてきて、そして根を張って拡大した。けれど『力』以外の面で扱っているものが粗悪品ばかりでね、他からも疎まれていたらしい。それでも幅を利かせていたのは光阴とのツテと……この日本に蔓延る巨悪にこびを売っているようでね。守ってもらっている部分があるらしい。他にもそういう庇護下な犯罪組織がちらほらあるようなんだけれど……どうやらハウンド01(ワン)は一網打尽にする気らしくてね」

 

 降谷さんすご……一昨年度に警察学校を卒業したばかりのかたとはとても思えないですね(白目)。

 

「光阴と抗争を繰り返してるのが『紅貴(ホングイ)』って中国マフィアの下部組織なんだけど、それをつついたみたいだ。それに他の小さな犯罪集団も巻き込んだ。まったく、恐ろしい手腕だよ。そしてその先で……件の巨悪、この日本だけでなく世界までもを脅かす、巨大犯罪シンジケートに潜り込む気らしい」

 

 ああ。恐らくそれはあのお酒の組織なのでしょう。

 ……早くないですか? しかも自分から繋がりを作っていったんだ……。語彙力なんかには意味がなく、もうすごいとしか言えない。

 

 そんな降谷さんを陰からほんの少しだけ後押ししていったのが我々ゾロ目たちらしいのですが、私は未だに篠川さん以外の姿を見たことがありません。何かしてくれたことだけは分かるし、篠川さんから聞くこともあったけれど、本当に陰から降谷さんを支えてくれている感じです。

 

 私は彼らほどにうまく隠れられていないらしく、気付けば裏社会でだけ2222が恐れられるようになっているようでした。しかも私だけではなくて他のゾロ目たちに関しても何か妙な噂が広まっている気がする。

 

「いや? それは作戦の内。そろそろ対『例の組織』のために『怪しい集団』が暗躍し始める時期だったのさ。こんな時に君みたいな人間が現れてくれたのは幸いだったよ。だから──そろそろ我々も本格的に動く時だよ」

 

 ニヤっと笑った篠川さんはどこか頼もしかった。

 

「君は思う存分身体を張ってくれ。ハウンド01(ワン)が怒ったとしてもね」

 

 それから二ヶ月足らずで、杯戸港倉庫の一部が血の海になりました。

 

 私はこの掃討戦(つぶしあい)で初めて人殺しに手を染めましたが、思った程ショックにならなかったことが逆にショックでした。

 

 ……未だに七日にはびくついてるのに、『敵』だと認識していたら同じ命でもこれなのか。

 

 自嘲の嗤いすら出てこない。ただただ、凪いでる。

 

 勝手に無茶してついて来たと思っているであろう降谷さんの表情は、これまでの無茶に対するような怒っているものではなく、どこか寂しそうなものだった。

 

----------------------------------- side:Furuya

 

 (みぎわ)と別れた後、この場を離脱するために走る。

 渋ることすらなくただ察して別方向へ走った彼女はいったいどれだけ心身を鍛えたんだろう。

 

 数日集中してヒロが彼女と訓練場に通っていたことがしばしばあったな、なんてぼんやり思い出すが、恐らくそれだけじゃない。

 

 そう取りとめのない思考を巡らせていた時だった。

 

 コンテナの影からすっと出て来る黒い影に、僕は足を止める。

 

 ああ、あの時のあいつだ。僕は辿り着いたということだろうか。

 

「……やってみろとは言ったが、ちと優秀過ぎるな、ガキ」

 

 僕は口角を片方だけつりあげた笑いを浮かべる。

 

「僕の女に手を出した奴らです。根絶やしくらいでないと気が済まない。……なのに数匹取り逃がしたみたいなので、むしろ腹が立っていましてね」

 

 そう言って銃口をそいつに定める。

 

「僕の獲物を横取りした奴を仕留めれば、少しは気も晴れるんじゃないかと思うのですが」

「咆えるな子犬。テメェのひょろい弾なんぞまだ届かねえよ。届かせてえなら、胎から食い破ってのし上がってみな」

 

 心底面白そうにそいつは嗤った。

 眉根を寄せながらしぶしぶといったふうにゆっくりと銃を下ろすと、そいつはまたひとつニヤリと嗤って背を向けた。

 

「……ついて来い」

 

 黙ってそれを追いながら思う。

 

 さっきまで一緒にいた汀は、目をつけられていないだろうな……?

 大立ち回りをしたのは彼女も一緒なんだ。

 

 ただ、裏で出回っているらしき妙な噂を、どうみても裏で生きてるこの男も知っている可能性はありそうだ。それで僕が『アレ』とは一時的に協力していた、くらいに思っている可能性があるにはある。

 とすれば『アレ』は既に他の組織に属すと目される者であるし、今回この男がここにいる目的がヘッドハンティングなら、接触したいのは僕だけ、なのかもしれない。

 

 もし何らかの接触があったとしても今の彼女ならうまく躱すだろう。

 保護対象の急成長を素直に喜べないこの現状は何なんだろうな。

 成長すればするだけ彼女は危険に近づいていく。

 

 けれどあの時あの眼で『正しい使い方を、私に下さい』と言った彼女は、きっと後悔なんかしないんだろう。

 

----------------------------------- side:Reincarnator

 

 降谷さんはやはりあの後お酒の組織への潜入に成功したみたいでした。まだ原作五年前ですよ。てことは赤井さんと同時期になるんでしょうか。

 

 ……となると気になるのはやはり諸伏さんのこと。

 彼は今までちょくちょく外国で傭兵をなさってるみたいなんですよね。

 ……もしかしたらとある人に会ってたりして。まだ確信はありませんが。

 

 ともかく、です。

 

 諸伏さんのNOCバレは赤井さんの潜入中だから、原作五年前からの三年間のうちに起こる。それに某女子高生探偵さんが中学時代にスコッチに出会っていること、原作者様が松田さんより後と仰ってたらしい、ことを踏まえると、該当する十二月七日は最大二回、最小一回、となる。原作開始が恐らく春だからです。

 

 もし松田さんの一か月後に諸伏さんが亡くなっていたとしたら残された二人には立て続けすぎる。なんて世界だ。

 

 私は必死に状況を探り続けていたけど、相手は半世紀以上に渡って世界を脅かし続ける巨大犯罪シンジケートと公安警察所属の潜入捜査官、情報が容易に手に入るわけがない。

 何も分からないまま時間は刻々と過ぎていく。こうしている間に十一月七日は近づいてくる。もちろん圏内となる十二月七日も。

 

 そう色々とぐるぐる考えながら、私は駅の売店で雑誌を立ち読みするフリをしています。

 待ち合わせまでの時間潰しです。

 

櫛森(くしもり)汀』は普通立ち読みとかしないんですけど、今は普段とまるで違ってお洒落な服飾をしているのでまあいいでしょう。細身な上レンズの端に小さなラインストーンが入ったサングラスとか、緩いドレープが一段斜めに重なるスカートとか。

 

「やあ。待たせたかな」

 

 しばらくして声を掛けてきたのは、私の待ち人──0000な篠川さんです。

 

「ううん、大丈夫」

 

 にこっと笑いながら小さく首を振る。

 外で会う時は一応素のままで居ないようにって言われてる。

 

 私は立ち読みしていた雑誌とスティックパックのチョコを一緒に買って、篠川さんと二人駅地下の喫茶店へと向かう。

 

 軽く注文をしつつ事務連絡等を交わしたのち。

 

「で、早速本題だけど……ちょっときみアメリカに行ってくれないかな?」

 

 にこにこ笑う篠川さんです。

 

「随分突然ですね。私が護りたいのはこの国なのですが」

「対象は日本人だよ」

「……帰国を促すことはできないのでしょうか」

 

 私は考え込んでしまう。松田さんや諸伏さんの件はもう差し迫ってる。

 私がいなくても犠牲者が出ない可能性はあるけれど、心配なのは心配で。

 私がこの国を護りたいという理由の大部分が、彼らなのですから。

 

「無理だね。この国では研究者や技術者の頭打ちが早すぎるから」

「……」

 

 そのへんに関しては無言になるしかない。私はそれに近いものに引っ掛けられたことがあるのだし。

 

「まあ、今すぐ行けという話ではないみたいだよ。危険が迫っているというよりは様子見みたいだし」

「様子見、ですか?」

「うん。マサチューセッツ州で目撃された日系の天才少年と天才少女、日本語を口にする両者にどうも不穏な空気があると、それぞれ別口から情報があがってるとなれば……気になるというものだろう?」

「確かに……」

 

 不穏な空気……いったい何が起きているんだろう?

 

「いずれも協力者の身内から伝え聞いた『気になったこと』程度だが、工科大院生のプログラマーと保険医療技術大学の薬学科所属で、両者十代になるかならないか」

「……例の組織の手が伸びかねない、もしくは既に手中にある、と?」

「そういうことだ」

 

 どちらも、あの組織が欲している分野の技術者と研究者、だ。

 

「その薬学科にとある協力者の息子が留学していてね、家族との雑談の中で、心配な子たちがいる、とね。薬学科となればきみ、適任だろう?」

 

 にこにこと笑って言う篠川さんです。しかし。

 

「再来年、例のカウントがゼロになります。そんな中で海外に行く気にはなれません」

「そうだろうね」

 

 そう即答されたのは意外でした。

 

「あちらについては不確定事項、こちらについてはほぼ確定事項だし」

「ええ」

 

 しっかりと頷く私に篠川さんは微笑みます。

 

「後回しで大丈夫だと思うよ。まあきみが適任だとはいえあちらに繋ぎを作るのも容易じゃないから、時間がかかりはすると思うし、準備するだけしといてってくらいかな」

 

 篠川さんが小さく頷く仕草をとる。

 

「……うん。だから早くても来年度一月の冬休み明け。その時期にまだ少年少女が引き続きその状況であれば、また話を持ってくるよ」

「承知しました」

 

 海外へとなれば物理的にも精神的にも準備期間が欲しいから、かなり早い時期に話を持ってきてもらえたことは、とてもありがたいのかもしれないですね。

 

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 昨年度と同様、篠川さんと地下鉄で待ち合わせです。違うお店ですが。

 

「……失礼お嬢さん、襟にゴミがついていますよ」

 

 地下鉄の売店で相も変わらず立ち読みのフリをしていると、少し遠くで待ち人の声がした。

 そのまま私はフリを続ける。

 私の服装は石上(いしがみ)さんのおかげで昨年より確実にお洒落になっていると思います。ありがたやありがたや。

 

「やあ、待たせてばかりだね」

 

 去年とは格好の違う篠川さんです。

 

「ううん、これ読みたかったから」

 

 声をかけられたので振り返ってニコッと笑う。

 そのまま私はその知らない雑誌を含め飲み物やガムなどをレジに持っていきます。

 

 そして地下鉄を出て少し歩いた先にある系列カフェに向かう。

 それぞれの注文したメニューが届いたのち。

 

木暮(こぐれ)さん、これが何かわかるかい?」

 

 言いながら彼──篠川さんは右の手のひらを私に見える位置で開きました。乗っていたのは小さな丸い物。

 私はスマホを取り出す。

 

「……発信機、ですか。アプリの無反応ぶりから盗聴機能はないのでしょう。どこかで付けられたのですか?」

「僕らじゃないよ。さっきちょっと擦れ違ってね」

 

 通りすがりにわざわざ他人に声をかけたのは、これを除去するためでしたか。

 

「……見知らぬ人に? それとも何らかのターゲットですか?」

「見知らぬ人だよ。もしかしたらストーカーの犯行かもね。……どうやら時間が経てば消滅するような仕掛けらしい……随分手が込んでる」

 

 篠川さんは掌の発信機を面白そうに見つめる。

 やっぱりこの世界、恐ろしい技術力ですね? ……多分主に裏社会が。

 私はスマホをしまってパンケーキに口をつける。

 

「さて人のフリ見て、だ。目的地に向かう前、あるいは人混みを抜けて目的地は目前、確認すべきは?」

「襟の下、肩の後ろ、袖周り、袖口、裾、折り返しの内側、ポケット、カバン、靴の裏……まとめ髪をしていたらその中も、ですかね?」

「そうだね。帽子をしていたなら裏とかハットバンドの内側とかも」

 

 ただし、と彼は笑う。

 

「こういう盗聴機能の無い発信機って、仕掛けられた側が発見しづらいとしても追跡としては結構弱いよね」

 

 音声として拾えなければいけない電波と違って信号を受け取れればいいだけの発信は、発見器を作りづらい。だから目で見つけるしかない。

 

「こうして意図しない奴の手に渡る可能性だって、落ちてしまう可能性だってある。……だから、そのストーカーさんはもしかしたら……」

 

 言いながら彼はぷちっとそれを指で潰した。……握力やばそうですね。

 

「見える範囲に居たりして?」

 

 くすくす笑ってる篠川さんですが、それってマズくないんでしょうかね??

 

「……まあ、居たとしても捨て置くしかないだろうけど」

「……壊しましたからね。深入りしようとしてたら追われたかもしれませんが」

「ああ。充分ダミーになってはあげられただろうし。これ以上僕らがしてやれることはないね」

 

 篠川さんはひょいっと肩をすくめました。

 

「で、例の件は心配ないとみているけど?」

「ええ。捜査本部もさすがにかなり活気づいています。どう考えてもカウントダウンだって、Wエースの注意喚起が効いてるようですね」

 

 篠川さんがふふっと笑います。

 

 けれどもう一つの私の不安は消えていません。

 諸伏さんに危機が迫っているかどうか、相変わらず全く分からなかった。これがイコールまだ大丈夫であれば良いのだけれど……。

 こっそり諸伏さんに張りつきたいところですが、彼を尾行するのはとても難しい。すぐに分からなくなってしまう。

 私の尾行の腕は多少成長しはしたと思うし、その上姿を消せる《 バニッシュ 》があります。それでもこれなのだから、諸伏さんの優秀さはかなりのものだ。それがどうしてスパイだとバレるんだろう。

 

「例の少年少女は相変わらずらしい。だからやっぱりきみに会いに行ってもらいたい。期間は、1月から6月までの半年間。これなら間に合う(・・・・)だろう?」

 

 アメリカでは夏休みで年度が変わる。だから丁度年度が切り替わるまでってこと。

 日本でもそれに合わせようという動きがあるようですね。見送りになった部分も多いようですが。

 会計月を比較的早く移行したグローバル企業に比べて、教育現場等については無理がありましょう。やりたかったらかなり長期的な目でやらないとですよね。

 

「手回しも済んだから、きっと薬学科のほうから話が来ると思うよ。あとはその流れに乗ってくれればいい。それと……」

 

 篠川さんがすっと小さな何かを渡してきます。

 

「これは」

 

 真っ白で小さなカード。

 良く見ると隅には小さく『◸2222』。

 私は思わず皺を寄せた眉間に拳を当てました。

 

「『会社』にツテが必要になったらこれを渡すといい」

「……またこんなことをなさって……」

「よろしくね、『小暮』さん」

「……はい……何かあったらよろしくお願いしますね……?」

「もちろん。我々(・・)でなんとかするよ」

 

 そう言って篠川さんは親指と人差し指で円を作ります。ゼロってことですかそうですか……。それは公安自体だったり、協力者である我々だったり。

 

 ゾロ目な協力者たちが意図して痕跡を残すとしたら『2222』っぽいです。『裏の世界でまことしやかに流れる噂』の中でもイコール私ということにはなっていないみたいですけど、まあだいたい前に出るのは私ではあるからそうしたほうが便利……なのかなあ……? それに数字は一種類のほうが分かりやすいですよね、た、多分……。

 

 ああそれと、と篠川さんは付け加えた。

 

「……きみが毎月七日に調子を崩しているのは知っているよ。だからアメリカに行ってもらう時は、ゾロ目(ウチ)から介添人を一人つけるからね」

「バレてたんですね……」

 

 私は片手で額を抑える。

 私のどうしようもない点ではあるから、見栄なんか張らず頼らなきゃいけないところなのだろうけれど、協力者が協力者の手を借りるのは気が進まない。誰のための協力者だろうって思ってしまう。

 

「きみが貴重な人材なのは、きみ自身がよくわかってることだろう?」

 

 気まずそうにしてるのも気づかれたのでしょう。

 

「今までのサポートから考えれば、そうなんでしょうね……」

 

 篠川さんはまた、ふふっと笑いました。

 

 ……そうだ、諸伏さんの件についてお伝えするかずっと迷っていたけれど、力になってくれそうな人には話しておくべきなのかもしれない。

 

「……ところで、ウルフ01(ワン)

「何かな?」

 

 そのコードで呼んだということは組織に関する話だということ。篠川さんは特に驚いた様子もなく先を促します。

 

「ハウンド02(ツー)に危険が迫っているかもしれません。根拠を示せと言われると難しいのですが」

 

 篠川さんは少し妙な感じに苦笑なさいました。

 

「……君のそれ(・・)当たった試ししかないからね。で、我々は何をすべきなのかな」

 

『それ』は、実際に足で調査して拾った事態だったり、超える力で『視て』しまったものだったり。

 

「ひょっとしたら今すぐに迫っていることかもしれないし、来年か、下手したら再来年かもしれない、くらいのことです」

「なかなか準備に困りそうだね」

 

 そう言いながらも篠川さんは微笑んだまま。そういえば彼が動揺したところは見たことがない気がします。

 

「恐らくバレます。逃走手段があればいいのですが、世界のどこに逃げようと安全とは思えませんよね」

「そうだね。……上に非情な連中が居たらいっそ切り捨てろなんて言いそうだけど」

「そんなのが居たとしたら私は一緒に死んできます」

「そう言うだろうと思ったよ。……きみのことだから生き残った場合に実際辞めるとは思えないけどね」

 

 私は眉を下げて苦く笑う。否定はできない。

 こんなことを言うのも絶対に切り捨てさせたくないからであって、もし私だけ生き残ったとしたら……こんな言い方したくないけど、大好きな人は彼だけじゃないから、協力者を続けるのでしょう。愛国心皆無というわけでもないのですから。

 

「きみの能力がどれだけ重宝されてるかよく分かってる良い脅しだ」

 

 くすくすと篠川さんは笑います。

 私がこうなら他にも前世チートを持ってる人がいてもおかしくないけれど、そうたくさんはいないのは確かなのでしょう。

 

「……それで……死亡偽装なんかはできるものなのでしょうか。高飛びよりそちらのほうが生存の可能性が高そうに思います」

「猟犬たちは任地が決まった時点で出自を切り取っているようなものだからね。死亡届での偽装をしようにも、もともと関わりがない」

 

 恐らく、たどられたとして出自まで行かないようになっている。だから、本当の籍で死亡届を出しても意味がないのでしょう。

 プラーミャの件は多分彼らが互いに本名やニックネームで呼び合っていたのを聞かれたのがあるんだと思う。

 どうかしたら彼らは身バレ防止に、警察手帳なんかもお持ちじゃない。

 ……データだけはあるっぽいとはいえニセモノな私は持っているのに。本当、それでサポートできることもあるとはいえ心苦しい点のひとつ。

 

「君でいう『木暮愛莉』の各種証明書しかないような状態さ。まあ本籍で死亡届を出しておくのも手ではあるんだろうけど……ああいう世界にとってもっと確実なのは死体を偽造することだろうね」

「書類上より目で確認できるモノってことですか。ですが死体なんて……」

ゾロ目(ウチ)ならなんとかできると思うよ」

「……」

 

 にこにこと言う篠川さんに絶句してしまう。

 

「……できれば、潜入中に手助けをしたかったものだけれど。その身バレって防ぐことはできなそうなのかい?」

「今は原因が掴めていないんです。面目ありません」

「そうか。でも、危機自体を察知できるだけでも重畳だね」

 

 前に出ても自分である程度身を守れる私のような存在ができたことでまとまった集団らしいけれど、コレが原作世界で動けていたなら死人はもっと少なくて済んでたりしない……? と言いますか私がいなくても機能したんじゃないですか……? それともやっぱり転生特典なチートあってこそなのかな……チートですからね……。

 

「彼らは自身が優秀だという自覚と責任を持ってるから、今まで協力者(みんかんじん)が踏み込むことを良しとしてくれなかった。けれどこればかりは許してもらおう。たとえ我々のほうが細く弱いとしても、矢は三本あれば強くなるものだから」

 

 主力を折るような矢ではないという自負くらいは、あるのだから。

 

 特殊能力持ちの集団なんてただでさえ人手不足な警察組織にしてみれば喉から手が出る程ほしい人材ではあったのでしょう。いくらあの組織が一筋縄ではいかない巨大犯罪シンジケートであっても、専任になることはできなくて、通常の協力者とは違って人を限定せずあれやこれやと駆り出されてきた。

 もちろん、協力者なのだと公にするわけにはいかないので、最早隠れ蓑と化している本業を疎かにしない程度ではあったけれど。

 

 だけど本当の目的はあの組織に対抗することで、最優先は、そこに潜入している捜査官のサポートをすること、のはずだった。

 

「さて……じゃあ、連絡をつける時は、生存の手助けを欲しているならケースA、逃走の手助けを欲しているならケースE、全部間に合わなくて死亡の偽造が必要ならケースD。まあ、AとEは彼らが自力でやろうとするだろうけれど。下手をしたら我々が手助けするよりスムーズに」

 

 私も篠川さんも眉を下げて苦笑する。

 それだけ優秀だから潜入捜査官なんてなさってるわけですものね。

 

「その時の状況も簡単に欲しい所だね。他に必要な物とかあれば手短に付け加えて」

「承知しました」

 

----------------------------------- side:Furuya

 

「そうですゼロさん、私アメリカ出張……留学? を勧められたのですが、これってどうなんでしょう?」

 

 朝のトレーニング中にしれっと言い放たれた爆弾発言に僕は一瞬固まった。

 

 何をして帰って来るか分かったものじゃない。いや帰って来れるんだろうか。

 松田が言ってたように自らすすんでマグマに突っ込むような奴だからな……。

 でも、そんな理由でとめたらいくら何でも過保護が過ぎる。

 

「……またいきなりそういう……まあ、いいんじゃないか? 良い経験になるだろう」

 

 いくら彼女が協力者だからといって公安がその機会を奪って良いわけがない。

 彼女は協力者にしても働き過ぎなくらいだ。あれだけこちらに時間を取られて来たのだから、本業に励むことに文句なんか言わせないとも。

 

「良いんですか!」

「誰にとめられるというんだ」

 

 僕は苦笑する。

 

「行っておいで。ただ無茶は許さない。この国に比べたら物騒なほうではあるだろうから」

 

 物騒なのは彼女が突っ走った場合の向こうの態度のことだけどな……。

 

 しかし後日。

 

「2222の投入は昨年から考えていたんだよ」

 

 一応上に許可を取るべきかと裏理事官に伺えば、彼女の渡米はそもそもそこからの沙汰だったらしい。

 

「……彼女は潜入捜査官でもなければ警察官でもありません」

「公安警察が向こうに行ったところで何もできないんだよ。わかるね?」

「何かすれば国際問題になるでしょうね」

「そういうこと」

「正規の捜査申請は通らないのですか?」

「まず通らない。あくまで一般人、捜査以前に監視も警護も申請が通る理由がない」

「露見していないだけだとしても?」

「怪しいだけでは令状が出ないのはこちらも同じだよ。だから分からないわけはないよね? こうは言いたくないけど、日本人だというだけなら歯を食いしばってでも手をこまねくしかない。だけど『彼女』と同じで失い難い能力があるとなれば……海外だから手を出せないでは済まされない」

「だったらギフテッドが国内で生きやすいようにしていただきたいものですが」

「残念ながらそれは警察われわれの領分ではなくてね。せいぜいがこうして命を守ろうとするくらいしかできない」

「……その守ろうとすることも自分たちではできないくせに?」

「ああ。守ろうとする者を守ろうとすることくらいしかできない」

「せめてそこは抜かりなくお願いしますよ」

「心得ているよ。……私以上に、彼らがね」

「その彼らを何としても守るのが、我々の仕事ですね?」

「ああ、それが……私の仕事だよ」




/

数学どころか算数からして苦手なのですけど、時系列、思いっ切り計算ミスしてたんですよね。
だからこのあたりにはpixiv版に比べてがらりと修正が入ります。
起きる内容は変わらないのでそこまで手を入れなくても良い……といいなぁ(自業自得の涙目)。

転生者(2222 / ウルフ04)
 一年と少しが過ぎ色々と成長。更にぐんぐん伸びていく。
 彼女は興味を持ったものに対してだけはどこまでも突き進むので、そのうちバケモノのような働きをし始めます。
 能力の限界も人脈の限界もクロスオーバーというチートで補う恐ろしさ。
 人を殺めることについては降谷さんたちだけなら許さなかったでしょうが、上が関わってきたおかげでそうもいかなくなった。
 平気な顔してるようでいて時折何かの拍子でふと、撃った瞬間などを思い出して暗い気分になる。
 しかし『敵』の『ノックアウト』があまり心にこないのはゲーム的な要素(『リスポーン』があるせいでゲームでは心にこない。『ノックアウト』=『死』な現実では帰ってこないけど感覚が影響を受けている。ただし『銃スキル』がPvP仕様なためなので、銃以外は無理)。ある意味怖いけどこの転生者は多分悪用できません。
 ゾロ目のおかしい奴らについては降谷さんたちに話せないことのようで少し不満。

降谷さん(ハウンド01)
 彼女がただ自身について来ただけではないだろうことは収集した情報からも分かっている。
 だけど勘づいていることは本人に明かさない。これからも『そうじゃない者』として扱う気。
 やはり『自分個人の協力者』に留めることができず、『公安の協力者』になってしまったらしい。
 けれど『自分の「協力者」は何としても守るのが僕の仕事だ』。
 それは変わらないからな。
 光阴の虎の威を借る奴らや同様の集団のことを調べ上げたのは彼自身。ほんの多少、ゾロ目が誘導的なサポートをしはしたかもしれない。
 出張について、彼女は去年から聞いていたのだろうか、と少しモヤってる。
 僕に話してくれなかったのは不満だが、僕自身にも打ち明けられないことがある。
 それでも何も言わず彼女は協力者として動いてくれている。察しているらしい部分すらある。
 だから僕も変わらず接していたいというのに、内心のこれはどうなんだろうな。
 とかなんとか複雑でいらっしゃる。
 ……転生者のほうのそれは前世チートの分もあるのだと、彼は知る由もありません。

篠川さん(0000 / ハウンド01)
 偽名は某事件手帖から。
 pixivではとある理由から容姿の描写をしてませんでした。
 潰した発信機をつけられていたのは某女子アナさんかもしれません。
 お父さんがお好み焼き屋のあたりで偶然ウルフ03(長期出向中)に潜入を辿られてしまってる。
 発信機の代わりにポッケに『◸2222』カードが突っ込まれている。◸とかついてるから断片(フラグメント)って呼ばれるのかもしれない。
 その後は当初の計画通り事故死に見せかけて組織を抜けたのかもしれません。
 コードネームはお父さんにつけられているかもしれませんし、彼は娘と共に潜入しているかもしれない。

あの男
 ジンさんです。
 生存ルートでの降谷さんとの出会いについては、転生者が銃をぶっ放したことで「守るべきもののはずが色々とタチの悪い犯罪者だった可能性」が生じかなり殺気立っていたため、その目を結構気に入ってる。
 死亡ルートでは「守るべきものを守れなかった悲壮感」が消せず、ジンに向けた殺気にも理不尽さまではなかった。


光阴(グァンイン)
 捏造中国マフィア。光阴似箭(光陰矢の如し)より。
 本来なら後継者争いで蹴落とした敗北者なぞ知ったこっちゃないが、時間が経って変な所で仲間意識が微妙に復活したようだ。
 多少融通をきかせてあげていたらしい。

ゾロ目たちが影で使用しているコードネーム
 ゾロ目たち=(ウルフ):首輪がない。
 潜入捜査官=猟犬(ハウンド):赤井さんがスコッチに猟犬って言ってたから。
 一般警察官=警察犬(シェパード):そのまま。
 公安警察官=番犬(ドーベル):国家を護る。捜査官のサポートについても。
 探偵等民間=鼻利き(ビーグル):空港の検疫探知犬より。
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