降谷さんの災難   作:千里亭希遊

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8.転生者と紫微星。

 アメリカに来てからも朝のランニングは欠かしていません。

 マップアプリで周囲を検索してみると、東の方に結構大きな公園がありました。庭園とか遊び場とか色々あって、そこを折り返し地点にして柔軟体操や筋トレするのに良さそうです。

 

 里崎さんも難なくついていらして良いランニング仲間になって下さいました。細いのに意外ですなんて言ったら、人の事言えませんよと笑われました。筋肉がついてる気がしないのはコンプレックスです……。

 

 ここで里崎さんの『音』に関する能力というのを少し知ることになりました。彼女はすごく(・・・)耳が良く、かつ聞いたものを把握する知識も深いようです。

 心音も筋音も呼吸も走るペースにしては穏やかですねさすがですなんて言われて驚愕しました。耳がいいの範囲を超えています。聞けば絶対音感もお持ちで、なんとなくの周波数すら分かるとか。

 

 聴覚過敏で小さい頃は苦労なさったようですが、今では聞きたい範囲を自分でコントロールできるのだそうです。ひえぇ。

 たまに軽めのヘッドホンをつけておいでで、そういう時は要らない音を遮っておられるようです。自力制御は面倒な時もありますよね。

 

 音楽がお好きらしく色々楽器も触っておられるようで、ギターやピアノを教えていただけそうです。トランペットもいかがですかドラムもいいものですよなんて色々仰って誘惑がたくさん……でもまずはひとつかふたつから……!

 

 歌うのもいいですよね。この世界でJpopやアニソンはほとんど聞いてこなかった自分の人生が恨めしいです……。

 

「心地良いお声です。日本に帰ったらぜひカラオケに参りましょう」

「わあ! 素敵ですね! ぜひ!」

 

 よし、これを機にサブスクで聞きまくります。今まではゴリラを目指すだけで必死でしたが、知識面はある程度落ち着いてきましたし。一度お勉強したら忘れない今生の頭は便利ですね。とはいえ私にとって大事なことの復習は怠ることなくやりたいとは思っています。

 

 一月終盤のとある日曜日。

 早朝はまだ薄暗いため、午前中に大学に行く用のない日は八時頃からランニングを始めます。そして公園の遊び場でゆったりと歩いていた時のことです。

 

「あら。東洋人の子供さんでしょうか」

 

 小学校低学年くらいの子が木陰に座ってる。なるほど顔立ちがそんな感じです。

 本を読んでるのかなぁと思ったらなんとノートパソコンでした。最近のお子さんはハイテクですねと思いつつ、今生での私もそんな感じだったなあと少し物思いに浸る。

 優しく、確かに愛してくれた両親には感謝しかない。もういないことがキュッと胸を締めつける。親孝行、したかったな……。

 

 我々が近くまで来るとその子がふと顔をあげて、ばっちり目が合いました。存外のことで少しびっくりしてしまう。

 

「……あれ、お姉さんたち日本人?」

 

 ぱっと笑顔になった少年が日本語で聞きました。思わず足を止める。

 異郷で同郷人と目が合ったら思わず話しかけてしまうことって雰囲気によってはありますよね。

 思わずこちらも微笑む。

 

「ええ、そうですよ。てことはあなたもですか?」

「うん、そうだよ。近くの工科大に通ってるんだ」

 

 内心でまた「!?」が飛び交うことになりました。これは。これはまさか、例のお仕事の対象のお子さんでは……!? 工科大に通う十代前後の日本人ってそんなにたくさんいないよね!?

 

「私も近くの大学に通ってるんです。でも出身はイギリスの大学でして。今は留学みたいなものです」

「へええ! 勉強熱心なんだね!」

 

 少年の目がキラキラしています。とはいえコミュ力皆無の私にはどうしたら会話を続けられるのか分からない。……ひとまずは。

 

「このへんに座ってもいいですか? お邪魔じゃなければお話しませんか?」

(わたくし)もよろしいでしょうか?」

「うん、もちろんだよ」

 

 にこにこ笑ってくれたのでお言葉に甘えました。かわいいなあとほんわかします。

 

「でもなんでお姉さんたち敬語なの?」

 

 不思議そうに彼は聞いてきます。私はくすりと笑ってしまう。

 

「ああ、私は誰にでもこうでして。これが普通の状態なんです。特にこだわりはないので、違和感がありましたら変えますよ」

「同じくです。癖のようなものなので、つい」

 

 里崎さんも笑っています。同じような癖の者同士親近感がありますね。

 

「そうかぁ、普通なら気にしないで。そうだ、僕はヒロキ・サワダ。二人は?」

「私は櫛森(くしもり)(みぎわ)といいます。専攻は薬学です」

(わたくし)里崎(さとざき)桔梗(ききょう)と申します。専攻は音楽です。櫛森さんとはカラオケ仲間です」

 

 我々の現状は説明するには少し煩雑ですものね。カラオケ仲間にはこれからなる予定ですし。

 

「わあ、そうなんだ! アメリカじゃカラオケは少ないんだよね」

「そうですよね。少しずつ増えてはいるようですが」

 

 へええ、そうだったんだ。今まで興味を向けることがなかった方向にはとことん無知でございます……せっかく来たのですから、色々学んで帰りたいものですね。

 

「ねえねえ、それじゃあさ、日本の歌を歌わない? 最近あんまり聞いてなくてさ」

「わあ、いいですね! 何がいいでしょう?」

「流行りの歌はあんまり知らないんですよね。童謡とかならいけそうです」

 

 私が曲を知らないのは前述の通りでして。

 せっかくだからこの国の流行りの歌もお勉強してみたいものです。

 

「僕も流行りは知らないかも」

「じゃあ、『ふるさと』なんていかがです?」

「あ、それなら僕もわかるよ」

「いいですね、私結構好きなんですよ」

 

 歌詞で景色が想起されて清々しい気分になれるのです。

 

 というわけでヒロキ君の「せーの」で三人で歌い始めます。ゆったりのんびりでよきですね。

 里崎さんもヒロキ君も綺麗なお声をなさってて癒やされます。お二人ともお上手で私は調子にのって対旋律をやりはじめました。義務教育は二周しているはずですからね、習ったことはよく覚えているのです。

 

 うぉぉ、ハモリはやっぱりきまると心地良いですねえ……! 三人してにこにこし合ったり、ふわふわと左右に身体を揺らしたり。楽しいぃ!

 歌い終わって少し余韻に浸ってしまったくらい。

 

「ふふ、楽しいです」

「うん、すごく楽しい!」

 

 なんて言ってたらちらほら通りすがりの知らない人たちがヒュゥっと口笛を吹いてくれたり等してビビリました。三人でお辞儀をしたり手を振ったりで返してみたり。

 

「そうだ、同じゼミにね、日本人とのハーフっぽい人がいるんだ。僕より少し年上だと思う」

「へえぇ……! そうなんですね、こちらにも案外いらっしゃるものですね……!」

 

 うん、ほんとだね。とヒロキ君がくすりと笑う。

 ……ウッ。待って下さい。てことは工科大の注視対象さんはヒロキ君とは限らない……?

 もうちょっと篠川さんにお話を聞く必要がありそうです。

 

「でね、その人、たまにふっと寂しそうな顔をするんだ」

 

 少しはっとしてしまいます。どんな事情がおありでしょう。

 ヒロキ君は小さく首を振りました。

 

「何でなのか僕には分からない。だけどこうやって一緒に日本の歌を歌ってみたら、あの人も笑えたりしないかな、って……」

 

 ヒロキ君はお優しいですね。話しかたからすると同じゼミではあってもあまり接点はないのでしょう。それでもこうして気にかけている。

 

 私と里崎さんはふっと顔を見合わせて微笑みました。そしてヒロキ君に視線を合わせる。

 

「我々はお休みの日はだいたいこの時間にここに来るんです。だから、もしそのかたにも会えたらぜひ一緒に歌いましょう」

 

 寂しさの理由が分からないから解決とは程遠いとしても、自身に縁のある地の歌を歌ったり聞いたりすること自体は、きっと悪くないと思う。日本が嫌いじゃなければ、だけど。

 ハーフさんならご自身は日本をそうご存知ない場合もありそうですが、それでも興味は持ってくれそうな気がする。

 

「うん、きっとだよ」

 

 そう言ったヒロキ君の笑顔はきらきらしている気がしました。

 

 そしてそれからはのんびりと雑談です。

 どこのお店の何が美味しいとか、学校の雰囲気とか、面白い人がいてとか……何の研究をしているか、とか。

 

 私はかつての自身の危険な研究を捨て、新しい目標を探しているところなのでなんと言ったらいいものか。

 それで周りのかたの研究を手伝わせてもらって方針の立てかたをお勉強していたところ、どうもお手伝いのエキスパート扱いになっているらしいです。まるでどこぞのMMOの主人公のようですね……この世界にはあのゲーム存在しないみたいですが。

 

 ともかく、です。研究内容の詳細は省いて、目的のための手段を見誤っていた黒歴史を正直に明かしてしまいましょうか……。思いつきでテーマを作って嘘を吐くのはなにか嫌な気がします。

 

「私は研究に失敗したんです」

「失敗?」

 

 ヒロキ君は目を少し丸くしています。

 

「両親も私も妙な人間にひどく絡まれる人生でした。だから何としても変質者を直ちに撃退できる薬を作りたかったんです。でも……」

 

 やっぱり口に出すのは躊躇われるものですね。

 

「私が開発しようとした薬品は尽く人体に有害すぎて、防犯目的でなんて使えないものばかりだったんです」

 

 学生の頃の研究テーマはその下地となっています。飛び級での卒業を許してくれた大学側は私がこうなるとは夢にも思わなかったことでしょう。

 

「有害すぎた、の?」

「えぇ。防犯用品ではなく兵器を開発するところでした」

「そっか……」

 

 ヒロキ君はいたたまれない様子で私を見ています。……志保さんより更にお若いかたにまでこんな顔をさせてしまうなんて。

 

「目的のために手段を選ばない、なんて言葉がありますが、そんなどころではないほど了見が狭かったんです。そんな手段で目的を達成しても被害者を加害者に変えるだけなのに」

 

 その横暴な研究結果を認めなかった職場にも感謝です。それを不服に感じていたのだから過去の私はどうしようもない。井の中の蛙は妄執で肥大化して、井戸から出ることを考えもしなかった。

 

「その手段を行使した結果どうなるかに目を向けられていませんでした。……もしかしたら私は、襲ってくる人間なんてどうなっても構わなかったのかもしれません」

 

 もう過去のことだからか、気まずいにしても案外話せるものですね。そして私には、これらを『過去』にしてくれた人たちがいる。

 

「ですが、そんな状態から私を現実に戻してくれた人たちがいます。そのおかげで私は今ここに居られているんです。……ありがたいことです」

 

 そう言って笑うと、ヒロキ君も目を細めるようにして微笑んでくれました。

 

「研究というのは、その結果がどんな危険を生む可能性があるのか、それを常に考えていなければいけないのかもしれませんね」

 

 次元が違うけれど、ふとアインシュタインのことが思い浮かんだ。当時の科学者たちの、真理を解き明かそうとする純粋な探究心は、原爆を生み出すために利用されてしまった。彼は書簡に署名したことを悔やんだ。

 物理学や量子力学の急速な発展を促したアインシュタインの功績がなければ、きっと今はないのでしょう。けれど凶悪な兵器まで産んでしまった。

 危険性をご自身で分かっておられて注意喚起もなさっていてもこれだ。

 

 彼らと違って、私のもののような人類の発展に全く貢献しない破滅的な研究なんて世に出さないに限る。

 

 そんなことを改めて考えていたら、横でヒロキくんが考え込んでいる様子をみせていました。どうかしたのかな?

 

 しばしそんな状態が続いて、やがて彼はぽつりと言葉をこぼす。

 

「……あのさ、もし、みんな祖先が分かるようになったらどうなると思う?」

「祖先? ミトコンドリア・イヴですか?」

 

 単一起源説ですかね? 人類みんな祖先をたどればアフリカの一人の女性に行き着くっていう。

 

「違うよ。もっと近くの、具体的な個人」

 

 ふふっとヒロキ君は笑いました。

 

「たとえば、自分の祖先が実は大統領だった、とかさ」

「わぁ、そんなことがあったらびっくりしますね」

「でしょ」

 

 ちょっとしたサプライズになりそうです。楽しそうな面はありそうですね。

 

「でも私の祖先なんて名も無き一般人でしょうから、それが確実になっちゃったら少し寂しいかもですね」

 

 くすっと笑ってしまう。

 今の自分の無名さを棚に上げて頑張って生きたご先祖さまを嘲るのは言語道断とはいえ、そういうチェックには夢を求めがちなものです。

 

「あはは。そうだね。僕もそうだろうなあ」

(わたくし)の祖先は人斬り松次郎です」

 

 にこにこしながらずばっとそんなことを言う里崎さんに、私は一瞬真っ白になって固まった。

 人斬りといえば幕末の四大人斬りなどが浮かぶわけでして。私は寡聞にしてしょうじろうさんは知りませんが。

 

「ふふ。ですが私はこの通り無害な人間です。何百年も前の祖先なんて見知らぬ他人ですよ」

「そうですね。里崎さんは里崎さんです。どっちかっていうとばばーんと暴露なさったことにびっくりしました」

「ここなら、広く公表することにはなりませんからね」

 

 じゃれ合う気分で私は周りを少し見回す素振(そぶ)りをみせます。日曜の遊び場にはちらほら人がいるのです。

 

「でも、誰が聞いてるか分かりませんよ?」

「日本について分かっておられる聞き耳は、こちらではそう居ないでしょう」

「それもそうですね」

 

 日本語が分かるだけでなく『人斬り』が何か、世間でどういう扱いか、祖先となれば心象がどうなりそうか、が分かるような見知らぬ他人は、そういないでしょう。いたとしても縁がなさすぎて無害だと思われます。

 

 ふふふと笑い合う私たちですが、ヒロキくんが何事か考え込んでいる様子なのに気付きます。どうかしたのかな。

 

「……そっか。分からないほうがいいこともある、よね」

 

 ぽつりと言ったヒロキくんですが、里崎さんは笑顔です。

 

「分かったとしても私は私です。犯罪者の子供は犯罪者じゃありません。子孫、となれば更に遠いものです」

 

 もしかしたら、何かで判じて揶揄われたことがあったのかな。それで、自分は自分だって周りに分からせた、とか?

 

 どうしてもマイナスなイメージを持ってしまう人はいるものでしょう。

 

「……なんて。数百年分も家系図が伝わっている家なんてそうあるわけないじゃないですか」

「……へ?」

 

 そこから冗談だったの?!

 

「小学生の頃、ゲームでその『人斬り松治郎』にされまして。私のクジ運が悪いせいとはいえ、ゲームが終わってからも『藩士仲吾郎』とか『町奉行寅太郎』とかにからかわれ続けまして。あなたがたのほうが余程人斬りですとお伝えしたものです」

 

 その『お伝えした』方法が気になる微笑みです。

 

「あはは。ゲームが終わったならもう松治郎じゃないのに、酷いね」

「ええ。祖先と子孫の関係もそうだなとふと思ってしまって。つい悪ふざけを」

「ううん。確かにそうだもの」

 

 そう言って穏やかに笑うヒロキ君にも、どこか含みがあるような気がします。

 ……そういえば、これってヒロキ君の研究内容ってこと? もしかして……工学だけじゃなくて、生物学等々も組み合わせた研究を? 話の内容からすれば、遺伝子から祖先を特定するプログ……ラム……。

 

 私の脳裏に、たくさんの遊具が並ぶ屋上が浮かんだ。

 資料であふれた部屋。最新型のワークステーション。走るプログラム。歩き去る少年。

 

 必死にドアを叩く男性たちの姿。

 

 ああ。

 覚えてなかったことでも人間の脳って記憶を眠らせてるけ、みたいなのを聞いたことがある気がするけれど。

 

 きっと工科大の注視対象はヒロキくん確定、なのでしょう。

 

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 毎日運動してたら普通はぐっすり寝れる。しかし何故かあまりよく眠れていない。

 来年度松田さんと諸伏さんに降りかかるだろう命の危機、その二年後の伊達さんの事故、それらが頭から拭えない。

 そんな中でのホームとは程遠い海外での長期出向、ではあるけど……。

 私はもっと大丈夫だと思ってたんだけどな……。

 

 そして二月七日。

 

 逆夢でますます沈むメンタルが逃げ場を求めて睡眠に縋ろうとする。しかしその睡眠がそもそもの地獄。悪循環です。

 だというのに大敵の睡眠不足に陥ってる。健康管理失敗です。これ公協、なーんて……はい……言ってみたかったんですすみません……。

 

 ──萩原さんの──殆ど原型を留めないどころか欠片だとか、そうなってしまうまでのかっこいい立ち回りとかまできっちり見せられる。私は何もできないどころかそこにいない。

 落差が酷くて地獄でしかない。もちろん今この現実の彼そのものです。前世で見た漫画やアニメが流れるわけじゃない。

 本当は、本当は、彼はこうして亡くなっている、調子に乗るな、全ては助けられないくせに、と勝手に自分でその警鐘を鳴らして更に泥沼に嵌まっていく。

 

 ──櫛森(くしもり)さん……。

 

 優しい声がする。里崎さんが頭を撫でて下さっているような気がします。私の周りは本当に優しいかたばかりですね。

 里崎さんや志保さんやヒロキ君との穏やかな日常も、研究室でのやり甲斐がありすぎるお仕事も、とても幸せなのが事実です。

 今私の目の前に居るのは彼らだ。心配なんかかけたくない。

 

 でも、まだ起きられないみたいです。情けないですね。ごめんなさい。

 

 寝る前にパソコンやスマホ、テレビを見るのは控えて……梅昆布茶だっけ。ああ、日本で買っておくんだったなあ……。

 

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「……どんな夢を見るのですか?」

「……」

 

 落ち着いた時にはお昼をまわっていました。眠気が抜けなくて頭がすっきりしない。ストレス緩衝のためと身体がまだ睡眠を求めている。私の脳はその睡眠がストレスをくれるのだという認知はしてくれないらしい。

 

「……七日って碌なことがないんです。両親の命日だったり、大事なかたがたが解体できない爆弾(トラップ)に遭遇したり……散々でしょう?」

 

 へにゃりと笑って肩を竦めたら、里崎さんは痛ましいものを見る目をしておられました。ウッ、心配はかけたくありません。

 

「なんとか生還なさってるのに私は不安が抜けないみたいで、七日が来るたびに思い出してるみたいなんですよね。女々しくて自分で嫌になります」

 

 私は引き続きへにゃりと笑う。

 里崎さんはふっと目を伏せた。

 

「お優しいのですね」

「……へっ?」

「ご自身ではなくご友人を心配なさっているでしょう? でも、あなた自身が大怪我を負ったんですよね?」

「……ぇえ……!? ……何でご存知なんですか……お恥ずかしい……」

 

 頭を抱える。どうせゾロ目たち(フラグメント)で情報共有されてるのでしょうけど……。

 実働部隊筆頭な私の情報はこうしてダダ漏れな上色々と利用されているようですが(震え)、裏方さんたちの情報はあまり此方には来ません。実働部隊が捕まって自白剤投与されたりしたらたまりませんものね。

 

「……ですが、怪我は単に私の失敗です。考えが甘かったんですよ」

 

 私は苦く笑う。

 

「もし甘かったのだとして、あなたはそのツケをご自身でキッチリ払ってますから……並大抵ではないと思いますよ」

 

 真剣な顔で言っていただけるのは、ありがたくはあるのですが。

 

「自分の不始末くらい自分だけ(・・)で解決したいものです。私は周りに頼れるからこなせてるように見えるだけですよ。……里崎さん、ご飯は食べましたか?」

 

 多分話を切り上げたがっているのを察してくれたのでしょうね。彼女は「そういえばまだですね」と、寂しげな微笑みを浮かべました。




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転生者
キャラエピソードや黒の組織関係以外の本編、そして最初のほうの映画に関しては結構記憶があやふやな主人公ですが、直面すればなんとなく思い出すか《超える力》(便利)が発動することでしょう。

里崎さん
クラスメイト絶許(にこっ)。
紫微星は北極星ではなく桔梗の花のイメージです。星型で紫だからという単純さ。

ヒロキ君
この時期はまだ八歳です。やば。数え年九歳。
まだDNA探査プログラムやノアズ・アークは開発途中なので監視がそこまで厳しくはないという設定。
少しプログラムの方向性を見直し始める。
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