最初の爆弾事件から四年。
この年十一月六日には、もうひとつの爆弾事件が起きる。
第一の課題は皆さんを巻き込んで渋谷に行くきっかけを作ることでした。
萩原さんが生きてくれている今、『彼の墓参り』なんてものは存在しません。
私一人で渋谷に向かってもあのプラーミャに対抗することなど到底不可能です。囚われていたナーダ・ウニチトージティの男性を救出することもできなければ、かなりの規模であろう爆発をとめることもできないでしょう。
また『何となく不安』を持ち出す?
いや、十一月七日に絶対に何かあると警視庁ぐるみで確信している今、『不安』といえばそれなので、その前日のことだと指定するのは難しい。
……七日について何かしら話し合っておきたいから、お昼休憩時に集まってほしい、とか?
ついでに、渋谷に行きたいお店があるのでそこで食べたい、とか。あんまり機会ないですし。
私のお部屋(元降谷さんのセーフハウスのひとつ)は歌舞輝町に近いわけですが、渋谷区はその南。そう遠くもないので私が行きたいと言い出してもあまり不思議はないかもしれない。
思い出せ、思い出せ!
……多分映画では降谷さんと松田さんは駅に向かう途中で事件に遭遇していたような……?
TR渋谷駅付近といったらご飯のおいしいところはたくさんありそうです。
ただあまり駅に近すぎると事件現場を通りすがらない可能性がでてきます。廃ビルがありそうなのもそう駅に近い場所ではないかもしれませんね。
ただ建物が密集してはいたから、そう離れてもいないでしょう。
残念なことに、萩原さんのお墓があったお寺の名前が思い出せません。肝心なところで抜けている。
とはいえご本人に菩提寺はどこですかなんてとても聞けない。何かのもじりだった気がしなくもないのですけれど。
覚えられてたらネットで検索するだけで済んだのに。その周辺やそこから渋谷駅までの途中で通りそうなお店を探せば良かったことでしょうに。
いちファンなのに不覚です。
試しに渋谷駅周辺の寺院を検索してみたら当然山のようにヒットするわけで、絞り込むのは不可能ですね……。
「……渋谷駅前から少しだけ離れてるような、隠れたランチスポットとかありませんかね?」
以前水着を買うときに頼った同僚の女性にそう聞いてみたら、彼女は一瞬ぽかんとしました。そして直後のことです。
「
ものすごくキラキラした表情で、私の両手を包みさえして彼女は言うのです。
その勢いにびびってしまう。けれど、ああ、そういえば。
「
だから聞いたんだと思って喜んで下さったのかな。少し良心が痛みます。
「そうです。だからいっぱい知ってますよ! ふふふ、どこがいいかなあ。櫛森さん何系がお好きですか?」
「そうですねえ……ひとまず和食でどこかありませんか? 寿司とか高級そうなのじゃなくて、気軽に入れそうな」
個人的にはファミレス的ななんでもアリのところで良いのですが、何故か降谷さんの顔が浮かびました。
それにファミレスそのものだと、わざわざ渋谷に行くこともないとなりかねないですしね。
「いいですね! 今日のお昼早速行ってみますか?」
「ありがとうございます、ぜひぜひ」
私の車で往復すればそこまで時間はかからないことでしょう。
キッチリ昼休憩時間が決まっている職場でもないですし。……その代わり気を付けてないとご飯どころか色々忘れて、人間の形を失いかけるのですが。
そんなこんなで、私は石上さんとよく食事に行くようになりました。渋谷の色々なお店(和食だけではない)に少し詳しくなりました。ありがたいことです。
私のほうから何か返せるものはあるだろうか……歌舞輝町のおいしい居酒屋とかバーとか? ……今はまだやめておいたほうがいい気がしました。まず石上さんがお酒好きかどうかを聞いてからにしましょう。
服やアクセサリーのお店に関しても私が知るよりもお洒落なところをたくさんご存知で、変装のためになりそうで嬉しいです。
私は以前まであまり着飾ることに興味がなかったので、志保さんたちとお出かけする以外では安さやシンプルさ等でしか見て回ったことがない。しかしこちら方面でも私に返せるものがない……! どうしましょう。
ひとまず。
そしてご紹介いただいた和食のお店のなかでもお気に入りな所を選び、十一月四日という、とてもギリギリになって皆さんに呼びかけました。日を選ぶ幅を持たせないためです。
-『同僚に紹介してもらった和食のお店に行きたいのですが、ここで六日あたりに皆さんで七日についての詰めのお話でもしませんか?』
キラキラしている田中さんスタンプとともにお店のURLを貼っておきます。
-『お、美味そうだな。オーケー。呼び出しさえなけりゃな』
伊達さんです。良かった一人目!
-『面倒』
松田さんです。ウッ。
でも。
-『陣平ちゃんは俺が引っ張って来るよ! こっちも呼び出しなかったらだけど!』
ワァイ。
ぐっどな田中さんスタンプを送ります。
-『分かった、時間を作る』
珍しく降谷さんもFINEに反応してくれました。きっと和食につられたのですね。
-『いいね、オレも行けそうだ』
こちらも珍しく反応してくださった諸伏さんですが……彼は無理やり時間をお作りになるのではないですか……。
知らないふりをしましょう。
これで皆さん渋谷に連行できそうです。
石上さん、本当にありがとうございます。お礼は何がいいかなぁ。
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お店は皆さん気に入ったみたいでした。麺類も丼物もおかず類も充実していて、和風系洋食もちらほらあります。料理人が三人いらっしゃって、それぞれが得意なものを出していらっしゃるようです。それだけあってか結構大きなお店です。
「しかしいいなここ。ただちょい遠いから入り浸れなそうでざ~んねん」
萩原さんが本当に残念な顔をしています。
「同僚がこのへんに住んでまして。美味しいお店を尋ねたらたくさん教えてくださって。またいつかこことは別のお店にも行きましょう」
「汀ちゃんが……普通の女子してる……」
萩原さん……?
「自分でも驚いているので気にしないでください」
「その、笑顔なのに閻魔大王のようなオーラばりばりな時は降谷ちゃんにすんげー似てきてる気がするよ」
「萩原?」
萩原さんは当然本家な降谷さんにもその笑顔を向けられる。
「オイ、そう時間はねーんだ。明日について話すぞ」
松田さんがそう言ったのは、しかし皆のじゃれ合いにひと段落がついてからだった気がします。ふふ。
「まず何もねーなんて絶対ぇありえねぇ」
「だな。届くのはいつも
「ああ」
「じゃあ届いたら俺が知らせるから、皆通話繋いでおけ」
「頼んだ」
伊達さんは明日からの本庁配属でしたね。なんてタイミングでしょう。
そして多分、何の会話か分からない程度に留めようとしておられますよね。壁に耳あり。
「僕については期待しないでくれ」
「同じく」
肩をすくめる降谷さんと申し訳なさそうに苦笑する諸伏さんはそうですよね。伊達さんがふっと笑う。
「二人は今は適当に聞いてろ」
「班長の知らせ以降は臨機応変としか言えねえな……俺も萩原もダチ集めて待ってるわ」
松田さんが腕を組んで眉間に皺を寄せながら瞑目しています。
「バッチリで安心です。私は
「わーい、楽しみ!」
萩原さんが満面に笑ってくれています。
機動隊が待機する予定があるのはものすごく心強い。
「ええ。念入りに準備したいので色々聞いたり頼んだりすると思いますが、お忙しい場合は聞き流してくださいね」
無事帰れたら祝杯をあげたいのは本当の本音ではあるのですが。
『私は自宅待機です。
走り回ってでも絶対に食い止めましょう。
必要な情報があれば念入りに調べて、現状を伺ったり提案したりします。
が、立て込んでいたり必要が無かったりしたら聞き流してください』
やんわりこんな感じです。多分皆さん察して下さる。
「お前絶対作りすぎるだろ、自重しろよ」
「ふふふ」
松田さんそれは無茶するなってことですよね。
保証しかねますが、命を粗末にする気はありません。というか絶対松田さん人のこと言えないですから。物語上どうこうではなく、そもそもアクセルしか付いてないですもんね……。
と言いますか、もうほとんどテロですからこの国を護りたい公安関係者が多少しゃしゃってもいいと思うんですよ。だからって調子に乗りすぎる気はないのですけれど。……本当ですからね?
……皆が皆疑いの目か苦笑をくれています。なんてことでしょう。
「ま、こんなところか」
松田さんが締めて、引き続き食べつつ楽しい雑談が続きました。
ああ、しあわせ空間だなあ……。
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帰路。
伊達と諸伏はそれぞれの担当エリアへ。
櫛森のミラジーノも降谷のRX-7FDも松田と萩原の二人を詰め込むには狭く、それぞれ一人ずつ乗せて渋谷駅へと向かう。
「悪いが送るのは駅の手前までだ」
「ハイハイ、分かってますよ」
運転席の降谷に松田が肩をすくめてみせるが、降谷はその向こうでパトカーが赤色灯を灯したまま停止しているのを目にして表情を固くした。そのため松田もそちらを見遣る。
「……停めろ。何があったか聞いてくる。
「いや、付き合うよ。『人目に付く場所』でもないしな」
そんな降谷に松田はジト目を向けるが相手は歯牙にもかけない。
話を聞けば廃ビルに潜り込み暴れている者がいるとのこと。
降谷がまだ近くにいるであろう同期たちにスマホで応援を求める。
警戒しつつ割れた窓を目指せば、縛られた男性が一人。どう見ても尋常ではない。
囚われていた彼がこの場を咎められず離脱するためにと松田が名刺を渡した。ただし所属は機動隊爆発物処理班のもの。
ひと悶着あり、松田は発見した爆弾の解体に挑み、降谷がペストマスクにパーカーの不審人物──プラーミャを追った。
程なく櫛森と萩原が爆弾解体中の松田に合流する。
大体の話を聞いた櫛森は、当然のごとく赤バッジを着けて拳銃を構えると辺りを窺った。
爆処Wエースはそんな櫛森を複雑そうな顔で見遣るが、何も言うことなく再び爆弾に集中し始める。幾度か既に目にしている上事情は知っている。加えて実際発砲してきたようなのが相手だ。そうした武装があるに越したことはない。
だが彼らの中で櫛森はあくまで民間人。どうにも驚いてしまう。
そこに舞い戻ってきた不審人物を煽る松田、櫛森が威嚇射撃を行う。
逃げる不審人物、追う櫛森。
伊達が松田の怒鳴り声と発砲音を聞いて血相を変えながら、可哀想な一般車両のドアを構えて現れる。そして諸伏と降谷がその場にほぼ同時に合流した。
萩原に「あっちだ!」と言われこの場にいない櫛森が追っているのを把握し降谷と諸伏が走る。萩原から流れを聞いた伊達によって松田は軽く叱られる。
しかししばらくして再び解体現場にプラーミャが舞い戻り、伊達が例のドアを構えて爆処組を守る。
三人に向けて拳銃を構えるプラーミャだったがそれは横から諸伏に蹴り上げられて跳ね飛んだ。それを素早く受け止めた諸伏は流れるようにプラーミャに銃口を定めた。再び逃走するプラーミャ。
「こう戻って来るんなら他に仲間はいねぇ! ここはいいから追え!」
松田に言われて伊達と諸伏は降谷と櫛森との合流を試みる。
伊達と諸伏に合流した降谷は二人の常軌を逸したサポートを受け更に追いすがる。
その先に訪れた降谷の危機を救ったのは、不意を打った諸伏による超高精度の射撃。
そして。
逃げを取ろうとしたプラーミャの左足に赤い閃光が突き刺さったかと思うと、重い着弾音と共に脛の半ばから先が消失した。
ひとたまりもなく彼女は倒れ込む。赤い色が広がる床も削れていた。側にある手榴弾の痕と同等かそれ以上だ。
撃たれた本人を含む屋上の三人はぽかんとする。正規の方向から屋上にたどり着いた伊達も呆気にとられた。
ただプラーミャ以外の者にはこれをやった張本人に心当たりがあった。
絶対に櫛森だ。
姿が見えないことからこれは恐らくあの長大なスナイパーライフルによるものだろう。
90秒充電のようなものが必要と言っていただけあってかなり強力で、500m先の的すらほぼ消失したあれだ。
しかし呆けている暇はないらしい。
そんな状態でもプラーミャは残る右足と腕とを使い動こうとした。
背筋の凍る思いで三人は彼女を取り押さえる。
櫛森の所業もあながち過剰ではなかったのかもしれない。
恐らく櫛森が独り離れて待機したのはこちら側がごちゃつくのを避けるためだったのだろう。居ないことに多少気を揉んで周囲を探した伊達は杞憂に胸を撫で下ろす。
三人は溜め息をついた。爆弾犯確保の安堵も含まれていたのかもしれないが。
プラーミャを厳重に拘束、及び止血処置し、更に念を押して諸伏が失神させた。
三人が爆弾のもとに戻ってみれば既に櫛森はそこに合流しており、未知のものに見えた爆弾も既に解体されていた。
さすが爆処Wエースと全員が感嘆で息を飲む。
櫛森はその処理済みの爆弾の、液状爆薬が混ざるはずの部分にガムが詰め込まれているのをじっと見つめていた。きっと松田が一応の予防としてやったことだろう。
彼女が泣きそうな顔で微笑んでいたのを降谷は少し不思議に思うが、危険な爆弾を解除できたことへの賞賛の気持ちからだろうと流した。
誰からともなくハイタッチが行われる。
こうして。
──
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映画タイトルそのままをかくのもどうだろうと調べて、ハロウィンは万聖節の前夜らしくこんななりました。
転生者
やはり爆弾に対して《 呪印解除 》の
周りの皆を信じているのもありますが、『未然に防げなかったこと』に関してはできるだけこの世界の人々の活躍の場を奪いたくない。その基にある信念や覚悟を大切に想っている。チートはできるだけ封じたいのもある。
大ファンとしては何度もハロ嫁見てたけど前世のことだから、細かいことそこまで覚えられてない。
月参寺の名前も分からないし、松田さんの煽りが恐ろしすぎてつい威嚇射撃した。
その後見えないとこでアクロバティックな追いかけっこを必死にこなしてたりする。しかしまかれた。
これ以上現地にいても邪魔をするだけと判断し、最終的に屋上に行くのは覚えてたから少し離れたビルの屋上で
スナイパーライフルの《 魔弾の射手 》は威力も異常なことを自覚しているので、これまで人に撃ったことはなかった。
プラーミャはこれくらいじゃないと止められないかもしれないと思ってのことではあったけど、結果にビビる。
い、命あるだけまだ……マシ……?
※芋る、芋砂:FPSにおける定点スナイパーの揶揄。語源は諸説。チーム戦では人数負けの要因になったりもするため。しかし転じて、必要に応じた自身の行動にまで好き好んで用いる者もいる。オリ主、ゲーム脳。
このプラーミャの足については裏で『まあ2222なので』で処理され手回しがなされている(怖)。
降谷さん
和食大好き。正直つられた。
「あの犬のスタンプは一体……?」
「ああ、結城さんのワンちゃんです」
「……そうだったか」
三年後ハロくんが来てくれたらきっと転生者にさりげなく推す。ただし転生者は推されなくてもメロメロ。
Wエース
二人一緒に切磋琢磨し続けたため、二人とも技術がとんでもない。
転生者が公安の協力者なのも、データ的には警察に所属してはいるらしいのも知っているけれど、最初のモヤシな頃を知っているため違和感が拭えない。
のちのち捕まえたのがプラーミャであることが判明するわけですが、それを『
ただし事件自体は『ガス漏れ』として処理されている。
しかしここでプラーミャが捕まると、彼女とは別の暗殺者がその仕事を肩代わりするような形になることが予想されるため、同じように恨みを買っていく者が現れる可能性はあるのかなぁ……?
伊達さん
伊達さんがやってた降谷さんポーイ、ドラマでSITの人たちがやってて(もちろんあんな飛距離じゃない)実際にやれることなんだって感動しました。
でもSITも同じ捜査一課とはいえ伊達さんが同じこと(しかもそれ以上ってレベルじゃない飛距離)できるのすごないです???
刑事になってからもきちんとずっと身体鍛えてるんだろうなあ。
諸伏さん
あの弾にはほんと感動ですよね……。
あれなかったらプラーミャによる犠牲はもっと増えてたんじゃないでしょうか。
最近丸くなってきた転生者に気を許し始めてくれた同僚。
プラーミャ
次第に人数が増えていったとはいえ、普通なら一人で対処できない人数ではなかった。むしろ手こずったのが想定外。
なので逃げ果せていればかなり根に持って、彼らが互いを呼んでた名と警察官らしきことから特定して報復する気。
特に右腕が上がらなくなる原因になった諸伏さんは真っ先に探すけど、全然辿れない。余計に躍起になって探す。それがこの捏造世界では眠れる獅子ならぬ蝙蝠を揺り起こすことに繋がるはずが、オリ主が生きてチートしてるため、半分だけならない。