降谷さんの災難   作:千里亭希遊

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47.やさしい風が贈るもの。

 降谷は苦く笑いながらくしゃりと己の前髪を掴んだ。

 

「どこの誰が隠したがろうが、(みぎわ)が本気で抜け出したければ誰にも引き止めることなんてできない。敵う奴は絶対にこの星のどこにもいない。彼女が今までそれをしなかったのは、できるならどんな相手だろうと他人を傷つけたくなかったからだ。

 それだけでしかなかったってことが──彼女が、どれだけ強く己を律していたのか……今更よくよく分からされたよ」

 

 恐らくジンとウォッカがあそこまで瀕死に追い込まれていたのは、彼女が蓄積されたダメージ──これ程眠り続ける程の──により半ば自失状態にあり、そのまま全力で制圧したからなのだろう。

 

 ふわりと、今にも泣き出しそうな柔らかい笑みを、降谷は彼女に向けた。

 

「……なんて、優しいんだろうな」

 

 彼女は、その手が取り零した命が数多あるからこそ、やむを得ずその手で消した命が決して少なくないからこそ、徒に命を消そうとしない。

 

 相手がどれだけ凶悪な犯罪者であろうとも。

 ──己を無理矢理誑し込んだ『秋本』が相手であろうとも。

 

 思えば本当に、あの時(・・・)から、いや最初から、彼女はそうだった。

 それは買い被りなどではない。

 

 降谷の腕の中に閉じ込めらた彼女は、彼を思い切り振り払うのを抑えていた。あの頃の彼女の力では彼に何の痛みも与えられないというのに。

 そして、頭の回らない内に彼の腕に爪の痕を残した、そんな程度で心を痛めた彼女が、その傷にしたことはといえば……。

 あの中国マフィア崩れの二人組に拉致されそうになった時には、あの頃にしては派手な音を立ててきちんと抵抗していたのに。

 

 そもそも、過去痴漢被害などに数多く見舞われていたというのに、彼女はその犯人を傷つけるのを、本当の意味では(・・・・・・・)恐れたのだろう。

 彼女が初めてあの銃を使った日、自分は過去に変質者を殺しているのだろうかと震えていたくらいだ。

 

 あの能力(ちから)にはあらゆる『準備』の必要が無い。なのにあの、降谷の先輩が狙われた瀬戸際まで発動しなかった。それ以前にも彼女には変質者に抗うべき機会が数多くあったはずなのに。

 

 代わりに対抗として、威力や効果が過剰な薬剤を開発しようとはしていたが、それら自体は命を脅かすものではなかった。

 それが無辜の民に向けられれば犯罪の苗床と化す可能性が高く、実際それは犯罪組織に目を付けられもした、にしても。

 だがあくまで代わり。あれ程の戦闘能力を秘めながらも無関係な学問(そちら)に走ったのは、大きすぎる力から無意識に『逃避』するためだったのではないかとさえ思えてくる。

 

 この国を、その国民を──そして彼女自身が口にしたよう、降谷とその同期たちを、守りたいと、彼女はひたすら鍛錬に励み、自身の特異な能力を活かして(・・・・)戦って来たように見えていた。

 

 しかし彼女はその特異な能力を殺して(・・・)戦っていたのだ。

 

 拳銃を持たせたのは降谷と諸伏、そして公安の指示だが、それを主な得物としてあのマスケット銃をほとんど使わなかったのは、彼女が誰もを『護りたかった』からだ。

 彼女は『護る者』で、それでいて『投げ打つ者』だった。

 

 例えば自身とその周りに危険が及ばないよう犯人を殺す、というようなことは彼女には容易かった。しかしそれはしなかった。

 彼女は、犯罪者を殺して終わらせるのではなく、法の下に引きずり出すことを、正規の正当な正義が執行されることを、己の命よりも優先していたのだ。

 

 犯罪者と同じことに手を染めることが数多あったとしても、己は正義ではないと嘲笑(わら)いむしろ悪だと嗤いながらも、彼女の根本は最初からそこにあった。

 正義に寄り添う者で在ろうとした。全てがそこに帰結する。

 

 余程潜入捜査官らしい民間人(きょうりょくしゃ)

 

「なんて奴だよ……ッ、本当に……!」

「……な、にを……」

 

 掠れた途切れ途切れの声がその場の空気を固めてしまった。

 

 突如視線を釘づけにされたそれはクロノスタシスそのもので。

 

 誰もが息をとめた。何もかもがとまった気がした。

 

「……っ……」

 

 降谷は彼女と目が合った。

 

「言、て……る……ですか……」

 

 薄っすら苦笑いを浮かべた彼女は小さくけほっと咳き込んだ。

 四人ともが彼女の横たわる寝具へと駆け寄り、手を伸ばす。

 

 ──ああ!

 

「いきなり、ッ、喋るな! 喉に障る! どれだけ寝てたと思ってるんだ!」

 

 喋るなと言われたためか、彼女はただ、引き続き苦く笑っていた。

 

----------------------------------- side:Furuya

 

 どうしても説教のようになってしまう会話が続き、段々と最近の他愛無い日常の話になって、班長とナタリーさんの赤ちゃんを見るためにとっとと退院しろ、という話になって。

 

 するり、と彼女が自身の腹を撫でた。

 

 やはり覚えてるんだな。

 

「……いるんですよね」

 

 彼女の表情は穏やかで、慈しみさえ感じられるものだった。

 

 しかし周囲の僕たちは青くなる。

 

「……な……そん、な……まさか……」

 

 今初めて知った松田と萩原の顔色はより悪かったかもしれない。

 

「こんなことああいう(・・・・)世界では珍しくもないです。珍しくもないのは心苦しいですけど……」

 

 彼女はふにゃっと苦笑した。

 

「私の力が足りなかったからです。ごめんなさい」

「……ッ、あれは……! あの位置に居たのが君だったからで……他の皆も回避できなかったはずだ」

 

 ふっと、彼女は自嘲気味の微笑みを浮かべた。そして何も言わない。きっと譲る気がない。

 ふわっと彼女は笑った。

 

「……降谷さん、助けに来て下さって、ありがとうございます」

「君は自力で制圧してたよ」

「ふふ。じゃあ、回収して下さってありがとうございます、ですかね。私にあの部屋を出られる体力があるとは思えませんでしたから」

 

 それはそうなのかもしれないが。

 

「……力を振り絞って電話したのも君だ。受話器が外れたままだったのも幸いだったよ。おかげで部屋の特定も早かった」

「……そうでしたか」

 

 彼女はふわりと微笑む。

 ずっと、ふわふわしている。

 

「……堕ろさないで下さって、ありがとうございます。私の意思を尊重して下さったんですね」

「どうするかは、ゆっくり……」

「ゆっくり考えていましたよ。確か四ヶ月ほどですよね」

「……」

 

 ぐっと拳に力が入る。

 

「……妊娠自体は、二ヶ月だ」

「あら。そうなんですね」

 

 やはり彼女は、ふわりと笑う。

 

「誰がどうしてなんて関係ありません。命は命です。私は産みます」

「……ッ!」

 

 彼女はそちらを選ぶ可能性が高いとは、思っていたが。

 

「それがどういうことか……ッ!」

 

 松田が悲壮な顔で訴えかけたが、汀が人差し指を口に当ててにこっと微笑んだものだから、先を続けられなかった。

 

「ジンは恐らく、私が苦しんで堕胎を選んで一生その命を背負ってまた苦しむ、みたいなのを目論んだわけでしょう? その通りになってやる気はありません」

「しかし……」

 

 苦言を呈しそうになる僕も、汀に微笑まれて言葉を飲みこむ。

 

「見せつけてやるんです。子供っていうのはしあわせの象徴です。親が誰だろうと関係ありません。元気に育ててあげられたら、逆にジンは鼻を明かされることになるでしょう」

 

 ふわりと少しの間目を伏せる汀。

 

「たくさんたくさん、愛してあげるのです。こんな身勝手に宿された子だからこそ、諦めません。……すくすく育つ我が子を見せつけられたら、あのジンだって柔らかくなるのかもしれませんよ? 黙秘してそうですが、話をしてくれるかもしれない」

「あいつはまだ意識不明だよ」

「へっ!?」

 

 汀は心底驚いたようで目を丸くしていた。

 

 ……やっぱり、意識朦朧故の猛攻であって、意図して瀕死にまで追い込んだわけじゃないみたいだな。

 

「命に別状はない。お前は気にするな。むしろよくやった」

 

 彼女は眉尻を下げて苦そうに笑う。

 

「……どれくらい経ったんですか?」

「三週間程だ」

「……わあ。私の睡眠記録、また更新ですね」

「こんなの更新するんじゃない」

「……えへへ。ごめんなさい」

 

 彼女はふわりと苦笑する。

 ふわふわ。……ハロを思い出した。君は懐かれてるんだから、とっとと退院してあいつにも会ってやれよ、かなり淋しがってるぞ。

 

 ……以前僕の教育係だった先輩が汀を『ぽやぽや』と表現していたな。

 

 今の汀も、『ぽやぽや』しているとは思う。それこそまるでハロみたいに。

 

 怒涛の状況で強い目をするようになった彼女だけど、本来はこういう穏やかな人だった気がする。

 もう遠く、こんなに年月が経ってしまったな。

 

「……ともかく。堕ろしません。絶対にです。私もこの子も、負けません」

 

 そう言って腹部を撫でる彼女の笑顔は、慈しみで満ちていた。

 

 周りの男どもは何も言えない。

 

 そして。

 

 意を決したように動いたのは、景光(ヒロ)だった。

 彼は真剣な顔で汀の手を取り、身を乗り出した。

 

「汀さん、結婚しよう」

「………………えっ?」

 

 汀がぽかんと、目をこれ以上なく大きく丸くしている。

 

「君がそうやって戦うなら、オレは支えたい。……オレは君が好きだ」

 

 それに、と、ふわりと笑ってヒロは続ける。

 

「……もう組織はほぼ壊滅だ。返事を考えてくれないか」

 

 彼女は毎回それを理由に、ヒロに返事をするのを避けていたからな。

 

 萩原が顔を片手で覆って天を仰いだ。

 そういえばこいつも汀が好きだったんだな……? 全然気づけなかったよ。

 僕も小さな棘が胸を刺すのを自覚した。

 ……お互い、ヒロに先を越されたな。

 

 しかし汀は、すごく苦そうな微笑みを浮かべる。

 

「……あのジンの子供なんですよ? あなたを殺そうとさえしたあの組織の大幹部の、です」

「そんなの関係ない。その子は、汀さんの子供だ。……汀さんさえ良ければ、オレの子供にしてほしい」

 

 即答するヒロに彼女はまた目を大きく丸くする。

 

 そしてまた、苦笑した。

 

「……愛せますか? 本当に?」

「オレだって汀さんにその疑問をぶつけたいくらいだけど……君が言った、ジンに敗けてやらないっていうの、それを思えば愛して愛して、愛し尽くしてやるって思うよ」

 

 にこっと、ヒロが笑う。

 

 汀は目を伏せた。

 

 そして少し時間が経つ。

 やがて目を開けた彼女は、またふわりと、苦笑した。

 

「……頼もしくて、ありがたい、って思っちゃうけど……ヒロさんを巻き込んでいいのか、私には分からないです」

 

 ふっとヒロが笑う。

 

「オレが巻き込まれたいんだ」

「……」

 

 眉尻を下げた汀がヒロを見つめた。今度は笑っていない。

 

「……オレだって、四ヶ月、考えてたんだ」

 

 また汀の目がみるみる丸くなる。

 

「じっくり、ゆっくり、考えたんだからな」

 

 全員、絶句している。

 

 ……それは……その所業(・・)はもう最初から(・・・・)……見せつけられていたし、汀が言った通り裏社会では珍しくもないし、彼女を発見した時裸だったし、だからこそ検査もしてもらっていたわけだけど。

 

 ヒロは、握っていた汀の右手を少し持ち上げて、抱きしめるように己の胸の前に引き寄せた。

 

「汀さんがオレのこと嫌いってわけじゃなければ……どうか、オレのお嫁さんになって下さい。オレにその子のお父さんにならせて下さい」

 

 汀は引き続き眉尻を下げたまま、ヒロを見つめる。

 

「時間が欲しかったら、次は指輪を持って申し込むからそれまでじっくり考──」

 

 ぽろぽろと汀の目から涙がこぼれて絶句する。萩原と松田が一瞬腰を浮かせかけてた。

 

「……誰も、巻き込みたくないって、思いました」

「……うん」

 

 ヒロがふわりと笑う。

 

「だから独りで頑張ろう、って」

「……うん」

 

 ぽろり、はらり。

 

「……と言いますか……公安の人が、結婚ってできるんですか?」

 

 僕には彼女が往生際悪く話をあっちこっちにやろうとしてるようにしか見えない。事実目が少し泳いでいる。

 

「できるよ。戸籍が消されてるわけじゃないからな。でも普通は関りを持てなくなる。だけど、君は公安の協力者で、オレのことを知ってる上に、今まで共闘してきたし、多分これからもそうなんだろう?」

 

 ぽろぽろと、こぼれる雫。

 

「……私はきっと、『秋本さん』が好きだったんです」

 

 どくりと僕の心臓が跳ねる。

 

「うん。知ってる」

 

 ヒロがまた、ふわりと笑う。

 

「でも彼は居なくて、どうしたらいいか分からなくて」

 

 捜査のためとはいえ弄んだ心。そして僕はそれにカタを付けられたとは言い難い。

 

「……『彼』にも、あなたにも、どっち付かずの態度を続けてしまって」

 

 ……それは君が気に病むことじゃない。

 

 ぽろぽろと、汀の目からこぼれるものがとまらない。

 脱水症状とかにならないだろうな……?

 僕は思わず、目に入ったペットボトルの水を、蓋を開けて彼女に差し出す。

 

 今はリクライニングに背を預けている彼女は、それを小さくありがとうございますと、眉尻を下げつつ笑って受け取った。

 

「……ごめんなさい」

 

 受け取ってそんなことを言うものだから、僕は渋面になる。

 汀がこの場で『秋本=僕』だと言っていない気遣いを無駄にはしたくないから、僕には小さく首を振る程度しか、返せない。

 彼女は苦渋の滲む笑顔でしばらく僕を見つめて、そして、また苦笑を浮かべてヒロを見た。

 

「……あなたを引き止めるのは、たいへんだったんですよ?」

「……っ」

 

 また話が飛んで、ヒロが息を飲んだ。

 それは、ヒロが公安からのスパイだと組織にバレたあの日のことなんだろう。

 

「私なりに色々準備をしたんです。それなのに全部かわされてしまって、逃げられて。……あの部屋、降谷さんがご用意した部屋ですよ?」

「……いや。あいつらなら破れないものじゃなかった。それは分かっただろう」

 

 あの部屋は結局組織の人間の侵入を許した。

 ヒロが張り込んでいなければどうなっていただろう。

 

 汀は知らないだろうが、萩原と松田も僕の密告によってヒロが死のうとしたことを知ってる。

 だから二人もその時のことだと察して少し渋い表情をしていた。

 汀がまた、ふわりと苦笑した。

 

「……そうですね。あの時辿られなかったのは、あなたの死んだフリが功を奏しただけなのかもしれません」

「その死んだフリは、オレ独りじゃとてもできなかった。本当に、皆、ありがとう」

 

 ヒロが汀だけじゃなく僕や萩原と松田にまでしっかりとお辞儀をしてみせたものだから、僕たちはたじたじとしてしまう。

 汀はまた真剣な顔になって、そして少し俯いた。

 

「……この子が大きくなるまで……できれば一生あんなことしないでって言ったら、あなたの足枷になるじゃないですか。今後もヒロさんが公安に配属されるとしたらもちろん支えさせていただきますし、あんな状況になるなんて許しませんが……そういう問題じゃないでしょう」

 

 危機に陥る可能性の高い仕事に就いていて子供を幸せにする、なんて、死ぬ気がなくとも死ぬ可能性のある者が責任を持つなんて、言えることじゃない、かもしれないけど。

 

「それは汀さんには言われたくないよ。いっそ二人で警察に関わるのはやめて──」

「それが足枷だって言ってるんです。警察官になるのがあなたの夢だったんでしょう? 中でも公安への配属は能力が認められた証です。それをこの子のために捨てるのは、歪だと思うんです」

 

 ぐっと、ヒロが押し黙る。

 彼女は眉尻を下げて微笑む。

 

「……確かに、お互い様ではありますね。私はこの力がある限りこの国に尽くすと決めています。でなきゃ、公安のあずかり知らぬところで何かを助けたくて動いて、大惨事を引き起こしかねません。常々、お願いしてるじゃないですか。私はご指導いただいてるからこそ、手綱を握ってもらってるからこそ、暴走せずに済んでるだけなんです」

 

 ふわり、と、彼女は笑う。

 

「……こんなめちゃくちゃな力でとっても頑張っても、あなたには逃げられたんです」

 

 それだって、ヒロを瀕死に追い込めばあの部屋に留められただろうに。彼女はやはり、そういう手段を選ばなかった。

 

 また、ぽろぽろと……彼女の涙はすぐに滂沱となった。彼女の表情が歪む。

 

「……人の気も、知らないで……っ」

 

 彼女は不安だと言っては対策を立て、実際にその不安を払拭してきた。

 しかし思えばヒロだけは、それが上手くいったとは言い難い。

 あの随分あと、事前に対策ができないかと尾行していたらしい彼女はいつも巻かれてしまっていたのだと、ヒロを称賛していたことがあった。そして教えを乞うてもいた。

 

 巻かれたから、ほとんど何もできなかったんだ。

 セキュリティ皆無の格安SIMなんてどうして持っていたのかは分からないけど。

 

「……全部投げ出してでも引き止めたかった。でも、できなかった」

 

 彼女は、ひく、としゃくりあげる。

 起きたばかりの身体に障るんじゃないかとハラハラするけど、多分大事な話だから、とめるものではないんだろう。

 

「……あなたを、何があっても失いたくなかったんです」

 

 ひく、としゃくりあげながら、彼女は懸命に言葉を紡ぐ。

 

「それくらい、大切なんです。大好きなんです。でも、恋とかは分からない……っ! 私は、どうしたらいいんですか……っ」

 

 彼女が分からないと言ってしまうのは、仕事だったとはいえきっと僕に責任がある。

『秋本』に対する想いが恋だったとは分かる彼女が、その心を封じなければと抑え続けたことで、恋うということが分からなくなってしまったんだ。

 ……仕事のためだったとはいえ、僕はそれを掘り起こそうとさえした。

 

「恋愛結婚じゃなければいけない決まりなんてどこにもない」

 

 僕が言うと、彼女はぽかんと、涙を流したままこちらを見た。

 ……これがカタを付けるってことだなんて、胸を張っては言えないけれど。

 

「お互いを大切に想えるのなら、それが一番いいのはどんな場合でもそうだろう。盟友とか、同志とか、そういう結婚があったって僕は素敵だと思うよ」

 

 彼女を見習って、ふわりと笑いかける。

 しばらくそのびっくりしたような表情で僕を見つめ続けて、そして。

 

 彼女はその顔のままヒロを見つめた。

 

 ヒロもふわりと、似たような雰囲気で笑い掛けた。

 

「……ったく。意地張ってオシゴト続けて二人とも殉職とか許さねーからな。……許さねえ、けどな……仕方なくそうなっちまったら、俺や萩原や、班長が何が何でも引き取って幸せにしてやる。お前らが悔しがるくらいにな。ガキ略奪されたくなかったらキッチリ生きやがれ」

 

 まだぽかんとしたままの汀と、同じ表情になったヒロが松田のほうを見た。

 松田はケッなんて言って目を逸らした。

 

 ふふっと萩原が笑う。

 

「俺たちもいつ吹き飛ぶかも知れない危ないとこにいるってのに」

「吹き飛ばねーよ。吹き飛ぶかよ。解体できないモノなんて無いくらいになってやる。今のところ解体できなかったブツはねえが、技術は日々進歩してっからな。おい萩原(ハギ)、サボったり脳みそ退化したりしたら許さねえからな」

「ああ、分かってるよ。俺だって1個解体できなかったの未だに悔しいし、『俺たちに不可能はない!』とか女のコたちに自慢できるように日々精進してるんだからな!」

「いちいち不純っぽさ装うんじゃねえ!」

「なっ」

 

 固まった萩原に対しヘッと鼻を鳴らすと、松田は不敵な笑みを浮かべた。

 

「……だからよ、櫛森(くしもり)が言った通り、子供を理由にして勝手に仕事諦めんじゃねえぞ。やってく中で無理だってなったらそこで話し合え。それなら、情けねえとかじゃなく現実見ただけだ」

 

 ぽかんとし続ける汀。

 ぐっと真剣な顔をして、汀の手を握り直すヒロ。

 

「……汀さん」

 

 はっと、彼女はヒロを見上げた。

 

「オレは、全部諦めない。その子も、仕事も、……汀さんも」

 

 汀がまた、目を丸くする。

 

「公安に残るかどうかも、残らないとしてどの部署に行くかも、オレの意志で決める。その子を笠に着たりしない」

 

 彼女はぽかんとしていた口元を、ゆっくりと引き締めた。

 

「だから……オレのお嫁さんに、なって下さい」

 

 ぽろぽろと涙をこぼしてヒロを見つめて、そしてやがて彼女はきゅっとヒロの手を大切そうに握り返した。

 

 だけどきゅっと目を閉じたまま、その手を祈りを捧げるかのように握っているばかりだった。

 

 言葉にならないのかもしれない。

 

 僕と萩原と松田は三人で目を合わせて頷くと、ぞろぞろと部屋を出て行く。

 

 

 

 あとは、二人でゆっくり話すんだよ。

 

----------------------------------- side:Morofushi

 

 退院して落ち着いてから、オレたちはすぐに籍を入れた。公安にも然るべき手続きをした。

 でないと汀さん、逃げそうだから。

 できるだけ休んでほしくてもう帰ろうと言ったんだけど、彼女はおずおずと行きたい所があると言った。

 

 それは彼女のご両親の墓だった。

 今年は、命日にお参りできませんでしたから、と儚く彼女は笑った。

 

 お墓とはいえオレは一人で緊張してしまって、目前にして彼女に気付かれた。

 

「……あ! ……す、すみません、いきなり連れてきてしまいまして……」

 

 項垂れて立ち止まる彼女に慌てる。

 

「いやいやいや……! 大切なことだと思うから。行こう」

 

 オレは彼女の手を引いて歩いた。

 彼女の名字はそんなにたくさんあるほうじゃないから、オレにもすぐに見付けられた。

 

 思わずじっと見入ってしまう。

 ここが、汀さんの家の──。

 思えばオレは、彼女をここから連れ出してしまったんだな。

 その日のうちにお伺いすることになるなんて思いもしなかったけど、これはこれで良かったのかもしれない。

 

 あれこれと掃除をし始める汀さんにまたオレは慌てる。

 

「上とか下とかはオレがやるからな?」

 

 いそいそと墓石の上から水をかけていると、ふふふと彼女は笑った。

 

「過保護なお父さんですね〜」

 

 そう言って彼女はまだ薄いお腹を撫でた。オレは思わず心を暖かくする。

 だって最初はお父さん扱いを躊躇われてたから。その子はオレの子だよ。

 

 買ってきた花の、彼女がまとめた分から外れたものを集めて、もう一方の花立に生ける。

 こんな程度でありがとうございますってにこっと笑う汀さん。癒しだなあ……。

 

「いつか、ヒロさんのご両親にも、ご挨拶ができたらなって……思います」

 

 オレは苦笑した。

 東京のおじさんとおばさんのとこには一応まだ顔を出せないし、それに長野は。

 

「そうだなぁ」

 

 今はちょっと、遠いなあ……。

 でも、その子と一緒に、絶対行こう。

 

 蝋燭に火を灯して、線香の煙を薫らせて。

 オレは今は数珠を持ってないからそのまま手を合わせた。汀さんもないみたいだから、彼女もふと思い立っただけなんだろう。

 ……そういうのに自由に行けるって、なんかいいな。

 

 手を合わせて内心でオレは自己紹介してみる。

 信仰心はそんなに高いとも思わないけど、やっぱりお嫁さんの家族へのご挨拶はしておきたい。

 全部伝えたら、こんな危ない奴にうちのこは渡せないって怒られそうだけれど。

 

 皆さんのお嬢さんは、そんな危ないところで生き抜いているとても強くて……その上 優しい人です。

 そんな彼女の隣に立つことを、どうか許して下さい。

 

 そして……この子にこれから先何が待っているかは未知数ですが、オレも精一杯頑張るから、見守っていて下さいね。

 

 ふっと汀さんのほうから視線を感じてそちらを見遣ると、彼女は目を丸くしてた。ぱちぱちとまばたきしてる。

 

「……どうしたんだ?」

「えっ……ああ、いえ、随分しっかり手を合わせて下さいますね……」

 

 えへへ、と彼女はどこか照れたようにはにかんだ。

 ああ、ちょっと長かった、のか?

 

「だってさほら、オレにとっては初めてのご挨拶だよ」

「ご、ご挨拶……そんな固いことを仰らないで下さい……」

 

 俺は思わずちょいっと彼女の耳の上あたりに人差し指の背で触れる。

 

「何だかカチコチしてるのは汀さんじゃないか? オレが大袈裟にしてしまったかな」

 

 そのままぽふんと彼女の頭の上に掌をのせると、彼女はふにゃりと笑った。

 

 色々と片付けてから、また来ますと一礼し去ろうとすれば、さあっとなんだかとても気持ちのいい風に包まれた。寒い季節なのにちっとも嫌な気がしない。

 その風が向くほうへと思わず視線がつられたけど、勿論何か目に留まるものはなく。

 

 だけど、オレたちは思わず二人で顔を見合わせて、そしてどちらからともなくふふっと笑い合った。

 

----------------------------------- side:Furuya

 

 これまで怒涛のように張りつめた時間が過ぎていった反動か、毎日がゆっくりになった気がした。

 

 あの組織に関して事後処理等含め完全にカタが着くまではそれなりに時間がかかって、仕事に追われはしているけれど、今までと比べるべくもなく随分穏やかな日々を送っている。

 

 そんな間に、班長とナタリーさんには二人目の子供ができて、汀とヒロは生まれた息子と共に静かな式を挙げて、そういう幸せな場面に立ち会うことも増えていった。

 

 汀の子に対して僕みたいな『実父の仇』(つまり僕も彼に敵愾心を抱く可能性がある訳だ)が近づかない方がいいのか、それとも公安として目を付けておく必要があるのか、迷っていたが……そんなのは、彼女が溢れんばかりの愛情を注ぎ、それに眩しい信頼を返す息子の姿を見ていると全部吹き飛んでしまった。

 

 あの子は可愛い。

 親がジンだろうと関係ない。可愛い。

 うん。

 あの子はヒロの子だしな!

 

 気づいたら構い倒したくなっていて、親であるヒロに膨れられたりした。彼は書類上でも実父である道を選んだ。

 ……顔の似ているジンは、息子君には祖父として紹介されているらしいが。

 

 奴に幸せに生きてる息子を会わせることが汀にとっての仕返しでもあるから、しばしば祖父扱いしに会いに行ってるみたいだけど、ヒロにとっては複雑だろうな。

 

 そういう謎な状況が多少は残りながらも幸せな家族を二組も見ていられるそんな時間が愛おしくて愛おしくて──。

 同期たちで、彼らの子供たちを構い倒したりして──。

 ハロも彼らに懐いて愛くるしさを振りまいていて──。

 子供たちの幾人かは警察官を目指して、そして実際その夢を掴んで──。

 

 でもまず始めに汀が天寿を全うした。

 一番若いくせに、誰よりも──それこそジンよりも早く彼女は逝ってしまった。

 子供たちが皆自立した後ではあったけれど、それにしても早かった。

 起きたら妻が冷たくなってたとか考えるのも苦しすぎる。

 あの頃のヒロを、僕たちは少しでも支えてやれていただろうか。

 

 皆してそんな悲しみも抱えながら──僕はあの組織以降もいくつか潜入任務をこなしていて、長く現場に在り続けた。

 

 しかし最後までそう在ることは上が許してくれず、階級もどんどん上がっていって、最終的に裏理事官の一人を務めることになった。

 僕があの頃してもらったことを、潜入任務にあたる者たちに少しでも返していけたらいい。

 

 同期たちも皆定年まで警察官を勤め上げ、それぞれが穏やかで……少々ヤンチャな日々を過ごす。

 幸せだった。間違いなくそれは、幸せな日々だった。

 

 なあ汀、そろそろ皆そっちに行くよ。

 君はいつもみたいに微笑んで僕たちを迎えてくれるんだろうか。それともとうに次の生を受けているのだろうか。

 

 君は僕たちを眩しいと言ってそうやって微笑んで見守っていたけれど、僕たちにとっては、君も眩しい存在だったよ。




/

 生存ルート、完。

 長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
 次のフェーズは番外編のようなものになりますが、もしよろしければ引き続き?.?.が救われるまでお付き合い下さい。そんなに長くはありません。

転生者
 両親のお墓では何かを見たようだ。
 スナッフフィルム垂れ流しについては誰も彼女に伝えていない。知らぬが花。
 概要で思いっきり『嫌な人は嫌かも』としてはおりましたが、彼女の選択については本当に人それぞれになるのかなと思います。
 もちろん書いた人はこんな経験してないので色々と浅く、それが欠点で嫌になるのかもしれませんが。ともかく。すべてフィクションでファンタジーです。むしろつらいことからは率先して逃げるべしと考えております。
 彼女の選択については『コナン箱推し』って言ってる彼女個人のスタンスによるものが大きいです。ジンに対する忌避感が異常に薄い。
 この捏造世界において彼は犯罪組織の幹部で根っからの『悪』です。何なら彼女は彼の残虐非情さを傍らで直接目にしています。だというのに平和ボケとも言えるでしょうし、現実を見ていないとも言えるでしょう。
 しかし彼女は彼に対して、『犯罪者』以前に『ひと』である認識を持っています。そもそも彼女は自身を『善』だとは思っていません。目指すは『善』に寄り添うことであれ、事実ヤバいことに手を染めたりもした『悪』であると思ってる。だから『悪』だからといってそれだけで唾棄したりはできない。
 更に、漫画のキャラとして知っていたという前提があることで『一個人である』イメージを強く持ち、個性(キャラ)が初めから『悪』を内包していて、『そういう存在(モノ)』であるのが当然になってしまってる。
 だから『父親がジンであること』と『ジンが犯罪者であること』は彼女が堕ろす理由にはなりません。
 彼女に懸念があるとしたら「自分に育児なんてできるの!?」の一点に尽きる。精一杯頑張る。諸伏さんの協力にたびたび泣くかもしれない。幸せ泣き。
 また、彼女の特異能力はあくまで前世からのもので、この世界にFF14が存在しないため遺伝はしません。あのゲームの『想いが動かす力(デュナミス)』を知らない人には使えない。
 能力発現のトリガーの一つがこの『前世の記憶』であるなんて知り様もない降谷さんは、思い出すまでの彼女についてはちょっと持ち上げすぎてるかも。降谷さんのロミトラにかかるなんて出来事がなければ記憶は戻らないし、危機に陥ったのが自分だけなら最初の引き金は引かない。ただそれだけです。
 皆より二、三十年早く旅立ったのは能力の使いすぎによる老衰。突入部隊の一人一人に複数の魔土器をぶつけたりのああいう所。ずっとそうしてた。桁がおかしい。
 年齢的に有り得なくて皆驚愕する。でもなんとなく皆理由を察して、本当に働きすぎなんだよばかやろうって泣いて酒を飲み交わした。

降谷さん
 無意識ではあろうが彼女が降谷さんを『降谷さん』呼びする頻度のほうが高くなってるのに諸伏さんは『ヒロさん』としか呼んでないことに少し傷ついてる。けれどやはり、『彼女には寄り添えないと決めたのは自分だから』と公安務まりすぎてて、『それでいい』とも思ってる。
 ただし呼び方については諸伏さんのほうは彼女に下の名前で呼ぶよう再三はっきり要求していた結果ではあり、名字が一緒になって彼女の妙な引け目が解けてくまで内心ではしばらく『諸伏さん』呼びのままだったのですが、そんなこと降谷さんには知り様もない。
 独り身のままかはご想像におまかせします。
 そこそこ幸せな人生だったとは思ってる。
 ヒロを泣かすなよ汀。

諸伏さん
 義両親や高明さんにはいつかひっそり伝える。
 ジンの息子の二年後に男の子、また二年後に女の子を設ける。
 皆に分け隔てなく接してとても素直にすくすく育つ。
 ただ反抗期はそれなりに苦労した。
 夫婦協力して其々のとたたかった。皆ひきわけ。
 汀が早くに亡くなってしばらく酷く落ち込んだ。
 君これからゆっくり幸せになったって良かっただろ、何で生き急いだんだ、子供たちなんてこれからますます活躍するところじゃないか。
 子供たちにジンに会いたいと言われたら連れてく(汀か公安がいないと会えない)けど、何やかや理由をつけて彼自身はジンに会わない。

「父さん何でじいちゃんに会わないんだ?」
「んー、昔喧嘩してな」
「喧嘩? 父さんが喧嘩?」
「なんだその反応。昔の結婚は大変だったんだからな」
「あー、『娘さんをぼくにください!』ってあれ?」
「よく知ってるなあ」
「そういう親父さんじゃないといいなあ」
「ん?」

萩原さん
 伊達家と諸伏家を暖かく見守り、両家の子供に懐かれる。
 女性と遊ぶことはあっても結局交際まで発展しなかった模様。

「なんかあの人他に大切な人いそう〜、この前別の女といたし!」

 とかを全員から言われてそう。可哀想。…自業自得かも。

松田さん
 相変わらずずっと千速さんに付き合ってって言い続けてたけど、いつの間にか言わなくなってたかと思えば、しれっと皆が知らなかった誰かとくっついてたりするかもしれない。皆から言えよ!って怒られる。
 爆処Wエースが解体できなかった爆弾は萩原さんのあの1個だけとなった。
 櫛森お前、結局分解(バラ)させてくれなかったな。無理です。
 ずっと『櫛森』って呼んでそう。そのうち汀本人から「も、諸伏です…!」って言われるようになって、ふっと目を細めて笑いそう。
 でもそれでもたまに癖で『櫛森』って呼んじゃいそう。

伊達さん
 しあわせな家族を築く。
 諸伏家とは家族ぐるみで仲がいいかもしれない。
 転生者と諸伏さん両方どうしても家にいないときはかっさらうようにして子供たちを預かる。頼もしい。とても懐かれる。
 こちらも三児のパパ。

志保さん
 たくさん話し合って、薬の公開はしないと決めた。
 両親の研究は完遂できただけで夢が叶ったからいいの、ということだそう。
 しかしナノマシン技術は公開する。それだけで毒薬を作ることはできないので。
 ピコマシンについては、専門外だからもうたくさんよと思ってる。
 しかし転生者はそれも使って色々熱心に研究し始めてて、子育てしつつよくやるわねと感心する。
 この人協力者もやめてないのよね? 身体大丈夫? ご安心ください、立派なメスゴリラなだけです。

明美さん
 絵本作家業はたいへん好調。
 組織が完全に崩壊したとなってから、志保さんと共に元の名に戻した。
 転生者につけてもらった名前も好きだったわよありがとうと微笑む。
『白木原朱里』は絵本作家としてのペンネームとなった。
 大君は今頃どうしてるかな、私のことはもう忘れちゃったかもしれないわね。

赤井さん
 すべて終わって沖矢昴をおしまいにしてたら父が帰って来た。
 気まずそうにしてる父に何事もないように接して落ち着かせた。
 真純さんは務武さんと会ったことがなかったため最初ぎこちなくしてたけど比較的すぐに打ち解ける。
 メアリーさんはつれない素振りを見せるかと思いきや泣いて抱き着いて口調が元に戻る。
 そんな家族の様子を穏やかに眺める赤井さんでした。
 明美は、あいつは俺が近づかない方が幸せなんじゃないだろうか。
 と思いつつ、機会があったら話をしてみたいとは思っている。
 お前さえ良ければ、俺はFBIを抜けて日本国籍を取得するよ。
 ……さてさて、お二人の行く末はどうなったことでしょう。
 ※シボレーの焼死体(人形)は公では身元不明男性ということになっていて、『赤井秀一』が死んだことにはなってない。

工藤君
 組織対策本部解散後少ししてシャーリー平井はシンガポールに帰ったことになり、日焼けがある程度抜けて髪色を戻すと工藤新一として帰ってきて、毛利探偵事務所所属の探偵として仕事しつつ大検取って蘭さんと同じ大学に合格する。
 帝丹高校は単位足りなくて中退したけど、大学でサッカー部のチームメイトやクラスメイトと再会してわいわいしてる。
 おっちゃん恩返しするからな……! と燃えてるけど毛利探偵はんなもんいらねぇ独立しろと思ってる。ただ毛利探偵は工藤君には弟子に対しての、そして娘のパートナーに対しての親心があるから、邪険にしはしない。
 工藤新一奇跡の生還! とか言われるけどその間のことについては絶対に口を開かないため、実はあの事件を解決したのは…等色々噂される。
 ご両親は、これまでを反省&対組織戦の間も「帰って来んなタイミング悟られたらどうする」って毛利探偵に言われてて、助言は送りつつも帰れなかったフラストレーションから、たびたび帰国して息子に構うようになる。過保護ぎみにまでなったので工藤君には遅い反抗期が訪れるかもしれない。
 組織壊滅までに起こらなかった原作の諸々がこれから彼に降りかかっていく。

黒羽君
 元の姿に戻った従兄弟と大学が同じでげんなり(学部は違う)。
 今度は大学生探偵かよ、俺は(もう)怪盗キッドじゃねーかんな。
 青子さんと蘭さんがすごく仲良くなってて、彼女たちによってしばしばWデートが催される。
 何だかんだ言って事件に遭遇すると従兄弟二人で協力して謎を解いたりする。そして工藤君が警察の人に耳打ちすると解決する。
 そこには稀にコルボーや優作さんが混ざってきたりもする。

服部君
 一葉ちゃんとともに大阪の大学に進学したけどちょくちょく東京に遊びに来るし、工藤君たちをちょくちょく大阪に誘う。
 そのうち黒羽君&青子ちゃんも巻き込まれる()ようになる。
 そこに何故か白馬君がイギリスから帰国してる時が重なると、絶対に何か起きるしかない。

ゾロ目さんたち
 転生者を独自に必死で追ってたけど見つけられなかった。
 顛末にしばらく里崎さんは沈んでて立ち直れなかったけど、我が子を愛おしそうに見つめる転生者の姿に少し救われる。
 皆相変わらず協力者してるし、実戦組はたまに捜査一課に駆り出されてる。
 偽造遺体作れちゃうやつらは阿笠博士とも繋がった。ただし悪いことはしない。
 お酒の組織以外にも犯罪組織とかいっぱいいる。今日も世界は治安が悪い。
 ただお酒の組織の件があって各国同士横のパイプがあるから、少しずつ治安は改善されて行くかもしれない。

泡雪ちゃん
 警察庁&東都大学薬学部&阿笠博士のデータ面の鉄壁セキュリティ。
 たまに綿引君やハロー探偵事務所の花澤さんとプログラム勝負してる。

ベルモット
 日本警察と司法取引したからある程度自由に出歩くことができてるけど、『クリス・ヴィンヤード』は突然表舞台から姿を消した。
 その後変装して日本で暮らしてる。
 しれっとどこかで優秀な秘書とかになってそう。
 もしくはパートのおばちゃんとかしてみたかったのよとか言い出しそう。
 週末に時々 angel と cool guy と共にお出かけすることがあってしあわせ。
 デートの邪魔になりたくはないから毎週とは言わないわ。
 たまに公安の捜査に協力したりもしなきゃいけない。

ミード
 日本警察との司法取引が成立し、絡繰りの館を管理してた能力を買われて阿笠博士の助手になる。
 探偵団の子たちを眺めてると心温まる気がしてる。
 志保さんは最初警戒してたけど、探偵団を見る目が優しかったからある程度気を許すことにする。
 ベルモットと同じく要請があれば公安の捜査に協力したりしなきゃいけないし、警察による機械系の依頼は優先してやらなければいけない。

ジン
 母国と本名捏造。カタカナにすると、フロル・ジニーチ・クロヴォプスコフ。
  姓は「血を流させる」って意味らしい上に「クロ」が入ってる。
 ジニーチなんてミドルネーム(父称)は存在しなそうですがどうしても「ジン」っぽい音を入れたかった。
 組織の幹部は固まらないようバラバラに都内の特別隔離施設に収監されてて(この捏造日本には終身刑あると思う。取り調べの時間が足りない)、転生者は長男が生まれて以降ジンのもとをたまに訪れる。
「おじいちゃんですよ~」とか言って目の前であやす。
 本名を知られてるっていうのと、子ども可愛いだろフフンされて、完全黙秘してたのが徐々に絆される。
 息子は話せるようになったらジンに「おじいちゃん、ひさしぶり!」ってきらきらして言う。この諸伏家長男のためにジンの部屋が独房然とした物じゃなくなっていったりする。
 こうして気づいたら情報提供とかしてたことに。本人不満。
 なんだかよく分からない所で人間としての幸せを見せつけられて困惑。自分と似た顔をした者が幸せそうにしてるのが不思議な感覚過ぎて訳が分からない。
 転生者と諸伏さんの目論見はほぼ成功してるし、子供からは「おじいちゃん」と認識されてやはり訳が分からない。俺は爺さんって年じゃねェ。
 本名知ってるくせに父称を付けてないらしいことが不満。そしてその不満に自分で不満。
 父称がついてたとしたらフローロヴィチ。日本の出生届にミドルネーム書く欄なんかないのよジン。
 更に時が経つとおにいちゃんおにいちゃんって弟妹からも慕われて皆幸せそうで、ジンは口から砂糖吐きそうになる。
 箱推しって言ってるからには『正義の味方側』だけが幸せになっていたら汀は少し胸が痛くなったのかもしれませんね。
 これがジンの幸せかは不明ですが、他人の幸せに中てられるくらいであられませ。

ウォッカ
 彼が転生者に手を出さなかったのは、ジンが彼女(の身体)を気に入ってるのを薄々察していたため。撮影とか薬の用意とか維持とか云々に徹した。
 転生者によるしびしび攻撃のせいで足が少し悪くなった。転生者が申し訳なさそうに見てくるからイラっとする。
 足のこともあり、ジンが脱走なんか企てようものなら足枷にできるだろうと、ジンが長年の右腕だったとみられるウォッカを見捨てるようなことはないだろうと、特例で独房はジンの隣。
 兄貴の息子……?
 内心メロメロになる。おい女、もっと兄貴に会いに来る頻度上げやがれ。

キュラソー
 日本警察と司法取引が成立してある程度自由に動くことができるようになった。
 組織の壊滅については終わった後で聞かされてちょっと拗ねる。私も汀と共闘したかったわ。
 でも、あなたが傷ついたら子供たちが悲しむから、ごめんね、って転生者に困った顔で言われて許してあげた。
 転生者が拉致されて云々は知らされない。何だかジンと息子が危ない気がした転生者。
 彼女の子供たちにメロメロ。長男の姿に少し首を傾げるけど、おじいちゃん似なのね、他人の空似ね、と勝手に納得──もとい、考えないようにした。同じ銀髪だわってにっこりするから長男に懐かれる。
 彼女も要請があれば公安に協力しなければならない。もしかしたら新たなゾロ目になってるかも。

烏丸氏
 色々話すまで解毒しない、と言われても黙秘を続ける。
 (このまま成長しなければ=烏丸氏の信憑性も増しますから…)
 書いてる人にはそのままハンストなんかして餓死しちゃいそうなイメージがありますが、そんなことにならず何かに感化されて口を割ることになって解毒もされて適正な刑罰を受けててほしいなと思います。
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