何がくるかサプライズになれてたら嬉しいです。
1.めぐるきせつのあとで。
ぼんやりと霞んだ視界。
耳も、聞こえづらい気がする。
身体だって動かせなくて、言葉も上手く紡げない。
あれで幕を閉じたと思っていたのに、僕はまたしぶとく目を覚ましたんだろうか。
皆が爆笑する姿が目に浮かぶ。僕はきっと悪かったな、なんて苦笑することになるんだろう。
「コイツ絶対零だろ」
……ん。
とても幼げな声をぼんやりと拾って、僕は内心で首を傾げる。相変わらずすべてがぼんやりしているから身体もそうできたのかは分からない。
「だろうな」
苦笑混じりの、やはり幼げな声がする。
「物心つくのが楽しみだね。覚えてるといいな」
くすりと笑うこえがする。
「俺たち皆そうだったんだ、コイツだけねーってこたァねえだろ」
「そうだねぇ」
くすくすと笑う声が複数。
「いらっしゃい、零。またいっぱいバカやろうぜ」
子供たちの声には覚えがないのに、何故かとても懐かしくて、そして嬉しいと、思った。
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僕は五人兄弟の末っ子だった。
一歳になる少し前に僕は何やかんや思い出した。
同時に、生まれた時に感じた懐かしさも思い出す。あれから普通の赤子らしく育ったとみられる期間についてはあまり記憶がない。そんな頃なんてどうしたって脳が育ちきってないから、記憶できていないのかもしれない。
突然流暢に喋り始めた僕に兄弟たちは一瞬きょとんとしつつ僕を見つめ、そして笑った。
「やーっぱり」
嬉しそうにそう言ったのはきっと萩原だ。七つ年上の長男だ。……何だって?
「よォ。早いなオメー。やっぱ今回も人間やめてんのな」
君は松田だな? 三つ年上の次男だ。……ええ……。
「女の子だと珍しくないみたいだけどねえ。ほら、小さい頃は男のほうが成長遅めだろ」
ヒロっぽい三男は松田と二卵性双生児。……。
「色違ってもお前はお前だなあ」
一つ上な四男は班長っぽいんだけど、そう言う彼にも男前なごつさがみられない。いや、二歳なんて年のせいかもしれないが。
「……これ、転生、とかいうやつ、なのか……?」
非現実的だろうとそうにしか受け取れない。
「だと思うよ。今も非現実的って扱いは変わらない。でも現状はそうとしか判断できないよな」
ヒロが苦笑している。
「俺は陣ちゃんが来るまで夢か妄想だと思ってたよ」
「無理もねぇわ」
萩原が笑い、松田が首をすくめている。
驚くベきことに皆名前に『前』のものが一文字入っていて、奇妙な繋がりにやはり夢の線を強く疑うも、確かめようはない。……もしいつか目が覚めるようなら、夢ということになるなんだろう。
あと、僕たちがもらった名字は『桜井』だった。日本が大好きな僕はとても嬉しい。父さん母さん、ご先祖様、本当にありがとう。
「……もしかして、他の奴らもいるのか?」
「いや、今の所他には誰も。
萩原が肩をすくめて苦笑した。
そうだな、確かに分かった。
……そして、多分かつての名字では呼べないためだろうが、彼からのこの呼ばれかたは少しこそばゆかった。
「……
ぽつりとそう口にして、自分で苦笑した。
……きっと僕の中で彼女の存在も大きくなっていたんだな。
「どうだろうねぇ。俺らの年の差もちぐはぐだし、いたとしても年が全然違うかもしれないよね」
「いるんなら会えば分かるさ」
そうだな、会ってみないことには分からないんだろう。
「もしかしたら妹になったりして」
「……母さんに無茶言うなよ」
萩原の言葉に皆げっそりした顔をした。
僕は頭痛がしそうで頭に手をやる。
「……育てるのも大変そうだろ……」
あいつの自己犠牲精神は親にとっては怖すぎるんじゃないだろうか。
皆神妙な顔で頷く。言い出しっぺの萩原でさえ「そうだな……」と引きつった笑いを浮かべた。
「みんな〜、ごはんよ〜」
そこに母さんの声が聞こえる。
ここは子供部屋。小学校にあがっている萩原は勉強部屋を持ってるんだけど、こっちに遊びに来てる。……宿題は終わったんだろうか?
それぞれ返事をしてダイニングに向かうのだが。
「は、はぎ……研にいちゃん、自分で歩きたい」
慣れた様子で萩原に抱っこされて顔が熱くなる。
「だーめ。まだこけちゃうことあるでしょ? 今は練習は無ーし」
「諦めろ。皆通った道だ」
「……」
皆萩原に運ばれたらしき事実に変な笑いが出そうになる。
けど、萩原は以前から面倒見のいいやつだった。年齢差に少し不満を感じはするが、兄なのは似合うとは思う。
……班長が四男なのにはちょっと不思議を感じてしまうが。兄貴肌と言えば彼な気がする。
そして何度も何度も、皆に「小さいれいくんかわいすぎかよ……」みたいに言われて僕は膨れることになる。君たちだって可愛いものじゃないか。
年の割に大人びた兄弟たちに両親は何の疑いを向けることもなく、愛情深く育ててくれた。
少し子供らしく振る舞うようにはした。皆そうだったからからかい合ったりは……少ししかしなかった。
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「……汀を見つけた」
「マジ!?」
研
それは幼稚園の入園式でのこと。
同じ年少組に彼女は居た。つまり同い年だった。
『前』とは全然違う容姿と名前。だが確かに彼女だと分かった。
「でも、多分彼女は覚えてない」
「……ああ……そうだったかぁ……」
「生まれ変わりとか普通は信じられねえ。隠してる可能性もあるんじゃねぇの」
陣兄が言う。
「かもしれない。怖がられない程度に接触してみようと思う」
ヒロ兄がそわそわしている。
前は夫婦だったくらいだものな、当然か。もう一個年が近かったら園で直接会えたかもしれないのに、残念だ。まあそうなってたらあまりにも母の負担が高そうだけど。
「父さんと母さんが集合写真買ってたから、届いたら教えるよ」
両親は携帯やデジカメで僕のことはめちゃくちゃ撮ってくれてたけど、さすがにその中にはあの子が映り込んでるものはなかった。
しかしヒロ兄は少し俯いて瞳を揺らした。
「……見知らぬ奴らに勝手に顔と名前知られるって可哀想な気もする」
それはそうかもしれないけど。
「なんか危害を加えようって訳じゃないんだ。味方は多いに越したことないだろう。……君が彼女の敵になるようならその時は僕が引き離してやるよ」
「……」
ヒロ兄は怯えた目をし続けた。
……大切すぎたらこうなってしまうのかな。多分『前』を引きずってしまうのが怖いんだと思う。
後日。
きゃいきゃい言いながら、届いた集合写真の一枚をかっさらい僕たちは子供部屋に撤収した。
くしゃくしゃにしないでよ、という母の声と、あの子たちはそんなことしないよ、という父の声を背に聞きながら。
「……この子。名前は『きちでんじしおり』」
「へえ、可愛い名ま…………え……え?」
せりふ半ばで研兄の顔が強張る。
「……何つった?」
陣兄の顔も怖い。
「…………嘘、だろ……?」
航兄がぽかんとしている。
ヒロ兄なんて……青褪めてる。
皆どうしたんだ?
「……オイオイ……いや、零は……録画見てなかったな、多分」
「録画……?」
「……っ!」
ヒロ兄ががばっと写真の横に手をついて、食い入るようにして見下ろした。
「……何で……いや、偶然、だろ……顔、は……ドラマには似てな……いや、あれはあくまで……」
ぶつぶつ呟く声には恐怖が籠もっている気がした。
「な、なあ、いったいどういうことなんだ」
「……『及川
陣兄の問いに僕は記憶を探ろうとする、が……。
「……うーん……」
「ああ、録画見てねえとかより、零はまだしっかり戻ってねえのかもな」
「戻ってない?」
陣兄の言葉に首を傾げる。
「まだ三つだからな。なんかガキの脳みそ的には云十年分の記憶なんてキャパオーバーかなんかなんだろう……多分だが」
「な、なるほど……?」
僕が混乱を抜け出せずにいる中。
「……ええと、な……『吉田寺栞』は、
「……っ!」
言いにくそうに研兄が教えてくれて、ヒロ兄が息を詰まらせた。
「……! なん……何だって……!?」
「で、でもほら、偶然の一致なだけかもだろ? そもそも漢字違うかもしれないし!」
研兄がフォローしようとしてくれたけど、楽観はあまりできない気がした。『きちでんじ』なんて苗字、そうありふれてない。
『転生』なんて事態がそもそも驚くべきものであって、そんなことがもし本当に起きたのなら、物語が現実になろうと、もしくは、僕たちが本の中に入ってしまっていようと不思議はないのかもしれない。有り得ないと否定してかかるのは危険だ。
「……あちこち地名違うしメーカー名だのがオマージュっぽいのばっかだし……時代か何かかと思ったんだが、あの本の世界って可能性が出てきたわけか……」
陣兄の不敵そうな笑いが少し引きつってる気がする。
ヒロ兄がさっき『向こう』って言ったのもそう思ったからかもしれない。
「……まあ、本の中だとしても俺らには確認のしようがねえ。気にせず普通に生きときゃいいだろ」
航兄が苦笑しながら言った。それはそうだな。
「それに……その本の中だとして、皆が内容覚えてるんなら、対策取れるかもしれないだろ」
「!」
ヒロ兄が、ばっと顔をこちらに向けた。
「いや……まず『しおりちゃん』のお父さんがライターかどうかだな。あと『及川梗ノ佑』が存在するかどうか。それらが合致しなけりゃ、気のせいで片付けられる可能性が高い。下手にかためてしおりちゃんを怯えさすことはないんだからさ」
研兄が逸る僕たちを抑える。……確かにそうかもしれない。
だからまずは皆で色々調べることにした。
僕はまず、どうにか『しおりちゃん』と仲良くなろうとした。彼女の父についての情報を得るためだ。
おかげで周りにずいぶん囃されることになったけど(幼稚園児って結構マセてるよな……ふと、『少年探偵団』だった三人の顔が浮かぶ)、そんなこと構ってられない。
彼女はほわほわした子で、話しかければ素直に応じてくれていたけど、囃されるようになってからは少し恥ずかしそうにされるようになってしまった。
でも押しに弱いのは相変わらずみたいだったから、引くなんて選択肢は僕にはない。何かにつけて彼女の近くに行く。……他に友人ができないとかはよろしくなさすぎるから、頻度はできるだけ落としてるつもりだけど。
「なにかいてるの?」
「えっとね、ねこだよー」
にこにこしながらクレヨンをくりくりと動かす彼女のスケッチブックには、豪快な丸で構成された生き物が描かれている。確かにひげなんかも見て取れる。
顔を上げた彼女は、それを聞いてきたのが僕だと分かると、顔色を変えてばっと描いていたものを隠してしまった。
「だめー!」
「な、なんでだよ」
「だ、だって……」
たじたじする僕ともじもじする彼女。
「……さくらくん、おえかき、じょうずだし……」
「え?」
思わずぽかんとする。
「わたしへただから、わらうでしょ……」
「!」
僕にどんな印象を持ってるんだ?
思わず膨れる。
「わらわないよ。ぼくそんなひどいやつじゃない」
彼女ははっとして顔をあげた。
そして数秒目を丸くして僕を見つめていた。……こそばゆいんだが。
やがてふっと彼女は俯く。
「ご、ごめん、ね……」
「べつにいいよ。でもさ……ぼく、さくら、じゃないよ。さくら『い』だから」
「……!! ご、ごめんなさい……」
ますます彼女はしょげてしまった。
「いいにくいなら、れいってよんで」
「!?」
彼女が目を丸くして顔をあげた。
「ぼく、おにいちゃんがよにんもいるんだ。だからなまえのほうがいい」
同じ組に皆いるわけでもなし、何が『だから』なのか分からないけど強引に要求する。
しかし彼女はもじもじと俯いてしまった。
「……あのね、ええと……『さくら』、きれいだった、の」
「……」
うん。桜、綺麗だよな。美しい名字をもらえたことには、僕も幸せを感じている。
「かってに、ごめんなさい」
「……ふふ」
僕は思わず笑ってしまった。彼女がまたはっと顔をあげる。
「……ありがとう。うれしい」
「……!」
彼女も笑ってくれそうな気がしたんだけど──。
「ひゅーひゅー」
「またさくらいとしおりがくっついてるー」
「ち、ちがうよー!」
周りのやつらが囃しはじめて(ひゅーって言葉で言うんだよ、ちょっとかわいいと思ってしまった)、彼女はクレヨンとかを一生懸命まとめるとぴゅーっと走って行ってしまった。
「うるさいじゃまするな!」
大人げないというなかれ、こういうのはきちんとはっきり言葉と態度でしめさないといけないんだ。
「なーんだよー、さくらい、しおりのことすきなの?」
すーぐそう繋げるんだから。
彼女が将来ころされるかもしれないから情報収集中、なんて正直に言うわけにはいかない、にしても。
『今』はそうした感情を否定する必要なんかないけど、僕はあの頃の『汀』に対しての気持ちを引きずる気はないし、そういう想いが『今』あるのかどうかも正直分からない。
だから、彼女に近づこうとしてる裏には恋愛感情が第一にあるわけじゃない。
だけどこの場は、そうと言い切ってしまったほうが分かりやすくはあるんだろう。
「わるいかよ、くやしかったらおまえたちもすきなやつみつけてみせろよ」
「!」
囃してきた奴らが目を丸くした。
「だいたい、きちでんじのことしおりってよぶとか、おまえたちこそあいつがすきなんじゃないか? だからくやしいんだろ」
「なっ……!」
まあ、『きちでんじ』が三、四歳児には長いっていうのはあるのかもしれないけど。
……でも何人か顔が赤くなったぞ。あの子、隅に置けないな……。
「う、うるさいばーか!」
誰からともなく散っていった。以後それほど囃されなくなった。可愛いものだな。
年中組になったとある日。
この頃には園児が増えて二クラスになったけど、幸いしおりとはまた同じ組になれた。
「しょうらいのゆめ……」
色んな職業についてのビデオや、ちょっとした職場見学を経て、なりたいものを書かされることになった。うんうんうなる者、目をきらきらさせてフェルトペンを走らせる者、皆それぞれだ。
チャンスかもしれない?
同じ園でもあんまり人の親の仕事は耳に入らないくて、皆してやきもきしてたんだ。
ちなみに『今』は『探偵』はそう有名な職業ではないらしく、『及川梗ノ佑』も今の所探しあぐねている。
……思えば結構平和な気もするから、その分探偵は目立たないのかもしれない。
年号は向こうと同じ『
分かりやすい点で言えば、まだフィーチャーフォンが広く普及している様子で、スマホはそろそろ現れそうかなというくらい。
『及川梗ノ佑シリーズ』がそういう世界観だったんだろうか。
「……しおりのおとうさんとおかあさんは、しごとなにしてるんだ?」
「んー?」
こてんと彼女は首をかしげた。
「……ぼくまだよくわかんなくて。もっといろいろなしごとがしりたい」
「そっかー」
彼女はにこっと笑った。
「えっとね、おとうさんは……えっと……」
彼女は困った顔になった。
ど、どうしたんだろう。
「えっと……えと……そう! ほんをかくひとだよ!」
「ほん?」
「うん、パソコンでね、かたかたーって」
「へえ、パソコン、かっこいいなあ」
「ふふふー、でしょー、はやいんだよー」
内心穏やかじゃないけど、僕はにこにこ話してくれる彼女に合わせて微笑んだ。
ライターが幼稚園児にはよくわからないからこうなってる、のか……?
「でね、おかあさんは、おみせやさん!」
「おみせやさん?」
「うん! かさとか、ふくとかー! かわいいんだよー」
「そうなんだ、おしゃれそうだな」
「うん! おかあさん、おしゃれだよー。あさ、いつもおけしょうがんばってるの」
ふむふむと頷く僕の顔を彼女がじっと見てきたので、僕はきょとんと見返した。
「れいくんのおとうさんとおかあさんは?」
「おとうさんはけいさつかんで、おかあさんはぎんこういんだよ」
しおりの目がぱちりと丸くなる。……しまったな、分かりづらい、か……?
「……けいさつかん……!」
彼女の目がキラキラし始める。
「けいさつかん、いいなあ、かっこいいなあ、このまえ、こうつうきょうしつしてくれたひとだよね」
「ああ、うん、うちのおとうさんとは、ちがうひとがきてたけどね」
父は交通課じゃないからな。
そしてふと思い出す。
皆が口々に教えてくれたことには、『及川梗ノ佑』の相棒である『吉田寺
「……わたしも、なれるかなあ? けいさつかん!」
そう言って栞はにこにこ笑う。
僕はぽかんとしてしまう。このほわほわした子が、警察官に?
……いや、小さい子に下手なことを言うと一生引きずる傷にしてしまう。
「……けいさつかん、たいへんそうだよ? おとうさん、よるにもよくよびだされてるし」
「……! よ、よるに……!?」
「ほうりつもぜんぶおぼえなきゃ」
「ほうりつ?」
「みんながまもらないといけないきまりのことだよ」
「……なかにはいるときはおててをあらいましょう、とか?」
僕は微笑ましくてふふっと笑ってしまった。
園では屋外で遊んだあと、室内に戻るには手足を洗わなきゃならないってしっかり教わってる。水遊びしだしてべしゃべしゃになるやつはたまに出るけど、皆いつも一生懸命守ってはいるな。
「それもまもらないとだな。でも、もっとむずかしいきまりもいっぱいあるんだ」
「あっ、あかしんごうはわたっちゃだめ、とか」
「そうそう、そういうの」
交通教室で見た制服の警察官がかっこよく見えたのかもしれないな。女性も男性もいたし、本当にとてもかっこいいし。
「でもそういうの、わたしもまもらなきゃだから、どうせおぼえないといけないよね?」
きょとりと彼女が首を傾げた。
「ふふ……そうだな」
すべてを丸暗記なんてしなくても日常生活は送れるだろうけど、覚えたそうなら待ったをかけるようなことじゃない。
「じゃあきっとだいじょうぶだよ! よるだっておきてられるようにがんばるし!」
ふんすと息巻く彼女に僕は慌てる。
「だ、だめだよ、いまはたくさんねて、じょうぶにそだたないと、けいさつかんはからだがしほんなんだからな!」
「……し、ほん?」
おっと。僕としたことが。
「じょうぶでげんきじゃないと、けいさつかんにはなれないんだ」
「そ、そうなの? たくさんねたら、じょうぶでげんきになれる?」
「あと、たくさんたべてあそぶことだ」
「そ、そっかあ……じゃあわたし、がんばる!」
「うん、がんばれ」
しおりのお父さんのことが気になりつつもにこっと笑ってあげたんだけど、彼女はこてんと首を傾げた。
「れいくんは、けいさつかんにならないの?」
「……え?」
「だっていっぱいしってたでしょ、てことは、けいさつかん、すきなんでしょ?」
くりくりした目で聞いてこられてたじたじとなる。
いやまあそれはそうなんだけど、『前』の知識がある分なんだかずるい気もするし、別人になったんだからこの際違う職業を目指してみるのもいいんじゃないかという気もしてる。
「いっただろ、ぼくはまだよくわかんないんだ。けいさつかん、すきだしかっこいいけど、おとうさんがたいへんなのもしってるからな。だから、もっといろいろしりたい。……しおりのおとうさんとおかあさんのこと、おしえてくれてありがと」
彼女はぱちぱちと瞬きをした。そしてにぱっと笑う。
「んーん、れいくんもおとうさんとおかあさんのこと、おしえてくれてありがとう」
ああ、本当にふわふわした子だ。見た目も声も全然違うし、丁寧語でもないけれど、雰囲気は似ているのかもしれなかった。……協力者になる前の彼女に。
/
本の世界は平行世界として存在する、みたいな世界観です。
元号が同じでも令和より平成寄りな雰囲気なのも平行世界演出です。
他、書いてる人のよく知る現実が反映されてくるのでハーフや絶世の美人は極レア級です。
そのせいで降谷さん*1たちも芸能人並の美貌ではないかもしれません。兄弟皆黒髪に茶色っぽい黒目です。前世の特徴(タレ目等)は一部引き継いでるけどそう似てはいないかも。
書いてる人がこうした理由は後々分かると思います。
転生してるのでほんのすこーしだけ口調に変化がありますが多分微々たるものです。分からない程度かも。
ひらがなのみな会話は降谷さんが頑張って幼児してると思って下さい。
彼らの転生特典はこの、誰が同じ魂か、みたいなのが分かるのと、身体能力が前世並になることでしょうか。
オリ主に比べれば地味に見えますが、この世界は平々凡々な現実世界なので、充分驚異的な気がします。
桜井
前世は萩原さん。
悟:己が身を投げ打った。
(私の書く彼はほぼ皆、解体作業時間が長く防爆装備着てられなくなった中、タイマーがとまったからこそ危険を顧みず脱いだままでも解体を続けた、という設定です。覚悟の悟。)
桜井
前世は松田さん。
弥:広く、の意味。自分個人を投げ打った。
桜井
十七歳になった。前世は諸伏さん。
希:己を切り捨て希望は友に託した。
桜井
前世は伊達さん。
正:父を理解して正しさについて見解を深めるも、志半ばで倒れる。
桜井
前世は降谷さん。
仁:国のためなら非情になれるはずだった。結局部下を庇って殉職した。
桜井陽介
転生K学組の父。どこかの所轄の捜査第一課警部補。
童顔なので若く見られがちで舐められることもあるけど優秀な刑事。
子どもたちの名前についてはなんとなくの閃きで、コナンは関係ない。菊乃も同じく。
両親同居。
桜井菊乃
転生K学組の母。
陽介の三つ下でお見合い結婚。夫婦仲も義両親との仲もかなり良好。
とても明るいからっとした人。
父は警視庁のお偉いさんだったりする。