「諸君。私はクラリッサ・ハルフォーフ。
S.S.C所属整備士であると共に、企業代表パイロットになった二人ともう一人の男性パイロットの護衛を行う部隊の隊長である。
手すきの時に何か聞きたいことがあれば遠慮なく訪ねてもらって構わない。
無論、模擬戦の相手も希望があれば受け付けるぞ。」
「同じくS.S.Cから来ました、ストルム・デルストリアです。
たまに整備や開発に関する授業を行う以外はアリーナの管理や装備の試験運用の手伝いをさせてもらいます。
勿論、彼女と同じく個人専用機持ちですので...模擬戦も受付ますよ。」
ラウラ及びシャルルの転入の翌日、全校生徒に外部からの二人の職員が紹介された。
それから、織斑一夏にシャルルがシャルロットであることがバレたり。
学年別トーナメントが前回の緊急事態を踏まえて、タッグでの開催になったり。
学年別上位3チームがそれぞれ、教員を選び対戦するエキシビションマッチを開催することに決まったり。
等の日々から数日後。
「簪。『テリブル』のロックオンのプログラムデータの数値、直しておいたぞ。」
「ありがとう。ところで、ここの装甲の耐久値計算なんだけど。」
「どれ…ふむ。」
簪とスラントは整備室で一つのISを組み上げていた。
ISの名は『打鉄二式』。簪の専用機である。
「簪の計算と我の計算にズレはあまり無いな。これで問題なさそうだな。」
「それなら、これでいく。ありがとう。」
「うむ。しかし、思いきったのう。手付かずを理由にコアと機体を個人専用にするとは。」
「スラントさんのお陰。『ブリュンヒルデ以下なら皆同じ。』、あの言葉は私に取っては新鮮だったから。」
「気にせずともよい。事実だからな。」
「ふふ。なら、スラントはどちら側なの。」
「我とあの御方…それと奴らはブリュンヒルデより上であろう。」
会話をしながらも『打鉄二式』は形をより洗練させていく、それは一重に簪が天才側に近い存在であることを証明している。
スラントは計算や資材調達、補助などにまわっており、頼まれでもしない限りは開発には手を貸していない。
「あ。今度の学年トーナメント、私と組んで」
「あぁ、別に構わんが二式は間に合うのか?」
「残り10日…なら、3日で稼働実験まで済ませればいい。」
「デスマーチではないか。あまり良いとは思えんな。」
「問題ない。スラントがデルストリア先生と懇意なお陰でアリーナも抑えてくれるし、部品も手に入る。オファーがあれば代表候補から企業所属に鞍替えしても構わないくらい感謝してる。」
「…むぅ。我が背中を押した手前、強くは言えんが…強かになったのう。」
スラントは少し困り顔をしつつも、楽しげに二式を組み上げていく簪を優しく見守っていた。
「ところで、簪よ。夕飯は食べたのか?」
「朝に倍食べれば実質二食。」
「そんなわけなかろう! ほれ、閉まる前に軽く食べにいくぞ。」
「待って…ここのパーツ、ここだけでも」
「後で良い! さては貴様、夜間使用届も出しておらんな。
ここで寝るなら寝るで学園内でも外泊届がいるといつも言っておろうが…我が毎回出すと思って甘えおってからに。
だいたいだな、本来は本人が出さねばならんものをデルストリアを挟んで毎回担任に出しているからこの前、我が注意されたのだぞ。聞いておるのか小娘」
「お母さん、うるさい」
「貴様の母になった覚えはない! ほら、さっさと食べに行くぞ。引きずられたくなければ立たんか。」
「…はーい。」
「デルストリアか。すまんが……あぁ。何時もの様に夜間使用届と外泊届を頼む。別に我は迷惑ではない、気にする必要はないぞ。」
「…やっぱり、お母さん。」
「違うと言うとろう! すまない。では、後で向かわせてもらう。デルストリアも無茶はするでないぞ。」
この後、夜食を作ったスラントに簪が「母の味」と言ったとか言わなかったとか。
一人でコツコツやって約五ヶ月、そこから整備科バックアップで一週間でマルチロックオン以外仕上げた簪さんなら多分、資材とテンションと外星サポートで二ヶ月で仕上げられるんじゃないかしらと。
スラントの作った夜食は一口大のおにぎり三種(わかめ・おかか・塩)×3セットとワカメの味噌汁(保温瓶入り)追加でインスタント天ぷらそば(緑のやつ)だったり。